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  <title>長編SS保管庫</title>
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    <title>二章：その手で守るものは…</title>
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    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
    <issued>2008-06-29T10:02:58+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">「はぁ…」  　頭から湯を被り、セリアは大きな溜息を吐いた。  　顔から火が出そ...</summary>
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      <![CDATA[<p>「はぁ…」 <br />
　頭から湯を被り、セリアは大きな溜息を吐いた。 <br />
　顔から火が出そうな失態であった。暫くは悠人とはまともに顔を合わせられそうにないだろう。 <br />
(見られたわよね…) <br />
　間近で向き合っていたので全身が視界に入る事は無かったが、互いの上半身は間違い無く見えていた。 <br />
　一瞬ではあったが、セリアには強烈な印象が瞼の裏に焼き付いてしまっていた。 <br />
　悠人が体を鍛えているのは知っていたが、改めて見てみるとその逞しさにセリアは驚かされた。 <br />
　太く力強い腕や盛り上がった肩、鎧の如く体を覆っている隆起した筋肉、そして広くて大きな背中はとても自分たちには持ちえないものであった。 <br />
　恐らく、アレが男の子の体なのだろう。女性しかいない自分たちスピリットとは何もかもが違っていた。 <br />
(―って、これじゃ私がユート様の裸を見たみたいじゃない。見られたのは私なのよ？) <br />
　我に返り、セリアは気を取り直して自分の体を洗い始めた。 <br />
(早くお風呂の調子が直ってくれれば良いんだけど…) <br />
　先のエーテルコア暴走の煽りを受け、ここ連日のラキオスでは至る所でエーテル施設の復旧に大童となっており、当然軍事施設は復旧対象の筆頭でありスピリット関連の施設もこれに含まれていた。 <br />
　しかし、あまり影響を受けなかった第一詰所の設備を利用すれば良いと言う事で第二詰所の本格的な復旧は後回しにされていたのであった。 <br />
　尤も、火も明かりも儘ならない人々からしてみれば入れる風呂が近くにあるスピリットたちの風呂をわざわざ優先的に直す必要が感じられないのも仕方の無い事である。 <br />
(でも、よりにもよってユート様に見られるなんてツイてないわ…) <br />
　同性のスピリットならば今更恥ずかしがる事も無いのだが、初めて異性に肌を晒してしまった事。 <br />
　しかも、その相手が悠人であった事はセリアにとって何気にショックであった。 </p>

<p></p>

<p>　洗う手を止め、セリアはふと自分の体を見下ろした。 <br />
　同僚のあの三人程ではないがそれなりには育ってはいる、と思う。 <br />
　街で見かける同年代の娘たちと比べてもそう引けを取ってはいない、筈である。 <br />
　スタイルが良ければ恥ずかしくないと言うわけでは無いが、万が一、万が一であるが悠人が自分の体を見て否定的な感情を抱かれるのも癪である。 <br />
　別段良く思われたいなどとはつゆにも期待しない様に、セリアは体の隅々をチェックし始めた。 <br />
(そうね。余計な脂肪が付いてないのは良いけど、筋肉が付いてるって言うのはどうなのかしら？胸は、まぁ平均的よね？ <br />
一応、アセリアよりはあるもの…。手や足は胼胝で堅くなってしまってるけど、ユート様は気にしてないみたいだし…) <br />
　自分の掌を眺めながら、セリアはこの前の訓練の事を思い出した。 </p>

<p></p>

<p>当時、悠人は剣の振り過ぎで肉刺を潰してしまったのだが本人は我慢して訓練を続けていた。 <br />
　普通は肉刺が潰れたくらいでは周囲に気付く者などいないのだが、悠人の手がマナの燐光を帯び始めたのに気付いたネリーとシアーが見兼ねて手当をしたのである。 <br />
　開いた手は血塗れマナ塗れで皮はズルズルの酷い有様になっており、手当をしたシアーなどは思わず涙ぐんでしまっていた程であった。 <br />
「も～、見てたネリーたちの方が痛かったんだからね？」 <br />
「ちゃんと手当しないと。黴菌が入ったら大変だよ？ユート様」 <br />
「痛ててて…。訓練してた時はそこまで痛くなかったんだけど。でも、サンキューな二人とも」 <br />
　他の訓練の邪魔にならない様に三人は訓練場の隅で手当をしていたが、その時、悠人の負傷を知ったエスペリアは回復魔法を掛けようと『献身』を携えて駆け寄っていた。 <br />
「ユート様。怪我をされたのでしたら、私が―」 <br />
「そ～ぉれ～♪」 <br />
　のんびりとした掛け声とは裏腹に、紫電を纏った『大樹』がエスペリアのそのブラウンの髪数本をマナの塵に還して鼻先を掠め、訓練場の壁深くに突き刺さった。 <br />
「きゃあ！？い、今のは<ライトニング・ストライク>!?」 <br />
「え～っと、偶には私の相手をしてくれませんでしょうか？エスペリア」 <br />
　突然の妨害に泡を食ったエスペリアが視線を向けると、そこには笑顔を浮かべてこちらに向かって来るハリオンの姿があった。 <br />
　後方には今まで相手をしていたのだろうヒミカがいるのだが、何故か諦めた表情で休憩していた。 <br />
「ハリオン、貴女はいつもヒミカと訓練なさっているじゃないですか」 <br />
「ですから～、偶には、ですよ～？」 <br />
　そのままエスペリアの前を横切り、ハリオンは何でも無いと言う調子で壁に刺さった『大樹』を引き抜いた。 </p>

<p></p>

<p>「お相手でしたら後程致します。ですから、今は私にユート様の手当を―」 <br />
「あらあら～、やっぱりそうだったんですね～。駄目ですよ、回復魔法なんて使っては～」 <br />
　依然として笑顔のままのハリオンであったが、エスペリアは放たれるプレッシャーをひしひしと感じていた。 <br />
　手元の『献身』が警告を発し、気が付けばシールド・ハイロゥが展開されていた。 <br />
「あらあら～？脅かしちゃったんでしょうか～？」 <br />
　ハリオンの言葉に、エスペリアの形の良い眉が僅かに上がった。 <br />
　本人に悪気は無いのだろうが、本能的に恐れを抱いた事を見透かされた気がしてエスペリアとしては少し面白くない気分になった。 <br />
「貴女もユート様の手当をしたいのですか？ハリオン」 <br />
「え～？違いますよ～。でも、ユート様を手当して差し上げたいかどうかと言われればしたいですねぇ～」 <br />
「違わなくないじゃないですか…」 <br />
「そうですね～。ですけど、今は私たちが魔法で治したら駄目なんですよ～？だから、エスペリアには私と一緒に訓練して貰いますね～」 <br />
　点が見えた瞬間。それが刺突であると気付いたのはエスペリアのシールドが展開された後であった。 <br />
　しかし、超絶の脊髄反射で構築された言わば本能の防御の盾であったそれはハリオンの『大樹』に貫かれ、エスペリアは堪らず『献身』で火花を散らして受け止めていた。 <br />
「正気ですか、ハリオン!?今の一撃は本物でしたよ!?」 <br />
　戦慄と共に噴き出た汗がエスペリアの背中を流れていった。 <br />
　全力と迄はいかないが、まともに入れば怪我どころでは済まない一撃であったのだ。 </p>

<p></p>

<p>「あらあら～？私はいつも真面目に訓練してるんですけどね～？エスペリアも本気で打ち合わないと～怪我、しちゃいますよ～？」 <br />
　のほほんとした雰囲気はいつもの儘で、ハリオンは怒涛の槍撃を繰り出してきた。 <br />
　突いたと思えば薙ぎ払い、弾いたと思えば返しの一撃が来る。 <br />
　一見、闇雲に振り回している様に見えるハリオンの攻撃であったが、そのどれもが鋭く、重く、そして巧妙であった。 <br />
　機先を取られて防戦に回っていたエスペリアであったが、全てを防ぐのに精一杯で攻撃に転じる機会を図りかねてしまっていた。 <br />
「あ、でも～、もし怪我しちゃいましたら私が治しますから大丈夫ですよ～」 <br />
　その言葉に、エスペリアの中で何かが、カチン、とキた。 <br />
「貴女には負けません。全力でいきます!!」 <br />
　全力でシールドを展開し、エスペリアはハリオンを弾き飛ばした。 <br />
「やぁん!!」 <br />
　間延びした悲鳴を上げたものの、ハリオンは空中で器用に体を捻り、体勢を立て直して綺麗に着地した。 <br />
　弾き飛ばされる瞬間に発生させた自分のシールドで相殺し、受けるダメージを完全に無効化していたのであった。 <br />
「やぁっ!!」 <br />
「え～いっ!!」 <br />
　二人の一撃が衝突し、続いて嵐の様な応酬が繰り広げられた。 <br />
　刃、柄、石突。指、手甲、肘、腕、脚、踵、脚甲、爪先。 <br />
　槍だけではない。彼女たちは自身の全てを武器として戦い、ぶつかり合った。 </p>

<p></p>

<p>「へぇ～、エスペリアたち凄く気合い入ってるなぁ…」 <br />
　よもや原因が自分だとは夢にも思っていない悠人は、そんなふたりの遣り取りを眺めながら呑気な台詞を吐いていた。 <br />
　エスペリアが相当の使い手である事は悠人自身が身を以て知っていたが、まさかのハリオンのあの強さに悠人は驚いてしまった。 <br />
「ハリオンって守ったり回復してるイメージがあったけど、本当はあんなに強かったんだな」 <br />
「アレ？ユート様知らないの？ハリオンの『大樹』は六位だからヒミカやファーレーンと一緒で、ラキオスのスピリットの中じゃ一番位が高いんだよ？」 <br />
「そうなのか？でも、いくら神剣の位が高いって言ってもあの強さは本人のものだと思うけどな。 <br />
実際、俺の『求め』は四位だけどあんな戦いなんてまだ無理だし。―っ痛っ!?」 <br />
「あ…、痛かった？ごめんなさい、ユート様…」 <br />
　悠人の声に手当をしていたシアーが申し訳なさそうな表情を浮かべたが、悠人は首を振って苦笑で済ませた。 <br />
「消毒が少し染みただけだから、気にせず続けてくれ…」 <br />
「うん、ちょっと我慢してね？ユート様」 <br />
　そうは言ったものの、その後は特に痛みを感じる事も無くシアーは手際良く悠人の手当を済ませた。その見事と言っても良い手際に、悠人は素直に感心してしまう。 <br />
「へぇ、上手いモンだな。シアーってこう言うのが得意だったんだな」 <br />
「得意ってわけじゃないけど、一応一通りの手当は出来るの」 <br />
　悠人に褒められて嬉しいのか、謙遜しながらもシアーははにかんだ笑みでそう答えた。 <br />
「ネリーも出来るよ？ユート様。包帯でグルグル巻くと楽しいよね～？」 <br />
「ネリーの手当が大体判った様な気がするな…」 <br />
「アレ？何か期待してた反応と違う？」 <br />
　そんなネリーに苦笑しつつ、悠人は手を開閉して手当の具合を確かめていた。 </p>

<p></p>

<p>「けど、肉刺が出来るのってちょっと懐かしいかも。ネリーたちも訓練し始めた頃はいっぱい作ってたよ？」 <br />
「シアーも出来てたよ」 <br />
　悠人の仕草を見た二人が懐かしそうにそう言った。 <br />
「今はもう堅くなって平気なんだけどね。触ってみる？ユート様」 <br />
　手甲を外し、ネリーは手の平を悠人に差し出した。その手には、悠人の肉刺と同じ場所にすっかり堅くなった胼胝が出来ていた。 <br />
「あぁ、堅いな…」 <br />
　ネリーの手を悠人は包み込む様にして触った。 <br />
　部活やバイトではない、長年の訓練に因って出来た胼胝の堅さに悠人は驚き、そして遣る瀬無い気持ちになった。 <br />
　剣を握らされ、血に染められてきたスピリットたちの手。 <br />
　生きてきた世界が違うとは言え、この世界の常識は未だ悠人には受け入れられそうになかった。 <br />
「えっと、ユート様？」 <br />
　悠人の雰囲気の変化を感じ取ったのか、ネリーが視線を泳がせながらシアーを見た。 <br />
　だが、シアーも何が原因なのか、どうすれば良いのか分からずに不安気な視線を返す事しか出来ない。 <br />
　居た堪れなさに耐え切れず、ネリーは茶化す様に口を開いた。 <br />
「もしかしてユート様は堅い手って嫌い？」 <br />
　ネリーの問いに、悠人は頚を振って否定した。 <br />
「嫌いじゃないさ。それだけネリーが頑張ってきたって事だからな…。シアーも、他の皆もきっといっぱい頑張ってきたんだと思う…」 <br />
　戦争の道具として運命られたかの様に神剣を手にして生まれてくるスピリットたち。 <br />
　人間たちによって血に塗れた道を歩かせられている彼女たちだが、悠人は彼女たちを不幸な存在だとは思いたくなかった。 <br />
　思った瞬間、悠人自身が彼女たちを不幸にしてしまうと思ったのだ。同情でも憐れみでも良い。 <br />
　だが、不幸な存在と決め付けて彼女たちに接したくはない。 <br />
　笑って欲しい、幸せになって欲しい。 <br />
　誰よりもそれ願うが故に、悠人は尚更に彼女たちの存在を受け入れたかった。 </p>

<p></p>

<p>「だからさ、俺は皆の手がどんなに堅くっても全然気にしないから。その手で皆は大切なものを守ってきたんだろ？ <br />
そりゃあ取り零したり落っことしてきたものだってあるかもしれないけど、少なくとも皆はこうして俺に会ってくれた。生き伸びててくれたんだ。 <br />
俺だって皆が助けてくれたからこの世界で生きてこられた。立派な手なんだ。それに比べたら俺の手なんてまだまだだよ」 <br />
　自分を叱咤する様に、悠人は手当てされた自分の手を眺めた。 <br />
「違うよ、ユート様！ユート様の手はね、いっぱい、い～っぱいネリーたちに元気をくれてるよ！」 <br />
　握られていた手を握り返し、ネリーは悠人に詰め寄った。 <br />
「ユート様の手はね、どんなに美味しいお菓子やマナよりもネリーたちを元気にしてくれるんだよ？ <br />
どんなに訓練が辛くても、戦場で死にそうでも、ユート様がネリーたちに手を差し伸べてくれるから頑張れるんだよ？ <br />
だから、ユート様はまだまだなんかじゃないよ。ユート様はね、ちゃんとネリーたちを守ってくれてるの」 <br />
　そう言うとネリーは悠人の手を自分の胸元に押し当てた。 <br />
　そうして心に触れさせるかの様に、守らせるかの様に。そして信頼の証を示すかの様に。 <br />
　悠人は、ささやかだがそれでもちゃんと女の子を感じさせる柔らかさにドキリとさせられてしまっていた。 <br />
　しかしその一方で、同時に伝わってくるネリーの体温や心臓の鼓動に不思議と穏やかな気分にもなっていた。 <br />
「シアーもね、ユート様の手は大好きだよ。大きくて、温かくて、優しくて…。こうしてるだけでシアーの中に幸せが広がっていくんだよ？ <br />
だから、もっといっぱい撫でて欲しいな、ユート様…」 <br />
　空いていたもう一方の悠人の手を取って、シアーは自分の頭に載せてそう呟いた。 <br />
　ふわふわした髪に感触を楽しむ様に悠人が頭を撫でると、シアーも目を細めて頭を摺り寄せてきた。 <br />
「あ～、ネリーも、ネリーも～」 <br />
「分かった分かった、俺で良かったら幾らでも撫でてやるからな？」 <br />
　せがんで来たネリーに苦笑しながら、悠人はネリーの頭を撫で始めた。 <br />
「二人とも、サンキュ…」 <br />
「えへへ～♪」 <br />
「～♪」 <br />
　悠人は微笑み、二人の頭を暫くの間撫で続けていた。 </p>

<p></p>

<p>　もし、ハイ・ペリアの世界の人々が悠人の様な人間ばかりならば、本当にハイ･ペリアは理想郷なのかもしれない。 <br />
　そんな想いを抱かずにはいられない出来事だった。 <br />
　戦う事でしか存在を認められないスピリットたちを在りの儘に受け入れようとしてくれる悠人。 <br />
　ネリーの言う通り、悠人の存在はスピリットたる自分たちにとって確かに救いであった。 <br />
　自分はもう素直な態度は取れないけれど、代わりにあの子たちが悠人を助けてくれるだろう。その時は出来る限り応援してあげたい。 <br />
　何故か胸が少し痛かったが、セリアはそれに気付かない事にした。 <br />
　でも、この思い出と一緒にいつまでも大切に覚えていよう。 <br />
　いつかマナに還るその日まで、自分たちスピリットに愛情を注いでくれた心優しき勇者がいた事を。 <br />
　訓練場の隅で、後から来たニムントールに回復魔法を掛けられていた二人の緑は記憶の片隅に置いといて…。 </p>]]>
      
    </content>
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    <title>二章：姉と妹たち</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/archives/001473.html" />
    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
    <issued>2008-06-29T10:04:34+09:00</issued>
    <id>tag:etranger.s66.xrea.com,2008:/ss/long//3.1473</id>
    <created>2008-06-29T01:04:34Z</created>
    <summary type="text/plain">「セリア、さっきから何してるの？」  「背中が洗い難いなら、シアーたちが手伝うよ...</summary>
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      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject>Twinkle fairies</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/">
      <![CDATA[<p>「セリア、さっきから何してるの？」 <br />
「背中が洗い難いなら、シアーたちが手伝うよ？」 <br />
「きゃあっ!?」 <br />
　背中から声を掛けられ、セリアは思わず声を上げた。 <br />
「わわっ!?」 <br />
「びっくりした～」 <br />
　声に驚いた二人は目を丸くしてセリアを眺めていたが、二人のそんな態度にセリアも咳払いで仕切りなおし、改めて二人に向き合った。 <br />
「急に声を上げたりして御免なさい。ちょっと考え事をしていたものだから…」 <br />
　何でも無い、と言う様にセリアは流した。 <br />
　悠人に裸を見られたのが気になり自分の体をチェックしていた、なんて事はセリアからしてみれば全然無い。 <br />
　が、それでも一応誤解を受けない様に振舞うのも先輩スピリットとしての義務なのである。そうセリアは自分に言い聞かせた。 <br />
「？まぁ、良いや。ところで、セリア。ネリーたち、ちょっと訊きたい事があるんだけど良い？」 <br />
「シアーたちで考えてみたけど、やっぱり良く解らなかったの…」 <br />
「何？私に答えられる事なら良いんだけど…」 <br />
　知らない事、分からない事は年長のスピリットに質問する。 <br />
　基本的に戦闘知識しか教育を受けないスピリットたちは、そうやって他の知識を得るのが慣習になっていた。 <br />
　何かと二人の目付け役に回る事が多いセリアは同時に色々な事を教える機会も多く、今では相談役にもなっていた。 <br />
　今度は一体何を訊かれるのやら。濡れた髪を掻き上げてセリアが待っていると、ネリーが早速質問を投げかけてきたのだった。 </p>

<p></p>

<p>「んとね、セリアはユート様に裸を見られて恥ずかしかった？」 <br />
「当たり前でしょうっ!!」 <br />
　ネリーの質問にセリアは間髪容れずに叫び返した。 <br />
　先の光景がフラッシュ・バックし、沈静化していた羞恥心が再燃したセリアは耳まで真っ赤になっていた。 <br />
　しかし、そんなセリアの様子を見てもネリーとシアーは不思議そうに首を傾げるばかり。 <br />
　そんな二人の様子を見てセリアは一人得心して思わず目を覆うのだった。 <br />
「えっとね、ユート様がネリーたちに恥じらいを持った方が良いって言ってたんだけど…」 <br />
「シアーたち、恥じらいが無いのかなぁ？セリア…」 <br />
「え～っと、一応二人ともユート様の前ではちゃんと体を隠していたのね？」 <br />
　セリアの問いに、二人はしっかりと頷いた。そんな二人の反応に、セリアは安堵の溜息を吐いた。 <br />
「ユート様がちゃんと隠さなきゃいけないって言ってたからちゃんと隠したよ」 <br />
「あと、くっ付いちゃ駄目って言われたからその通りにもにしたよ」 <br />
「判ったわ…。要するに言われる迄そうしてたのね、貴女たち…」 <br />
　セリアは頭を抱えたくなった。 <br />
　無防備どころではない。悠人が紳士で良かったと心から思った。 <br />
　尤も、風呂場で遭遇する紳士と言うのも相当アレであるが…。 <br />
「ねぇ、セリア。セリアは何でユート様に裸を見られて恥ずかしかったの？」 <br />
「そ、それはユート様は男の人だもの。恥ずかしくもなるわ」 <br />
「でも、シアーたちは恥ずかしくなかったよ？やっぱり、シアーたちって恥じらいが無いのかなぁ？」 <br />
「ねぇ、セリア。恥じらいってどうやって持つの？教えて」 <br />
「こう言うものは持とうと思って持てるものじゃないし、気が付いたら備ってるものだから教わってどうこうできるものじゃないのよ」 <br />
「そうなんだ？」 <br />
「じゃあ、シアーたちはどうすれば良いなのかな…？」 <br />
　悠人に持てと言われた羞恥心を直ぐに持てない為か、二人は不安そうな顔でセリアを見上げてきた。 <br />
　そこにいるのはいつものお転婆な二人ではなく、慕う姉に縋ってきた悩める可愛い妹たちであった。 </p>

<p></p>

<p>　確かに、最近の二人は可愛くなった。それは容姿に限らず、こう言う弱さが見え隠れするところもであろう。 <br />
　だが、その弱さをセリアは否定する気にはならなかった。 <br />
　誰かと接して成長していく上で、その弱さは価値があるとセリアは信じていたし、何よりその弱さは同時に素敵な可能性の種でもあるのだ。 <br />
　ならば、自分は種が芽吹く様に応援したいと思う。 <br />
　セリアは額に手を添え、良い助言を探して思案を始めた。 <br />
「そうね…。貴女たちが解りたいと思うなら、ユート様と私たちの違いを比べてみたらどうかしら？」 <br />
　セリアの言葉にネリーとシアーは驚いた顔をした。 <br />
「あのね、セリア。ユート様も、ユート様とネリーたちは違うって言ってたの。 <br />
　あ、違うって言っても人間とかスピリットだとかって言う意味じゃなくて、ユート様は男の人で、ネリーたちが女の子って意味だよ？」 <br />
「解ってるわ。あの人が人間だとかスピリットだとかに拘る様な人じゃないのは皆知ってるもの。 <br />
それで、ユート様はその違いについて何て言っていたの？」 <br />
「え～っと、その違いが無くなると、シアーたちがユート様と一緒にお風呂に入ってもそれは他の皆とお風呂に入るのと変わらないって」 <br />
　シアーの説明を聞いて、セリアは悠人にしては何気に含蓄のある事を言ったものだと感心した。 <br />
　その一方で、多分本人も解っていないだろうと言う予想もしていた。 <br />
　解っているのなら、もっと解り易く二人に説明していた筈である。 <br />
「成程ね…。ユート様が仰っていた意味だけど、これは実感しないと理解できそうにないから多分私が言葉で教えても意味が無いと思うわ。 <br />
でも、言葉で捉えるよりも貴女たちは想像して理解した方が良く解ると思うわ」 <br />
　言っては何だが、二人は深謀遠慮と言った思考は不向きであった。戦闘での咄嗟の機転は良いのだが、大局を見据えた様な立ち回り等は完全に無理である。 <br />
　ましてや男女の機微など理解するには経験と知識が絶対的に少な過ぎていた。 <br />
　尤も、男女の遣り取りなどセリア自身も殆ど無いのであるが。 </p>

<p></p>

<p>「それじゃあ、先ずは簡単なところからいきましょうか。二人は別に私や他の皆と一緒にお風呂に入っても何とも思わないでしょ？ <br />
まぁ、皆で入れば賑やかになるかもしれないけど、そんなところね」 <br />
　セリアの言葉にネリーとシアーが頷き、セリアはそれを確認した。 <br />
「じゃあ、今度は貴女たちがユート様と一緒にお風呂に入ったとするわ。 <br />
勿論、お互いに体は隠してるし、抱き付いたりしないわ。良いかしら？」 <br />
「セリア、ユート様と同じ事言ってる」 <br />
「何で？」 <br />
「私もユート様も恥じらいを持っているからよ。それが知りたいのなら私の話を聞いて頂戴」 <br />
「うん、分かった」 <br />
「頑張る」 <br />
　気を取り直し、セリアの説明が更に続く。 <br />
「話を戻すわね。それで、二人にとってユート様と一緒にお風呂に入るのは私たちとお風呂に入るのと同じかしら？」 <br />
「え～っと…」 <br />
「う～ん…」 <br />
「考えなくて良いから、想像してみて」 <br />
　セリアの言葉に従い、二人は懸命に想像力を膨らませた。 <br />
　先程悠人との入浴を思い出しながら、そこに生じる差異を感じ取ろうとしていた。 <br />
「ユート様はどんな感じだったの？仕草や体付きとか、本当に皆と同じだったの？ <br />
それに、貴女たちを見たユート様はいつもと全然違ってたでしょ？」 <br />
　流石に言っているセリア自身も恥ずかしくなってきたが、二人の頬が少し紅潮している辺りその甲斐はあった様である。 <br />
　湯に浸かっていない二人の紅潮は、決して湯中りの所為では無いだろう。 </p>

<p></p>

<p>「それに、多分ユート様も貴女たちを見て意識してたかもしれないわね。二人とも、ユート様に女の子って意識されるのはどんな気分かしら？」 <br />
　その言葉で、二人の顔にさぁっと朱が差した。 <br />
「わ、わ、わ？ネリー、すっごいドキドキしてきたかも…」 <br />
「シ、シアーは、ちょっとクラクラしてきたの…」 <br />
　胸に手を当て、高鳴る自分たちの鼓動に戸惑い始めた二人を見て、セリアは漸く一息吐いた。 <br />
(いきなり男と女の関係に発展されても困るけど、ユート様なら多分大丈夫よね？) <br />
　悠人に性格からして、相手の無知に付け込んだり無理矢理迫ったりする事は無いだろう。 <br />
　まぁ、逆に二人から強引に迫られたら流されてしまいそうな可能性が無きにしも在らずではあるが。 <br />
　しかし、今は二人が悠人を意識してくれれば御の字であろう。必要な知識は二人の成長に合わせて教えれば良い。 <br />
　折角スピリットは往々にして耳年増であったりするのだから。 <br />
(とは言っても、私も経験が豊富ってわけでもないのだけど…) <br />
　目の前で赤くなる二人を、セリアは少し眩しげに眺めるのであった。 </p>]]>
      
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    <title>二章：三人でデート</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/archives/001474.html" />
    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
    <issued>2008-06-29T10:07:42+09:00</issued>
    <id>tag:etranger.s66.xrea.com,2008:/ss/long//3.1474</id>
    <created>2008-06-29T01:07:42Z</created>
    <summary type="text/plain">　ルカモの月、黒一つの日。  　ラースから攻め上がったラキオス軍は怒涛の勢いでサ...</summary>
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      <name>etranger</name>
      
      
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    <dc:subject>Twinkle fairies</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>　ルカモの月、黒一つの日。 <br />
　ラースから攻め上がったラキオス軍は怒涛の勢いでサルドバルド領内に進行し、アキラィス、パードバルドと瞬く間に次々に拠点を制圧。 <br />
　遂には首都のサルドバルドを陥落せしめるに至った。 <br />
　同盟国への裏切りの代償を、サルドバルド王国は滅亡と言う形で贖う事となったのだ。 <br />
　ラキオス王は北方五国の統一に酔い痴れ、国民の多くも戦勝の喜びに沸き返っていた。 <br />
　その後、首都のラキオスでは盛大な凱旋式が執り行われていたが、悠人たちスピリット隊はスピリット施設での待機が命じられていた。 <br />
　所詮はスピリット。 <br />
　彼女たちが戦争で戦う事が当たり前と考えている人間たちにとって、称えられるべきは命令を下した人間でありスピリットはその為の道具でしかないのだ。 <br />
「わ～、見てみてユート様!!何か凄いよ!?」 <br />
「ち、ちょっと待てって、ネリー!!こんな所で飛んだら目立つから!!」 <br />
「ユート様～っ、ネリーっ!!何処なのぉ…。グスっ…」 <br />
「あぁ、シアー、こっちだぞー!!って、ネリー、戻って来～いっ!!」 <br />
　そんな中、待機中の三人は何故か凱旋式の人混みの中にいたのであった。 </p>

<p></p>

<p>「やっと、佳織が戻ってくる…!!」 <br />
　自室の窓から城を眺め、気持ちを抑えきれずに悠人は呟いた。先日のサルドバルド制圧の功績が認められ、悠人は晴れて佳織と一緒に暮らす事が許されたのであった。 <br />
(でも、レスティーナが口添えしてくれるなんてな…) <br />
　佳織の解放。その申し出を提案したのは何とレスティーナであった。 <br />
　当然、最初は難色を示していたラキオス王であったが、提案者であるレスティーナ本人がその巧みな弁舌で以ってこれを説得したのだった。 <br />
　勿論、悠人に対して釘を刺す発言もあったのだが、今思えばそれは悠人に制約を課すと言うよりもラキオス王を納得させる為のものであったかもしれない。 <br />
　レスティーナの意図する所までは悠人には解らない。だが、佳織が返ってくる。それが純粋に嬉しかった。 <br />
　一応、待機を命じられているものの実際今日はスピリット隊の休日となっていた。 <br />
　中には凱旋式に出席する要人の護衛を命じられて任務に就いている者もいたが、技術も知識も乏しい悠人にその任が回ってくる事は無い。 <br />
　よって、朝食を終えた悠人は暇を持て余す事となっていたのだった。 <br />
「ユート様、居る～？ネリーだよ～」 <br />
「シアーも来たよ～」 <br />
　ノックの音に続いて、そんな二人の声が聞こえてきた。悠人はベッドに腰掛けると二人を部屋に招きいれた。 <br />
「開いてるよ」 <br />
「うん、じゃあ入るね」 <br />
「お邪魔しま～す」 <br />
　弾んだ声を出して扉を開け、ネリーとシアーは悠人の前にやってきた。 <br />
「どうしたんだ？二人とも何か嬉しそうだけど」 <br />
　二人の様子を見た悠人がそう言うと、それを待っていたとばかりに二人は大きく破顔して悠人の隣に腰掛けた。 </p>

<p></p>

<p>「えへへ～。ユート様は今日はお休みなんだよね？」 <br />
「シアーたちも今日はお休みなんだよ～」 <br />
　そのまま悠人の腕を両手で抱いて、二人は期待に満ちた目で見上げてきた。 <br />
「この前、ネリーたちユート様と一緒にお出かけするって約束したもんね～」 <br />
「だから…。ね？ユート様」 <br />
　二人の言葉に、悠人は以前の約束を思い出した。確かに、果たすなら丁度良い機会かもしれない。 <br />
「今度の休みの日に一緒に街に遊びに行こうって約束だっけ？」 <br />
「そうそう、それっ!!」 <br />
「わくわく…」 <br />
　悠人は二人から離れてベッドから立ち上がり、学生服の上にいつもの外套を羽織ると二人に向き合って張り切った表情を見せた。 <br />
「よし、じゃあ遊びに行くか。今日はお祭りだから一杯楽しもうな」 <br />
「やったぁ～♪」 <br />
「わぁい♪」 <br />
「ととっ!?えっと、二人とも…。これじゃ、遊びに行けないんだけど…？」 <br />
　抱き付いてきた二人を受け止め、悠人は苦笑しながら二人の頭を撫でた。 <br />
「えへへ～♪」 <br />
「～♪」 <br />
　今日は楽しい事が確定。 <br />
　そんな零れんばかり二人の笑顔であった。 </p>

<p></p>

<p>「あらあら～、いらっしゃいませ～。あら？」 <br />
　来客を告げるカウ・ベルの音に呼ばれて現れたエプロン姿のハリオンは珍しく驚いた表情を浮かべていた。 <br />
　常連の客と一緒に訪れた客は彼女の良く知る人物であったが、ここで会うのは初めてであったのだ。 <br />
「やっほ～、ハリオン」 <br />
「また来たよ～」 <br />
「あらあら～、今日はお二人ともご機嫌ですね～」 <br />
　常連である二人に挨拶を済ますと、ハリオンはその後ろに立っている客に向けてにっこりと微笑んだ。 <br />
「ユート様も、ようこそいらっしゃいましたね～。お姉さんは嬉しいですよ～」 <br />
「いや、俺なんかが来て迷惑じゃないか？こう言うお菓子屋とかあんまり入った事無いから、いまいち勝手が分からないんだけど…」 <br />
　以前に来た店であるとは言え、悠人には矢張り緊張が隠せないでいた。 <br />
　お菓子屋等の女の子や子供が多く出入りする店に悠人は殆ど免疫が出来ていなかった。 <br />
「いえいえ～。ユート様も可愛いですし、私は全然気にしませんよ～？」 <br />
　果てしなく解釈に困る返事をされ、悠人は笑うしかなかった。 <br />
　どうせ今日は二人付き合うのだ。ならば、とことん付き合うまで。悠人は腹を括って楽しむ事にした。 <br />
「ところで～、ユート様～？」 <br />
「何だ？ハリオン」 <br />
「今日は三人でデートですか～？」 <br />
「で、デート!?」 <br />
　ハリオンの発言に、ユートは思わず叫び返していた。 <br />
　当然、そんな言葉に反応した悠人に興味を覚えた二人は素直に質問を始めてしまうのだった。 <br />
「ユート様、『でーと』って何？」 <br />
「教えて欲しいな…」 <br />
「えぇっ!?ハリオンじゃなくて俺に訊くのか？」 <br />
　(悠人にとって)まさかの二人の質問に、悠人は思わずたじろいだ。 <br />
　悠人はハリオンに視線を向けるも、本人は「あらあら、頑張って下さいね～。ユート様～」と胸の前で指を組んでニコニコと佇んでいた。 <br />
　どうやら完全に悠人に任せるつもりであるらしい。 </p>

<p></p>

<p>　確かに、悠人とネリーとシアーの今の状態をデートと呼べばデートと呼べなくも無いであろう。 <br />
　と言うか、デート以外の何物でも無い。 <br />
　しかし、改めてデートと認識してしまうと悠人としては気恥ずかしいモノがあるのである。 <br />
　如何に伝説と謳われようと、悠人の中身は年頃の少年なのであった。 <br />
「そ、そうだな…。仲の良い人や仲良くなりたい人と一緒にご飯を食べたり遊んだりする事かな？」 <br />
　当たり障りの無い、無難な、悪く言えばヘタレなその答えであったが、ネリーとシアーは悠人の答えに大きく満足した様であった。 <br />
「へえ～。じゃあ、ネリーたちはユート様とでーとしてるんだね」 <br />
「でーと…。どきどき…」 <br />
「いや、まぁ…。そうだな…」 <br />
　面と向かってそう言われると恥ずかしい悠人であったが、それでも悪い気がしないのは目の前で頬を両手で覆いながら表情を綻ばせて喜んでいる二人のお陰であろう。 <br />
　何だかんだで二人はとびきりの美少女であるし、そんな二人の素直な幸せそうな仕草を悠人はやはり可愛いと思ってしまったのだった。 <br />
　と、店の奥から香ばしい匂いが漂い始め、続いて店内に向かって足音が近付いてきた。 <br />
「ハリオン、今お菓子が焼き上がったんだけど、並べるのを手伝ってくれな―。え…？」 <br />
　聞こえてきたその声に悠人は驚いた。 <br />
　尤も、驚いたのは向こうも同じらしく、悠人の姿を見るや菓子を乗せたトレイを持ったままその場に立ち尽くしてしまっていた。 <br />
「ゆ、ユート様…？」 <br />
「ひ、ヒミカ？」 <br />
　確認し合う様に、二人は互いを呼び合っていた。 </p>

<p></p>

<p>「え？ちょっと、嘘？何でユート様がここに？」 <br />
「いや、今日はネリーとシアーと遊ぶ約束で…。って、何でヒミカがここで働いているんだ？」 <br />
「えっと、ハリオンがここで修行させて貰い始めて、そうしたら私も一緒に誘われてまして…」 <br />
　悠人に質問にヒミカは俯きながら答えた。いつものハキハキとした彼女らしくない、どこか歯切れの悪い話し方である。 <br />
「に、似合いませんよね？こんな格好…」 <br />
　ヒミカはトレイを台に置くと恥じる様に両肩を抱いた。 <br />
　しかし、ヒミカのエプロン姿は意外にでもなく普通に似合っており、如何にも菓子屋の娘と言った具合であった。 <br />
　普段が優秀な戦士であるヒミカだが、こう言った女の子らしい格好をすると物凄く似合う。 <br />
　それがヒミカであった。 <br />
　だからであろう、悠人は思った感想をそのまま口に出していた。 <br />
「いや、似合ってると思うぞ？やっぱりアレだな、女が家事しろなんて思わないけど、そう言う女の子らしい格好してるヒミカは可愛いんじゃないか？」 <br />
「はいっ!?」 <br />
　悠人の素直な感想に、ヒミカは信じられないと言った表情で悠人を見た。 <br />
「あ、アレ？俺って、何か変な事言ったのか？」 <br />
　そんなヒミカの反応に思わず悠人は焦った。鈍感だのデリカシーが無いだのと幼馴染みの言葉がやけに耳に甦ってしまう。 <br />
　しかし、ハリオンは「違いますよ～」と、悠人に微笑んできた。 <br />
「うふふ～。ユート様～、ヒミカは自分の事を女の子っぽくないって思っているので～、照れちゃってるんですね～」 <br />
「ちょっ、ちょっとハリオン!?」 <br />
　思わず声を上げたヒミカだが、悠人の視線に気付くと更に赤くなって俯いた。 </p>

<p></p>

<p>「いえ、その…。やっぱり、私なんかがこんな格好してもやっぱり中身まで変わるわけじゃないですし…。 <br />
何より、自分がどんなのかは自分が良く知ってますから…」 <br />
　自虐的な笑みを浮かべ、ヒミカは更に言葉を続けた。 <br />
　普段は快活な彼女であったが、どうやら負の感情に取り憑かれると際限無しに沈んでいく性格なのかもしれない。 <br />
「性格だって、こんなですし…。体付きだってハリオンみたいでもなければ、他の子みたいにちっちゃくて可愛いわけでもないですし…」 <br />
「そうなのか？」 <br />
　悠人は首を傾げながらヒミカを見ていた。 <br />
　そのあまりにも自然な、どうして？と言う様な純粋な疑問を含んだ悠人の視線に、今度はヒミカが理解出来なかった。 <br />
「え…？ですから、私がどんな格好しても女らしくならないって事ですけど…」 <br />
「？」 <br />
　ヒミカが説明するものの、悠人は依然として、否、更に難しい表情を浮かべるばかりであった。 <br />
「いや、ヒミカって普通に女の子っぽいと思うぞ？」 <br />
「そ、そんな事ありませんっ!!」 <br />
　全力で否定してくるヒミカに、悠人は簡単な問題に梃子摺る優等生でも見るかの様な、不可解なものを見る目でヒミカを見た。 <br />
　何故、此処まで頑ななのだろうか。 <br />
　悠人にはわけが分からなかった。 <br />
「ところで、コレってヒミカが作ったお菓子なのか？」 <br />
　解らない事を考えても仕様が無いと諦めたのか、悠人はヒミカの持ってきた焼き菓子を指差した。 <br />
「えぇ、まぁ、そうですけど…」 <br />
「じゃあ、一個貰うな？ハリオン、代金はコレで足りるかな？」 <br />
　焼き菓子を一つ取り、悠人はポケットからルシル硬貨を一枚取り出してハリオンに手渡した。 <br />
「はい～。でも、これならあと二つ買えちゃいますね～」 <br />
「そうか？じゃあネリーとシアーに頼むな」 <br />
「分かりました～。では二人とも～、ヒミカの焼きたてのお菓子ですよ～」 <br />
　焼き菓子を二つ手に取ると、ハリオンは悠人の後ろの二人に運んでいった。 </p>

<p></p>

<p>「あ、ありがと…」 <br />
「し、シアーも有難うなの…」 <br />
　二人に菓子が行き渡るのを確認すると、悠人は早速ヒミカの焼き菓子を囓ってみた。 <br />
「うわ、これは美味いな…」 <br />
　陳腐な感想だが、悠人にはこれ以上の褒め言葉を思い付けなかった。 <br />
　少し堅めの焼き菓子だが、歯応えが実に楽しい。 <br />
　甘味は蜜であろうか。噛む程に控えめな甘さが広がっていき、芳香が鼻腔から上品に抜けていく。 <br />
　菓子には疎い悠人でも、このヒミカの焼き菓子が相当なものである事が理解出来る程の逸品であった。 <br />
「ヒミカはとっても火の加減が上手で～、良く釜の番も任されるんですよ～」 <br />
　ハリオンのその言葉に、悠人は得心の表情を浮かべた。これ程上手に焼き上げるのならば確かに文句は無いだろう。 <br />
「そ、そんな。私なんてそれくらいしか出来ませんし…。それに生地作りや味付けなんかまだまだで…」 <br />
「それでもこの焼き具合は凄いと思うけどな？それに、釜の番なんて余っ程信用されてなきゃ任されない事なんだろ？ <br />
それだけ凄いんだよ、ヒミカは」 <br />
　ヒミカの頬に朱が差した。 <br />
　ここまで面と向かって褒められては何と返せば良いのか見当も付かなかった。 <br />
「ヒミカって料理も上手なんだな。結構気が利くとこもあるし、謙虚さはあるけど芯はしっかりしてるし。 <br />
女の子らしいって言うよりは、普通にお嫁に行けそうだよな」 <br />
「お、お嫁さん!?」 <br />
「あらあら、良かったですね～ヒミカ」 <br />
　ヒミカに対する悠人の評価を聞いて、ハリオンは自分の事の様に喜んだ。 <br />
　彼女がいくらヒミカを褒めても何故か恨めしそうな視線を返されてしまうのがいつもの事であった。 <br />
　しかし、脳と口の神経が直結している悠人の言葉ならヒミカも受け取らざるを得ないのだろう。 </p>

<p></p>

<p>「で、でも。家事なんてやれば誰でも出来る様になりますし…。いくら女らしく振舞っても、私は女らしくなれないんです…」 <br />
　長年の悩みとはそう簡単に払拭させてはくれなさそうである。 <br />
　だが、そんなヒミカの気も知らず、幼馴染みからの散々な評価が不当な評価ではなかったのが悠人なのであった。 <br />
「でも、俺は女の子らしくなりたいって思っている女の子以上に女の子らしい女の子はいないと思うけどな？ <br />
その点から言えば、ヒミカが一番女の子らしいんじゃないかな？」 <br />
　その言葉にヒミカが、そして悠人には見えないが背後の二人が大きく反応した。 <br />
「ヒミカ～。ユート様はちゃんとヒミカの事を可愛い女の子って思ってくれてますよ～」 <br />
「ハリオン、その、そう言う言い方されると俺が恥ずかしいんだけど…」 <br />
　ハリオンの言葉に悠人は頬を掻いた。軽薄だと思われたくないと言うのもあるが、悠人自身、異性を意識するのも、それを悟られるのも抵抗があった。 <br />
　親友の生臭坊主を思い出し、よくもまぁこんな事を堂々と主張していたものだと悠人は感心半分呆れ半分になる。 <br />
「え？そんな、ユート様が？だって、私は…」 <br />
　何やらブツブツと呟いていたヒミカであったが、悠人と目が合うや一気に耳まで赤くなった。 <br />
「わ、私、次の仕込みがありますのでし、失礼しますっ!!ハリオン、そのお菓子並べといて!!」 <br />
　目を泳がせ、ヒミカは転がり込む様に厨房へと消えていった。普段は姉御肌のヒミカであったが、心は何処までも純情乙女なのであった。 <br />
「あらあら、ヒミカは恥ずかしがり屋さんですね～」 <br />
　微笑むハリオンを見ながら、悠人は大きく肩で息を吐いた。 <br />
　そんな悠人たちの光景を眺めながら、 <br />
「う～…」 <br />
「むぅ～…」 <br />
　ネリーとシアーはヒミカの焼き菓子を囓っていたのだった。 </p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>二章：両手に花</title>
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    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
    <issued>2008-06-30T10:09:22+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">「………」  「………」  「………」  　無言の重圧の中、悠人は途方に暮れてい...</summary>
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    <dc:subject>Twinkle fairies</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>「………」 <br />
「………」 <br />
「………」 <br />
　無言の重圧の中、悠人は途方に暮れていた。 <br />
「いや～、やっぱりあの屋台のヨフアルは美味いな」 <br />
　悠人がそれと無く言ってみるが、 <br />
「うん、そうだね…」 <br />
「美味しいね、ユート様…」 <br />
　悠人の両脇の二人は何処か歯切れの悪い反応を返すばかりであった。そんな二人を眺め、悠人は内心で首を傾げる事しか出来ない。 <br />
(一体、二人ともどうしたんだ？) <br />
　ハリオンたちと別れてからずっとこんな調子なのだが、悠人には皆目見当が付かなかった。 <br />
　何と無く二人の機嫌が良くない事は雰囲気で伝わってきたが、離れるどころか益々くっ付いてくる二人の行動に悠人の困惑は増すばかりである。 <br />
　それと無く二人の様子を伺ってみるものの、二人が一心不乱にヨフアルを囓っているばかりで何を考えているのか分からなかった。 <br />
　寧ろ、考えない様にしている様にも見えてくる。 <br />
　と、悠人はある事に気が付いた。 <br />
(ん？ネリーの口元にクリームが付いてるな…) <br />
　無心で食べているネリーの口元にはヨフアルのトッピングのクリームが付いていた。 <br />
　態度は普段と違うが、そこにいつものネリーを見付けた気がして悠人は安堵した。 <br />
「ネリー、ちょっと動かないでくれるか？」 <br />
「え、何？ユート様？ひゃうっ!?」 <br />
　苦笑を浮かべ、悠人はネリーの口元に指を這わせた。そのままクリームを掬い、自然な動作で指を舐める。 <br />
　肌理の細かい、さっぱりとした甘さが舌の上で雪の様に解(ほど)けていく。成程、主役はあくまでヨフアルであると言う屋台の親父の拘りが伝わってくる逸品であった。 <br />
「ゆ、ゆ、ユート様…!?」 <br />
　魚の様に口はパクパクさせ、ネリーは顔を真っ赤にして悠人を見上げていた。 <br />
　そんなネリーの態度に悠人は今更に己が行為の意味に気が付き、顔を真っ赤にして狼狽えたのだった。 </p>

<p></p>

<p>「わ、悪い、ネリー。その、考えも無しにやっちゃったから…。えぇっと、嫌だったよな？ゴメン…」 <br />
「べ、別に良いよっ!?ね、ネリーはく、くくく、く～るな女なんだから、そそそ、そんな事くらいじゃ全然気にしないんだからねっ!? <br />
いつでも大丈夫なんだからっ!!」 <br />
　呂律が回っていない上に、意味不明なネリーであった。 <br />
「むぅ～…」 <br />
　そんな二人を羨ましそうにシアーが眺めていた。口元をなぞってみても、行儀の良いシアーには取ってくれそうなモノは何も付いていない。 <br />
「あ…」 <br />
　だが、シアーは閃いた。悠人の口元。そこに釘付けになった。 <br />
　そう <br />
「ユート様」 <br />
「ん、どうしたんだ？シアー」 <br />
　綺麗にして貰えないのなら <br />
「動いちゃダメだよ？」 <br />
「え？し、シアー…？」 <br />
　れろ、ん… <br />
「―っ!?」 <br />
「あーっ!?」 <br />
　綺麗にしてあげれば良いのだと。 <br />
「えへへ…。これで綺麗になったよ？ユート様」 <br />
　ヨフアルの欠片を舐め取り、シアーは得意そうに笑っていた。悠人の食べているヨフアルの味も共有出来るのだからこれ以上の役得は無いだろう。 <br />
　目の前の悠人の顔が更に真っ赤になった。そんな困った表情の悠人を見て、シアーは無意識に唇を湿らせた。 <br />
(い、今、口の中にっ!?) <br />
　悠人のヨフアルの味が分かって当然のシアーは気付かなかったが、実は悠人もシアーのヨフアルの味が分かってしまっていた。 <br />
　つまり、 <br />
(え？俺、シアーとキスしちゃったのか!?) <br />
　血が上り、思考が吹き飛びそうになる悠人だが、そんな動揺すら許さない程に事態は加速し始めていた。 </p>

<p></p>

<p>｢あ～っ!!シアー、ズ～ル～い～っ!!｣ <br />
｢ず、ズルくないもん。それに、ネリーだってユート様に綺麗にして貰ってたもん｣ <br />
｢それならネリーが綺麗にしないとダメでしょっ!?何でシアーがやっちゃうの!?｣ <br />
｢し、シアーだってユート様に何かしてあげたいんだもん。お返しだとかそんなの関係無いもん。シアーがしたいからするんだもん!!｣ <br />
　ネリーの抗議にシアーは真っ向から反論していた。普段の大人しい性格を考えればそれだけで驚くに十分である。 <br />
　悠人にはもうワケが解らなくなってきていた。 <br />
｢えっと、二人とも。少し落ち着―｣ <br />
｢ユート様は黙ってて!!｣ <br />
｢これはシアーたちの問題なの!!｣ <br />
｢ハイ、スイマセン…｣ <br />
　鎮静化を促そうと試みた悠人の言葉は、二人の一喝に敢え無く打ち砕かれた。 <br />
　両側から腕を取られている悠人としては当事者である気がしないでもないのだが、熱くなった二人には言葉では少し届き辛くなっているのかもしれない。 <br />
　悠人は小さく嘆息し、反目し合っている二人の頭をくしゃくしゃと撫でた。 <br />
｢あぅ…｣ <br />
｢はぅ…｣ <br />
　少し頭が冷えたのか、二人の態度が落ち着いたものになる。そのまま二人の頭を撫で、悠人は宥める様な口調で話掛けた。 <br />
｢まぁ、俺としては二人が仲良くしてくれると嬉しいんだけどな？｣ <br />
｢う～…｣ <br />
｢でも～…｣ <br />
　困惑した表情でネリーとシアーが見上げてきた。その二人の視線に不満ではなく不安を感じ取ったのは悠人の誉れであろう。 <br />
　長年、佳織を不安にさせたくないと努めてきた悠人は他人の負の感情に対して覚える事が鋭くなっていたのかもしれない。 <br />
</p>]]>
      <![CDATA[<p></p>

<p><br />
｢大丈夫だって。何が不安なのかは分からないけど、俺が付いてるからな。って、言ったら不安かな？｣ <br />
｢ユート様…｣ <br />
｢…｣ <br />
　ネリーとシアーの体から力が抜け、悠人はそのまま体を預けてきた二人の背中に腕を回した。 <br />
｢えへへ～♪｣ <br />
｢～♪｣ <br />
　悠人の腕を両手で胸に抱き、二人は悠人の腕の中に納まる様に互いに寄り添った。さっきまでとは違う、嬉しそうな笑顔に悠人は漸く安堵の表情を浮かべた。 </p>

<p>｢いや～、見ててハラハラしちゃったよ。ユート君｣ <br />
｢れ、レムリア!?いつから居たんだ!?｣ <br />
　弾かれる様に顔を上げると、そこには紙袋を抱えたレムリアが立っていた。 <br />
　袋の口から覗いているヨフアルから察するに、恐らく袋の中身はヨフアル。それも相当な量なのであろう。 <br />
　相変わらずのヨフアル中毒である。 <br />
｢えっと、街でネリーちゃんとシアーちゃんと三人で腕を組んで歩いてる所からかな？ <br />
話掛けようとしたんだけど何か気拙そうな雰囲気だったし、でも私もヨフアル食べに来てたからそのまま来ちゃったんだけど…。 <br />
気を悪くしちゃったらゴメンね｣ <br />
｢あぁ、別に俺は構わないんだけど…｣ <br />
　そう言いながらも、悠人の背中にはじっとりと汗が滲み出していた。 <br />
　先程と同じ、否、先程よりも更に重くなっていく空気を悠人は感じていた。発生源は悠人の腕の中であった。 </p>

<p></p>

<p>｢ユート様、この人は？｣ <br />
｢シアーたちの事、知ってるの？｣ <br />
　悠人にしがみ付きながら二人は訝しむ様にレムリアを見上げた。 <br />
　しかし、そんな二人の態度に気を悪くするでも無く、レムリアは寧ろ喜色を浮かべて二人に話し掛けてきた。 <br />
｢ふふっ、ネリーちゃんとシアーちゃんって割と有名なんだよ？双子のスピリットなんて凄く珍しいからね。 <br />
それと、私はレムリア。宜しくね、二人とも｣ <br />
｢う、うん…｣ <br />
｢よ、宜しく…｣ <br />
　そんな二人の態度に悠人は違和感を覚えた。 <br />
｢どうしたんだ？二人とも｣ <br />
　人見知りをしてしまうシアーならまだしも、天衣無縫を絵に描いた様なネリーまでもが萎縮している事に悠人は驚いた。 <br />
(もしかして、レムリアを恐がってるのか？) <br />
　一瞬、そんな考えが浮かんだが悠人は直ぐに思い直した。 <br />
　レムリアの人柄はよく知っているつもりであったし、何より彼女はスピリットに対して偏見を持たない数少ない人間であった。 <br />
　好かれこそすれ、嫌われる理由が無い。悠人自身、レムリアに対する心証は頗る良いとも言えるのだ。 <br />
　しかし、レムリアは何故か場都(ばつ)の悪そうな表情で笑っていた。 <br />
　一体何の負い目を感じてるのか、悠人にはさっぱり分からなかった。 <br />
｢あはは…。まぁ、そりゃあ警戒されちゃうよね～？｣ <br />
｢あぅ…｣ <br />
｢むぅ…｣ <br />
　一応、それで当人たちは納得したらしい。 <br />
｢女の子には色々と秘密があるんだよ。ユート君｣ <br />
　一向に話が見えない悠人に、レムリアは悪戯っぽく笑うのであった。 </p>

<p></p>

<p>「いや～、それよりも、ユート君」 <br />
　意地の悪い笑みを浮かべたレムリアが悠人たちを見下ろしていた。 <br />
「何とも羨ましい状況だね～」 <br />
「いや、これは、その…」 <br />
　耳まで真っ赤になりながら、悠人は言葉に詰まった。改めて顧みれば、二人の女の子を両脇に抱えて仲良く抱き合っているこの状態。 <br />
　軟派だと罵られて、一体どんな申し開きが出来るだろうか。 <br />
「でーとだよ」 <br />
「でーとなの」 <br />
　悠人に擦り寄りながら、ネリーとシアーが同時にレムリアに言い放った。 <br />
　意外と強い二人の口調に悠人は驚いたが、それよりも目の前のレムリアが目を丸くしている方に驚いた。 <br />
　何と言うか、ここまではっきりと言われるとは思っていなかった様である。 <br />
「へぇ、そうなんだ…」 <br />
　それから顎に指を添え何度か小さく頷くと、レムリアはネリーとシアーを眩しそうに眺めた。 <br />
「ふふっ。そっか、デートかぁ…。羨ましいな～」 <br />
「ゆ、ユート様はネリーたちのだからねっ!?」 <br />
「と、取っちゃヤだよぅ？」 <br />
　さっきまでの威勢は何処へやら。二人は悠人にしがみ付くと怯え半分、威嚇半分でレムリアを見上げていた。 <br />
　そんな二人を見て、レムリアは丸でハリオンの様な笑みを浮かべていた。 <br />
「だ、そうだよ？ユート君」 <br />
　レムリアの言葉と視線を受け、悠人は何と無くそこに含まれるものを感じた。 <br />
　尤も、厭な気配ではなくて祝福の野次とでも言う気配である。 <br />
　一秒間、悠人は覚悟を決めた。 <br />
「まぁ、『両手に花』ってヤツかな？」 <br />
　表情は得意気に、内心は羞恥の呵責に耐えながら悠人は二人の頭を撫でた。 </p>

<p></p>

<p>「『リョーテニハナ』？」 <br />
「どう言う意味なの？ユート様」 <br />
　案の定、耳慣れないその言葉に興味津々の二人が見上げてきた。 <br />
「俺の世界って言うか、国の諺かな。『リョウテ』って言うのは両手、『ハナ』って言うのは花って意味。まぁ、そう言う事…」 <br />
「へ～、ユート君にしては言うねぇ」 <br />
　悠人の説明を聞いて、レムリアがクスクスと笑った。 <br />
　からかわれているのだが、そこに下品な雰囲気が漂わない辺りが妙に不思議であった。 <br />
「？」 <br />
「？」 <br />
　理解出来ていない二人に、悠人も少し可笑しくなった。 <br />
「まぁ、さっきネリーが俺が二人のだって言ってただろ？だから『二人は俺のだ』って言ったら、その、言い過ぎかな？」 <br />
　多分、そんな一言で良かったのだろう。ネリーとシアーが大輪の花の様な笑顔を浮かべた。 <br />
　言葉に出さなくても伝わる事はあるが、言葉にする事で伝わったり得られたりするものもあるのかもしれない。 <br />
　そう、今の目の前の二人の笑顔の様に。 </p>

<p></p>

<p>「ううん、良いよっ!!」 <br />
「シアーも～!!」 <br />
　これ以上くっ付き様が無いと思っていたが、それは悠人の思い込みであった。 <br />
「ふ、二人とも、少し苦しい…」 <br />
「あ…」 <br />
「ごめんなさい、ユート様…」 <br />
　両側から全力で抱き締められ、悠人の肺が絞られていた。もう少しで食べた物が戻りそうであった。 <br />
「そっか～、じゃあ仕様が無いね」 <br />
　笑顔で頷くと、レムリアは悠人に向き合った。 <br />
「二人の事末永く宜しくね、ユート君。二人を泣かせたりしたらこの国の王女様が黙ってないからね？」 <br />
「え？ちょっと、レムリア？」 <br />
　口調は軽いが、底の知れないレムリアの言葉の重圧に悠人は狼狽した。 <br />
　勿論、二人を不幸にするつもりなど更々無いが、もしそうなった場合には本当にレスティーナが出てきそうな予感がした。 <br />
　何故だか分からないが、レムリアの言葉を軽んじられない悠人であった。 <br />
「ユート様ぁ～♪」 <br />
「様ぁ～♪」 <br />
　悠人が背中に冷たいものを感じていた一方でネリーとシアーは幸せそうに頬擦りしていたのだった。 </p>]]>
    </content>
  </entry>
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    <title>二章：涙と笑顔</title>
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    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
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    <summary type="text/plain">｢あら、こんなに早く起きてくるなんて珍しいわね｣  　厨房で朝食の準備をしていた...</summary>
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      <![CDATA[<p>｢あら、こんなに早く起きてくるなんて珍しいわね｣ <br />
　厨房で朝食の準備をしていた給仕服のセリアは、居間に現われた二人の姿に少し驚いた。 <br />
｢えへへ～。今日もユート様の所に遊びに行こうかな～って思って｣ <br />
｢頑張って、早起きしたんだよ～｣ <br />
　洗濯物の入った籠を運びながらネリーとシアーが答えた。 <br />
｢そう、偉いわね。じゃあ頑張って洗ってきて。私もそれまでには朝食を作っておくから｣ <br />
｢うん｣ <br />
｢分かった～｣ <br />
　洗い場へと消えて行った二人を見送り、セリアは一人微笑んだ。 <br />
　この前の悠人と街に遊びに行った日から二人はずっと機嫌が良かった。お陰で第二詰所はここ毎日が賑やか過ぎる程だ。 <br />
｢アレ？ネリーさんとシアーさん、今日は早起きなんですね｣ <br />
　帯を締めながら、セリアと同じ給仕服に身を包んだヘリオンが厨房に入ってきた。 <br />
｢お早よう、ヘリオン｣ <br />
｢あ、お早ようございます。セリアさん｣ <br />
　挨拶を済ませ、野菜を刻み始めたセリアの隣でヘリオンは野菜を洗って皮を剥き始めた。 <br />
｢仕事を早く終わらせて、ユート様に会いに行くそうよ｣ <br />
｢そうなんですか～。良いなぁ～｣ <br />
　羨ましそうにヘリオンが呟いた。 <br />
｢あら、今日は私たちも休みなのよ？折角だから、貴女もユート様をデートに誘ってみたらどうかしら？ヘリオン｣ <br />
｢ふわきゃっ!?｣ <br />
　コロン、とシンクから音が鳴った。 <br />
　見ればラナハナ(人参)の先が見事に切り落とされていた。 <br />
　いけない。つい冗談でからかってしまったが、ヘリオンには刺激が強過ぎたのかもしれない。 <br />
　取り敢えず、ヘリオンの指が落ちなかった事にセリアは安堵した。 </p>

<p></p>

<p>「そう言えば、カオリ様が第一詰所に移られてそろそろ一月になるわね」 <br />
「あ、はい。私ももう随分良くして貰ってます」 <br />
　一月前迄はエスペリアやオルファリルを除けば佳織と面識を持っているスピリットは殆どいないと言っても過言ではなかった。 <br />
　一応、ラキオスの重要人物として軍からの情報はあるものの、その内容は似顔絵や背格好などの判別の為の身体的な特徴ばかりであった。 <br />
　エスペリアやオルファリルのお陰で軍からの情報以上の事はある程度手に入れる事は出来ていたが、逆にそれ以上の情報は全くと言って良い程に無かった。 <br />
　それでも、二人からの佳織に関する情報は貴重であり、何よりその内容には驚かされるばかりであった。 <br />
　曰く、ファンタズマゴリアに召喚されるや早々と聖ヨト語を習得してしまう程に物覚えが良い事。 <br />
　フルートと呼ばれるハイ・ペリアの笛の名手である事。 <br />
　可憐で折り目正しく、人徳のある人物である事。 <br />
　列挙すれば枚挙に遑が無かった。 <br />
　そして先月、ラキオススピリット隊は第一詰所に移ってきた佳織に挨拶に出向いたのだった。 <br />
　二人の齎した情報に嘘偽りはなかったが、実際に会えばそれらの情報が佳織についてほんの一部の事しかなかった事を皆は思い知った。 <br />
　同時に、悠人が戦ってきた理由にも納得したのだった。 <br />
　それ程に、佳織は不思議な魅力を備えた少女であった。 <br />
｢カオリ様の為だったんですよね…。ユート様が戦っていらっしゃったのは…｣ <br />
　しみじみと、ヘリオンは呟いた。 <br />
　共に過ごす時間が積み重なる程に、悠人がつくづく争いを好まない人間であると皆は痛感した。 <br />
　誰かが傷付く度、誰かを傷付ける度に悠人は怒り、涙を流した。これまで幾度の悠人の涙を見、これから幾度の悠人の涙を見ていくのだろうか。 <br />
　きっと、悠人の涙が枯れる事は無い。 <br />
　悠人の優しさが枯れる事が無いのだから。 </p>

<p></p>

<p>　涙を流している悠人に気付いたのは、サルドバルドの激戦を制した後であった。 <br />
　初め、味方の誰かが倒されたのかと不安になったが、集まったスピリット隊は誰一人として欠けてはいなかった。 <br />
｢ユート様、どうなされたのですか？｣ <br />
　皆を代表して、静かに涙を流す悠人にエスペリアが言葉を掛けた。 <br />
｢死んじまった、いや、殺したんだ…｣ <br />
　誰を、とは言わなかった。ここが戦場であるだけに、その誰かが他ならない敵スピリットであった事は明白であった。 <br />
　彼の体から立ち昇っている金色のマナ。恐らく、それが全ての結果なのだろう。 <br />
　互いに殺し合い、そして殺し、殺された。 <br />
　何度経験したかを忘れる程、当たり前でよくある事だった。 <br />
｢死にたくない、って必死だった。 <br />
降伏するなら殺さないって言ったけど、目の前で散々仲間が斬られてるのに、そんな事言われても信じられるわけ無いよな？ <br />
逆に凄く怯えてさ、俺じゃ斬り伏せる事しか出来なくて…｣ <br />
　誰も何も言えず、只悠人の言葉を聞いていた。 <br />
｢治そうとしたけど、駄目だった…。ハハッ、自分でやった癖に何のつもりなんだろうな…｣ <br />
　屠ったスピリットが倒れていたのだろう、悠人は大地の一点を見詰めていた。 <br />
｢何で…!!｣ <br />
　悠人は叫んだ。 <br />
｢何で『ありがとう』なんだよっ…!?助けられなかったのに、俺が殺したのにっ…!!｣ <br />
　憎んでくれれば良かった。怨嗟の声でも良かった。 <br />
　それ以上に、斬り殺した敵スピリットの最期の言葉が何よりも悠人には残酷過ぎた。 <br />
　消えていった微笑みが本物だと解ってしまった事が尚更に辛かった。 <br />
｢ユート様。何度も申し上げた通り、私たちスピリットは戦う為に存在しています｣ <br />
　悠人に歩み寄り、エスペリアが言葉を紡いだ。 </p>

<p></p>

<p>｢敵として出会っていれば、私たちもユート様と剣を交えていました…｣ <br />
　相手が誰であろうと、戦えと命じられたスピリットは戦うしかない。 <br />
　立場が違えば、今の仲間も敵同士だったのだ。 <br />
｢ユート様、戦場では一瞬の躊躇が死を招きます｣ <br />
　解っていた。死ぬわけにはいかない。 <br />
　この世界で佳織を守れるのは悠人だけなのだから。 <br />
｢確かに、殺す事を躊躇うのは弱さだと思う…｣ <br />
　血を吐く様に、悠人は声を絞り出した。 <br />
｢でも、誰かを殺せる事が強さなんかじゃない｣ <br />
　弱くても良い、平然と誰かを殺す事が出来るくらいなら。 <br />
　殺しの免罪符など、存在しない。してはならないのだ。 <br />
｢ユート様…｣ <br />
　隣に立ったエスペリアが、真っ直ぐに悠人を見ていた。 <br />
｢私たちはユート様の下に集う事が出来ました。それは私たちにとって幸運な事でした…｣ <br />
　悠人がマナに還したスピリットを想い、エスペリアは少し遠い目をした。 <br />
｢ですが、同時に不幸でもありました…。私がマナに還る時、その相手はユート様ではないのですから…。 <br />
私は、ユート様がマナに還されたスピリットを少し羨ましく思います…｣ <br />
　エスペリアが浮かべた表情に、悠人は驚いていた。 <br />
　それは今し方見せられたあの微笑みで、そこに紛れも無い羨望が悠人には見て取れた。 <br />
｢私たちの歩む道は血に染まっています。そして、その先はバルガ・ロアーに繋がっているのでしょう…｣ <br />
　空を飛ぶ鳥が翼を持って生まれてくる様に。 <br />
　肉を食む獣が爪と牙を持って生まれてくる様に。 <br />
　剣を持って生まれてくるスピリットは戦う為に生まれてくる。 <br />
　殺す為に生まれてくるのだ。 </p>

<p></p>

<p>　そんな業を背負うスピリットたちにも救いがあるとすれば、それは悠人の様な人間がいてくれる事であろう。 <br />
　出会える事であろう。 <br />
　そして、涙を流してくれる事であろう。 <br />
　たとえそれが殺された結果だったとしても、作業の様に殺されるくらいならいっそ悠人に殺された方が良い。 <br />
　スピリットでも、こんなに優しい人間が想ってくれる事を知って逝けるから。 <br />
　悠人の心に触れる事が出来るから。 <br />
｢エスペリア…｣ <br />
｢そんな顔をなさらないで下さい、ユート様｣ <br />
　悠人の困惑を、エスペリアは微笑んで受け止めた。 <br />
｢死ぬ覚悟は出来ています。ですが、ユート様は私たちに生きろと願って下さいました。ならば、私たちは最後まで生きようと思います｣ <br />
　死ぬ事が恐い。漠然とした恐怖だったそれが、今は途轍も無く恐い。 <br />
　悲しむ誰かがいてくれるから。 <br />
　共に生きたいと思うから。 <br />
｢そっか…。サンキュ、エスペリア…｣ <br />
｢はい、ユート様…｣ <br />
　少し元気が出たのか、悠人が微かに笑っていた。 </p>

<p></p>

<p>｢ぐすっ、良い話ですよね…｣ <br />
　野菜を刻みながら、ヘリオンが滂沱の涙を流していた。 <br />
｢ヘリオン？テノルグ(玉葱)が塩味になるからその辺で…｣ <br />
｢あ、す、スイマセン…｣ <br />
　目元を拭い、ヘリオンが改めて野菜を刻み始めた。 <br />
｢でも、本当にユート様は争いがお嫌いなんですね…｣ <br />
｢えぇ、あれじゃ軍人は勤まらないわ…｣ <br />
｢ですけど、私はユート様が隊長で良かったと思いますっ｣ <br />
　珍しく断言したヘリオンにセリアが少し意地悪く笑った。 <br />
｢あら？軍人に向かないのは否定しないのね｣ <br />
｢はい…。ユート様は優し過ぎますから…｣ <br />
　セリアとヘリオンは肩で溜息を吐いた。 <br />
　悠人の優しさに、自分たちは報いているだろうか。 <br />
　あの鈍感な少年は、自分が優しい事も優しくしている事も気付いていないのだろう。 <br />
　それが普通だと想っている悠人だから、見返りなんて求めてくるわけがなかった。 <br />
｢カオリ様と一緒に過ごされて、ユート様もやっと安心なさっているんでしょうね…｣ <br />
｢そうね、ユート様からカオリ様の話は良く聞かされてたわ｣ <br />
　得意気に佳織の事を語っていた悠人の佳織への溺愛ぶりを思い出し、二人は小さく笑った。 <br />
｢セリアさん、私たちもお二人に会いに行きませんか？｣ <br />
｢そうね。これからまだまだ長い付き合いになるわけだし、何か包んで行きましょう｣ <br />
｢はい｣ <br />
　朝の第二詰所に、美味しそうな匂いが漂い始めた。 <br />
</p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>二章：その胸に灯るもの</title>
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    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
    <issued>2008-07-06T10:16:11+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">「えぇ～っ!?」  　第一詰所の玄関を潜って居間へと続く廊下。  　その扉越しに...</summary>
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      <![CDATA[<p>「えぇ～っ!?」 <br />
　第一詰所の玄関を潜って居間へと続く廊下。 <br />
　その扉越しに聞こえてきた少女の絶叫に、居間に入ろうとしたネリーとシアーは思わず身を竦ませた。 <br />
「か、カオリ様なのかな？」 <br />
「そうだと思うけど…」 <br />
　声を抑え、互いに目配せをした二人はそっと聞き耳を立てた。 <br />
　扉越しとは言え、人間のそれより遥かに優れた五感を持つスピリットにとって居間の会話を拾う事など簡単な事である。 <br />
　幸いな事に、エトランジェの二人はハイ・ペリアの言葉ではなく聖ヨト語で会話をしていた。 <br />
　悠人が佳織と呼んでいる事から悠人と会話している相手は佳織で間違い無いのだろう。 <br />
　一体どんな話をしているのだろうか。 <br />
　二人の会話に加わろうとしたネリーとシアーが扉に手を掛け様として、 <br />
「で、お兄ちゃん。お嫁さんにするなら誰が良いの？」 <br />
「……」 <br />
「……」 <br />
　二人の動きが凍りついた。 <br />
「ユート様の…」 <br />
「お嫁さん…」 <br />
　口に出したその言葉を二人は反芻していた。 <br />
　街で何度か見掛けた家族連れの幸せそうな光景。 <br />
　その光景を自分と悠人に置き換えてみると、それはとても甘くて温かいものだった。 <br />
「ほわ～♪」 <br />
「ふえ～♪」 <br />
　想像した幸せは想像以上に幸福なもので、紅潮した頬を両手で押さえ、二人は蕩けた表情でイヤイヤと頭を振った。 <br />
　ともすれそのまま大空に飛んで行ってしまいたかったが、流石にそこは理性が勝っていた。 <br />
　何としてでも悠人の返答を拝聴せねばならないのだから。 <br />
「う～ん…」 <br />
　思案に暮れている悠人の声を、二人は固唾を呑んで聞き入っていた。 <br />
　悠人は今、一体誰の事を思い浮かべているのだろう。 </p>

<p></p>

<p>「「あっ…!!」」 <br />
　ふと気が付いた。 <br />
　悠人が自分たちを選んでくれなかったらどうなるのか。仮に選んでくれたとしても、自分たちの内のどちらを選ぶのか。 <br />
　自分だけ幸せにはなれない。少なくとも、目の前の半身が悲しんでいれば絶対に。 <br />
　いずれにせよ、悠人が誰かを選ぶ以上、残りの全員は選ばれないのだ。 <br />
「いないねぇ…」 <br />
　悠人の言葉に、二人は大きく息を吐いた。 <br />
　果たしてそれは安堵かそれとも落胆なのか、或いはその両方か。それは本人たちにも分からなかった。 <br />
「えぇ～？皆凄く綺麗で良い人たちばかりなのに」 <br />
　悠人の答えに佳織は残念そうな、そして少しだけ安心した笑みを浮かべた。 <br />
　そんな義妹の反応をどう判断すれば良いのか。分からない悠人には只苦笑するしかなかった。 <br />
　しかし、佳織の言った通り、自分の周りには魅力的な女性が多いと悠人は思った。 <br />
　スピリット隊に加えてレスティーナ女王までも候補に挙げられているのには驚いたが、容姿も能力も性格もどれもが全て申し分無いだろう。 <br />
　個性的ではあるが、それでも理想的であると言えた。 <br />
　確かに、誰かに惚れてしまっても不思議では無いのかもしれない。 <br />
「でも、今までそんな事考えた事も無かったしなぁ…」 <br />
　今日と明日を生きる為に必死だった悠人には恋愛事に関心を向ける余裕など存在していなかった。 <br />
　その点で言えばスピリット隊の皆も同じなのだから、お互いに異性として意識する暇など無かったのかもしれない。 <br />
　そう考えて、悠人は成程と一人で納得していた。 <br />
「まぁ、男と女が一緒に居れば必ず付き合うってワケでもないしな。 <br />
そりゃあ仲が良くなる事はあるかもしれないけど、惚れるとかそう言うのとは違うんじゃないか？」 </p>

<p></p>

<p>「それはそうだけど…」 <br />
　今一つな表情の佳織であったが、この手の話題は長引かせればその分ややこしくなると経験で知っている悠人は出来るだけ素直な感想を吐くしかなかった。 <br />
　変に照れたり隠したりすると藪蛇に為りかねないのが恋愛の話題の危うさなのである。 <br />
「別に、俺は仲間や家族の絆が恋人の絆に負けてるなんて思わないけどな。 <br />
それに、俺は今のままでも充分だと思うし、特に恋人が欲しいとは思ってないよ」 <br />
「あはは。お兄ちゃんらしいけど、それじゃ結婚なんて出来ないよ？」 <br />
　悠人の言葉に、佳織は少し困った笑みを返した。 <br />
　若しかすると、妹である自分や幼馴染との長年の付き合いで悠人は異性に対して恋愛感情を抱き難くなっているのかもしれない。 <br />
　更に付け足すのなら、恐らく悠人には好みの女性のタイプは無いと思われた。 <br />
　如何に魅力的であっても悠人の心を射止める直接的な原因には無り得ない。 <br />
　惚れたから惚れた。悠人の恋とは多分そんなものなのだろう。 <br />
　一体、こんな悠人とどうやって恋に落ちれば良いのだろうか。未だに出ないその答えに、佳織は少し切なくなった。 <br />
「いや、そんなに俺の将来って心配なのか？」 <br />
　佳織の雰囲気の変化を自分への心配と受け取った悠人が気拙そうに頬を掻いていた。 <br />
　そんな悠人を見てしまっては佳織は苦笑するしかない。 <br />
　全く、大好きな兄は何処まででも疎いのだった。 <br />
「でも、やっぱり私としてはお兄ちゃんには素敵な恋をして欲しいな」 <br />
「う～ん…。そんな事言われても、やろうと思って出来るものじゃないしなぁ…」 <br />
「うん。だから、私はお兄ちゃんのペースで良いと思うんだけどね」 <br />
「そうだな、まぁ、のんびり行くさ。今はそれよりも気になる事があるし」 <br />
「気になる事？」 <br />
　佳織の言葉に、悠人ははにかむ様な表情で返してきた。 </p>

<p></p>

<p>「目が離せないって言うか、危なっかしいって言うか…。いや、頼りにしてるし、どっちも俺よりずっと強いんだけどな？」 <br />
「どっちも？」 <br />
　要領を得ない悠人の説明に佳織は首を傾げ、そんな仕草に悠人も自分の言葉の足りなさに気付いた。 <br />
「佳織も絶対覚えてると思うけど、ネリーとシアーって言うそっくりな双子だよ」 <br />
　その言葉に佳織が得心の表情を浮かべた。 <br />
「うん、ちゃんと覚えてるよ。初めて挨拶した時は私もびっくりしちゃったし。二人ともすっごく良く似てたんだもん」 <br />
「それでさ、何か色んな意味で放っておけないと言うか、まぁそんな感じなんだよ」 <br />
「へぇ」 <br />
　悠人から始まった二人の話題に佳織は思わず聞き入っていた。 <br />
　何より、悠人がここまで誰かを気に掛けていると言う事が珍しかったし、悠人が二人をどう思っているのか興味が湧いてしまったのだ。 <br />
「今じゃそうでもなくなったんだけど、最初は本当に危なっかしくて冷や冷やしてたな。 <br />
まぁ、俺もエスペリアに心配掛けてたから人の事言えないけど…」 <br />
「あれ？お兄ちゃん、その手の傷…」 <br />
　佳織に指摘され、悠人は自分が右手の甲に刻まれた傷を眺めていた事に気が付いた。 <br />
　もう消える事の無い右手の傷。 <br />
　それを改めて眺めながら悠人はこの傷と共に刻んだ記憶を思い出していた。 <br />
「あぁ、これか？そうだな、まぁ、これがきっかけで二人と良く組む様になったのかもな」 <br />
　不条理な世界。愚かな人間たち。使い捨てられる数多の命。悠人にはどれもこれもが受け入れ難い事ばかりであった。 <br />
　その中で悠人が一番打ちのめされたもの。それは悲しみに暮れる二人の姿だった。 <br />
「絶対守るって決めたんだ。戦いとかだけじゃなくて、もっと色んなものからも…。 <br />
佳織や他の皆もそうだけど、俺は俺の大事な人たちが幸せになれない世界なんて間違ってると思う」 <br />
　守りたいものは、皆の笑顔だった。その為なら、いくらでも頑張れると悠人は思えた。 </p>

<p></p>

<p>「だからさ、今は恋とかそう言うのより守りたいって事で精一杯なんだ」 <br />
「そっか、そうだね…。私もそれで良いと思うよ、お兄ちゃん」 <br />
　少しだけ眩しそうに、佳織は悠人を眺めた。 <br />
　二人を話す時だけに見せる悠人の表情。 <br />
　初めて見たその表情は思っていたよりもずっと優しく、温かく、そして微かに胸を刺した。 <br />
　その痛みを、佳織は嬉しさの後ろにそっと押し込めた。 <br />
　妹として、女性として、悠人の幸せを願っていたかった。 </p>

<p>「………」 <br />
「………」 <br />
　手の甲の傷を眺めながら、ネリーとシアーは悠人の話を聞いていた。 <br />
　悠人の言う通り、あの時から二人は悠人の傍にいる様になったのかもしれない。 <br />
　否、いたいと思う様になったのだった。 <br />
　気が付けばいつも悠人を探し、見付ければ彼の元へ駆けていった。 <br />
　会えない時はいつも悠人を想い、会えない程に想いが募っていった。 <br />
　傍にいてくれるだけで嬉しくて、撫でてくれればその日はずっと幸せな気分になれた。 <br />
　もうどう仕様も無いくらい、二人の心の中は悠人で一杯になってしまっていたのだ。 <br />
　痛い程に他の皆とは違う、悠人だけへの『好き』。 <br />
　それに気付いてしまった。 <br />
「恋…、なのかな？」 <br />
「分かんないけど、そうだと良いな…」 <br />
　佳織の言っていた恋とはこの気持ちなのだろうか。 </p>

<p></p>

<p>　悠人に恋をしている。 <br />
　そう思うと、二人に堪らない嬉しさが込み上げてきた。 <br />
　悠人に恋をした事が二人にとっては他の何よりも誇らしい。 <br />
　好きで好きで堪らなくて、悠人に対してこんな気持ちになれる事が本当に嬉しくて仕方が無かった。 <br />
「えへへ～♪」 <br />
「ユート様ぁ～♪」 <br />
　恋に対する憧れも興味も知識も微塵も無い。 <br />
　それでも、ネリーとシアーは一直線に悠人に惚れてしまっていた。 <br />
　突発的で修正の利かない、全身全霊の恋。 <br />
　恐らく、恋が出来る最も幼い精神で二人は悠人に惚れてしまったのだ。 <br />
　だが二人は、間違い無くどう仕様も無く本物の恋に落ちていた。 <br />
「あの～、さっきからお二人とも何をなさっているんですか？」 <br />
「盗み聞きって言うのは、あまり感心しないわね」 <br />
「「～っ!?」」 <br />
　背後からの声に、ネリーとシアーの背筋が一気に伸びた。 <br />
　と、 <br />
「わ、わ、わっ!?」 <br />
「ふゃっ!?」 <br />
　体を預けていた扉が開き、二人は縺れ合いながら居間へと転がり込んでいた。 <br />
「や、やっほ～？ユート様、カオリ様…」 <br />
「あ、遊びに来たよ～…」 <br />
　突然の二人の登場に悠人と佳織は目を丸くし、そんな二人にネリーとシアーが愛想笑いを浮かべていた。 <br />
　そしてその開いた扉の向こうでは、狼狽えるヘリオンの隣で米噛みを抑えて瞠目するセリアが立っていた。 </p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>4章　刃と炎の向かう先</title>
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    <modified>2008-07-12T01:49:31Z</modified>
    <issued>2008-07-07T10:19:18+09:00</issued>
    <id>tag:etranger.s66.xrea.com,2008:/ss/long//3.1478</id>
    <created>2008-07-07T01:19:18Z</created>
    <summary type="text/plain">「ロティ、ちょっといいか？」 「はい、何でしょう?」 また今回もなんとかツェナを...</summary>
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    <dc:subject>スピたん～幻のナナルゥルート～</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/">
      <![CDATA[<p>「ロティ、ちょっといいか？」<br />
「はい、何でしょう?」<br />
また今回もなんとかツェナを目的地につれてゆき、休憩中の僕を呼び止めたのはコウインさんだった。<br />
ヨーティアさんがエーテルジャンプの改造版とかで助っ人として呼んでくれて<br />
僕達が魔物の大群に襲われて危うく全滅しかけた所を助けてもらったのだが、<br />
その戦いぶりを見てやはり自分がまだまだ未熟という事を痛感させられてしまった。<br />
少しみんなから離れたところに移動し、コウインさんが口を開いた。 <br />
「･･･ナナルゥの事、気付いているのか?」 <br />
流石にコウインさんは鋭い。再会して少ししか経ってないのにナナルゥの様子に気付いていたらしい。 <br />
「はい。実は･･･」今までの開拓者との遭遇の経緯を簡単に話した。 <br />
「･･･それでナナルゥは今迷っています。だけどそれはナナルゥが自分の感情に気付いて戸惑っているからです。 <br />
僕としては何とかナナルゥなりの答えを出せるように影ながら支えたいと思っています。」 <br />
「なるほど。いや、気付いているならいいんだ。･･･そうか、あのナナルゥがな･･･」 <br />
そう言ったコウインさんの顔は意外そうで、でも嬉しそうだった。 <br />
「やるじゃないかロティ。ナナルゥがそこまで変わったっていうのはすごい事なんだぜ? <br />
･･･この数年で大分ましになったとはいえ、戦争の時のナナルゥは感情が読めないというよりよ、 <br />
感情がないって感じだったんだ。本当に･･･勝手に動く人形みたいだったな･･･。」 <br />
光陰さんの顔に苦いものが浮かぶ。僕はその時の事をナナルゥから聞いたけど見たわけではない。 <br />
でも昔のナナルゥがどんなものであろうと今は違うはずだ。 <br />
「今のナナルゥは迷っているとはいえ、それはナナルゥが望んでいた感情ってもんを <br />
取り戻してきているって事だ。これもロティのおかげって事だな。」 <br />
「いえ･･･僕が何かしたのではなく、ナナルゥが頑張った結果ですよ。」 <br />
「いや、それだけじゃないだろ?それも当然あるだろうけどやっぱり愛の力のおかげだろ」 <br />
「･･･は?」･･･何か変な方向に話がずれてる気がする。 <br />
「なんだ?そっちには気付いてなかったのか?俺でもすぐわかったのによ。」 <br />
「え、ナナルゥの事で他に何かあるんですか?」 <br />
「本当に気付いていないのか･･･。もうみんなも気付いてると思うけどよ、ナナルゥはお前に惚れてるぞ」 <br />
「･･････はい?あ、あはははははまさかそんなことナナルゥが」 <br />
「もしかしたらって思った事はないのか?考え過ぎだなと思って気付かないようにしてたんじゃないか?ん?」 <br />
･･･確かにもしかしたらっていうのは何度かあった。まさか、ナナルゥが僕を? <br />
「･･･ほ、本当に、ですか?」 <br />
「おう、間違いないな。少なくとも隊長に対する信頼なんてもんじゃないぜ。 <br />
･･･で、どう思う?まんざらでもなさそうだな?」 </p>

<p></p>

<p>「･･･そりゃ、もちろん嬉しいですよ。･･･本当にそう思ってくれてるなら、応えたいなって思います。」 <br />
「そうだろそうだろ。そういえばなんだかんだで付き合い長いし不思議って訳でもないんだよな。 <br />
ヘリオンちゃんやネリーちゃん達と上手くいくんじゃないかと思ってたから俺としてはありがた･･･ <br />
いやいや少し意外ってのに変わりはないけどな。」 <br />
･･･何か不穏な台詞が聞こえた気がするが気にしないでおこう。気にしたら負けな気がする。 <br />
ナナルゥの事はもちろん嫌いではない。いや、むしろ好き･･･なのだろう。 <br />
ナナルゥは文句なく美人だし。怜悧な顔の奥にある優しくて一生懸命な内面を知って。 <br />
それでいて自分の事を頼ってくれてるなら（冗談の師というのはどうかと思うが）気にならない筈がなくて。 <br />
ナナルゥはそういう色恋沙汰に関心がなさそうだし、できるだけ意識しないようにしていたけど、 <br />
実はナナルゥも僕を好きでいてくれてる?それって････････。 <br />
･･････。 <br />
･･･わぁお。 <br />
「隊長、コウイン様。」 <br />
「な、ナナルゥ!?」 <br />
いつの間にかナナルゥが真後ろに立っていた。 <br />
「皆、休息は十分とりました。そろそろ方舟に帰還するべきではないかと提案しますが。」 <br />
「え、あ、ああそうだね！な、ナナルゥは今の話聞いていたのかな!?」 <br />
「･･･?いえ、特には･･･」 <br />
「そ、そっか･･･」ほっとしたけど少しがっかり･･･かも。 <br />
「え～と、じゃあみんなのとこに戻ろうか。･･･!」 <br />
･･･感じた。あのときの殺気! <br />
「･･･ロティ!!」 <br />
「わかってます!!」 <br />
コウインさんの声に合わせて同時に防御のオーラを展開する。 <br />
瞬間、巨大な炎の塊が襲い掛かる。 <br />
「ちっ!」 <br />
「うああっ!」 <br />
オーラの壁を感じさせない凄まじい熱気と衝撃が全身を貫く。 <br />
しかし、コウインさんの加勢のおかげかどうにか炎自体は防ぎきった。 <br />
「･･･耐えたか。まあそうでなくば興醒めというもの。」 <br />
「!!･･･あ･･･!」 <br />
「っ･･･また･･･エンレイン!」 </p>

<p></p>

<p>炎が晴れた後には炎の剣の切先を向けて不敵な薄笑いを浮かべたエンレインの姿があった。 <br />
「･･･あれが言っていた開拓者って奴か。」 <br />
「見ない顔だな。･･･かなりできるようだが、貴様と剣を交えるのも悪くなさそうだ。」 <br />
･･･どうする?コウインさんがいるから3人でなんとかなるかもしれない。 <br />
しかしみんなはそう離れてないし、呼べばすぐに来てくれるだろう。 <br />
一人抜けてみんなを呼ぶ方がいいかもしれない。そう考えていた矢先― <br />
「･･･っわああああああああああああああああーーーっ!!!!」 <br />
「っ!ナナルゥ!?」 <br />
突如、悲鳴のような雄叫びを上げてナナルゥがエンレインに切りかかった。 <br />
いつもの洗練された動きは見る影も無い、型も何もない隙だらけの大振りの太刀筋。 <br />
「む･･･」 <br />
エンレインは片手で難なくナナルゥの剣を受け止め、そのまま強引に剣を振り切った。 <br />
甲高い金属音とともにナナルゥの剣が弾かれ、身体ごとこちらに吹き飛ばされて来る。 <br />
あわててナナルゥを受け止めたがナナルゥは僕に気付いていないらしく、そのまま魔法の詠唱を始めた。 <br />
「上位世界の御遣いよ、第一の喇叭を吹き鳴らせ!獄焔の驟雨となりて地を焼き払え!フレイムシャワー!!」 <br />
詠唱を終え、大量の炎の礫がエンレインに降り注ぐ。対してエンレインは特に動じた様子もなく剣を頭上に掲げる。 <br />
すると降り注ぐ炎が不可視の壁にぶつかり、一つもエンレインに当たる事なく消え失せた。 <br />
「ナナルゥ!どうしたの!?」「･･･るな」 <br />
ナナルゥらしくないあまりに無鉄砲な行動に疑問を感じたが、そこでやっと気付いた。 <br />
ナナルゥの身体が震えている事に。その顔は恐怖に歪み、青ざめている事に。 <br />
「来るな･･･来るな来るなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるな <br />
くるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるな来るなあぁっ!!」 <br />
「!?」 <br />
まずい。ナナルゥの様子は普通じゃない。恐慌を起こしかけて目の焦点も定まっていない。 <br />
まさか、あの時の事を思い出しているのか? </p>

<p></p>

<p>「･･･怖いなら、迷うなら退いていろ。今の貴様に興味は無い。」 <br />
エンレインのナナルゥを見る目はつまらなそうな、冷めた眼差しだった。 <br />
「大方剣に呑まれる事に怯えているのだろう。そんな状態で無理に戦えば本当に心が壊れるぞ。」 <br />
「ナナルゥ、落ち着いて!少し、下がっていたほうがいい!」 <br />
「･･･嫌です･･･私･･･は、戦わないと、みんなを、守る･･･!」 <br />
「守る、か。違うな。貴様はそう思う事で空っぽの自分を肯定したいだけだろう。」 <br />
「なっ･･･!」 <br />
瞬間、物凄い怒りが込み上げてきた。一体、何を言いだすんだ? <br />
「貴様も気付いているのだろう。貴様は単に戦い以外にできる事がなく、 <br />
せめて戦う事に守るという意味を持たせたいだけだと。 <br />
そうすることでそれ以外何もない自分の存在を他の者に認めて欲しいだけだと。」 <br />
「～っ!う、ああ･･･!」 <br />
ナナルゥは身を震わせ、涙すら流し、それでも、動く事ができなかった。 <br />
「･･･やはり動けんか。つまらぬものだな。」 </p>

<p>「･･･黙れ!!」 <br />
声を荒げ、真正面からエンレインの剣に『紡ぎ』の刃を叩きつけた。 <br />
エンレインは多少面食らったようだがすぐに体制を整え、刃を押し返してくる。 <br />
それ以上無理に抵抗せずに後ろに飛びのき、呼吸を整えて昂ぶった心を静める。 <br />
「･･･貴方が、ナナルゥを侮辱するな。そんな資格は誰にもない。」 <br />
「違うとでもいいたいのか。そこの女が戦場での正しい有り方だと思うのか?」 <br />
「正しい、とは言えないかもしれない。だけど、ナナルゥを間違ってるなんていわせない。 <br />
ナナルゥの事を何も知らない貴方にナナルゥをそんな風に言わせない!」 <br />
別に自分がナナルゥの事を知っていると自惚れるつもりはない。 <br />
だけど、僕はナナルゥが戦い以外に目を向けようとしている事を知っている。 <br />
いつもみんなの事を考えているナナルゥを知っている。 <br />
自分自身の感情で、意思で、自分だけの答えを出そうとしている事を知っている。 </p>

<p></p>

<p>「ナナルゥは今、やっと迷う事ができるようになった。そうする事さえ、今までできなかった。 <br />
戦いで迷う事は強くはないかもしれない。だけど弱いんじゃない。愚かなんて、間違っているなんて認めない! <br />
仲間を守ると言う事を、誰かのために何かしたいという思いをそれだけしかできないなんて言わせない! <br />
ずっと頑張ってきてそう思えるようになったナナルゥを馬鹿にする事こそ間違っている!!」 <br />
そうだ。ナナルゥの頑張りを見ていない、ナナルゥの想いを知らないこいつにナナルゥの事を否定なんてさせない。 <br />
迷いや恐怖と言うものを戦いの邪魔なんて切り捨てる必要なんか絶対にない。 <br />
甘かろうが愚かだろうが青かろうがこの思いは捨てない。 <br />
捨ててなんか、やらない。 <br />
何の迷いも躊躇いもなく『強い』よりは、僕もこんな風に『弱く』ていい。 <br />
迷いを持って、弱さを抱えて、想いや理想を捨てず、それでも負ける事がないと言うなら。 <br />
それが強さでなくてなんだと言うのか。 <br />
「貴方が貴方の強さでナナルゥの思いを否定するなら、僕は僕の強さで貴方の強さを否定する!!」 <br />
「･･･上等だ!その強さ、存分に俺にぶつけてくるがいい!!」 <br />
エンレインが歓喜に震え、それに呼応して炎の剣からの熱波がこちらに伝わってくる。 <br />
「･･･コウインさん。僕一人でやります。みんなを、呼んできてください。」 <br />
本当ならコウインさんが加勢してくれた方がいいのだろう。だけど、これだけは譲りたくなかった。 <br />
「･･･あまり褒められることじゃないが･･･いいだろう。すぐ戻るから隊長として勝手に死ぬんじゃないぞ。」 <br />
「ありがとうございます。ナナルゥ、大丈夫だから･･･下がってて。」 <br />
「っ･･･駄目です･･･隊長･･･!」 <br />
「僕も、みんなを守りたい。誰も死んで欲しくない。･･･その中には当然、ナナルゥも入っているんだから」 <br />
一度だけナナルゥのほうに振り返り、そして僕はエンレインに再び斬りかかった。 </p>

<p>動けない。剣では到底敵わない。魔法を使えばロティ様を巻き込んでしまう。 <br />
それ以前に、自分の身体の全てが動く事を拒否していた。 <br />
別にあの男の言葉のせいで動けないわけではない。 </p>

<p></p>

<p>（守る、か。違うな。貴様はそう思う事で空っぽの自分を肯定したいだけだろう。 <br />
貴様は単に戦い以外にできる事がなく、せめて戦う事に守るという意味を持たせたいだけだと。） <br />
そんな事はわかっていた。わかりきっていたはずだった。 <br />
今はそれでもかまわないと思っていた。自分がこれからの世界に必要でなくとも、 <br />
せめてこれからの世界に生きる者達が暴力に晒されないようにと、そう思っていた。 <br />
それ以外の自分の空ろな部分は、後で少しずつ満たしていけばいいと。 <br />
だけど、脳裏にあの夢が蘇る。自分が、仲間を斬り刻み、焼き払うあの悪夢が。 <br />
今力を振るえば、それが現実のものになるのではないか。実際に自分はそうなりかけたのだ。 <br />
こういう時の為に、力を望んだのに。 <br />
誰かに降りかかる暴力を自分が肩代わりできるように強く有りたいと願ったのに。 <br />
この身体は震えが全く止まってくれない。頭に浮かぶ悪夢はちっとも消えてくれない―! </p>

<p>「はああぁっ!!」 <br />
エンレインの左からの一閃を上体をそらしてかわす。しかし避けたところに左手の義手が飛んできた。 <br />
「がっ!」 <br />
金属の拳を顔面に受けてしまい、怯んだ瞬間にエンレインの剣が右から迫って来ている。 <br />
僕はその剣を柄尻からも刃を伸ばして受け止め、そのままもう片方の刃で斬りつけようとしたが <br />
「ふんっ!!」 <br />
「うあ･･･っ!」 <br />
瞬間、エンレインの剣が爆ぜて炎が僕に迸る。 <br />
たまらずに後方に飛び、着地と同時に間合の外からの攻撃を放つ。 <br />
「･･･一貫、護剣の段、空割の型!」 <br />
「四象剣、風象の刃!」 <br />
互いの剣から放たれた不可視の刃がぶつかり合い、相殺する。 <br />
「また腕を上げたな。だが･･･残念ながらまだ遠いな。」 <br />
一見すれば互角に見えるが、こちらは常に全力だというのにエンレインはまだまだ余力がある。 <br />
強い。くやしいが僕より体力も剣技も数段上だ。 <br />
かといって負けれない、負けてなんかやれない。 <br />
（･･･長引けばもたない。それなら―!） </p>

<p></p>

<p>「･･･『紡ぎ』、いくよ!」 <br />
『紡ぎ』に力を込め、刃を限界まで強化する。･･･危険だが、試す価値はある! <br />
「ほう･･･」 <br />
エンレインも僕の動きに合わせて刃を受け止める構えを取る。 <br />
「っはああああああああああああああああーーっ!!」 <br />
裂帛の気合とともに大上段に構えた『紡ぎ』をエンレインの右肩を狙って振り下ろす。 </p>

<p>しかし、刃のぶつかる音はしなかった。 <br />
「何!?」 <br />
エンレインの目が驚愕に見開かれる。 <br />
僕は『紡ぎ』を振り下ろしきっていたが、エンレインの身体は斬れていない。 <br />
なぜなら剣がぶつかる寸前に僕は『紡ぎ』の刃を消したのだ。 <br />
まともに振り下ろしたとしてもエンレインには弾き返されただろう。 <br />
一歩間違えれば僕が斬られていただろうが、成功した。 <br />
エンレインは全力で刃を打ち返そうとしたために下腹ががら空きになっている。 <br />
（もらった―!） <br />
紡ぎを腰溜めに構え、刃を戻すと同時に本命の突きを繰り出す― </p>

<p></p>

<p>瞬間、視界がブレた。 <br />
「っあ―!?」 <br />
気付くと僕は横からの衝撃に吹き飛んでいた。 <br />
あわてて立ち上がり、腰の辺りの鈍痛を堪えながらエンレインのほうに向き直ると <br />
エンレインは顔を歪めてわき腹を押さえていた。血が多少出ているようだが深手というほどではない。 <br />
「くっ、そぉっ･･･!」 <br />
かわされた。おそらく腰を捻ると同時に僕を蹴り飛ばして致命傷を免れたのだろう。 <br />
『紡ぎ』を構えなおした分だけ攻撃が遅れたのだ―! <br />
「くっ･･･見事。だが、惜しかったな。」 <br />
「･･･はあっ、が、はあぁっ･･･!」 <br />
『紡ぎ』の力を無理に使いすぎ、凄まじい疲労感がこみ上げてきた。 <br />
生半可な気合ではエンレインにフェイントを見破られてしまうと思ったのが仇になった。 <br />
「ふっ･･･まだこんなもので死んでくれるなよ!?」 <br />
「っ!!」 <br />
エンレインの一撃を防げたのはただの偶然だった。反射的に頭上に剣を掲げたらそこに剣が来ただけだ。 <br />
だけど身体に力が入らず押し返せない。剣を逸らしても二の太刀をかわせそうにない。 <br />
･･･ダメだ!諦める事なんてできない。なんとか、しないと･･･ </p>

<p>ロティ様が死ぬ。また、自分の目の前で。 <br />
なのに、身体が動かない。 <br />
また戦争の記憶が蘇る。あの悪夢が自分を蝕む。 <br />
赤い血。金色の霧。冷たい死。 <br />
過去と悪夢が自分を縛る。 <br />
またなのか。自分はまた何もできずに失うのか。 <br />
だめだ。こんな所で終われない。あの人をこんな形で無くしたくなんかない。 <br />
（ナナルゥ。強くなろう。色々な事、色々な意味で･･･二人とも、強くなろう。） <br />
あの人の言葉をもう一度聴きたい。できる事なら、あの人の温かさをもう一度感じたい。 <br />
震えは止まらない。悪夢は消えない。 <br />
―だから、なんだというのだ―! </p>

<p></p>

<p>こういう事を繰り返したくないからこそ強く力を望んだのではないか。今力を使わなくていつ使う。 <br />
やはり自分には、戦うことしかできないのかもしれない。 <br />
本当の意味で誰かを守りたいと願うのなら、力だけでは不可能だというのに。 <br />
判っていながら自分は、どうしようもなくただ敵に勝つ力ばかり望んでいる。 <br />
それでも、自分は強くありたい。 <br />
この力で、これからの時代に生きる人達を、何よりもあの人に降り注ぐ暴力を振り払えるように。 <br />
それは根本の解決には決してならない。今の自分はそれ以上の事を、それ以外の事をできない。 <br />
だけど自分はこれだけでもいい。みんなを守りたい。死なせたくない。 <br />
その中には当然、ロティ様も入っているのだから―! <br />
（『消沈』、お願い!あの人を守る力を、敵だけを退ける力を!!） <br />
「･･･灼熱のマナよ、地の底より疾く来たりて死の顎を閉じよ!イグニッション!!」 </p>

<p>「ぐおっ!?」「あっ･･･」 <br />
エンレインの足元に亀裂が走り、次の瞬間に紅蓮の閃光で視覚が消し飛んだ。 <br />
閃光が消え、煙が晴れた先にエンレインの姿はなかった。 <br />
あの強さでは流石に消し飛んだとは思えないし、殺気を感じないと言う事はおそらく退いてくれたのだろう。 <br />
焼け焦げ、砕けた地盤を見れば爆発の凄まじさがわかるが、僕自身は意外なほど衝撃や熱気は感じなかった。 <br />
「隊長、御無事ですか･･･!?」 <br />
よろめきながら近づくナナルゥの顔は不安そうな上に真っ青で、今にも倒れそうだった。 <br />
「･･･僕は大丈夫。ありがとう、助かった、よ･･･」 <br />
安心させる為になんとか笑顔を作ることができた。 <br />
「･･･よかった･･･範囲を、最小限に抑えるように、『消沈』が、力を･･･貸し･･･」 <br />
「わっ」言い終わる前にナナルゥが僕の胸に倒れこんできた。 <br />
情けないが、疲れきった身体では支えきれずに一緒に倒れてしまった。 <br />
ナナルゥは気を失っている。精神的な負担と安心して気が抜けてしまったのが同時に来たのだろう。 <br />
といっても僕も、ほっとしたら身体が動かなくなってしまったが。 <br />
みんなの声が聞こえる。コウインさんが呼んできてくれたのだろう。 <br />
大丈夫だって言わないといけないんだけど･･･あ～、ダメかも。もう意識、が･･･ </p>]]>
      
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    <title>二章：漆黒の翼、再び…</title>
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    <modified>2008-07-26T05:43:25Z</modified>
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    <summary type="text/plain">　第一詰所を飛び出した時にはあれ程けたたましく鳴り響いていた半鐘。  　それもラ...</summary>
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      <![CDATA[<p>　第一詰所を飛び出した時にはあれ程けたたましく鳴り響いていた半鐘。 <br />
　それもラキオス城が見えて来る頃には神剣魔法の爆音と怒号、そして逃げ惑う人々の悲鳴だけに代わっていた。 <br />
「クソッ…!!」 <br />
　城内を走る悠人は思わず悪態を吐いた。 <br />
　噎せ返る様な血の匂い。事切れた数多の兵士たち。 <br />
　城内は既に戦場と成り果てていた。 <br />
　否、それは戦場ですらない一方的な虐殺である。 <br />
　人間よりも遥かに優れた身体能力に加えて神剣による加護。そして幼少より徹底的に戦闘技術を仕込まれたスピリットが相手では人間には抗う術は無かった。 <br />
　悠人は改めて戦慄していた。 <br />
　スピリットと言う存在に。 <br />
　この世界の危うさに。 <br />
「ユート様…」 <br />
　振り返ると、悠人を怯えた表情でネリーが見上げていた。その隣を走る、同じ色を浮かべたシアー。 <br />
　この凄惨な光景に対してか、それとも同じスピリットが人間を襲った事に対してか。 <br />
　確かに、それらに対して衝撃を覚えなかったわけではないのだろう。 <br />
　しかし、それらに衝撃を覚えたからこそ二人は思い当ったのだ。 <br />
　悠人が何を考えてしまったのかを。 <br />
　それは、とても恐ろしい想像であった。 <br />
　悠人がスピリットを恐れる事が。 <br />
　二人を、恐れる事が。 <br />
　悠人に見捨てられてしまえば、きっと心が砕けてしまうから。 <br />
　振り向いた悠人の目が、黒い瞳が真っ直ぐに二人を捉えていた。 <br />
　逸らさずに、見ていた。 </p>

<p></p>

<p>「今こんな事言うのは不謹慎かもしれないけど、俺は絶対に二人の事は嫌いになんかならないからな」 <br />
　頬を掻きながら悠人が言った。 <br />
　その言葉に、二人の中で抑えきれない嬉しさが弾けた。 <br />
　恐くないわけがない。戸惑いだってあるのかもしれない。 <br />
　それでも、悠人は受け入れてくれようとしてくれているのだ。有りの儘に、在るが儘に。 <br />
「さあ、早く敵を倒して皆を助けような!!」 <br />
「「うんっ…!!」」 <br />
　その言葉に、二人は大きく頷いた。 <br />
　手に持つ神剣から敵の気配を伝えてきた。強い、それも相当な手練れの刺客たち。 <br />
　それでも、心は揺るがない。 <br />
　負ける気がしなかった。 <br />
「いくぞ、二人とも!!油断するなよっ!!」 <br />
　悠人の檄が飛ぶ。 <br />
　神剣からとは違う、魂の高揚が全身に力を漲らせた。 <br />
「任せといて、ユート様っ!!」 <br />
「シアーだって、頑張るよ…!!」 <br />
　頼もしい返事が悠人の背中から聞こえてきた。 </p>

<p></p>

<p>「そっか、レスティーナは第二詰所の方に向かってたんだな…」 <br />
「うん。他の皆が守ってるから、もう大丈夫だよっ」 <br />
「敵もいっぱい倒したから…」 <br />
　スピリットの館へと通じる城の中庭からの抜け道の半ばを過ぎた辺りで、悠人は合流したネリーとシアーからの報告に安堵していた。 <br />
　途中で第一詰所と第二詰所とに道が分かれていた為、第一詰所のメンバーと残りの第二詰所のメンバーで二手に分かれる事にしたのだが、どうやらあちらで保護されたらしい。 <br />
　先程、伝わってきた神剣同士がぶつかり合う気配も今では良く知る馴染みの気配だけになっていた。 <br />
　一方、悠人たちは依然として第一詰所に向かって走っていた。 <br />
　地下に隠れているとは言え、佳織の安全が絶対に保障されているわけではない。 <br />
　一刻も早く佳織の傍に居てあげたかった。 <br />
　何故か、悠人の中にじわじわと不安が広がってきていた。 <br />
「―っ!?」 <br />
「ユート様っ!?」 <br />
「～っ!!」 <br />
　『求め』の警告に続き、ネリーとシアーが緊張した面持ちで悠人を見た。後続のメンバーも、その事態の急変にその場に立ち止まる。 <br />
　悠人の背中に、じっとりと戦慄の汗が滲み出してきた。前を向いて見えないが、恐らく背後のメンバーも同様であろう。 <br />
　この神剣の気配、そして重圧感。 <br />
　忘れる筈が無かった。 <br />
「再び見(まみ)える事になるのも、また縁…」 <br />
　漆黒のウィング・ハイロゥをはためかせ、その妖精は悠人たちの前に降り立った。 </p>

<p></p>

<p>　敵地に在りて、泰然自若。 <br />
　多勢に揺るがぬ、その闘志。 <br />
「やはりお前か、ウルカ…!!」 <br />
　イースペリアで対峙した神聖サーギオス帝国最強のスピリット、<漆黒の翼>ウルカであった。 <br />
　月の欠片を散りばめた白銀髪の下、その切れ長の鋭い双眸が悠人を見据えていた。 <br />
「何でこんな事をしたんだ!?やっぱりお前も、神剣に操られてやっているのか!?」 <br />
「神剣の声は手前には聞こえぬ。それ故に戦う意味を探している。この剣を振るう意味を…」 <br />
「何言ってやがるっ!!これだけ人が死んだんだぞっ!?」 <br />
　悠人の叫びに目を伏せたウルカの表情に一瞬だけ苦い色が浮かんだものの、再び目を開いた時にはもうその色は何処にも無かった。 <br />
「ラキオスのユート殿、手合わせを願おう…」 <br />
　膨れ上がった武人の、ウルカの闘気に悠人の肌が粟立つ。手元の『求め』がオーラフォトンの燐光を発し、呼応する様に悠人の闘争本能を焚き付け始めた。 <br />
　最早語る言葉は尽き、ここから先は力がぶつかり合うだけの世界となる。 <br />
　ウルカが鍔元に手を掛け、悠人が『求め』を正眼に構えた。 <br />
「手前はウルカ。<漆黒の翼>ウルカ。これ程の使い手と戦える事に感謝する…」 <br />
　無言の一拍を置いて、先に動いたのはウルカだった。 <br />
「参る…!!」 <br />
　神速の抜刀。 <br />
　月光に煌めく白刃を、悠人は視認する事が出来なかった。 </p>

<p></p>

<p>　悠人の眼前に火花が散った。 <br />
　同時に走る腕の痺れがウルカの斬撃の威力を物語っていた。 <br />
　見えていたわけではない。悠人自身、どうやって受けたのかすら判らない。 <br />
　それでも、悠人の体は動き続けていた。 <br />
(ほう…) <br />
　一方、感嘆の念をウルカは禁じ得なかった。 <br />
(まさか、この様な手で手前の剣を受けるとは…。読みも、良い…) <br />
　ウルカの居合いを、悠人は悉く弾いていた。 <br />
　否、弾いているわけではない。 <br />
　悠人は隠れていた。 <br />
　如何に超絶の反射神経を有したとしても、悠人の持つ長大な神剣を振り回していれば必ず切り込まれる隙が生まれてしまう。 <br />
　打ち合えば、負ける。 <br />
　ならば、打ち合わなければ良い。 <br />
　『求め』を柱とし、斬撃からの死角を作る。 <br />
　悠人の生存本能が見い出した活路であった。 <br />
　姑息ではあるが、ウルカは悠人のその発想を評価した。 <br />
　技量の無さを機転で補う事も、また戦い方の一つである。 <br />
「――っ!?」 <br />
　直感が発した警告にウルカが半歩下がった直後、悠人の影から飛び出した二人がウルカに斬り掛かった。 <br />
「シアー、いくよっ!!」 <br />
「うん…!!」 <br />
　変幻自在のネリーの鋭い斬撃。その全てをウルカは捌いた。 <br />
(手数は多いが、重さが…。否、これは――) <br />
「え～いっ!!」 <br />
　ネリーと入れ替わり、シアーが渾身の一撃をウルカに見舞った。 </p>

<p></p>

<p>(受ければ、折られる…!!) <br />
　迫るシアーの一撃に、ウルカは自らの太刀を重ねた。 <br />
「ハァッ!!」 <br />
　スゥワンッ―― <br />
　滑らかに触れ合う互いの刀身からは火花すら出る事は無く。羽で撫でられたかの如き力でシアーの斬撃がいなされた。 <br />
　在り得ない迄のウルカの技量とその能力、そして決め手に成り得た一撃を逸らされ、シアーの目が驚きで見開かれた。 <br />
　その隙を、ウルカは逃さなかった。 <br />
「ふっ!!」 <br />
「ぅあぅっ!?」 <br />
　踊る様に回り、シアーが倒れた。 <br />
「「シアーッ!!」」 <br />
　ネリーと悠人がシアーに駆け寄り、ウルカから守る様にして立ちはだかる。 <br />
　一方、ウルカは既に剣を鞘に収めて瞠目し、静かに佇んでいた。 <br />
「シアー、シアーッ!!大丈夫っ!?」 <br />
「うぅ…」 <br />
　ネリーの呼びかけにシアーは痛みを堪えて唸った。 <br />
　右の肩口から胸元に掛けて大きく切り裂かれ、黒い血染みが広がっていく。 <br />
　マナに還り始めた血が、月下に煌めきながら立ち昇った。 <br />
「くっ!!」 <br />
　『求め』を構えて向き合うが、悠人にはウルカに斬り込む隙を見い出せないでいた。 <br />
　居合いに長けたウルカにとって、剣を構える事は構えではない。 <br />
　あの力を抜いた自然体が、既に構えなのだ。 <br />
　悠人は戦慄していた。 <br />
(ここ迄の差があるのか!?) <br />
　神剣の気配から判断して、ウルカの持つ神剣は『求め』より格下であると断言出来る。 <br />
　だが、経験と技量によってウルカはそれらの穴を埋め、悠人たちを圧倒していた。 <br />
　空気が、その場に重く圧し掛かってきた。 </p>

<p></p>

<p>「ここ迄としよう…。手前には別の使命がある故…」 <br />
　しかし、膠着の最中、突如ウルカがその闘気を収めた。 <br />
　それが隙ではないと知るが故に、悠人たちは動けない。 <br />
「………またの機会を、待つ」 <br />
　二つ名である漆黒の翼を広げ、ウルカは飛び去った。 <br />
　その目に僅かな憐憫を浮かべて。 <br />
　悠人は全身から汗を噴出した。 <br />
　あの儘戦っていれば、間違い無く最悪の結果が訪れていただろう。 <br />
　悔しいが、自分たちは見逃されて貰ったのだ。 <br />
「…ゥトさま…」 <br />
　か細いシアーの声に、悠人は我に返った。 <br />
「シアー、大丈夫かっ!!」 <br />
　傷は深かったが、既にエスペリアの治癒の魔法によって大分直りかけていた。 <br />
　だが、シアーは何処か怯えた表情で、それでも何かを言おうとしていた。 <br />
「無理して喋らなくて良いから、今は――」 <br />
「違うの、ユート様っ!!」 <br />
　シアーの大声に、悠人は驚いた。 <br />
　ウルカに斬られた事に怯えているのではないのならば、一体シアーは何を恐れていると言うのか。 <br />
「か、カオリ様が危ないの…」 <br />
　まだ残る痛みに耐えながら、シアーはウルカの飛び去って行った方角を、佳織が居る第一詰所を指差した。 <br />
「――っ!?」 <br />
　悠人は己が失念していた事を恥じた。 <br />
　ウルカは別の使命があると言っていた。ならばまだ敵の任務は終わってはいない筈だった。 <br />
　一時の安堵に気を奪われ、大局を見誤ってしまったのだ。 <br />
「皆、館へ急ぐぞっ!!エスペリアたちは手当てが済んだら後から来てくれ!!」 <br />
「畏まりました、ユート様」 <br />
　エスペリアの返事を背中で聞き、悠人たちは森の中を疾走した。 <br />
(無事でいてくれ、佳織っ!!) <br />
　悠人の内に、不吉な予感が広がり初めていた。 </p>

<p></p>

<p>「ユート様、アレっ!!」 <br />
「――なっ!?」 <br />
　ネリーの言葉に、悠人も思わず驚愕の声を上げた。 <br />
　煌々と上がり始めた火の手。敵は第一詰所に火を放ったのだ。 <br />
(あの中には、佳織が居るんだっ!!) <br />
　館へ突入しようとした悠人に、手元の『求め』が鋭くマナの気配を知らせた。 <br />
(上だ…) <br />
　弾かれる様に顔を上げ、悠人はその光景に目を見張った。 <br />
「佳織ぃ～っ!!」 <br />
　漆黒の翼を生やしたウルカの腕の中。そこには、ぐったりとして気を失っている佳織の姿があった。 <br />
「気を失っているだけ故、安心されよ…」 <br />
「ふざけるな!!佳織を返せ!!」 <br />
　怒声に表情一つ変える事は無く、ウルカは真っ直ぐ悠人を見据えてきた。 <br />
「ユート殿に、我が主からの伝言がある」 <br />
「主だと…!?そいつの命令で佳織を攫うって言うのかっ!?」 <br />
「『佳織は僕のものだ。取り戻したかったら、追って来い』」 <br />
　その内容に、悠人の中で遂に不吉が形を成した。 <br />
　信じられないと言う一方で、ウルカの伝える言葉が否応無しにそれを確信へと変えていく。 <br />
「ウルカ、お前は瞬の手先なのか!?」 <br />
「シュン殿は我等の主。手前どもは『誓い』の下に集う剣」 <br />
　悠人の手元から、焼ける様な激しい憎悪が全身へ駆け巡った。 <br />
(砕け、契約者よ…!!『誓い』を砕くのだっ…!!) <br />
　衝動が、悠人を冥い底へと引き摺り込んだ。 <br />
(瞬が、奴がこの世界に居るって言うのか…!!) <br />
(『誓い』を砕け…!!『誓い』を滅ぼせ…!!) <br />
　瞬への、『誓い』への憎悪が境界を無くし、どろどろに混ざり合った。 <br />
(俺から、佳織を奪おうって言うのかっ!?) <br />
(『誓い』を、その眷属を砕くのだ…!!) <br />
「うおぁああぁあぁあっ!!」 <br />
　咆哮と同時に悠人の体から金色のマナが、『求め』の刀身から蒼いオーラが立ち昇った。 </p>

<p></p>

<p>　足元から湧き上がる光条によって緻密な文様の巨大な魔方陣が展開されていく。 <br />
　その光景にウルカも、味方迄もが驚愕していた。 <br />
「これは、シュン殿と同じ力っ…!!」 <br />
　右手に収束したマナの光球を、悠人は魔方陣の中心に叩き付けた。 <br />
「瞬の、『誓い』の手先…」 <br />
　マナが魔方陣の文様を駆け巡り、神剣魔法を完全に発動させた。 <br />
「滅びろぉぉぉ!!」 <br />
　幾多の蒼い光の矢がウルカへと襲い掛かった。 <br />
「ハアァァァァァッ!!」 <br />
　裂帛の気合と共に、ウルカの神速の剣がこれを弾いた。捌けなかったものは全て漆黒のウィング・ハイロゥに刺さったが、際どい所で防ぎ切っていた。 <br />
「まだだっ!!」 <br />
　悠人の声に、弾かれて消えかかっていた矢はまるで意思を持つかの様に集まり、再びウルカへと襲い掛かった。 <br />
　気力も体力も尽きた今のウルカならば、易々と貫けるだろう。 <br />
　ウルカが覚悟を決めた瞬間。ウルカの前に純白のウィング・ハイロゥが広がった。 <br />
「ダメーッ!!ユート様―っ!!」 <br />
　ネリーが、その身を盾にしてウルカの前に立ち塞がった。 <br />
(我の邪魔をするか、妖精…!!ならば、そやつ諸共打ち砕いてくれよう…!!) <br />
　その『求め』の言葉に、悠人の中で新たな怒りが爆発した。 <br />
「ふざけるなぁぁぁっ!!バカ剣っ!!」 <br />
　瞬や『誓い』への憎悪すら塗り潰す、『求め』への悠人の凄まじい怒りであった。 <br />
「ぐぅ、がぁぁぁっ!!」 <br />
　一つになっていた意識がベリベリと剥がれた。だが、その脳が千切れる様な痛みを悠人は撥ね退けた。 <br />
　悠人は意識を手放さない。手放すわけにはいかなかった。 <br />
「曲が、れぇぇぇっ!!」 <br />
　血走った目で、悠人は叫んだ。 </p>

<p></p>

<p>(何だと…!?) <br />
　ネリーに届くその直前、光の矢が放射状に拡散して虚空に霧散した。 <br />
　手元の『求め』の驚愕が悠人に伝わってきた。 <br />
「へっ、見たかバカ剣…」 <br />
　そう吐き捨て、悠人の意識は落ちた。 <br />
「ユート様ぁ!!」 <br />
　崩れ落ちた悠人にネリーが飛び付いた。 <br />
　無防備な背中に生えた白い翼を眩しそうに一瞥し、ウルカはボロボロになったウィング・ハイロゥを再構築した。 <br />
「この娘は頂いていく。シュン殿の言葉、確かに伝えた」 <br />
　夜の明け始めた空の中を、ウルカは南へと飛び去って行った。 </p>

<p>「ひっく、うぅ、ユート様…」 <br />
「ユート様、ユート様ぁ…」 <br />
　覗き込んでいる誰かが泣いている。そう気付いて悠人は目を覚ました。 <br />
「ネリーとシアーか…。何で泣いてるんだよ？二人とも…」 <br />
　思考も記憶も混乱していたが、それでも悠人は何とか二人に話し掛けた。 <br />
「ごめんなさい、ユート様…」 <br />
「シアーたち、カオリ様を助けられなくて…」 <br />
　その言葉に、悠人は少し頭の中で整理が着いた。 <br />
　悠人が首を傾けると少し焼けた第一詰所が見えた。どうやらあの後、気を失っていたらしい。 <br />
「泣くなよ、二人とも…」 <br />
「でも、ネリーたち…」 <br />
「何も出来なくて…」 <br />
　悲しかった。悔しかった。 <br />
　悠人が辛い思いをするのを止められなかった事が。 <br />
　何もしてあげられない無力さが。 <br />
　何もかもが悠人に対して申し訳無かった。 </p>

<p></p>

<p>「二人の所為じゃないって…」 <br />
　悠人の言葉に、二人はふるふると首を振った。 <br />
　そんな二人に、悠人はやれやれと嘆息して手を伸ばした。 <br />
「シアー、敵の目的に良く気が付いたな。偉かったぞ…。ネリーも、佳織を守ってくれてサンキューな…」 <br />
　大地に寝た儘、悠人は二人の頭を胸に抱いた。 <br />
「大丈夫、佳織は無事だって。佳織を攫った奴は許せないけど、絶対に佳織に危害加える様な奴じゃないんだ」 <br />
　悠人に重なりながら、二人は黙って悠人の言葉を聞いていた。 <br />
「奪われたら取り返せば良いんだ。まだ何も終わってない。終わってないんだ。だからさ、二人とも俺に力を貸してくれないか？佳織を取り戻す為に…」 <br />
「うん…。ネリーたち絶対カオリ様を助け出すから…」 <br />
「シアーたち、頑張るから…」 <br />
　頷いてきた二人の瞳には、既に新たな決意が灯っていた。 <br />
「あぁ…。頼りにしてるからな、二人とも…」 <br />
　そう言うと、悠人は再び瞼を閉じた。 <br />
　今はもう疲れて動けそうに無い。 <br />
　二人の体温を感じながら、悠人は深い眠りに落ちた。 </p>]]>
      
    </content>
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    <title>5章　あなたにひとつ、あいのうた。</title>
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    <modified>2008-07-26T05:43:25Z</modified>
    <issued>2008-07-17T14:26:43+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">「ん･･･」目を開くと、そこには見慣れた天井があった。ここは･･･僕の部屋?  ...</summary>
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    <dc:subject>スピたん～幻のナナルゥルート～</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>「ん･･･」目を開くと、そこには見慣れた天井があった。ここは･･･僕の部屋? <br />
「･･･隊長!」 <br />
「あれ、ナナルゥ･･･?」 <br />
何で僕の部屋に、と聞こうとした瞬間に今までの記憶が浮かんできた。 <br />
「そっか･･･あのまま倒れて･･･みんなが運んでくれたのかな?」 <br />
「はい～。ナナルゥさんはすぐ目を覚ましたんですが～ロティさんが起きないのでずっと心配してたんですよ～？」 <br />
「あ、ハリオンさん･･･。」 <br />
声のした方を見ると、ハリオンさんが椅子に座っていた。 <br />
「ナナルゥさんはロティさんが心配だからってずぅっと手を握りっぱなしで～。 <br />
女の子を心配させちゃ「めっ!」ですよ～？」 <br />
「えっ･･･」 <br />
そこでやっとナナルゥが僕の手を握っていた事に気付いた。 <br />
時計を見るともう次の日になろうかという時間だった。ほぼ半日間眠りこけていたらしい。 <br />
･･･その間ずっと、手を握っていてくれたのか? <br />
「ナナルゥ―」 <br />
心配かけてごめん。と言おうとした所で気付いた。 <br />
みるみるうちにナナルゥの目が潤んで今にも泣き出しそうになって― <br />
「え、あの･･･ナナルゥ?」 <br />
「たい、ちょ･･･う、ぅぅうううううう～～～～～････」 <br />
「え、ぇえええっ!?」 <br />
「あらあら～。」 <br />
そのままナナルゥが泣き出した。 <br />
いつもは無表情な美貌をくしゃくしゃに歪めてぼたぼたと大粒の涙を流し続ける。 <br />
「も、申し訳、ありませ、わっ、私は、あの時動け、戦えたはずなのにっ、 <br />
隊長が、こんなになるまで、な、何もしなくて!こんなことになって! <br />
このまま、隊長が起きなかったらって、わ、私っ･･･!」 <br />
「わああ泣かないで!ほら、僕は大丈夫だから! <br />
あの時は勝手に僕一人でやったことだし、ナナルゥのおかげで助かったし!! <br />
な、ナナルゥは気にしないでいいから!というか気にしちゃ駄目だから!!」 <br />
ああ情けない。隊長と言う立場を知りながら一人でやるなんて大見栄を張ったくせに勝てず、 <br />
結局自分の強さを、ナナルゥの想いを証明する事もできなかった。 <br />
「うぐっ･･･しかし･･･結局、あの開拓者も、討ちもらして･･･」 </p>

<p></p>

<p>「大丈夫!エンレインもたぶん逃げられたけど･･･次にあったら今度こそ負けないから!ほら、涙を拭いて!」 <br />
正直に言って自信がある訳ではない。まだ実力は大分離れているだろう。 <br />
だけど、また逢うその時までにもっと強くなる。今度こそ絶対に。 <br />
「ぐすっ･･･たいちょおぉ･･･。」 <br />
「もう～。こんなに女の子を泣かしちゃって～ロティさんはいけない子ですね～」 <br />
「うう、ゴメンナサイ･･･」 <br />
でも実はこんなにナナルゥに心配されて不謹慎だけどちょっと嬉しいとも思ったりして。 <br />
「だけどもう大丈夫そうですね～。それじゃあ私はおいとまします～。」 <br />
そういって椅子から立ち上がったハリオンさんが振り返り、ナナルゥに微笑んだ。 <br />
「･･･いいですかナナルゥさん～?この後もしもの時になったら前に言ったあれをしてあげるんですよ～?」 <br />
「･･･ぁ･･･。」 <br />
「え、あれって?」 <br />
「うふふふふ～♪今はまだ内緒です～♪」意味深な笑顔と言葉を残してハリオンさんは部屋を出て行った。 <br />
残された僕達の間にしばし沈黙が訪れ、とりあえず僕がその沈黙を破った。 <br />
「･･･えっと、落ち着いた?」 <br />
「･･･はい。･･･申し訳ありませんでした。」 <br />
「それはもういいって。」 <br />
「･･･あの、隊長。少し、････聞いてくれますか?」 <br />
「ん、何?」 <br />
「以前から考えていた･･･答えが出た気がするのです。」 <br />
「え･･･どういう、事?」 <br />
「はい。･･･今まで私は戦闘時に『消沈』に何割か精神を預けて戦ってきました。 <br />
その時は目の前の出来事が他人事のように感じ、迷いや恐れをほとんど感じずに戦ってきました。」 <br />
「･･････。」 <br />
「しかし、あの開拓者と遭遇し･･･隊長を傷つけてしまったときから、私はそれをやめました。 <br />
結果として、やはり戦闘において支障をきたし、今日はあのような事になってしまいました。 <br />
･･･それでも、なぜかこのままでありたいと思っている自分がいます。 <br />
そういう感情を抱えた上で、守りたいものを守れるよう強くありたいと思います。 <br />
それが、私の『答え』･･･です。」 <br />
「ナナルゥ･･･」それは、奇しくも僕がエンレインにぶつけた想いと似ていた様に思う。 </p>

<p></p>

<p>「しかし、これはあくまで我侭･･･です。隊長。私は間違えているのでしょうか?」 <br />
ナナルゥが不安そうなまなざしをこちらに向けてきた。対して、僕の言う事は決まっていた。 <br />
「･･･それでいいと思うよ。それが、ナナルゥ自身の出した答えだから、僕は応援する。」 <br />
そうやって強くなったっていいと思う。戦争のためじゃないこれからの時代なら、 <br />
そういう強さを目指せる筈だから。そういう強さが必要だと思うから。 <br />
「･･･僕も手伝うよ。ナナルゥがそういう風に強くなれるように。 <br />
これからも、ラキオスに帰った後も一緒に頑張ろう。 <br />
いつでも僕はナナルゥの味方で、ナナルゥの傍にいるから。」 <br />
･･･うわぁはずかしいぃぃ!!絶対最後の一言は言うんじゃなかった! <br />
自分で言っておきながら何ですかどうですかその物言いはあぁぁ!! <br />
「あ･･･あの･･･隊長。」「ん･･･な、何？」心の中で身悶えしている所にナナルゥが声をかけてきた。 <br />
「･･･何故、隊長はここまで私を気にかけてくださるのですか?」 <br />
「そ、それは･･･ナナルゥが、大切、だから。」 <br />
「･･･大切、というのはどう言う意味の大切、なのですか?」 <br />
･･････あはは。これってあれだね?前にヨーティアさんが吹き込んだ冗談と似てるね? <br />
だけどナナルゥの顔は真剣そのものだ。･･･いや別にいつもと特に変わってる訳でもないけど <br />
なんとなくそう感じるっていうかだけどナナルゥは冗談いう際でも常に真剣だったか? <br />
うーんだけどコウインさんが言ってた事が本当とすればもしかしたら― <br />
･･･って違う。そうだとしても関係ない。 <br />
僕の想いは、伝える事は、一つしかないから。 <br />
「･･･特別な意識、愛情や恋愛感情･･･だよ。」 <br />
「･･･えっ･･･!?」 <br />
回りくどい言葉を避け、必死に言葉を選んで僕は告白する。 <br />
ナナルゥにこの気持ちがちゃんと伝わるように。 <br />
「･･･僕は、ナナルゥが好きだ。隊長としてとかじゃなくて、一人の男としてナナルゥが好きだ。 <br />
ナナルゥの優しい所も、、危なっかしい所も、頑張り屋な所も。全部大好きで、見守っていたい。 <br />
･･･だから、ナナルゥの傍にいたい。ナナルゥに傍にいて欲しい。これからも、ずっと。」 <br />
言ってしまった。なんかプロポーズしたみたいな物言いだなと半分麻痺した頭が考えていた。 </p>

<p></p>

<p>「･･･ロティ様が、私を、好き･･･傍に･･･ずっと･･･」 <br />
「ナナルゥは･･･僕のこと、どう思うかな?･･･迷惑、かな?」 <br />
「い、いえ!それは決してありません!その、上手く言語に現せませんが、 <br />
･･･決して失いたくない、傍にいるだけでなく、自分の全てをかけて守りたい人･･･です。 <br />
あの、この気持ちは･･･好き、という感情になるのでしょうか?」 <br />
「え?えっと･･･そう、だったらいいなと思うけど･･･ナナルゥは僕がに傍いても迷惑じゃない?」 <br />
「はい。･･･むしろ、私から傍にいたいと思います。」 <br />
「僕といて、楽しい?」 <br />
「はい。その時間が、ずっと続いてほしいと思うときがあります。」 <br />
「･･･だったら、そういうことにして欲しいな、なんて･･･」 <br />
「そうですか･･･この想いが、好き。私が、ロティ様を。ロティ様も、私を･･･」 <br />
ナナルゥが頬を薄く染めてなにやら考え込みだした。･･･えっと、これはOKという事でいい･･･よね? <br />
「･･･ロティ様。」 <br />
「え、な、何?」 <br />
「抱いてください。」 </p>

<p>･･････････････････････････････････････････････････････････････････････････････････････････。 <br />
「･･････････････････････････････････････････････････････････････････････････････････はぃ?」 <br />
「･･･抱いてください。」 </p>

<p>･････････････････よし。オーケイ、落ち着こう。僕は冷静だ。 <br />
この状態でこんな事言われちゃったら僕でなくとも健全な男を自負するならば <br />
考える事は一つだけと思うがここで文面どおりに受け取ってはいけない。 <br />
「･･･え～とナナルゥ?念のため聞いておくけどどういう意味かわかってるかな?」 <br />
ナナルゥの事だからただギュッとして欲しいという意味かもしれない。 <br />
いや、ヨーティアさん辺りが僕に言ってみろと吹き込んだ冗談と言う可能性も十分有りうる。 </p>

<p>「･･･一般的な意味の対象を腕で抱えるという行為ではなく互いの身体、正確には性器を」 <br />
「うんよくわかったありがとうききかえしたりしてごめんなさい」聞くんじゃなかった。 <br />
「互いに男女が好き合っているのならば、身体を重ねるべきらしいとききました。 <br />
それは正にこの状況であり、更にこういう事は女性が言う方が男性は喜ぶらしいです。」 </p>

<p></p>

<p>･･･お願いだからそんな事吹き込まないでください。 <br />
ナナルゥに吹き込んだ可能性が高い数人の顔を思い浮かべたら頭痛がしてきた。 <br />
そんな苦い感情が顔に出ていたらしい。 <br />
「･･･嫌、なのですか?」 <br />
「そ、そうじゃないよ!」 <br />
もちろん嫌な筈がない。 <br />
好きな女の子、それも非の打ちようのない美人（更にスタイル抜群!!）と両想いだったってわかって? <br />
ほぼプロポーズみたいな告白を了承してもらえて?おまけに抱いてくれなんていわれちゃって。 <br />
これだけの条件がそろっていればもう万歳三唱したいくらいな訳で。 <br />
「す、すっごく嬉しいんだよ?でもあのね？好き合ってるからっていきなりこういう事するんじゃなくてさ? <br />
普通はなんかこう段階とかステップとかっていうのがあって･･･」 <br />
せっかくだしこういう事は手順を大事にしたいというか。いや、言い訳じゃないよ? <br />
本心をいえば今すぐコウインさんの世界のある物語に出てくるという有名な泥棒の孫だか曾孫だかみたいに <br />
一瞬で素っ裸になって水泳の飛び込みの如くナナルゥにダイブしたいのだが。 <br />
今だって僕の中にいるもう一人の自分（と言うより下半身にある分身）が何を言ってるんだ <br />
男なら据え膳を皿まで喰らってしまえその先には比喩でない掛け値無しの楽園があるぞと猛抗議をしている。 <br />
「･･･では、普通ならば今はその段階ではないという事ですか?どのくらいからがその段階なのですか?」 <br />
「う゛。･･･えっと、そういうのは、言葉で説明できるもんじゃ」 <br />
「･･･私は『普通』とはいくらか逸脱しているという自覚は有ります。 <br />
『普通』ならば、今はその時でないのかもしれません。」 <br />
「!!　違うよ、ナナルゥ!僕はそういう意味でいったんじゃ･･･」 <br />
「承知しております。しかし、私はそれでも、今の自分を偽る気はありません。 <br />
率直に言うとこの気持ちさえも一般的な「好き」という気持ちかさえも自信が持てません。 <br />
それでも、今抱いている想いが『普通』と逸脱していようと、見当違いであるとは思いたくありません。 <br />
･･･私は今、誰の意見でもなく自分自身の意思で、ロティ様に抱かれたいと思っています。」 <br />
「ナナルゥ･･･」 <br />
「･･･私は、今すぐにロティ様が欲しいです。私を･･･ロティ様のものにしてください。」 </p>

<p></p>

<p>学校終わってバイトも終わり!やっと自宅に帰ってきました。規制が来るのはかわらないけど <br />
続きをのろのろ投下していきます↓。頭痛薬の用意はよろしいですか!? <br />
ぐはぁ!! <br />
ストライクと言うか、ノックアウトだった。必死に耐えていた自制心が紙っぺらのように吹き飛んだ。 <br />
「･･･ごめん、ナナルゥ。そんな事言わせちゃって。」 <br />
全く、情けない。こんな事を言うのにはすごく勇気がいるものと気付かないなんて。 <br />
「謝らないでください。無理を言っているのは理解しています。」 <br />
「違うよ。その･･･僕も、ナナルゥとすごくしたいし。でも、変に気を回しすぎちゃったね。」 <br />
そういってナナルゥの肩を掴み、引き寄せた。想像してたよりずっと華奢で、だけど柔らかい感触だった。 <br />
「あの、ナナルゥ。今なんとか我慢してるけど、始めると我慢、できなくなるかもしれないから、 <br />
その、先に言っとくよ･･･ごめん。」 <br />
「･･･大丈夫です。ロティ様の、好きにしてください･･･。」 <br />
うう、そう言われるとますます自分が保てなくなりそう･･･ <br />
「あ、ありがとう。その、最初はできるだけ優しくするから･･･目、瞑ってくれる?」 <br />
「？はい･･･。」 <br />
良く意図がわからなそうだったがそれでもナナルゥは言った通り目を瞑ってくれた。 <br />
できるだけ優しくを心がけ、右腕をナナルゥのうなじ、左腕をナナルゥの背中に回して― <br />
「んっ･･･!?」 <br />
僕の唇で、ナナルゥの唇を塞いだ。 <br />
数秒で唇を話し、目を開けたナナルゥと視線が合ってかーっと顔が赤くなるのを感じた。 <br />
「あ･･･今、のは･･･」 <br />
「えっと･･･キス、ってやつ。･･･ごく、軽いやつだけど。」 <br />
「これが、そうですか･･･ロティ様?顔に、紅潮が見られますが･･･」 <br />
「そ、それは･･･ナナルゥも同じだよ。」 <br />
「え･･･そういえば、顔が熱く、恥ずかしい?でも、不快ではなく･･･あぅ」 <br />
ナナルゥはわずかに湿った唇をそっと白い指でなぞり、恥ずかしそうに顔を俯かせる。 <br />
これは･･･か、可愛い･･･。 <br />
「ナナルゥ、もう一回･･･強めにしていい･･･かな?」 <br />
「あ･･･はい、どうぞ･･･」 <br />
そういってまた律儀に目を閉じてくれた。了承をもらったところでもう一度唇を触れ合わせる。 </p>

<p></p>

<p>「ん、ふうっ、んん、ん･･･」 <br />
初めは軽く触れる程度のキスが、次第に角度を変え、強く自分の唇を押し付ける。 <br />
それに対してナナルゥは身体を強張らせたが全く抗おうとはしなかった。 <br />
少し躊躇ったが自分の舌を突き出してナナルゥの唇を割り、ナナルゥの口内に― <br />
「んっ!?」がちっ!! <br />
「@/:∀％＃萌〒￥逝〆＄℃※〓†(ノ゜O゜)ノ∬∇――!!」 <br />
驚いたナナルゥに舌を噛まれてしまいました☆しっかりしろ、傷は浅いぞ。 <br />
「も、申し訳、ありません･･･」 <br />
「いや･･･こっちこそ、いきなりやってごめん･･･。」 <br />
うう、やっぱり本みたいにはいかないんだね･･･。でも諦めない! <br />
「･･･ごめん、ナナルゥ。もう一回やらせてください。」血が出ていない事を確認し再トライ。 <br />
3度、ナナルゥの唇を奪って舌を突っ込み、噛まれないように歯茎を丹念に舐ってみる。 <br />
ナナルゥは過敏に反応したが嫌がるようすはなく、むずがゆさからか顎を開く。 <br />
その隙を逃さずに強引に舌を突っ込み、ナナルゥの口の中を舐めまわし、その舌を絡める。 <br />
「んうぅ!?ん、あむぅ･･･ちゅ･･･ん～っ･･･」 <br />
流石に後ろに逃げようとするナナルゥの頭を右手で押さえ込み、更にナナルゥの口腔を貪る。 <br />
ナナルゥは驚愕に目を見開いたが、決して拒まずに自分からも懸命に舌を絡ませてくる。 <br />
溢れて来る互いの唾液を混ぜあい、舌を吸い、混ざり合った唾液を音を立てて嚥下する。 <br />
「んんーっ！！ん、んぷっ！…………うんん……んー、んっうっ…………うー…」 <br />
驚きは残っているが、ナナルゥの目は酩酊したようにとろんとしている。 <br />
調子に乗って今度はナナルゥに唾液を流し込んでから唇を離してみる。 <br />
「んぅ･･･んっんっ･･･こく、んん･･･はあぁ･･･」 <br />
それに対してナナルゥは僕の唾液を咀嚼して躊躇いなく嚥下し、更に物欲しそうな目を向けてくる。 <br />
ああもう可愛い!変なものに目覚めてしまいそうだ! <br />
「ナナルゥ、胸･･･触っていい?」 <br />
「ふあ･･･はい･･･」 <br />
首に回していた手を胸に移して、服ごしに胸に触れる。 <br />
「っあ･･･!」 <br />
（や、柔らかい･･･っ!） <br />
何でできているのかと思いたくなる（本当は知っているけど言葉にしたくない）感触が頭を痺れさせる。 <br />
感触を確かめるために指を動かして柔らかさと弾力を確かめる。 </p>]]>
      <![CDATA[<p></p>

<p><br />
「っひゃ!ああ･･･なんでしょう･･･触られると、ドキドキしま、んっ･･･」 <br />
「～っ!ナナルゥ、直接、触るよっ･･･!」 <br />
我慢できずに胸口のファスナーを一気に降ろして豊かな胸を露出させる。 <br />
「っ･･･!」 <br />
なんというべきか。大きさはハリオンさんにも負けてない。 <br />
形は綺麗なおわん型で乳首は小さめでピンク色。 <br />
質と量の完璧な両立。これはもはや芸術の一つといえるのではないか。 <br />
「ゴクッ･･･」ああやっぱりこれって反則というか破壊力抜群だなぁ <br />
いや小さいのを否定したりしないけどやっぱり男というのは何であろうと大きいのに憧れるもんだと思う。 <br />
大きい事はいい事だ。うん、夢がある。いっぱいつまっている! <br />
･･･まずい、さっきから自分の大切なものが色々と壊れてきている気がする。 <br />
「･･･ひっ･･･!」 <br />
しっかり鑑賞したナナルゥの胸を両手で直接揉みしだく。 <br />
やっぱり服越しとは比べ物にならない。力を入れると潰れてしまいそうなほど柔らかいのに <br />
ある程度力を込めるとこちらの手を押し返してくる。 <br />
「っは、あああ、や、ふああ･･･!」 <br />
ナナルゥが胸をもまれて声をもらし切なそうな表情を見せる。いつも表面上感情の揺らぎを感じないナナルゥの <br />
必死に我慢しているようなこの態度は、なんかこう、すごくくるものがある。 <br />
もっと聞きたくてナナルゥの乳首に吸い付き、飴球のように舌でころがす。 <br />
「ああ！？ふぁ、ひ、あ～っ！」 <br />
ナナルゥがあられもない悲鳴を上げる。いつもは絶対に聞けない声を自分だけが耳にしている事に更に興奮する。 <br />
気をよくしてもう片方の乳首を指でいじり、しこらせた乳首をしばらく弄ぶ。 <br />
乳首から口を離し、下半身の秘部に目を見やる。 <br />
「ねぇ･･･こっち、触るよ?」 <br />
ナナルゥは声を出す余裕もなさそうで、ただこくこくと頷く。 <br />
左手は胸を弄ったまま右手で下着をずらし、恥毛に覆われた秘所をまさぐる。 <br />
「う、わ。濡れてる･･･。」 <br />
「え･･･やぁ、どうして、こんなの、初めてで、ああ、音がしてるっ･･･!」 <br />
「えっと、ナナルゥって･･･一人でした事、ない?」 <br />
「･･･?な、何を、ですか?」 <br />
「･･･いや、な、なんでもないよ･･･」 <br />
ナナルゥの秘裂に指を突っ込み、窮屈な膣内をむりやり押し広げてみる。 </p>

<p></p>

<p>「･･･痛くない?」 <br />
「はいっ･･･ひ、表現しがたい感覚が、これ、気持ちい、ふあっ･･･。」 <br />
嫌ではないと認識して更に弄り続ける。 <br />
指を2本に増やし、上下左右に動かしている最中、偶然親指が秘裂の上にある小さな突起を捉えた。 <br />
「うあああっ!?」 <br />
ナナルゥがこれまでにない大きさの悲鳴を上げ、身体かビクンと跳ねた。 <br />
「だ、大丈夫!?」 <br />
「あ、あああぁぁ･･･!」 <br />
ナナルゥの様子がおかしい。ぐったりしてうつろな瞳で荒い息を吐いてて、なんかすごい･･･いやらしい。 <br />
「･･･ここ、もっと弄るよ。」 <br />
「え･･･だ、ダメです、少し待、!!!!!」 <br />
ナナルゥの抗議を最後まで言わせずに先程乳首を弄ったように突起を摘んでみる。 <br />
その度にナナルゥは喜んでいるのか苦しんでいるのか解らない声を間をおかずにあげ、 <br />
自分の手で僕の手を更に下半身に押し付けてくる。 <br />
それをもっとして欲しいと判断し、一際強く摘みあげた瞬間、 <br />
「～～～！！、！！っ･････････！！！！」 <br />
ナナルゥの身体が弓なりに反り、声にならない絶叫をあげて僕の手に熱い液がかかった。 <br />
「･･･あ、あああ･･･････!」 <br />
身体から力が抜け僕の方にもたれ掛かってきたナナルゥは淫靡で、そしてすごく綺麗に見えた。 <br />
「･･･気持ち、よかった?」 <br />
「はひ･･･はじめれの、かんかくで･･･いひきが、はっきりしめひぇん･･･」 <br />
呂律の回らないナナルゥに更に劣情を掻き立てられ、ナナルゥをベットに押し倒して自分のズボンをずらす。 <br />
「っあ･･･」 <br />
僕の愚息は焦らしやがってこちらはいつだって準備万端だと喜び勇んでいる。 </p>

<p></p>

<p>「その、･･･入れるけど、最初ってすごく痛いらしいって、知ってる?」 <br />
「･･･はい。知識として認識はしております。体験した事はありませんが。」 <br />
「･･･怖くない?その、今なら、なんとか我慢できそうだけど･･･。」 <br />
「ダメです。」きっぱり言われた。 <br />
「･･･ロティ様にも、悦んで欲しいです。今度は･･･私を全部感じてください」ぐはあっ! <br />
またクリティカルな言葉が僕の胸に突き立った。 <br />
顔も覚えていないお父さん。僕は今日大人への階段を上ります。3段飛ばし位で。 <br />
「･･･入れるよ」 <br />
「はい･･･んっ･･･!」 <br />
ずずずずっ、と僕のものがナナルゥの中に潜り込んでいく。 <br />
もの凄い抵抗を感じ、僕のものが押し出されそうになる <br />
その抵抗を一切無視して強引にナナルゥの膣内を掻き分け、 <br />
―ブツン― <br />
「っ～～～～～～～～っ!!!!」 <br />
「う、あっ･･･!」 <br />
ナナルゥの処女を奪った。結合部分から赤い血が滲み出て来る。 <br />
「ごっ、ごめん！」あわてて自分のものを引き抜こうとするが <br />
「！ダメ、ですっ･･･!」 <br />
「うわっ!」 <br />
ナナルゥの足が僕の腰を引き寄せて強く自分の方に押し付けた。 <br />
抜けかけていたものがナナルゥの最奥まで引き込まれる。 <br />
「な、ナナルゥ･･･」 <br />
「･･･やめないで、くださいっ･･･!」 <br />
「だ、だけど痛いと言うか、つらいでしょ!?」 <br />
「今やめられたら、もっとつらいですっ･･･!」 <br />
ナナルゥの目には涙が浮かび、それでもしがみついて離れようとしなかった。 <br />
その姿をみてこのままめちゃくちゃに突いてしまいたい、思うがままに味わい尽くしたいと危険な感情が浮かんだ。 <br />
「ナナルゥ････わかった。じゃあキス、させて･･･」 <br />
その邪念を必死に払うためにナナルゥに口づけをする。 <br />
ナナルゥとのキスは唇をかみ締めた時の血の味がかすかにした。 </p>

<p></p>

<p>「･･･大好きだよ、ナナルゥ。」 <br />
唇を離し、改めて言う。 <br />
絶対に離したくない、離れたくない。ずっとつらい思いをして、それがつらいとさえ思えなくて。 <br />
それでもけなげで、真面目で、自分でない誰かのために頑張っている。 <br />
そんなナナルゥが愛しくて、痛々しくてたまらなかった。 <br />
つらい過去は消えないけど、つらかった過去の分だけこれから楽しい事があって欲しい。 <br />
悲しい思いをしてきた分だけこれからは笑って欲しい。 <br />
僕もその手伝いができたらいい。自分がそばにいる事をナナルゥが喜んでくれるなら。 <br />
これから自分といる時間を、ありったけの幸せで埋めれるようにしたい。 <br />
「･･･ロティ様･･･もう、大丈夫ですから･･･動いてください。」 <br />
「え、でも」 <br />
「問題、ありませんから。」 <br />
「･･･わ、わかった･･･ゆっくり、いくよっ･･･」 <br />
暴走しないように少しずつ腰を浮かし、スローにスローにものをナナルゥの奥に押し付ける。 <br />
「っ、う、ふぅっ･･･」 <br />
「･･･ロティ様?つらいのですか?」 <br />
「い、いや、これは･･･気持ち、いいんだよ･･･。」 <br />
ナナルゥの膣内は初めてなのもあって物凄くきつい。 <br />
落ち着いてきた今なら中のぶつぶつした物がぼくのに擦れててるのがわかる。 <br />
その上できゅうきゅうと締め付けてきて少しでも気を抜いたら簡単に達してしまいそうだが必死に我慢する。 <br />
すぐ終わらせたほうがいいのかもしれないけど、ナナルゥの初めてをもっと感じたくなったから。 <br />
「･･･よかった、です。･･･あの、我慢、しないでください。」 <br />
「え･･･」 <br />
「･･･その、特に支障はありませんので･･･激しく動いても、問題ありません。」 <br />
うーん、やっぱり気付かれてたのか。まあ激しく動いたら出そうってのもあるんだけど。 <br />
「･･･じゃあ、いくよっ･･･!」 <br />
自分のものが抜けそうなくらい腰を引いて、おもいきりナナルゥの膣内に押し込む。 <br />
「んっ!」 <br />
一回で終わらず何回も、何回も、だんだんペースを速めて出し入れする。 <br />
「ん、うう、はああ･･･凄い、中で、ロティ様を感じ、ひゃうっ!」 <br />
「っは、はあっ、はっ、うう、うああっ･･･!」 <br />
ナナルゥの一番奥のかべにものがぶつかり、それに答えるように周りのヒダが擦れ、絞りとるように収縮する。 </p>

<p></p>

<p>「気持ちいい･･･ナナルゥのなか、気持ちいいよ･･･」 <br />
「ロティ様、ああ!な、何か、変です、先程と同じ、違う、更に強い刺激が･･･!」 <br />
「･･･ナナルゥ、もう痛くない?」 <br />
「え？あ、はい、むしろ、ものすごい快感が、んっ、なんで、うああああっ！」 <br />
「･･･気持ち、いいんだ?」 <br />
「っは、はい、そ、そこ!お、奥を突かれる度に、すご、きもちい、んう～っ!」 <br />
「よかった、僕も、凄く気持ちいよ･･･!」 <br />
ナナルゥが感じてくれてるとわかって無意識にセーブしていたが本当に全力で突き込みを開始する。 <br />
上に圧し掛かってしなやかな長い髪をかき乱し、荒い息を吐く唇をむしゃぶり、豊かな胸を揉みしだく。 <br />
「んぅ、はぁあ、ロティ様･･･!愛して、います･･･。何よりも、誰よりもっ･･･!」 <br />
「ナナルゥ、ナナ、る･･･ごめ、も、出そうっ･･･!」 <br />
「あああ、私、も何か、また、きます、なにかが身体の奥から上がってきて、う、あー？」 <br />
「出っ、ナナルゥ･･･!」 <br />
ナナルゥと唇を重ねたまま、最後に一番奥にぶつけ、ぐりぐりと一番奥の気持ちいい所にねじ込む。 <br />
「んむっ、んう、んんんんんんんんんんんん～～～～～～～～～っ!!!!!」 <br />
「うぐぅっ、ぅうう、ううううううううう～～～～～～～～っ!!!!」 <br />
ナナルゥの膣内が激しく脈打ち、それに合わせて僕の高まった熱が爆ぜた。 <br />
大量の白濁液をナナルゥの一番奥に流し込み、その熱にナナルゥが大きく身を反らし、跳ねる。 <br />
「うあ、あああ･･･熱い、です･･･。」 <br />
「はあ、はあ･･･はあああ～～～～っ･･･」 <br />
しばらく繋がったままの体勢で息を整え、名残惜しそうにものを引き抜く。 <br />
「･･･あ。」 <br />
「いや、あ、あはは･･･」 <br />
しかし抜いてみるとぼくの愚息はもう元気を取り戻していて。 <br />
いややっぱりこれは若さ万歳っていうか初めてだしナナルゥ綺麗だしああもうそんなまじまじ見ないで～ッ! <br />
「･･･失礼します。」 <br />
「え･･･はうわあ!?」 </p>

<p></p>

<p>瞬間、ぼくのものが柔らかい感触に包まれる。 <br />
みると、ナナルゥが･･･僕のものをその大きな胸で挟み込んでいる。 <br />
「なななななナナルゥ?ど、どうやってこんな事覚えたのかな?」 <br />
「先日、ハリオンさんにロティ様とこうなったときの為とご指導賜りました。曰く、 <br />
『女の子がこうしてあげると男の人はとても喜ぶんですよ～。 <br />
こうしてあげればもうロティさんはメロメロです～』とのことです。」 <br />
わあナナルゥって声帯模写すごくうまいなっていうかハリオンさんさっき言ってたのはこれですか <br />
一体なにやってるんですか今度あったら男としてお礼をじゃなくて隊長として注意して <br />
「･･･ロティ様?お気に召さないなら中断しますが」 <br />
「気持ちいいですやめないでください続けてくださいお願いします」 <br />
ありがとうハリオンさん気持ちいいですうれしいですなんかもうメロメロですっ!! <br />
･･･うう、情けないとは言わないで。男の子だもんっ! <br />
「了解しました･･･ん、んっ･･･」 <br />
「う、あ･･･」 <br />
ナナルゥの胸が僕のものを擦り始めた。 <br />
既に僕のものはナナルゥの愛液やら自分の精液やらでぐちゃぐちゃですべりは抜群で。 <br />
膣内に入れたときの様なきつさはないけどこれもまた物凄く来るものが･･･ <br />
「･･･ん、れる･･･」 <br />
「はうっ!」 <br />
ナナルゥが舌を伸ばし、僕のものの先を舐めた。 <br />
じわじわとくる胸の快感と違い、強烈な快感が電気のように頭まで突きぬける。 <br />
「ん、れる、チュ、ふぅ、んん･･･」 <br />
「な、ナナルゥ、そ、それは･･･う、うわぁっ?」 <br />
「･･･これも、ハリオンさんに教わりました。少しでも抵抗を感じるなら無理をしなくていいとの事でしたが <br />
ロティ様のなら全く抵抗はないので問題ありません。」 <br />
「いや、それは嬉しいけど、そういうのは、う、ううう･･･!!」 <br />
ナナルゥの舌が先の割れ目をなぞり、口付けてくる。 <br />
「･･･あ、何か、出てきました。」 <br />
「き、気持ち、いいから･･･出ちゃうものなんだよ･･･。」 <br />
「そうですか。気持ち、いいのですね･･･ん、んんっ･･･」 <br />
「はうあ！」 <br />
割れ目に舌を押し込まれ、唾液を流し込まれた。こじ開けられそうな痛みに近い快感が走る。 </p>

<p></p>

<p>割れ目に舌を押し込まれ、唾液を流し込まれた。こじ開けられそうな痛みに近い快感が走る。 <br />
「ナナ、ル、ダメ、も、ダメだって!で、でちゃうからっ･･･!」 <br />
「･･･ん、んう、れる･･･」 <br />
ナナルゥは聞こえてないのか聞いてて無視してるのかやめようとしない。 <br />
それどころか更に舌をねじ込まれて　やば　だめ　も　でる <br />
「～～～～～～～～っ!!!!!!」 <br />
「きゃっ･･･ん･･･!」 <br />
最初あれだけ出したと思えないほど精液が飛び散り、ナナルゥの顔にぶちまけられる。 <br />
「わああ!!ご、ごめんナナルゥ!」 <br />
「･･･ん、ふぅ、ちゅ･･･」 <br />
ナナルゥは気にした様子もなくまだ脈打つ僕のものに口付け、飛び散った精液を舐めとる。 <br />
「わあああああああそんなの舐めなちゃダメだよ汚いよ吐き出して!!」 <br />
「んくっ･･･大丈夫です。私は特に偏食はありません。」 <br />
「いやそういう問題じゃないからっていうかそもそも口に入れるもんじゃ」 <br />
「それに･･･ロティ様のなら、いくらでも構いませんから。」 <br />
「･････････。」 <br />
がちゃん。 <br />
僕の中で音を立てて一番大事そうなリミッターがはずれた気がした。さようなら僕の理性。 <br />
同時に三度、僕の中のケダモノが鎌首を擡げ上げ、自分の服を瞬時に脱ぎ捨てる。 <br />
「あ、あの･･･ロティ、様?」 <br />
「･･･ナナるゥ、ごメん。やっぱり男ってのはこう下半身ハ別人格と言うかデも僕は決して <br />
誰でもいい訳でナくてあくまでななるゥへの愛ゆエであります。」 <br />
「･･･ろ、ロティ様?言語に著しい違和感を感じますが、あの、少し待」てません。 <br />
最後まで言わせずに僕はナナルゥへを組み敷く。 <br />
「あん♪」 <br />
抵抗しなかったナナルゥの悲鳴が期待のようなものを含んでいたのは、気のせいでないと思いたい。 </p>

<p></p>

<p>「･･････。」 <br />
「･･････。」 <br />
･･････気まずい。と言うか恥ずかしい。 <br />
一夜明けていつもの様にみんなで朝食をとっているのだけどナナルゥとまともに顔を合わせれない。 <br />
目が覚めてとにかく平謝りした時はナナルゥは全く嫌ではなかったといってくれたけど。 <br />
まさか昨日あんな事になってしまうとは。僕って意外とやばい奴なのかもしれない。 <br />
半ば勢いに流されてしまったとはいえ、後悔はないし嬉しかったしちゃんと責任はとろうと思っているけど <br />
ああ気持ちよかったなナナルゥきれいだったなうふふえへへあははーって違う!! <br />
･･･いや、違いはしないんだけど。素直な感想だけど。ああとにかく恥ずかしい。 <br />
ナナルゥはいつもと変わらない様に見えるけど僕と目線があうと微妙に顔を赤く染めている･･･様に思える。 <br />
更に『紡ぎ』の機嫌が物凄く悪い。今頭にガンガン響いているこの頭痛は <br />
寝不足や疲れだけではないのだろう。原因は･･･考えるまでもないが。 <br />
（おのれ･･･何故このシリーズには神獣という設定が･･･我とて顕現できれば･･･ <br />
つるぺたチビ天使どもとは比べ物にならんというのに･･･!） <br />
･･･何かよくわからないけどこっちも色々と禁忌に触れてる気がする。 <br />
早く食べてしまおうと料理をかき込んでいるとネリーが声をかけてきた。 <br />
「ねぇロティ。ナナルゥとけんかしたの?」 <br />
「っ!?ゲホッゴホッ!ど、どうしてそう思うのかな?」 <br />
「だって二人ともいつもとなんか違うもん。よそよそしいよ。仲直りしないと駄目だよ!」 <br />
「そ、そんなことないよ?喧嘩なんかしてないから大丈夫だから!」 <br />
「だけど何かあったんじゃないですか?二人ともぎこちないのは私も感じますよ?」 <br />
ヘリオンもか。うう、さすがにみんなナナルゥと付き合い長いだけあって鋭い。 <br />
「ふむ。･･･二人の様子からして確かに喧嘩とかじゃないんだろうなぁ。」 <br />
･･･ヨーティアさんがギラリと眼鏡を光らせ、ものすごいニヤついている。嫌な予感しかしない。 <br />
「･･･青年、欲望に負けてナナルゥを襲ったな?いくらナナルゥが好いてくれるてからってモラルってもんがあるだろう」 <br />
「「「･･････。」」」 <br />
･･･おちつけからかっているだけだてきとうなんだのったらだめだ <br />
ほらみんなあきれているしんじてないだいじょうぶおちついてたいおうしよう! </p>

<p></p>

<p>「･･･ヨーティアさん?いくらなんでも朝からそういうのはあんまりじゃないですか?」 <br />
「･･･ヨーティア様。今の発言は撤回を求めます」 <br />
よかったナナルゥはれいせいそのものだいやまてさっきよりあきらかにかおがあかくないか？ </p>

<p>「昨日はあくまで私から懇願したのであり、ロティ様が強要したのでは断じてありません。」 </p>

<p>ぶひゃあ。ガゴン!! <br />
テーブルについていた一同が盛大に料理を吹き出した。ついでに僕は派手に額をテーブルに打ち付けた。 <br />
「なっなななななナナルゥさん!?それって本当に昨日ロティさんとあんな事やこんな事をーッ!?」 <br />
「発言が不明瞭で理解しづらいですが、昨夜は･･･ロティ様に抱いていただきました。」 <br />
「だ、抱いてっ!?」 <br />
「はい。腕で対象を抱え込むと言う事ではなく互いの身体、より正確に言うならせ―」 <br />
「わーっわーっ聞いてないです何も聞こえないですーーっ!!!」 <br />
「な、ナナルゥ!なんでそんな恥ずかしいことあっさり喋ってんのよ!?」 <br />
「･･･羞恥よりも自分が嬉しいと素直に感じた事を偽る事こそ恥ずべき事だと感じましたので。」 <br />
「いや確かにそれ正論ぽいけど絶対どこか大事な所が間違ってるわよ～っ!!」 <br />
「あらあら～ナナルゥさん～。私の教えたあれはしてあげましたか～?」 <br />
「はい。ロティ様にはお気に召していただけたようです。ご指導、感謝します。」 <br />
「あれ?あれっていったい何をナナルゥに教えたのよ!?」 <br />
「うふふふ～。好きな男の子への奉公の仕方です～。ヒミカにも詳しく話しましょうか～?」 <br />
「わあ言わなくていい聞きたくない絶対ろくな事じゃない気がするから!」 <br />
テーブルのあちこちで恐慌が起きている。なにコレ?あ、新しい冗談か。･･･違うよね。 <br />
「･･･ほ～う。それで青年。初めてはどんな具合だったんだ? <br />
童貞卒業して舞い上がってナナルゥをリードできなかったんじゃないのか～?。」 <br />
「いえ、後半は常にロティ様が主導権を握り私はされるがままになりました。 <br />
･･･しかし決して不快な思いはなくむしろ筆舌に尽くしがたき幸福感や快楽を感じ、一晩で3回ほど絶頂を」 <br />
ぶわたーん!! <br />
凄まじい音をたてて顔を真っ赤にしたツェナやヘリオン達がぶっ倒れた。 </p>

<p></p>

<p>「ぜっちょー?ねーロティ。ぜっちょーって何?」「あ、あなたはまだ知らなくていいから!」 <br />
話の内容がよくわかっていないらしいネリーの質問にセリアさんが狼狽している。 <br />
･･･できる事ならもう僕も気を失いたい!というよりこの場から消えてなくなりたい!! <br />
「ほほう、3回か。まあ初めてでそれだけなら上出来だな。」 <br />
「冗談です。本当は7回ほどでした。」はい、その通りです。 <br />
実はあの後リミッター飛んでから4回続行。計6回（前戯含まず）僕頑張りすぎ。 <br />
「･･･ってナナルゥ!そんなの冗談というかシャレにならないからっていうかお願いもうやめてーっ!!」 <br />
「･･･青年。優しいというか甘そうな顔してなかなかやるな。ここまでナナルゥをメロメロにするとは <br />
いったいどんな立派なブツでアンアンいわせたんだ?ん～?」 <br />
「ななななんて言い方するんですかあっ!」 <br />
「･･･ロティ様は、昨日の行為に対して後悔や不快感を感じているのですか?」ウルウル。 <br />
ナナルゥが潤んだ目で僕を見つめてくる。ああそういう表情もなにかこうくるものがって違うだろ自分。 <br />
「そそそういう訳じゃないよそんな泣きそうな目で見ないでぇっ!いや気持ちよかったっていうか <br />
嬉しかったし後悔もないし責任とかもろうかとは思ってるってそういう事じゃなくて! <br />
そりゃ僕もナナルゥの事が好きかとか付き合ってるのかと聞かれたら隠さずに答えるけど <br />
流石にこんな事まで言っちゃうのはどうかって何ですかコウインさん <br />
そのよくやったぞとでもいいたげな祝福と慈愛に満ちた暖かなまなざしは～ッ!?」 <br />
「･･･ロティの変態スケベ不潔けだもの女の敵最低最悪のばいきん男!!!」 <br />
ズバシュ☆ <br />
ソニックストライクよりきついニムの言葉が僕を貫いた。さようなら僕の理性パート２。 <br />
「うわｒｓあああああGBきNああああｊあああidhべAMじょCqVあああduいdLーーーーーーッ!!!!!!!!!」 </p>

<p>･･･こうして。 <br />
僕とナナルゥは、めでたく（?）みんなの公認の仲となった･･･ </p>]]>
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>これもひとつのあいのうた。（仮）</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/archives/001488.html" />
    <modified>2008-07-26T05:43:25Z</modified>
    <issued>2008-07-21T14:39:30+09:00</issued>
    <id>tag:etranger.s66.xrea.com,2008:/ss/long//3.1488</id>
    <created>2008-07-21T05:39:30Z</created>
    <summary type="text/plain">「･･･ま、またなんとか、みんな無事に方舟まで戻ってこれたね?」  「はい。喜ば...</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject>スピたん～幻のナナルゥルート～</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/">
      <![CDATA[<p>「･･･ま、またなんとか、みんな無事に方舟まで戻ってこれたね?」 <br />
「はい。喜ばしい事です。」 <br />
「で、ですね。あ、あははははは･･･」 <br />
「むぅー。ナナルゥはいいなー。」 <br />
そう、今回は開拓者と遭遇する事もなく、無事に方舟まで戻ってこれた。 <br />
ツェナの話によると、おそらくあと一回で本命の目的地にまでいけるらしい。 <br />
ナナルゥも戦闘において調子を取り戻した。いや、むしろ前よりもいいくらいだ。 <br />
…それはいいとして。 <br />
「あ、あのさ、ナナルゥ?」 <br />
「何でしょうか?」 <br />
ナナルゥが、方舟に戻って来てからずっと僕にくっついてきている。（方舟を出るときもだったが） <br />
手をつなぐとか組むとかいうレベルではなく、腕に抱きつくといっていいレベルで。 <br />
うれしはずかしというか。もう恥ずかしいしかないというか。腕に胸がうふふえへへあははーなわけで。 <br />
「もうすぐ町に着くからさ、その…恥ずかしいから、ちょっと離れてくれない?」 <br />
「…ロティ様、冷たいです。…昨夜は、テントの中であんなに愛してくれたのに…」 <br />
ぶひゃあ。（セリアさん達が吹いた音）ばたーん!!（約3名ほどがすっ転んだ音） <br />
「ナナルゥ!?いや、昨日は何も…」 </p>

<p>「冗談です。」 </p>

<p>……ダレカタスケテクダサイ。 <br />
あのときのナナルゥの大暴露＆大混乱、大絶叫のあと、 <br />
互いに真剣である事と、何よりもナナルゥが嬉しそうだからという事で、 <br />
僕達二人は、晴れてみんなの公認の仲となった。 <br />
･･･だけどそれからというもののナナルゥが終始僕にべったりな訳で。 </p>

<p></p>

<p>恋人ならこうするものと言って何かと僕の世話を焼いてくれて。 <br />
自分で料理当番を買って出て、僕にあーんしてを強要したり <br />
（みんなが言うには、普通に美味しかったらしいが、恥ずかしくて味がほとんどわからなかった） <br />
みんなの目の前で膝枕に耳掃除とか（正直、鼓膜を突き破られると思って戦々恐々だった） <br />
僕が出かけるたびについて来たりとか（腕にくっついてきてむにゅー。うふふえへへあははー）。 <br />
ちなみにナナルゥに吹き込んだ大体の情報元はヘリオンとハリオンさんである。 <br />
嫌な筈はない。ものすごく嬉しい。これぞコウインさんが言っていた、男の夢というものだろう。 <br />
だけど、これらの事を全く他人の目を気にせず、おまけにしょっちゅう夜の話を人前で話すのはなんとかして欲しい。 <br />
「…ちょっとロティ。まあその、こ、恋人同士なんだし、やるなとまではいわないけど、 <br />
…いくらなんでも、こうも開けっぴろげにされちゃネリー達の教育によくないわ。」 <br />
「は、はい…。な、ナナルゥ!あのね、お願いだからみんなの前でいわないで!」 <br />
「…それは、何故なのですか?私が恋人であると言う事は、人に言えないほど恥ずかしい事なのですか?」 <br />
うるうるうる。 <br />
「えええ!?いや、そうじゃなくてさ、流石にそういう話を他の人の前でするのは」 <br />
「恋人同士なら、当たり前の行為と聞きました。ロティ様は当たり前の事が恥ずかしいのですか?」 <br />
ウルウルウルウルウルウルウルウルウルーーーーーッ!! <br />
「あわわわわわわ!?い、いやあのえと、う～あ～…。」 <br />
最近気のせいでなく、こういう事にかけてナナルゥは自己主張をするようになったと思う。 <br />
それは喜ぶべき事なのだろうが、いくらなんでもこんな話を堂々と話せる訳がない。 <br />
「えーと、あ、そうだ!そういうことは、そう、みんなには秘密なの!二人だけの秘密ってやつ!」 <br />
「…そう、なのですか。…了解、しました。これからは控える事にします。」 <br />
「そ、そう…よかった…。」 <br />
「…二人だけ。ロティ様と、私の、二人だけの……。」 <br />
…納得、してくれたんだ…よね? </p>

<p>「…で、ナナルゥ?結局、離れないのかな?」 </p>

<p></p>

<p>「……。（ウルッ）」 <br />
「ごめんなさいごめんなさいもういいませんから <br />
どうかそばにいてくださいっていうかなかないでください!」 <br />
「…♪」むにゅ～う。 <br />
「あ、あの…ナナルゥ、…柔らかいものが、思いっきり当たっているんだけど･･･。」 <br />
「当てているのです。」 </p>

<p>たすけてくださいっ!! </p>

<p>と瞳を閉じて世界の中心でラヴを叫びたい。 <br />
「うふふふ～。ナナルゥさん幸せそうですね～」 <br />
「ええ、本当に。…できるならもう少し、周りの目を気にして欲しいけど」 <br />
「周りが見えなくなるほど好きって事なのね～。まあ、こっちがもう見てられないって感じだけど。」 <br />
「ふっ…やるなロティ。俺から教える事はもう何も無い…。これで、俺も心置きなく…」 <br />
セリアさん、コウインさん、ハリオンさん、ヒミカさんが一連のやりとりを、生暖か～い目で見守っていた。 <br />
「いいな、いいな～。」 <br />
「兄さん…えっち。」 <br />
え～？ <br />
「ロティ、ずっと鼻の下伸ばしてる。恥ずかしそうにしてて、デレデレ喜んでる。」 <br />
「えっとニム、まあふたりは付き合ってるんですし…」 <br />
「そうですよ!二人とも素敵ですっ!」 <br />
「ま、あそこまでオープンだと、もう注意する気もなくなるよね～。」 <br />
「…ふん。すけべ。」 <br />
…たす、け…て…… </p>

<p>結局、ツェナの家まで（家に着いてからも）、ナナルゥは、ずっとぴったりくっついたままで。 <br />
方舟の人達の目が、やっぱりちくちく痛かった…。 </p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>三章：本気の証</title>
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    <modified>2008-07-26T05:43:25Z</modified>
    <issued>2008-07-21T14:42:22+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">　聖ヨト歴331年チーニの月緑ふたつの日。  　ラキオス王国が神聖サーギオス帝国...</summary>
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      <![CDATA[<p>　聖ヨト歴331年チーニの月緑ふたつの日。 <br />
　ラキオス王国が神聖サーギオス帝国からの襲撃を受け、七日が過ぎた。 <br />
　ラキオス王を筆頭に多大な犠牲を支払わせられたラキオスにおいて、打倒帝国は最早国是となっていた。 <br />
　レスティーナは第一王位継承者として即位を宣言し、大多数の熱狂的な国民の支持の下、ラキオス女王として玉座に就いた。 <br />
　しかし、若き女王にとって王の冠を頂く事は同時に新たな苦難の始まりでもあった。 <br />
　圧倒的な支持があるとは言え、スピリットの解放とエーテル技術の永久放棄を謳う彼女の理想は余りにも崇高に過ぎた。 <br />
　当然だと享受していた生活の豊かさを未来の為に放棄する。 <br />
　その苦痛は容易く受け入れられるものではなかったが、レスティーナは敢えて国民に強要はしなかった。 <br />
　理想とは掲げるものであり、押し付けるものではない。 <br />
　各地での遊説では反対派の批判と真っ向から議論し、レスティーナはその悉くを見事な弁舌と明確な論拠を以って論破していった。 <br />
　その姿に、国民が一人また一人とレスティーナの理想を胸に抱き始めていったのだった。 </p>

<p></p>

<p>「ふぅ…」 <br />
　今日の政務を終え、自室に戻ったレスティーナは漸く一息吐いた。 <br />
　覚悟していたとは言え、想像以上のその激務に良くぞ耐えられたものだと自分に感心してしまった。 <br />
　軍備拡張をエスペリアが担当して負担を軽減してくれなければ、間違い無く過労で倒れていただろう。 <br />
(ですが、各地を遊説した効果はあった様ですね…) <br />
　椅子に腰掛け、レスティーナは今回の遊説に確かな手応えを感じていた。 <br />
　勿論、掲げる理想を浸透させる事もあるが、それと同等に重要な目的をも兼ねていたのだ。 <br />
(恐らく、いえ、必ずや私に反乱を起こす者たちが現れるでしょう…) <br />
　目星の付いた者たちには既に間者を放ち、不隠な動きがあれば逐次報告が来る様に仕向けていた。 <br />
　無論、あちらも間者をこちらに放っている様だが、権謀術数の中に生れ落ちて今まで生きてきたレスティーナがそう易々と醜聞を晒す事は無かった。 <br />
　緩やかではあるが、レスティーナは自分の理想が皆の中で大きく動き始めていると言う確信があった。 <br />
　そして、政界での反対派について、レスティーナは敢えて彼等の議席を保障していた。 <br />
　主義の違いと言うだけで爪弾けば為政者として信頼を失うと言う事もあったが、何よりも彼等の批判は国民の抱く不満そのものでもあったのだ。 <br />
　彼等に納得のいく回答を突き付ける事は、そのまま国民への誠意の表れとなる。 <br />
　国民の信頼を得る一方で、レスティーナは確実に反対派の首を真綿で絞めていった。 <br />
(あと少し…。そうすれば、旧王党派も一掃出来るでしょう…) <br />
　帝国に勝つ為には、国を磐石なものにしなければならない。 <br />
　今は、じっと耐えるしか無いのだ。 <br />
　理想を実現させる為に。 <br />
　悠人への誓いを果たす為に。 <br />
(カオリ、待っていて下さい。必ずや、貴女を帝国から救い出してみせます…) </p>

<p></p>

<p>　と、 <br />
　くぅ… <br />
「………」 <br />
　女王の私室に、控えめな音が響いた。 <br />
(そう言えば、遊説中は全然ヨフアル食べられなかったよ～…) <br />
　ぷるぷるぷるぷる… <br />
　禁断症状が出たのか、椅子に凭れたヨフアル中毒者が小刻みに震えだした。 <br />
(う～ん…。流石に命を狙われてるし、今迄通りにお城を抜け出して買いに行くワケにもいかないって言うのは解ってるんだけどね～…) <br />
　冷静な頭が今の自分の置かれている状況を正確に判断していた。 <br />
(でも、だからこそ買いに行くって言うのはある意味ヨフアルへの証立てだと思うんだよね～…) <br />
　エーテル技術を永久放棄する覚悟は出来ても、ヨフアルだけは諦められない様である。 <br />
「レスティーナ様～？」 <br />
「入っても良い――、じゃなかった、宜しいでしょうか～…？」 <br />
　扉を叩く音と共に聞こえてきた声に、王冠に伸ばしていたレスティーナの手がピタリ、と止まった。 <br />
「許可します。入りなさい…」 <br />
　瞬時に佇まいを正して入室を許すと、扉を開けて紙袋とお茶を持った双子のスピリットが現れた。 <br />
(――っ!?この匂いはっ!?) <br />
　室内に漂ってきた匂いに、レスティーナの嗅覚が激しく反応した。 <br />
「えっと、こっちから出向く時は何か包んで行くと喜ばれるって前にセリアに言われたんだけど…」 <br />
「ネリー。そんな言い方しちゃダメだよぅ…」 <br />
　紙袋を手渡すネリーのあんまりな言い方にシアーが思わず口を出したが、既に女王の意識は紙袋の方に集中していてそれ処では無かったりする。 <br />
「あぅ、そだった…。えと、レスティーナ様。これ、街で売ってるネリーたちが好きなヨフアルなんだよ――、じゃなかった、ヨフアルです」 <br />
「街でも評判のヨフアルで～――、レスティーナ様…？」 <br />
「はっ!?」 <br />
　紙袋を凝視していたレスティーナであったが、二人の視線に気が付くと、こほん、と咳払いで仕切り直して改めて二人に向き合った。 </p>

<p></p>

<p>「それで、二人は何か私に用が有って来たと言うわけですね？」 <br />
「うん――、じゃなかった。はい、そうです」 <br />
「どうしてもしたいお話が有って来ました」 <br />
　慣れない敬語に吃りながら、二人はヨフアルの詰まった紙袋を献上した。 <br />
(やぁぁあぁったぁぁああぁっ!!久し振りのヨフアルがきたよぉおぉぉっ!!) <br />
　表面上は平静を装いながら、レスティーナが品良く二人からの土産を受け取った。 <br />
「折角ですから、使いの者にお茶の準備をさせましょう」 <br />
「はわわわわっ!?」 <br />
「えぇっと…。シアーたちがやるから、大丈夫だ――、ですから…」 <br />
　そんなレスティーナの言葉に何故か慌てだす二人であったが、それでも二人はテキパキとお茶の準備を整えた。 <br />
「では、本題に入りましょうか」 <br />
　シアーから差し出されたカップを受け取りながら、レスティーナはテーブルを挟んで二人に尋ねた。 <br />
「どうぞ、座って結構です」 <br />
「はい…」 <br />
「…」 <br />
　レスティーナが促すと二人はおずおずと椅子に腰を下した。 <br />
「えっと、レスティーナ様…」 <br />
「何でしょう？」 <br />
　ネリーの言葉を真っ直ぐに受け止め、レスティーナがその紫の瞳で見詰めた。 <br />
　その透き通った、心も見通す様なその雰囲気に一瞬呑まれそうになったが、ネリーは発起するとその蒼い瞳にレスティーナを映して口を開いた。 <br />
「あ、あのね。ネリーたちはスピリットだけど、人間を好きになって良いの――、ですか…？」 <br />
　その質問に、レスティーナ目が少し開いた。 <br />
「え、えっと。その…」 <br />
「続けなさい…」 <br />
　レスティーナの態度に瞳が揺れたネリーであったが、その言葉に従って再び勇気を出した。 </p>

<p></p>

<p>「ネリーたちはスピリットだから人間とは違うけど、それでも好きになっちゃったらどうすれば良いの…？」 <br />
「それはユートの事ですか？」 <br />
　二人はコクリ、と同時に頷いた。 <br />
　そして、次の瞬間に一気に耳迄赤くなった。 <br />
「って、どうして解ったの!?レスティーナ様っ!?」 <br />
「わわわわっ!!」 <br />
　慌てふためく二人を余所に、レスティーナはヨフアルを囓ると優雅に咀嚼して茶で唇を湿らせた。 <br />
　「いや、知ってるから…」と言う言葉を飲み込んで、レスティーナは「落ち着きなさい」と二人を宥めた。 <br />
「貴女たちはスピリットですが、それだけなのです」 <br />
「それだけ…？」 <br />
　シアーの呟きにレスティーナが首肯した。 <br />
「確かに、スピリットは人間とは違います。ですが、それがどれ程の意味を持つのでしょうか？」 <br />
　人間よりも優れた能力や容姿を備えたスピリットたる彼女たち。 <br />
　確かに、兵器として利用される彼女たちは脅威であろう。 <br />
　だが、心ある彼女たちの本質は人間と何一つ変わらないとレスティーナは知っていた。 <br />
「貴女たちがユートを好いている事に、ユートが人間である事が関係ありますか？違う筈です。ユートだからこそ好きになったのでしょう？」 <br />
「うんっ」 <br />
「ユート様だから好きになったの…」 <br />
　誇らしく頷く二人を見て、レスティーナは目元に優しい光を灯した。 <br />
「では、ユートは貴女たちがスピリットである事を気にしているのですか？」 <br />
　その質問に、二人は大きく首を振って否定した。 <br />
「ならば、何も問題無いではありませんか」 <br />
「で、でも…」 <br />
「その…」 <br />
　尚も、食い下がる二人にレスティーナは何かを感じ取った。 <br />
「私とて、いつでも時間が取れると言うわけではありません。ですから、思っている事は全部この機会に言わねば次はいつになるか分かりませんよ？」 <br />
　意地の悪い言い方かもしれないと思ったが、二人の想いの先を知りたいと思ったレスティーナは敢えて言葉を選んだ。 </p>

<p></p>

<p>　そして、その言葉に釣られた二人の頬は見るからに茹だっていた。 <br />
「ネリーたち、ユート様のお嫁さんになりたい…」 <br />
「ユート様と、結婚したいな…」 <br />
　りんご～ん、とレスティーナの頭の中で福音の鐘が鳴った。 <br />
　花嫁衣裳に身を包んだネリーとシアーに囲まれた新郎姿の悠人。そして、彼等を祝福する親しい者たち。 <br />
　そんな光景が脳裏をよぎった。 <br />
　ついでに、泣いている者の涙の意味は各々の解釈に任せておく。 <br />
「えっと、レスティーナ様…？」 <br />
「やっぱり、ダメなのかなぁ…？」 <br />
「はっ!?」 <br />
　投げたブーケが原因で、国が滅びそうになった辺りでレスティーナの意識が戻ってきた。 <br />
「一夫多妻制度でなければ、世界が滅ぶ危険がありますね…」 <br />
「「………？」」 <br />
　前後の見えない、突然のレスティーナの台詞にネリーとシアーが心底不思議そうな顔をしていた。 <br />
「い、いえ。ユートが二人を娶ると言うのなら、婚姻制度を考える必要もあると言う事です」 <br />
　思わず取り繕ったレスティーナの言葉であったが、実はその言葉は二人にとっては至上の言葉であった。 <br />
「ほ、本当っ!?レスティーナ様っ!!」 <br />
「シアーたち、二人ともユート様と結婚できるんだ～♪」 <br />
「いや、あの…」 <br />
　目を輝かせて歓喜する二人に、「二人とも、お待ちなさい」と言う事がどうして出来ようか。 <br />
「有難う、レスティーナ様っ!!」 <br />
「シアーたち、頑張るね」 <br />
　既に敬語も忘れた二人は、レスティーナに礼を述べると元気良く部屋を出て行った。 <br />
　一人、部屋に残ったレスティーナは紙袋からヨフアルを取り出すとおもむろに囓り付いた。 <br />
「まぁ、いずれはスピリットも人間も一緒になるワケだし…。早めに前例を作っておいた方が良いよね？」 <br />
　茶を飲み、レスティーナは一息吐いた。 <br />
「ユート君、二人は本気だよ？覚悟しといてね～…」 <br />
　そして、更にヨフアルを囓って―― <br />
「あ…!!そう言えば、多妻制なら私にもまだチャンスってあるのかな？」 <br />
　そんな事をボヤいていた。 </p>]]>
      
    </content>
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    <title>三章：第一詰所を後にして…</title>
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    <modified>2008-08-03T04:50:53Z</modified>
    <issued>2008-07-27T13:32:30+09:00</issued>
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    <created>2008-07-27T04:32:30Z</created>
    <summary type="text/plain">　まだ草木が朝露に濡れる朝。  　悠人は『求め』を腰に差して鞄を背負うと、見納め...</summary>
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    <dc:subject>Twinkle fairies</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>　まだ草木が朝露に濡れる朝。 <br />
　悠人は『求め』を腰に差して鞄を背負うと、見納めとばかりに部屋を眺めた。 <br />
「さて、そろそろ行かないとな…」 <br />
　決して多くはなかった私物の確認も終え、悠人は今まで自室であった部屋を出ると改めてそう呟いた。 <br />
　ファンズマゴリアの暦で凡そ一年間。悠人にとって間違い無くこの部屋は自分の部屋であり、そして第一詰所は帰る家であった。 <br />
　廊下を渡り、居間から玄関に出ようとした時、悠人は出入り口で待つ人物たちに気が付いた。 <br />
「お、皆。見送りしてくれるのか？」 <br />
「ん…」 <br />
「はい、本当はもっとちゃんとお見送りをしたかったのですけど…」 <br />
「………」 <br />
　悠人の視線の先には、いつも通りのアセリアと申し訳なさそうなエスペリア、そして寂しそうな表情を浮かべているオルファリルが居た。 <br />
「はは、こうやって見送ってくれるだけで充分だよ。エスペリア。そんな大層な事じゃないし、あんまり凝った事をされると出て行く時に俺が寂しいからな…」 <br />
　「それじゃ、行くから…」と、悠人が皆の脇を抜けようとして時、不意に悠人の袖が握られた。 <br />
「ユート…」 <br />
「ん、どうしたんだ？アセリア」 <br />
　振り返ると、アセリアが悠人を見詰めていた。 <br />
「ユート、偶には、ん、帰って来い。料理、上手くなって、きっとご馳走する…」 <br />
「あぁ、それは楽しみだな…。その時は腹一杯食べさせて貰うから、腕を磨いておいてくれよ？」 <br />
　悠人が笑うとアセリアは大きく頷き、トン、と胸を叩いて「あぁ、任せろ…」とその手を放した。 <br />
　表情が変わらないのは相変わらずであったが、それでも伝わってくるアセリアの気持ちが嬉しかった。 </p>

<p></p>

<p>「うぅ～っ…。パパぁ、本当に行っちゃうの？」 <br />
　その隣で、オルファリルが離別を惜しむ表情で悠人を見上げてきた。 <br />
　悠人としても、慣れ親しんだ場所を離れる寂しさを覚えないわけではない。 <br />
　しかし、それも覚悟の上で第一詰所を出ると既に決めたのだ。 <br />
「そんな顔するなって。別にもう会えないってわけでもないんだからさ…」 <br />
　悠人がオルファリルの頭をくしゃくしゃと撫でるが、それが挨拶なのだと言う事は誰が見ても明らかであった。 <br />
「行っちゃ嫌だようぅ…。パパぁ…」 <br />
「オルファ、あまりユート様を困らせてはいけませんよ…」 <br />
　エスペリアがそっとオルファリルの肩を優しく抱いて宥めた。 <br />
「ですが、本当の事を言いますと私も少し寂しいです。ユート様…」 <br />
「ん…」 <br />
　皆が別れを惜しんでくれているのだと思うと、悠人の中に堪らない嬉しさとそれと同等の切なさが湧き上がってきた。 <br />
　だが、そんな想いを胸に仕舞うと、悠人は貰った思い出の返礼にと大きく笑顔を見せた。 <br />
「皆、サンキュ…。じゃあ、俺行ってくるから…」 <br />
「ん、行ってこい…。ユート…」 <br />
「行ってらっしゃいませ。ユート様…」 <br />
「パパぁ、オルファたち待ってるからね～」 <br />
　手を振って応えると、悠人は第一詰所を後にした。 <br />
　新たな一日の始まりを謳う小鳥たちの囀りを聞きながら、悠人はその一歩を踏み出した。 </p>

<p></p>

<p>「どぉりゃあぁあぁっ!!」 <br />
「え～いっ!!」 <br />
「うおぉおぉぉっ!!」 <br />
「やぁっ!!」 <br />
　訓練場の一角で、悠人とシアーが激しい打ち合いを繰り広げていた。 <br />
「ぐぁっ!?」 <br />
「たぁっ!!」 <br />
「くっ!!」 <br />
「はぁっ!!」 <br />
　最初は拮抗していた二人であったが、十数合と進むにつれて掛け声に均衡の崩壊が表れ始めた。 <br />
「うあっ!!」 <br />
「とぁっ!!」 <br />
「くあっ!?」 <br />
「え、え～と…。次の掛け声は何にしようかな…」 <br />
　徐々に優劣が明確になるにつれて、打ち合いの綻びも広がっていく。 <br />
「せぇいやぁっ!!」 <br />
「あ、そ～だ。『これで終わりだよ～!!』」 <br />
　裂帛の気合で繰り出された互いの一撃が火花を上げてぶつかりあった。 <br />
　床を鳴らす一振りの模造剣の甲高い金属音が、その儘二人の訓練を終わらせる報せとなった。 </p>

<p>「はい、ユート様」 <br />
「お、サンキュ。ネリー」 <br />
　濡れたタオルで汗を拭きながら、悠人は今だに痺れの残る自分の手を眺めていた。 <br />
「あの…。ユート様、大丈夫…？」 <br />
　そんな仕草が気になったのだろう。シアーが不安そうな表情で覗き込んできた。 <br />
　しかし、悠人はヒラヒラと手を振ると都合(ばつ)の悪い表情で笑い掛けた。 <br />
「いや、大丈夫だから。それより、シアーの一撃ってどうして俺のより重いんだろうな？」 <br />
　互いの得物は神剣ではない刃の潰された模造剣。 <br />
　しかも、背丈に見合った大きさを使っている為に悠人よりも二回りも三回りも小さいシアーの得物である。 <br />
　当然、シアー自身も小柄であるので普通に打ち合って悠人が力負けする道理は無い筈であった。 </p>

<p></p>

<p>「それは、『力』を込めてるからだよ。ユート様…」 <br />
　模造剣を構えて、シアーがそう答えた。 <br />
「『力』？」 <br />
　悠人の呟きに、シアーがこくんと頷いた。 <br />
「俺だって力一杯打ち合ったんだけど…？」 <br />
「ううん、それは違うよ？ユート様」 <br />
「？」 <br />
　理解出来ない悠人を見てシアーは困った表情を浮かべたが、何かを思い付いたのか「ユート様、ちょっとシアーを抱っこしてみて」と言って悠人を立たせた。 <br />
「？まぁ、良いけど…」 <br />
　今一解らなかったが、悠人は言われた通りにシアーを抱き抱えた。 <br />
「ふふ～♪」 <br />
　結果は予想通り。羽の様に軽いシアーは簡単に悠人に持ち上げられ、シアーは満足そうな表情で悠人を見下ろしていた。 <br />
「あ～!!ネリーも、ネリーも～!!」 <br />
　案の定、隣で見ていたネリーが声を上げてきた。 <br />
「あ～…。分かった、分かったから…」 <br />
　そう言ってシアーを下すと、今度はネリーを高い高いする悠人であった。 <br />
「別にシアーは遊んでるわけじゃないよ？」 <br />
「えへへへ～♪でも、ネリーは羨ましかったんだもん」 <br />
　一頻り楽しんで満足したのか、下されたネリーはすっかり上機嫌になっていた。 <br />
「それじゃあ、ユート様。今度は仰向けになって寝てみて」 <br />
「こうか？」 <br />
「うん」 <br />
　悠人が横になった事を確認すると、シアーは悠人の体を暫く眺め「あ、多分ここかな？」と、悠人の体に圧し掛かった。 <br />
　シアーの尻や太腿が悠人の腹部に押し付けられ、そこから伝わってくる形や柔らかさ、そして体温に悠人の心臓が思わず高鳴った。 <br />
「し、シアー？」 <br />
「ほら、もう動けないよ？ユート様…」 <br />
　焦った悠人と対照的に、シアーは仕掛けた罠に獲物が捕まった様な何処か悪戯っぽい表情で悠人を見下ろしていた。 <br />
「え？」 <br />
　身を起こそうとした悠人であったが、驚くべき事に先程まで難無く持ち上げたシアーの体がいくら力を込めても持ち上げられなくなっていた。 </p>

<p></p>

<p>「アレ、さっきは普通に持ち上げられたのに？」 <br />
　腕や足を使って?く悠人であったが、まるで縫い付けられた標本の様に動く事が出来なくなっていた。 <br />
「えっとね、今シアーはユート様に只乗ってるんじゃなくて『力』を掛けてるからだよ？」 <br />
　腹筋、背筋、その他の筋肉を駆使して起き上がろうと試みるが、結局悠人はシアーを退かす事はおろか、体の向きすら変える事は出来なかった。 <br />
「『力』を込めるって言うのは、単に力を出すのとは違うんだよ？力比べでは負けても、こうすればシアーだって負けないもん」 <br />
　悠人を『力』で押さえ込めた事に少し得意になったのか、シアーが意地悪そうな表情を浮かべていた。 <br />
　成程、『力』は単純に出すのではなくこうやって要所に集中させる方が効率的なのだと悠人は理解した。 <br />
　とは言っても、悠人にシアーの様な『力』の扱い方など一朝一夕で身に付きそうにないのだが…。 <br />
「ネリーもやる～!!」 <br />
「うわっ!?」 <br />
「わわっ!?もう、ネリー」 <br />
　二人の遣り取りを見ていたネリーが堪らずにシアーの前、つまり悠人の上腹部に圧し掛かった。 <br />
「えっへっへっへ～♪どう、ユート様？これでもう逃げられない？」 <br />
　『力』を込めてグリグリと押し付けてくるネリーであったが、それは同時にネリーの服の下をそのまま悠人に押し付ける行為であった。 <br />
　つまり、大きく開かれた太腿やその根元の白い三角の丘の頂の膨らみの形やら。 <br />
　下からモロに見えている部分が、見せ付けられる様に悠人の腹部に擦り付けられていた。 <br />
「ネリー、狭いよう」 <br />
「ね、ネリーっ!?み、見えてるからっ!?下着が――、むぅっ!?」 <br />
「ひゃうんっ!?」 <br />
　悠人の言葉はシアーから背中を押されたネリーによって封じられた。  <br />
　真っ暗な視界で形が分かる程に密着したネリーの丘に完全に口が塞がれた悠人は鼻でしか呼吸が出来ず、その布一枚越しの感触と匂いが否応無しに悠人の脳髄を焼いていた。 </p>

<p></p>

<p>「あ、あぅっ…!?わわっ、ちょっとシアー!?押さないで!!ふやぁっ…!?」 <br />
「？」 <br />
「～～～っ!!」 <br />
　珍しく赤面したネリーが悲鳴の様な声を上げるが、前が見えないシアーは何やら慌てているネリーともごもご唸っている悠人の声に首を傾げていた。 <br />
　やがて、二人の下で暴れていた悠人が力尽きて静かになった頃、漸く事態に気が付いたシアーがネリーの背中から手を放したのであった。 </p>

<p>「ごめんなさい、ユート様…」 <br />
「もう、怒ってない…？」 <br />
「いや、何か俺の方が謝らなくちゃいけない気がするンだけど？」 <br />
　一日の訓練を無事(？)に終えた三人は帰るべき家に帰るべく、夕焼けの家路に着いていた。 <br />
　幸い、あの『力比べ』は休憩時間であった為に他のメンバーの目に触れる事は無かったが、それでも今日は何処か緊張しっ放しの訓練になってしまっていった。 <br />
　何と言うか、二人を見るだけで感触やら体温やら匂いやらを思い出してしまい、終始腰が引けた状態で訓練をせざる得なかった。 <br />
　親友の生臭坊主ではあるまいし、と己に喝を入れてみたが、いくら年下とは言え結局二人はれっきとした女の子であったと痛感させられたのだ。 <br />
　悠人は二人に対する自分の認識を改めて思い知らされてしまっていた。 <br />
　そして、それに反応する自分の中の雄の存在にも…。 <br />
(って、何を考えているんだ俺は？二人とも佳織くらいの歳なんだぞ？) <br />
　邪念を振り払うかの様に悠人は頭を振ってみたが、余計に頭が混乱するだけであった。 <br />
「あれ？ユート様、こっちで良いの？」 <br />
「この儘だと、第二詰所に着いちゃうよ？」 <br />
　と、第一詰所と第二詰所へと分かれる道を少し過ぎた辺りでネリーとシアーが悠人に尋ねて来た。 <br />
「あぁ、別に大丈夫なんじゃないかな？」 <br />
「え？そうなの？」 <br />
「泊まっていくの？ユート様？」 <br />
　途端に二人の表情が輝いた。 <br />
　そんな二人を見て、悠人の中で不安が募った。 <br />
(本当に大丈夫なんだろうか？俺は…) <br />
　と、そう考えて、悠人はある事に気が付いた。 </p>

<p></p>

<p>「ん？って言うか、二人は知らないのか？」 <br />
「？何が？」 <br />
「どうしたの？ユート様？」 <br />
　首を傾げる二人の反応を見て、悠人は己の推測が当たっている事を確信した。 <br />
「ホラ、第一詰所ってこの前燃えちゃっただろ？」 <br />
「うん、知ってるよ」 <br />
「でも、少し燃えちゃっただけで済んだって聞いてたよ？」 <br />
「いや、まぁそうなんだけど…」 <br />
　迅速な消化活動により、放火の憂き目に遭った第一詰所は全焼どころか半焼にも届かぬ程度の小火で済んだ。 <br />
　これ自体は不幸中の幸いであったと言えるであろう。しかし、全てが無事であったわけではなかったのも事実であった。 <br />
「何て言うか、俺の部屋だけ綺麗に燃えちゃってさ…」 <br />
「え…？」 <br />
「それって…？」 <br />
　驚きに見開かれた二人の目の前に、悠人は今日第一詰所から持ってきた私物の入った鞄を出した。 <br />
「今日から第二詰所の方で暮らす事になったんだけど…。その、宜しくな？」 <br />
「………」 <br />
「………」 <br />
　しかし、悠人の言葉を聞いた二人は凍り付いたかの如く微動だにしなかった。 </p>

<p></p>

<p>「えぇっと、二人とも？」 <br />
　悠人が心配になって二人を覗き込もうとして、 <br />
「やあぁあぁぁあぁっっったあぁぁあぁぁっっ!!」 <br />
「ユート様と一緒だよぉおぉぉっ!!」 <br />
「わわっ!?二人とも…!!」 <br />
　突然の大歓声と共に、二人は悠人に抱き付いた。 <br />
　余程興奮しているのか、背中からは純白のウィング・ハイロゥまで広がっていた。 <br />
「一緒!!一緒だよ!?ユート様っ!!」 <br />
「ユート様、ユート様～!!」 <br />
　幸せそうな、否、幸せの表情を浮かべて二人は悠人にしがみ付いた。 <br />
「えへへへ～♪」 <br />
「にゅう～♪」 <br />
　二人は新しい家族を連れて、悠人は新しい家へと三人で腕を組んで歩いた。 <br />
「それじゃ、早く俺たちの家に帰ろうな？腹も減ったし…」 <br />
「うん!!」 <br />
「今日は何のご飯なのかな～？」 <br />
(ま、何とかなるのかもな…) <br />
　二人の笑顔を見ながら、悠人も笑いながらそう楽観する事にしたのであった。 </p>]]>
      
    </content>
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    <title>6章　これもひとつのあいのうた。前編</title>
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    <modified>2008-08-09T02:41:51Z</modified>
    <issued>2008-08-04T11:37:10+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">あの人は、自分とこのような関係になって、喜んでくれているのだろうか。  自分があ...</summary>
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    <dc:subject>スピたん～幻のナナルゥルート～</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>あの人は、自分とこのような関係になって、喜んでくれているのだろうか。 <br />
自分があの人と、否、誰かとこのような関係となる事など想像もしなかった。 <br />
いまだにこの状況に戸惑いを感じるが、不快な気持ちは微塵もない。 <br />
ただ、うれしい。あの人の事をこのように想えるという事が。そう思える様になった自分が。 <br />
（幸せ、とは、今のような気持ちを、言うのでしょうか…?） <br />
自分は、変わったのだろうか。 <br />
あの、何も感じず、何も思わなかった、戦争時代の自分と比べて。 <br />
ここまで来るのは、本当に危ない綱渡りだったような気がする。 <br />
もし、自分があの戦場で散っていたなら。 <br />
もし、自分に大切と思う人が一人もいなかったら。 <br />
もし、自分が完全に絶望して、『消沈』に全てを委ねてしまっていたら。 <br />
もし、あの人と逢う事がなかったなら。 <br />
ほんの少しでも歯車が狂えば、自分はどうなっていたかと思うと怖気が走る。 </p>

<p>―そういえば昔、そんな記憶もないのに、自分の在り方に、この世界に憤った人がいたような― </p>

<p>もしかしたら、自分は誰であろうと構わなかったのかもしれない。 <br />
自分を認めてくれるのであれば。自分の空ろな部分を満たしてくれる人であれば。 <br />
だけど、なんとも勝手な言い分かも知れないが、 <br />
もう、あの人以外では駄目なのだ。 <br />
いつからこんな風に想ったかはよくわからない。 <br />
方舟に来て、絶望の中であの人の言葉を聞いた時か。あの人の手の温かさを感じた時か。 <br />
いや、はっきりとそう意識した瞬間は無かったのかもしれないけど。 <br />
まだ、あの人と出会って半年と少ししか経っていなくて、その間、特に劇的な何かがあった訳でもないけど。 <br />
気が付けば、あの人の存在が自分の中でどんどん大きくなっていった。 <br />
あの人の声を、笑顔を、手の温かさを思い浮かべるだけで、自分の空虚な部分が満たされる気がする。 <br />
自分は、あの人が好きなのだ。誰よりも誰よりも、あの人が。 <br />
おそらく今後、どのような人に出会おうとも、あの人以上に想う事は不可能だろうと思う。 <br />
この想いが、自分の独りよがりでなく、あの人もそうであったらいいと想うのは、我侭すぎるだろうか? </p>

<p></p>

<p>「ナナルゥさん、お風呂ですか?」 <br />
「はい。少々遅くなってしまいましたが。」 <br />
「あ、夕食の後片付けしてたんですね。でもさっき、ロティさんが浴室に入って行きましたよ?」 <br />
「そうですか…それでは、また後に致します。」 <br />
「!　待って下さい!これはチャンスですよナナルゥさん!」 <br />
「はい?」 <br />
「いいですか、恋人ならこういうときは…」 </p>

<p>「ご指導、感謝します。では、早速実戦に入ろうと思います。」 <br />
「はい!頑張ってくださいねっ!」 </p>

<p>―どうか、あの人に、喜んでもらえますように― </p>

<p>「…つ、疲れたぁ…」 <br />
その後。 <br />
あまり語りたくない（何度もいうが、嫌ではない）ナナルゥとのやり取りが色々あって。 <br />
今、僕は遅めのお風呂に入っている。 <br />
「嬉しいんだけど、やっぱり恥ずかしいなぁ…」 <br />
身体を洗いながら、今日の夕食の事を思い返して見る。 </p>

<p>今日の夕食は、ナナルゥが料理当番であって。僕の隣に座って、 <br />
「どうぞ、ロティ様。」と。 <br />
それが当然と言うように、自分の作った料理を箸で摘んで、僕の口元にもっていく。 <br />
「……ありがとう。いただき、ます。」 <br />
ここで変に拒否すると、またナナルゥは泣きそうになるだろう。 <br />
ナナルゥの泣き顔は見たくないのであって、 <br />
決して意思が弱い訳ではないと自分に言い聞かせてナナルゥの料理を頂く。 <br />
「…うん、おいしいよ。ありがとう、ナナルゥ。」 <br />
少し耐性がついてきたのか、今日はちゃんと味がわかった。 <br />
「…ありがとうございます。」 </p>

<p></p>

<p>そういってナナルゥがわずかに口元を綻ばせる。それが嬉しいのだと解釈するのは、考え過ぎではないだろう。 <br />
そしてナナルゥは僕が口をつけた箸で、それが当然というように料理を自分の口に入れる。 <br />
…やっぱり恥ずかしい。更にみんなの視線が痛い。 <br />
生暖か～い視線、好奇の視線、いたたまれないという様な視線、約一名の冷た～い視線は黙殺する。 <br />
更にその後調子に乗ったヨーティアさんが恋人同士なら口移しで食ってみろと言い出し、 <br />
みんながまたもや料理を吹き出し、ナナルゥはそれを実践しようとしたが、流石に僕も断り。 <br />
涙目になったナナルゥを僕、セリアさん、ヒミカさんの三人で全身全霊で説得し、なんとか納得してもらえた。 <br />
ナナルゥには悪いが、流石に僕もそこまで神経が図太くできていない。 <br />
…まぁ、興味が…ない訳ではないが…。 </p>

<p>「まあ、ナナルゥが…感情が表に出せるようになってきてるって事かな…」 <br />
誰にいう訳でもなく、虚空に向かって一人呟いてみる。 <br />
半年前、ラキオスの軍に入り、ナナルゥと出会ったときの事が脳裏に蘇る。 </p>

<p>「…ナナルゥ･ラスフォルトです。」 </p>

<p>その姿を見たとき、比喩でなく背筋が凍ったと思った。 <br />
スピリットらしいその美貌は一切感情が伺えず、 <br />
整った顔立がまるでよくできた人形の様な不気味さを醸し出していた。 <br />
その瞳は冷たいと言うよりは、何も写さない曇った硝子玉のようだった。 <br />
それまでにヘリオンやネリー達と会い、町中でもたまに出会うスピリット達を見てきただけに、ショックは大きかった。 <br />
神剣に取り込まれたスピリットの事は、話としては聞いていたが、 <br />
完全にとり込まれたのではないにせよ、そう言うスピリットを実際に見た事はなかった。 <br />
エトランジェのハーフと言う事がばれ、 <br />
やり場のない怒りを周囲にぶちまけたりしていた自分など全然甘かった。 <br />
怒る事さえできない、そもそも怒るという事が分からない。 <br />
悲しいや悔しいという感情さえ持つ事ができなかったのだと。 <br />
一体、どうなったらあの様になってしまうのだろう。 <br />
戦争が終わったいま、ナナルゥはどう思っているのだろう。 </p>

<p></p>

<p>「あ、あの、ナナルゥさんは少しずつ、感情を取り戻してきてるんです。 <br />
その、無表情に見えるかもしれませんが、凄くいい人ですから! <br />
だから、その、えっと…すぐ、仲良くなれますから!」 <br />
ヘリオンはそう言ったが、初めはどう接していいか分からず、ナナルゥとまともに顔を合わせる事もできなかった。 <br />
ネリーやシアー達がナナルゥに気さくに話しかけ、ナナルゥが淡々とそれに応じる光景を見つめ、 <br />
ナナルゥがみんなに好かれている事を感じ、まともに話せない自分に苛立ちを覚えた。 <br />
なかなかナナルゥと打ち解けないまま、出会って一週間経ち、その日の夜― </p>

<p>―傷口から血が滴り落ちる。それが地面に落ちる前に金色の霧になり、消えた。 <br />
傷口からも金色の霧が立ち上がり、周囲の視線が驚愕から忌避と恐怖に変わる。 <br />
その日から全てが変わった。祖父が、友達が、家の使用人が、町の全てが敵になった。 <br />
いや、自分が敵に回した。敵なのだと、決めた。 </p>

<p>（化物の証だ） </p>

<p>だまれ。 <br />
そう言った奴を殴った。言ったと思う奴を殴った。そう思ってそうな奴を殴った。 </p>

<p>（エトランジェのハーフ） <br />
（不貞の娘の子） <br />
（家督の恥） </p>

<p>五月蝿い。うるさい。うるさいウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイ。 <br />
自分の何が悪い。母さんを馬鹿にするな。父さんを化け物なんて言うな。 </p>

<p>―やめてくれ。またあの夢なんだ。頼むからもう覚めてくれ。 <br />
これ以上、続きを見せないでくれ。僕にあんな事を考えさせないでくれ。 <br />
早く覚めろ。早く。　はやく― </p>

<p>何で自分がこんな目に遭うんだ。何で自分が化物なんて言われなきゃいけないんだ。 </p>

<p>―やめろ。その先を言うな― </p>

<p></p>

<p>何で父さんは普通の人じゃなくてエトランジェなんて奴なんだ。 <br />
何で母さんは父さんなんかと結婚したんだ。 </p>

<p>―違う!僕はこんな事思っていない!! <br />
僕は父さんと母さんが好きだった。 <br />
三人で過ごした時間は僅かで、裕福じゃなかったけど、決して不幸なんて思わなかった― </p>

<p>本当にそうか?ならなんで自分は父さんの顔が思い出せないんだ。 </p>

<p>―それは、僕が幼かったから― </p>

<p>そうか?自分が忘れたかったからじゃないのか?化物が父親だって認めたくないから… </p>

<p>―違う!!違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!! <br />
やめろ!!もう言うな!!頼むから、その先を言うな― </p>

<p>何で自分はこんな風に生まれたんだ。 <br />
化物に生まれてきたくなんかなかった。二人の間に生まれたくなかった。 </p>

<p>「やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーっ!!!!!!!」 </p>

<p>絶叫と共に跳ね起き、自分が物凄い汗を書いている事に気付いた。 <br />
「…はあ、はあっ…」 <br />
今のは夢であり、時計は午前2時前。ここは自分のあてられた部屋であり、僕はベットの上だ。 <br />
「…また、あの夢か…。」 <br />
ここ数年、たまに見てしまう夢。 <br />
正体がばれ、周りにやつあたりしていたあの時のこと。 <br />
そして頭に響くどす黒い感情。やり場のない怒り、悔しさ、憤り、そして― <br />
「…やめろ。それ以上考えるな…!」あれは僕の本心じゃない。 <br />
僕は。僕、は… </p>

<p></p>

<p>「…こ、降参…。」 <br />
「…わかりました。しばらく休憩にしましょう。」 <br />
朝の夢のせいで悶々とした気持ちを抱えつつ、僕は初めてナナルゥと模擬戦をしてみた。 <br />
結果は惨敗。永遠神剣を持ち、毎日訓練を欠かさないナナルゥにコテンパンにされてしまった。 <br />
「どうぞ。」ナナルゥが瓶に詰まった水をを差し出してきた。 <br />
「あ、ありがとう…はあ…」2口で水を飲み干して大の字に寝転び、一息つく。 <br />
「…その、やっぱり強いね、ナナルゥは。」 <br />
「いえ、私は神剣魔法による戦法を重視しているため、白兵戦はそれほど長けている訳ではありません。」 <br />
「そ、そっか…」謙遜なのかフォローなのかわからないが、どちらにせよ更に傷つく。 </p>

<p>「…ふ、あぁぁ…」 <br />
あの夢のあと結局朝まで眠る事ができず、横になると急激に眠気が襲ってきた。 <br />
「ごめん…寝不足で、少し眠ってもいいかな…?」 <br />
「了解しました。15分程度の仮眠は効率的です。時間がきたら起こすと言う事で構いませんか?」 <br />
「うん、ありがとう。お願い、する、よ…。」 <br />
表情が変わらないからわかりにくいけど、親切なんだな… <br />
そう思いながら、意識が闇に沈みゆく― </p>

<p>キライだ。みんなみんな、この世の全部、だいっきらいだ。 </p>

<p>祖父も、町の奴らも、この世界も、こんな風に生まれた自分も </p>

<p>こんな風に生んだ母さんも、その理由になった父さんも、ぜんぶ </p>

<p>―嫌だ。こんな事思いたくない。 <br />
こんな自分は嫌だ。こんな情けない自分はいやだ。こんな汚い自分はいやだ。 <br />
嫌だ、イヤだ、いや </p>

<p>「ロティ様!」 </p>

<p></p>

<p>「ロティ様!」 <br />
「っ…!あ……!!」 <br />
「…大丈夫ですか?いきなりうなされだしたものですから…。」 <br />
ナナルゥが珍しく、少し焦った顔をして僕を覗き込んでいた。 <br />
「…ごめん、大丈夫。ちょっと…嫌な夢を見ちゃって…。」 <br />
「…夢、ですか。…事情を、聞く訳にはいきませんか?」 <br />
「……そうだね。なんでもないとは、言えないよね…」 <br />
気付いたら、僕の口は勝手に言葉を紡ぎ出していた。 <br />
何故あんなに簡単に話してしまったのだろうか。 <br />
あの、僕が密かにずっと悩んでたことは、先生にさえ話した事がなかったのに。 <br />
いや、違う。 <br />
多分僕は、ずっと誰かにあの事を相談したかったのだと思う。 <br />
「…僕が、エトランジェのハーフだっていうのは知ってる?」 <br />
「…はい。ミュラー様から、聞いております。」 <br />
「そっか。…僕の父親は、エトランジェだったんだ。 <br />
父親は、僕が物心つく前に死んで、顔も覚えていない。 <br />
母親は、貴族の一人娘らしかったけど、父親と駆け落ちして、 <br />
父親が死んだ跡、生活は苦しかったけど、必死に僕を育ててくれた。 <br />
だけどある日、怪我をしたときにエトランジェの子だってばれちゃってね。」 <br />
ああ、それから、全てが変わった。 <br />
「僕と母親はそれから爪弾きにされて、結局母親は実家に戻って再婚したんだ。 <br />
新しい子供もできて、もう何年も会っていない。 <br />
あと、両親の結婚に反対してた祖父が、僕を軍に売り込むために、僕を鍛えてたっけ。」 <br />
皮肉だが、そのおかげで今この軍に入る事ができるようになったのだろう。 <br />
「それから先生に会うまで、僕は凄く荒んでいたんだ。 <br />
目に入るもの全てが敵に見えて、みんなが僕を嫌な目で見てる、 <br />
みんなが僕の悪口を言ってる様に思えて、力に任せて何の意味もなくみんなをぶっ飛ばしたり、 <br />
物を壊したりして。…気を引きたかったのかな。いっそのこと、罵ってくれても構わなかった。 <br />
何も言わずに遠ざかって欲しくなかった。見て見ぬふりをされたくなかった。何か僕に反応してくれたら、 <br />
僕はそれでやめれるのにってね。…当然みんなますます僕を遠ざけて、更に僕は荒んでいった。」 <br />
今思えば愚かだったと思うが、その時はそれ以外に方法が見つからなかった。 </p>

<p></p>

<p>「それで、ある日町にやってきた先生と鉢合わせしてね。難癖つけて喧嘩を吹っかけて <br />
ぼこぼこにのされちゃってね。それから何度も突っかかって、何度も倒されて、 <br />
先生が剣聖ミュラーだって分かって、そのまま弟子にしてくれって頼んだんだ。 <br />
…変な言い方かもしれないけど、あの時僕は嬉しかったんだ。 <br />
どんな形であれ、先生は僕を、見て見ぬふりをせずにちゃんと見てくれたから。」 <br />
そして、先生は今のこの名前をくれた。 <br />
今での自分をやり直す為の。 <br />
ナナルゥは僕が話す間、僕の隣に腰掛けて一言も話さずこちらに顔を固定していた。 <br />
できれば相槌の一つくらいは打って欲しいものだが、ちゃんと聞いてくれているというのは分かった。 </p>

<p>「…町の事は、もう今はいいんだ。僕も悪い所もあったし、納得できないところもあるけど、 <br />
今は憎んだりしてない。…だけどさ」 </p>

<p>待て。これ以上言ってしまっていいのか? <br />
これ以上言えば、言葉にしてしまえば、僕は― <br />
「…僕は、両親の事が、嫌いなのかもしれないって。」 <br />
ああ。言ってしまった。 <br />
言い出したらもう止まれない。面白いくらいに抑えていた言葉が溢れ出す。 <br />
「…両親が、僕を大切だと思ってくれてたんだろうなとは思うんだ。 <br />
貴族だった母さんが慣れない家事や仕事を頑張ったのも僕のためだった。 <br />
再婚した事だって別にいいんだ。顔を合わせる気にはならないけど、 <br />
今…母さんが幸せって思っているのならそれでいい。」 <br />
今、母さんはどうしているだろうか。幸せ、なのか? <br />
「父さんが、エトランジェが差別される事が悔しくてたまらなかった。 <br />
何も父さんは悪い事をしてないのになぜ化物なんて言われないといけないんだって。 <br />
…うん。僕も、2人が好きだった。 <br />
その、筈だった、けど…」 <br />
だけどそれは、そう思いたかっただけだった。 <br />
ただ自分の醜い感情を、包み隠していたかっただけだったんだ。 </p>

<p></p>

<p>「…夢の中で、昔の僕の声が聞こえるんだ。…何でこんな風に生まれてきたんだって。 <br />
父さんがエトランジェじゃなかったらよかったのに、母さんが父さんを選ばなかったら、 <br />
普通の人に生まれてきたらよかったのにと。 <br />
そんな事ない、自分は二人とも好きなんだって思いたかったけど、 <br />
…否定、しきれないんだ。そんな風に思っている自分がやっぱりいるんだ…!」 <br />
そうだ。ずっとそんな事を密かに考えてる自分が許せなかった。 <br />
結局僕は、あの町の人達と変わらない― <br />
「戦争が終わって、差別らしい差別は無くなったけど、そんなのは関係ない。 <br />
結局僕は、本当の所は、二人の事を疎んじて、嫌いで―」 </p>

<p>「…そんな事は、ないと思います。」 <br />
「…え?」 <br />
「…私にはいまだに人の感情がよく理解できません。 <br />
それに、スピリットには両親というものがありません。 <br />
したがってロティ様の過去について私が何かをいう資格など無いかもしれません。 <br />
しかし、ロティ様がお二方を本当に嫌っているのなら最初から悩みなどしないのではないでしょうか?」 <br />
「…どうして?本当に好きなら、こんな事悩みもしないんじゃ―」 <br />
「いいえ。私見ですが、大切に思うからこそ、その様に悩めるのではないでしょうか? <br />
その人の全ての部分が好きになる事は、不可能だと思います。 <br />
…たとえ、そのような事を密かに考えていようと、 <br />
それでもお二方が好きという事でいいのではないでしょうか?」 <br />
「―あ―」 <br />
―そう、なのかな?そういうことにして、いいのかな? <br />
好きだったという事でいいですか― <br />
「……私には明確に誰かを大切と思う、好きと思う感情がよく分かりません。 <br />
失いたくない、守りたいというような想いはありますが、その理由を問われると言葉にできません。 <br />
しかし、いつか自信を持って大切と思う人を認識できるようになりたい。 <br />
…今は、そう思っています。 <br />
私には、ロティ様がそういう感情を含んだ上でも、お二方が好きなように見えます。」 <br />
それは、自分を納得させたいだけと言えばそれまでかもしれない。 <br />
でも、僕はずっと抱えていたしこりがとれた気がした。 </p>

<p></p>

<p>「―ロティ様?」 <br />
「…大丈夫。これは、嬉し泣き、だから。 <br />
そっか。僕はちゃんと、父さんと、母さんの事が好きだったのか―」 <br />
自然と、涙が出た。泣いている事も気付かずに馬鹿みたいに涙があふれた。 <br />
どす黒い感情が、流れ落ちていくようだった。 <br />
「…休憩時間を、もう少し延ばしましょうか?」 <br />
「ん…。」 <br />
しばらく涙が出るのに任せて、ようやく止まったところでナナルゥにお礼を言う。 <br />
「…ありがとう、ナナルゥ。それとごめん。…ナナルゥも、辛い思いをしてきたのに、 <br />
自分一人だけ不幸だみたいな言い方しちゃって。」 <br />
「いえ、私が聞いた事ですから。…こちらこそ、ありがとうございます。」 <br />
「え?」 <br />
「…ロティ様の過去を話していただき、そして、私の意見を真剣に受け止めていただきました。 <br />
…それが、不謹慎かもしれませんが、嬉しい、と感じます。」 <br />
そう言ったナナルゥがほんの少し、微笑んだように見えた。 <br />
瞬きする間に元の表情に戻っていて、見間違いと言っても仕方ないのだけど、 <br />
それでも、あのときナナルゥは僕に笑顔を向けてくれたのだと思っている。 <br />
僕は思わず、ナナルゥの手を握っていた。 <br />
ナナルゥの手は意外とひんやりとしていて、だけど今の僕には心地よかった。 <br />
―そう言えば、手の冷たい人って、心が温かいっていうんだっけ― <br />
「ナナルゥは、優しいね。」 <br />
「優しい、ですか?…自分には、よく分かりませんが…」 <br />
「ナナルゥは優しいよ。本当に、ありがとう。」 <br />
それから僕は、あの夢を見る事はなくなった。 </p>

<p>ヘリオンが言った事が、スピリット隊のみんながナナルゥを好いている理由が、少しわかった気がした。 <br />
それと同時に、悲しかった。 <br />
こんなに優しい人が、戦争に駆り出され、命を奪わなければならなかったという事に。 <br />
こんなになるまで、感情を表に出せなくなるほど省みられる事が無かった事に。 <br />
それが、当然だった世界に。 </p>

<p></p>

<p>力になりたいと思った。これからの時代で、ナナルゥ自身が幸せになって欲しい。 <br />
楽しい事がいっぱいあって、そのときに笑えるようになって欲しい。 <br />
そのための手助けが少しでもできたらいい。 <br />
そして、もしできる事なら― </p>

<p>（ナナルゥの目一杯の笑顔が、見たいな…） <br />
―ひょっとしたら、僕はあの時から、ナナルゥに惹かれていたのかもしれない― </p>

<p>「ナナルゥは…僕とこうなって、喜んでくれてるのかな…。」 <br />
今、ナナルゥは幸せだと思えるだろうか。 <br />
僕は、その手助けができたのだろうか。 <br />
…ナナルゥは、もし僕がいなかったとしてもいずれ幸せというものを感じれるようになったと思う。 <br />
ナナルゥの周りにはナナルゥが大切に思う人がいて、ナナルゥを大切と思う人がいて。 <br />
僕でなくてもその人達か、あるいはこれから会う人達がきっとナナルゥを支えていったのだろう。 <br />
たまたま、それが僕だったというだけかもしれない。僕でなくてもよかったかもしれない。 <br />
だけど、どんな偶然や幸運だろうと自分がナナルゥの大切な人になれたのなら。 <br />
ナナルゥが僕がいる事で喜んでくれるのなら。 <br />
「ふふ…だとしたら…やっぱり、嬉しいなぁ…」 <br />
そうつぶやいた瞬間― </p>

<p>「…ロティ様、失礼します。」 <br />
「!!!!!!!????????」 </p>]]>
      
    </content>
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    <title>三章：誰(たれ)が『求め』…</title>
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    <modified>2008-08-09T02:44:44Z</modified>
    <issued>2008-08-04T11:44:10+09:00</issued>
    <id>tag:etranger.s66.xrea.com,2008:/ss/long//3.1498</id>
    <created>2008-08-04T02:44:10Z</created>
    <summary type="text/plain">「良～し、出来たぞ」  「これがハイ・ペリアのご飯なの？ユート様」  「わくわく...</summary>
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      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject>Twinkle fairies</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/">
      <![CDATA[<p>「良～し、出来たぞ」 <br />
「これがハイ・ペリアのご飯なの？ユート様」 <br />
「わくわく～♪」 <br />
　夕食時の第二詰所の食堂で、エプロンに身を包んだ悠人は大皿に盛られた特製のナポリタン・スパゲティーをテーブルの上にどん、と置いた。 <br />
　材料はファンタズマゴリアのものを使用したが、元々見た目や味は似通った食材が多い為、悠人の世界のものと遜色の無い程の出来である。 <br />
　湯気と共に立ち昇る香りが漂い、否応無しに空腹感を誘ってきた。 <br />
「それじゃ、冷めない内に食べような？」 <br />
「うんっ」 <br />
「どきどき～♪」 <br />
　悠人の言葉に頷くと、三人は早速大皿から適当に取り分け、顔の前で揃って手を合わせた。 <br />
「頂きます」 <br />
「イタダキマ～スっ」 <br />
「イタダキマス…」 <br />
　悠人に倣い、ネリーとシアーも食事の挨拶を済ませると二人は元気良くナポリタンを食べ始めた。 <br />
「美味し～!!ユート様、このハクゥテすっごく美味しいよ!!」 <br />
「うん、美味しいよ。ユート様」 <br />
「腕に縒りを掛けて作ったからな。喜んでくれたんなら、作った甲斐が有ったってもんだ」 <br />
　はぐはぐ、とナポリタンを頬張る二人を眺めながら、悠人は満足そうに微笑んだ。 <br />
「あら？確か今日は私たちが当番の筈だったんだけど…？」 <br />
「何だか美味しそうな匂いがしますね～」 <br />
　聞こえてきた声に三人が振り返ると、エプロンに身を包んだセリアとハリオンが丁度食堂に入って来るところであった。 <br />
「よ。二人とも今戻って来たのか？」 <br />
「あ、セリア、ハリオンお帰んなさ～い」 <br />
「お帰りなさ～い」 <br />
　一旦食事の手を止め、三人がそれぞれの挨拶で二人を迎えた。 <br />
「あの、ユート様。これは一体…？」 <br />
「悪い。今日は勝手に俺が作らせて貰ったんだ」 <br />
「まぁ、それは別に構いませんが…」 <br />
「あらあら～、有難うございます～。ユート様～」 <br />
　仕事を奪ってしまった悠人が決まり悪そうに返事をしたが、それよりもセリアにとっては悠人に料理が出来ると言う事が驚きであった。 </p>

<p></p>

<p>「セリア、ハリオン。ユート様のハクゥテすっごく美味しいんだよ」 <br />
「酸っぱくて、塩っぱくて、苦いけど、美味しいんだよ～？」 <br />
　一体、それはどんな美味しさなのだろうか。 <br />
　第二詰所の厨房に立つ二人としては、ネリーとシアーの感想に大きく興味がそそられた。 <br />
「俺の世界の『ナポリタン』って言う料理を、こっちの材料で作ってみたんだけど…？」 <br />
　二人の前に、大皿から取り分けられた悠人の料理が並べられた。 <br />
　まだホカホカと湯気が立ち昇り、ハクゥテに絡んだソースからの酸味を思わせる芳香が鼻腔を擽ってゆく。 <br />
　これが伝説と謳われるハイ・ペリアの、悠人たちの世界の料理なのだろう。 <br />
「そうね。それじゃあ、私も頂こうかしら…」 <br />
「そうですね～。折角のユート様の手料理ですし～」 <br />
　エプロンを畳むと、セリアとハリオンはテーブルに就いた。 <br />
「『イタダキマス』だよ？セリア、ハリオン」 <br />
「『イタダキマス』？」 <br />
「聞き慣れない言葉ですね～。どう言う意味なんでしょう～？」 <br />
　始めて聞いたネリーの言葉に、セリアとハリオンが首を傾げた。 <br />
「ユート様がね、食べる時には手を合わせて、そして感謝の言葉を言うんだって」 <br />
　シアーの説明にセリアとハリオンが得心の表情を浮かべた。 <br />
「解ったわ。『イタダキマス』…。これで良いのかしら？」 <br />
「『イタダキマス』です～」 <br />
　手を合わせて一礼を捧げると、二人は悠人のナポリタンを肉叉に絡め始めた。 <br />
「自分で言うのも何だけど、結構上手に出来たと思う」 <br />
　そんな二人の『頂きます』を見届けると、悠人は二人が料理を口に運ぶ様を期待に満ちた表情で眺めた。 <br />
「確かに、始めて食べる味だけど、美味しいと思うわ」 <br />
「と～っても美味しいですよ～。ユート様～」 <br />
「ほ、本当か？」 <br />
　二人の感想に、悠人は確認する様に言葉を漏らした。 </p>

<p></p>

<p>「こんな事で、嘘を言ってどうするんですか…」 <br />
「うふふ～。でも、本当に美味しいですよ～。ユート様は～、お料理がお上手だったんですね～」 <br />
「いや、これ以外はそんなに得意ってわけじゃないんだけどな？でも、二人が美味しいって言ってくれると何か自信が付きそうだよ」 <br />
　照れる悠人の表情に、セリアとハリオンの表情が思わず緩んだものになった。 <br />
　本人は気付いているかどうかは知らないが、こんな時の悠人はとても無防備で幼い表情を浮かべて嬉しがるのだ。 <br />
　母性と言うものがスピリットにあるのかどうかは判らないが、あったとすれば恐らくこの様な感覚なのだろう。 <br />
　そんな思いを抱かせる表情であった。 <br />
「あれ？もう夕飯の準備出来てるの？」 <br />
「今までの如何なる料理にも該当しません…。初めて目にする料理です…」 <br />
「わわっ!?ユート様がエプロンを着ていらっしゃいます!?も、若しかして、今日の夕食はユート様がお作りになられたんですか!?」 <br />
「何？今日の夕飯はユートが作ったの？」 <br />
「こ、こら。ニム。ちゃんとユート『様』ってお呼びしなさいって言っているでしょう？」 <br />
　と、残りの第二詰所のメンバーが遅れて食堂に集まって来た。 <br />
　皆、訓練を終えて空腹なのか、大皿に盛られた料理に早くも関心が向けられている。 <br />
「あぁ。俺の世界の料理を作ってみたんだ。良かったら皆も食べてみてくれ」 <br />
　皆の皿を用意しながら、悠人が嬉しそうに給仕を始めた。 <br />
「そ、そんな。ユート様がそんな事なさらなくても…」 <br />
「分量の調節でしたら、お任せ下さい…」 <br />
「そ、そうですよ。後は私たちが自分でしますから、ユート様はゆっくりしていて下さいっ」 <br />
「ほら、ニム。お皿を並べるのを一緒に手伝いましょう？」 <br />
「メンドい…」 <br />
　俄かに沸き立つ食堂であったが、悠人は皆をやんわりと制した。 <br />
「何言ってるんだよ？今日はもう皆上がって仕事は終わりなんだろ？だったら俺も今は皆と同じ家族なんだから、これくらいの仕事はさせて貰っても罰は当たらないよ」 </p>

<p></p>

<p>「まぁ、ユート様がそう仰るのでしたら…」 <br />
「うぅ…。何も言えなくなっちゃいます…」 <br />
「了解しました。それでは暫く待機します…」 <br />
「ま、ユートもここに来たからにはそれが当然だけど…」 <br />
「もう、ニムったら」 <br />
「はは、良いよファーレーン。それに、ニムみたいに考えてくれる方が俺には嬉しいからさ。サンキュ、ニム」 <br />
「う、五月蝿いっ…」 <br />
　ぷい、と横を向くニムントールであったが、耳が赤い事について悠人は黙って微笑んだ。 <br />
　個性豊かな大所帯の第二詰所であったか、誰もが優しくて温かかった。 <br />
　実は、第二詰所での生活に少し不安を抱いていた悠人であったが、今ではそんな事は杞憂なのだと思った。 <br />
　紛れも無い悠人の『家族』が、ここにちゃんと存在してくれているのだ。 </p>

<p>「むぅ…」 <br />
「む～…」 <br />
　そして、そんな悠人を中心に盛り上がる食堂で、少し離れてむくれた視線を送る二人の視線があった。 <br />
「あら、どうしたの？二人とも」 <br />
「お料理が冷めちゃいますよ～？」 <br />
「う…ん…」 <br />
「そう、だけど…」 <br />
　セリアとハリオンが声を掛けるものの、ネリーとシアーはもごもごと歯切れの悪い言葉の返事をした。 <br />
　そんな二人の様子にセリアはやれやれとした、ハリオンは何処か嬉しそうな表情で眺めた。 <br />
(まぁ、これも仕様が無いと言えばそうなのかもしれないのだけれど…) <br />
(あらあら～。私はお二人とも可愛くて～、良い事だと思いますよ～？) <br />
「うぅ～…」 <br />
「にぅ～…」 <br />
　ナポリタンを絡めた肉叉を齧りながら唸る二人を、セリアとハリオンはそっと見守るのであった。 </p>

<p></p>

<p>「う…ん…」 <br />
　部屋を照らす窓からの陽の光と、朝を謳歌する小鳥たちの囀りが悠人の意識を掬い上げた。 <br />
　瞼がゆっくりと開くと、漸く慣れてきた新しい天井が悠人の視界に映った。 <br />
　他の部屋より一回り大きい第二詰所の賓客室。それが、割り当てられた悠人の新しい自室であった。 <br />
「ん？」 <br />
　と、身を起こそうとした悠人は両腕に違和感を覚えた。 <br />
　一瞬、昨日の夕飯で給仕を張り切り過ぎて疲れが残っているのかと思ったが、直後にそうではないと判断した。 <br />
　何と言うか、疲れた云々以前に腕の感覚が痺れて無くなってしまっていたのだ。 <br />
「アレ？」 <br />
　天井を眺めながら、悠人は混乱した。 <br />
　横を向いて寝ていたのならば、下敷きになってしまった腕が痺れてしまっていても何ら不思議ではない。 <br />
　しかし、仰向けに寝ている今の悠人の両の腕が痺れてしまっているのは如何なる為か。 <br />
「くぅくぅ…」 <br />
「すぅすぅ…」 <br />
　布団に混じる別の温かさとその重さに導かれ、悠人は首だけを動かして見下ろした。 <br />
「………」 <br />
　悠人の両脇辺りに、布団を押し上げて寝息を漏らして上下する二つの小山がこんもりと出来ていた。 <br />
　成程。両腕が痺れていたのは、いつの間にか潜り込んで来ていた二人の所為か。 <br />
　と、それぞれの上腕に乗せられた青い頭を眺めながら悠人は思わず苦笑を漏らした。 <br />
「こら、二人とも。起きろって…」 <br />
「うん…？」 <br />
「んゅ…？」 <br />
　悠人が肩を揺らせて声を掛けると、反応したネリーとシアーが身を捩って唸った。 <br />
「あぅ…、ユートさま…？」 <br />
「う～…、ユートさま～…？」 <br />
　目に映るものの判別が付くくらいには覚醒したのか、二人は確認する様に悠人の名前を呟いた。 <br />
「あぁ、俺だよ。それよりも、腕が痺れて動けないから二人ともちょっと退い――、うわっ!?」 <br />
「ユートさま～♪」 <br />
「さま～♪」 <br />
　目に映るものの判別が付くくらいしか覚醒していなかった二人が、ぽわぽわと寝惚けた状態で左右から悠人の体を這い上がってきたのであった。 </p>

<p></p>

<p>　緩慢な動きの二人であったが、生憎と両腕の痺れている悠人には逃れる手立ては無かった。 <br />
　やがて二人は悠人の首に齧り付くと、まるで匂い付けをするかの様にスリスリと頬擦りを始めた。 <br />
「んふふふ～♪ユートさまのにおいがする～♪」 <br />
「いいにおい～♪」 <br />
　悠人の耳元で聞こえてくる程に大きく息を吸い込み、二人は恥ずかし気も無く悠人の匂いを楽しみ始めた。 <br />
「～～っ…!!」 <br />
　一方の悠人も、二人から漂う寝汗の混じった体臭や、寝巻き越しに伝わってくる柔らかな感触にかなり悶絶させられていた。 <br />
　血が昇ると言うか、集まると言うか…。双子に感付かれない様、悠人はそっと膝を立てるのであった。 <br />
「んむぅっ!?」 <br />
「えへへへへ～♪」 <br />
「ぎゅうぅ～っ♪」 <br />
　悠人の匂いに中てられたのか、二人は更に這い上がってそのちくちくとした頭を胸に抱き込んできた。 <br />
　それだけではない、何と二人はまだ痺れている腕を股に挟むとまるで全身で悠人の感触を味わう様にぐりぐりと押し付けてきたのであった。 <br />
　頬に感じる慎ましさやら、腕に感じるその形やら…。血が集まり過ぎると痛みを覚えるのだと、悠人は知った。 <br />
(って、落ち着け…!!二人は寝惚けているだけなんだ…!!) <br />
　自分に言い聞かせ、悠人は声を掛けようとして二人の胸から顔を上げた。 <br />
「んゃうっ!?」 <br />
「ふゃぁっ!?」 <br />
　悠人の動きに合わせて、二人が大きく身を強張らせた。 <br />
「あ、あれ…？」 <br />
「ゆ、ユート様…？」 <br />
　驚いた表情の二人が、腕の中の悠人と目が合った。 <br />
「えっと、お、お早う…。二人とも…」 <br />
「お、お早う…。ユート様…」 <br />
「お、お早う～…」 <br />
　割と緊急事態に陥っている悠人に対して、何故か腰を引かせた二人の気拙そうな挨拶であった。 <br />
「お、おおお、お早うございますっ!!ユート様っ!!今日は、わ、私が起こしに参りまし――た…？」 <br />
　そして、そんなベッドの上の三人を見て、起こしに来たヘリオンの表情が凍り付いた。 <br />
「し、しし、失礼しました～っ!!」 <br />
　何故か赤面し、疾風の如き素早さで走り去るヘリオン。その妙に重苦しくも清々しい朝の雰囲気の中で、部屋の隅に立て掛けられた『求め』が人知れずに妖しく輝きを放っていた。 </p>

<p></p>

<p>　ぬちゃ、ぬちゃ、と粘り付く水音が響いていた。 <br />
　踏み伏せられた幼い体躯がはしたなく両足を開けさせられ、その中心の雪の様な白い肉の丘に荒ぶった悠人の剛直が突き立てられていた。 <br />
『ユート様ぁ…。気持ち良いよぅ…』 <br />
　長く蒼い髪を背中に広げ、見上げてくる瞳がもっともっと、と切なそうに訴えていた。 <br />
　その浅ましいおねだりに応じて挿出を激しくすると、途端に肉の悦びが戦慄いた。 <br />
『ひゃあぅんっ!?あっ、あぅっ、い、良いよぅ…』 <br />
　ずりゅ、ずりゅっ、と粘膜が擦れ合う度に焼ける様な快感が腰から広がっていった。 <br />
　引き擦り込まれる様に無数の襞が吸い付き、まるで生き物の様に絡み付いてきた。 <br />
　腰を掴み、猛った逸物で奥まで一気に突き通すと、みっちりと咥え込まれた肉の隙間から白く濁った粘液がぐじゅっ、と泡を立てて逆流してきた。 <br />
『ひゃあぁぁあぁっ!?』 <br />
　びくびく、と全身が震え、それに合わせて中の蠕動がきゅうきゅうと断続的に締まった。 <br />
　奥からじわりと、更に熱い露が零れてきた。 <br />
『あは、は…。ユートさまぁ…』 <br />
　法悦の表情を浮かべ、無意識にか、それでも更に快楽を求め様とくい、くいと腰が悠人を咥えて誘っていた。 <br />
　繋がっている秘所は、混ざり合った互いの体液で溢れ返り、シーツには尻と膝を伝って垂れて出来た大きな染みが強烈な性臭を撒き散らせていた。 <br />
『ユートさまぁ…。もっと、もっといっぱい…』 <br />
　手を伸ばし、蕩けた表情で求めてくる。 <br />
　望み通り、まだ十分な硬度を保ったモノで悠人は挿出を再開した。 <br />
『ひ、あ、あ…。だ、抱っこ…。抱っこして…、ぎゅう～って…して…』 <br />
　強く絡み付いてきた四肢に応じる様に抱き返すと、肩に乗せられた顎から『うふぅ…』と、熱っぽい吐息が首筋に掛かってきた。 </p>

<p></p>

<p>　密着した薄い胸からは、桜色の硬いしこりと小さな体には不釣合いな程の大きな鼓動が感じ取れた。 <br />
　少し離れて見つめ合うと、いつもの得意そうな表情ではない、牝の色を帯びた蟲惑的な表情がそこにあった。 <br />
　はぁ、はぁ、と獣の様な荒い息遣いが悠人の顔に掛かる。 <br />
『あ、あ…。や…、だ、ダメ…。あぅ、あ…』 <br />
　容赦無く中を掻き回す動きに腕の中で小さな体が跳ね、その細い喉から我慢出来ずに甘い嬌声が漏れ出した。 <br />
　やがて、その声に切実な響きが混じり始め、二人の腰使いにも余裕の無いあからさまな卑猥な動きになる。 <br />
　しがみ付いてくる小さな体が、絶対に離さないと組み付いてきた。 <br />
『ユートさま、ユートさま、ユートさま…』 <br />
　譫言の様に、ひたすらに繰り返されるその言葉を聞く度に悠人の脳髄が甘く痺れた。 <br />
　責めながら、絹よりも滑らかな髪を撫でてやると、見上げてくる瞳がふにゃりと綻んだ。 <br />
『あ、あ、あ、あっ…』 <br />
　迫る限界が近いのか、声のトーンが高くなった。 <br />
　悠人も中の激しい肉のうねりや、根元まで呑み込まれる張りのある肉厚な丘のフニフニとした感触にじわじわと疼痛を覚え始めていた。 <br />
『んあぁぁあぁぁ～っ!!』 <br />
『くぅっ…!!』 <br />
　絶頂と同時に、中の粘膜が悠人に襲い掛かった。 <br />
　扱かれ、吸い上げられるその感覚に耐え切れず、悠人は堪らず滾った精を迸らせた。 <br />
『あぁ…。ユートさまのが出てる…』 <br />
　胎内に広がる熱さを、悠人が満足してくれた証であると、そして自分へのご褒美であると言う様な恍惚とした表情であった。 <br />
『ユート様…。大好き…』 <br />
　幸せそうに、ネリーが呟いた。 </p>

<p></p>

<p>『はあぁぁぁ…。ユートさまぁ…』 <br />
　形の良い眉を悩まし気に寄せ、大きな瞳がトロンと悠人を見上げていた。 <br />
『ユートさまのが、いっぱいだよぅ…』 <br />
　くちゃ、くちゃと腰を揺らす度に、胡坐を掻いた悠人の膝で串刺しになった部分から粗相でもしたかの様な大量の粘液が漏れていた。 <br />
　白磁の如き肌は桜色に染まり、汗ばんでしっとりと吸い付いてきた。 <br />
　未熟さが残るものの、膨らみ始めた胸や腰回りからは牡を誘う牝の色香が漂わせている。 <br />
　薄いが、それでも柔らかく張りのある尻を掴んで突き上げると、ごり、と先端が最奥の壁に当たった。 <br />
『ふやぁあぁっ!?ふ、深いよぅ…』 <br />
　啜り泣く声を上げながらも、快楽を感じる腰は貪欲に悠人に押し付けられていた。 <br />
　茹でられた卵の様な、今にも弾けそうな盛り上がったプニプニとした肉の扉が、むっちりと悠人を根元まで挟み込んでいた。 <br />
　手を滑り込ませ、指でその扉をめち、と開くと、限界まで広がった入り口とその上の膨れた突起の鮮やかな朱色が粘液に塗れてぬらぬらと光っていた。 <br />
『やぁん!!い、いきなりはダメだよぅ…』 <br />
　与えられた刺激が強過ぎたのか、びくん、と大きく身を震わせると拗ねた様な表情を浮かべてきた。 <br />
　今度は指の腹で、突起を包皮の上からそっと撫で上げると、それに合わせて中の動きがきゅっ、きゅっ、と締まる。 </p>

<p></p>

<p>『はぁ、はぁ…。んっ…、そうだよぉ…。お豆さんは、んっ、とっても感じるから、優しくして…。はぅん…』 <br />
　その儘手を離して弄るのを止めると、今度は悠人の腹部に押し付ける様に腰を擦り付け始めてきた。 <br />
　滴る涎で、悠人の下半身は忽ち汚された。 <br />
『ん……。ちゅっ…。むぅ…』 <br />
　互いの息が掛かる程に見つめ合うと、どちらとも無く唇が重ねられた。 <br />
　絡み合う舌が口腔で激しく暴れ、ぴちゃ、ぴちゃ、とはしたない音を立てた。 <br />
　擦れ合う知覚器官が食欲にも似た性感を齎し、零れた涎が二人の顎を伝っていった。 <br />
『ぷ、はぁ…。はぁ、はぁ…。ユートさまの味ぃ…』 <br />
　口から伝う糸を切り、啜った口の中のものを嚥下するとうっとりとした面持ちでそう呟いた。 <br />
『うむぅっ!?むぅっ!?』 <br />
　その口を強引に塞ぐと、今度は下の口を遠慮無しに荒々しく小突き始めた。 <br />
『ひむっ!?むぁっ!?んふぅっ!?』 <br />
　逃げようとする体を抑え込み、絶頂の痙攣にも構わずに我武者羅にその欲望で蹂躙していった。 <br />
　じゅぶじゅぶと、掻き出された粘液が泡立って垂れ、二人の膝をベタベタと粘つかせた。 <br />
『ぷぁっ!!ユートさま、ユートさま…!!もっと、もっとだよぉ…!!』 <br />
　喘ぎ声に急かされる様に、互いに激しく腰を打ち付けあった。 <br />
　ぱん、ぱん、と肉の音が粘液を散らせて響き渡る。 <br />
　一突き毎に駆け上ってくる愉悦が、悠人の理性を削り取っていった。 <br />
『あ、あ…!!くる、くるよぅ…!!ユートさま!!ユートさまぁ～っ!!』 <br />
　遂に奔流が決壊し、ぎちぎち、と痛い程に悠人を締め付けた。 <br />
『はぁぅんっ!?出てる、ユート様のがいっぱい出てるよぅ…!!』 <br />
　ドロドロに熔けた悠人の獣欲が子宮にぶちまけられるのを感じ、肉体的にも精神的にも最大のオルガスムスが駆け抜けていった。 <br />
『えへへ…。もっといっぱいエッチして欲しいな…。ユート様…』 <br />
　悠人の胸に倒れながら、シアーが目を細めて甘えてきた。 </p>

<p></p>

<p>「はぁ…」 <br />
　汚れた下着を洗いながら、悠人は大きな溜息を吐いた。 <br />
　第二詰所に移って来て三週間(15日)程経ったが、ここ最近は何故か淫夢を見る事が多くなっていた。 <br />
　悠人とて健康な年頃の男であるので、性欲を持つ事も持て余す事も別段珍しい事でも無い。 <br />
　発散しなければ、そんな結果が訪れてしまっても仕方の無い事であった。 <br />
　しかし、それが特定の人物たちの淫夢であれば、それは一体何の意味があるのだろうか。 <br />
　ネリーとシアー。 <br />
　この二人が夢に出てきた時は、必ずと言って良い程にまぐわり合う夢を見ていた。 <br />
　最初は普通に夢を見ていた悠人であったが、先々週のナポリタンを皆に振舞って以来、急に彼女たちの淫夢を見る様になってしまっていた。 <br />
(それが契約者の『求め』ではないのか？) <br />
　悠人の頭の中に、諭す様な『求め』の声が響いてきた。 <br />
「ふざけるなよ。バカ剣。どうせお前が見せている夢なんだろうが…!!」 <br />
　悠人の言葉に、『求め』から肯定とも取れる笑いの気配が伝わってきた。 <br />
(その割には、契約者も随分と満足している様だが…？) <br />
「くっ…!!」 <br />
　悠人の顔が、耳迄赤く染まった。 <br />
　朝一番で、まだ誰も居ない洗い場で下着を洗わねばならない今の状況が、悠人の羞恥心を更に煽った。 <br />
(犯せば良かろう…。あの妖精たちも、契約者の事を憎からず思っている様だ…) <br />
「また、あの二人に何かしようって言うのか…？」 <br />
　凍て付いた声で、悠人は呟いた。 <br />
(ふっ、何かするのは契約者ではないのか…？) <br />
「何だと…？」 <br />
　いつぞやの、激しい怒りが悠人の中で首を擡げ始めた。 <br />
　だが、その気配を気にするでも無く、寧ろ挑発する様に『求め』は悠人に囁き始めた。 <br />
(汝もあの妖精たちに惹かれているのだろう…。ならば、何を躊躇う事があるのだ…？) <br />
「はっ!!だから、俺にあんな夢を見させて二人を襲わせようってか？そんな事、誰も『求め』ちゃいないぜ？」 <br />
(クハハハハハッ…!!) <br />
　皮肉を込めた悠人の台詞に対し、返ってきたのは『求め』からの哄笑であった。 </p>

<p></p>

<p>(我は確かに汝の『求め』を聞いた。あの妖精たちを悲しませたくないのであろう…？) <br />
「あぁ、バカ剣が見せたくだらない夢みたいに、俺の欲望で傷つけたりはな…!!」 <br />
(契約者よ…。汝はそう思っているかもしれぬが、あの妖精たちも同じとは思わぬ事だ…。我は『求め』…。純粋なる『求め』に応じ、代償によってその願望を実現させる存在…) <br />
　その言葉に、今度は悠人が笑い返した。 <br />
「あの二人が、俺にあんな夢をみたいな事を望んでいるって？それこそ有り得ないだろ？焼きが回ったんじゃないのか？バカ剣」 <br />
　仔犬の様に懐いてくる二人が、夢の中の様な痴態を晒す事など妄想も甚だしかった。 <br />
　血は繋がっていなくとも、二人はもう悠人にとって大切な家族なのだ。 <br />
　義妹の佳織に恋愛感情や劣情を抱かないのと同様に、二人に対してもそんな感情を持つなど考えもしなかった。 <br />
「良いか？バカ剣。二人は俺の妹みたいなモンで、俺は二人のお兄ちゃんなんだよ。だから、そんな間違いは起きないし、俺が起こさせない」 <br />
　二人を悲しませたくないと誓った悠人が、二人を傷付けられる筈が無かった。 <br />
「頭を撫でたり、抱き締めた事も有ったけど、それは守るべき仲間で大切な家族だからやったんだ。俺の欲望なんかで汚しちゃ駄目なんだよ」 <br />
　洗い終わった下着を絞ると、悠人は他の洗濯物と一緒に洗濯紐に吊るし始めた。 <br />
　『求め』から何故か呆れた様な気配が伝わってきたが、これ以上は何も言う気が無いと感じた悠人は黙って部屋へと戻って行った。 </p>

<p>　悠人が去った後、別の出入り口から洗濯籠を抱えた二人の人影が現れた。 <br />
「参ったわね…」 <br />
「まぁまぁ～。ユート様だってお年頃なんですから～、仕方が無いじゃないですか～」 <br />
　ハリオンのあんまりな言い方に、セリアが思わず気を抜かれた。 <br />
「ハリオン？えっと、今のユート様の言葉をちゃんと聞いていたのかしら？」 <br />
「はい～。『求め』の所為で～、ユート様がムラムラきちゃうんですよね～？」 <br />
「ムラムラって…。それは、まぁ…、そうなんでしょうけど…」 <br />
　実際には、ラキオスの命運が懸かった重大な事態なのだが、ハリオンにしてみればその程度の事なのかもしれない。 </p>

<p></p>

<p>　しかし、性格的にハリオンの様に楽観出来るセリアではない。 <br />
　ないのだが、 <br />
「まぁまぁ～。ユート様でしたら～、きっと大丈夫だと私は思いますよ～」 <br />
　ずい、と笑顔のハリオンがセリアに迫ってきた。 <br />
「で、でも…。一応、上に報告して、何かしらの対策を立てておいた方が…」 <br />
「セリアは～、ユート様の事を信じていないんですか～？」 <br />
「そ、そう言うわけじゃないけど…」 <br />
　さも心外だと言う表情で覗き込んでくるハリオンに、セリアも思わず曖昧な態度で返してしまった。 <br />
「それじゃあ～、この事は私とセリアだけの秘密ですね～」 <br />
「そ、それは…」 <br />
「ね～？」 <br />
　ニコニコと笑顔を崩さないハリオンに、セリアは降参とばかりに溜息を吐いた。 <br />
「解ったわ…。ユート様を信じましょう、ハリオン…」 <br />
「有難うございます～。セリア～」 <br />
　胸の前で指を組み、ハリオンはセリアに満面の笑みを浮かべた。 <br />
　それを見たセリアも、内に湧いていた己の安堵に気付いて少しだけ頬を緩めた。 <br />
　頭ではそれが希望的な判断であると理解していたが、本当は何よりも信じたかったのだ。 <br />
　悠人の強さと優しさを…。 <br />
「それに～、ユート様でしたら襲われても嬉しい気もしますし～」 <br />
　ハリオンのトンでもない台詞に、洗い場に向かおうとしていたセリアは盛大に籠を落とした。 <br />
「ち、ちょっとハリオン!?」 <br />
「だって～、私たち緑スピリットは皆さんを回復する時にはマナを使うんですよ～？それならユート様にマナを吸われちゃうのもあんまり変わりませんよね～？」 <br />
「貴女、何を言っているの!?」 <br />
「ですから～、ユート様にマナを吸われる時の話ですよ～。どうせ疲れちゃうんでしたら～、気持ちが良い方が良いですよね～？」 <br />
　頬を染めるハリオンであったが、潔癖の気があるセリアには素で答える余裕など無かった。 <br />
「し、知らないわ!!そんなの…!!」 <br />
「あらあら～？半分くらいは冗談でしたのに～」 <br />
「半分は本気なのね…？」 <br />
「はい～。ユート様が～、私を選んで下さればですけどね～」 </p>

<p></p>

<p>　悠人が選ぶ。 <br />
　神剣に操られているのではなく、自分の意思で、男として。 <br />
　それならば、確かに納得がいくのかもしれない。 <br />
　たとえ如何なる結果になったとしても。 <br />
　と、セリアは思い至った。 <br />
「本当、参ったわね…」 <br />
　セリアは米噛みを押さえて唸った。 <br />
　口伝に拠れば、『求め』は破壊とマナ、そしてスピリットの身体を欲していると言われている。 <br />
　破壊とマナについては、スピリットたれば神剣の欲求として理解出来た。 <br />
　では、身体を求めるとはどんな意味がそこにあるのか。 <br />
　それは恐らく、スピリットとエトランジェの身体の構造に起因するのであろう。 <br />
　必要に応じて周囲のマナを吸収して体内でエーテルに変化させる両者の身体は、いわば天然のマナ収束装置であり、精製装置でもあった。 <br />
　そして、身体に蓄えられたマナを吸収するには二通りの方法が存在していた。 <br />
　一つはマナと詰まった器ごと神剣で破壊して吸収するやり方。 <br />
　そしてもう一つが、両者の肉体を繋げ、そこから流れ込んでくるマナを得るやり方であった。 <br />
　前者は危険を伴うものの、破壊衝動を満たして簡便にマナを得る事が出来、後者は手間さえ掛かるものの、良質のマナを持続的に得る事が可能であった。 <br />
　恐らく、『求め』が悠人に要求してきたのは後者の筈である。 <br />
　そして、それがどの様な行為を以って行われるか、当然悠人は知ってしまっているだろう。 <br />
　だが、その行為が神剣の意思では無い純粋なものであっても、悠人は警戒して拒絶してしまうかもしれない。 <br />
　大事に思うが故に、悠人は距離を置いて離れるに違い無かった。 <br />
　二人の前途を思い、セリアは再び大きな溜息を吐くのであった。 </p>]]>
      
    </content>
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  <entry>
    <title>6章　これもひとつのあいのうた。後編</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/archives/001499.html" />
    <modified>2008-08-09T03:09:47Z</modified>
    <issued>2008-08-05T11:45:23+09:00</issued>
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    <created>2008-08-05T02:45:23Z</created>
    <summary type="text/plain">反射的に振り返ると、裸身にタオルを巻きつけたナナルゥが浴室に入ってきた。  「…...</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
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    <dc:subject>スピたん～幻のナナルゥルート～</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/long/">
      <![CDATA[<p>反射的に振り返ると、裸身にタオルを巻きつけたナナルゥが浴室に入ってきた。 <br />
「………ナナルゥ?」 <br />
サッとタオルで大事な所を隠し、表面上冷静に呼びかける。 <br />
「……お背中、お流しいたします。」 <br />
あははははははなんですかこのお約束的な台詞は。夢ですか幻ですか作者の趣味ですか <br />
「あーーーーー。ナナルゥ。これは誰かから聞いたのかな?」 <br />
「ヘリオンから聞きました。曰く、『これこそ愛する二人の王道ですっ!』とのことです。」 <br />
「…ヘリオン…。」 <br />
ああなぜか頭が痛い。おかしいな、『紡ぎ』は持ってきてないのに。 <br />
「…?あの、嫌ですか？」 <br />
そう言って僕の顔を覗き込んだナナルゥは意外と恥ずかしそうな表情で、 <br />
更に不安が混じったなんともいえない表情でああそんな顔されたら僕はもう…! <br />
「え、いや、その、えっと…じゃあ、手足洗ったので、背中洗ってください。」 <br />
おいこら状況に流されるなさっきの綺麗な思い出はどこいったと言うもう一人の自分を払いのける。 <br />
やっぱり僕も男っていうか。あはは、嬉しいです、ありがとうヘリオン。 <br />
「了解しました。」 <br />
そう言って後ろからなぜか布が落ちる音とナナルゥが石鹸を泡立てる音が聞こえ、 <br />
「うひゃあっ!!??」 <br />
ヌルッとした感触と同時に柔らかいものが背中に押し付けられた。 <br />
首を回してなんとか後ろを見ると、ナナルゥが泡だらけの胸を僕の背中に押し付けている。 <br />
「な、ナナルゥサン!?」なぜか片言になってしまった。 <br />
「…女の人が男の人を洗うときはこうするとの事です。」 <br />
…誰が言ったのかとは、もうあえて聞くまい。 <br />
「あ、うわぁ…。」 <br />
「んっ…。動かないで、ください…。」 <br />
ナナルゥがゆっくりと、押し付けた胸を擦りつけるように動かしてゆく。 <br />
「…いかかですか?ロティ様…。」 <br />
「は、はひっ!も、もう最高でございまする!」もう呂律が回んない。 <br />
「そう、ですか…。んっ、んっ…ふぅ、はあぁ…。」 </p>

<p></p>

<p>ああああああああああああああああやばいまずいヤヴァイ <br />
胸が柔らかいよ先っぽが硬くなってきてそこが擦れてくすぐったい <br />
首筋あたりにナナルゥの熱い吐息がかかってむず痒くて動くななんてもう拷問ですよ <br />
僕の愚息がタオルを押し上げてテントを張り出したああああああああああああああ </p>

<p>身悶えしてるうちに背中にまんべんなく石鹸が塗りたくられた。 <br />
「っ…はぁ…。ロティ様、次は…前、洗いますね…。」 <br />
ナナルゥが前に回りこんできて、再び胸に泡立てた石鹸を塗りなおす。 <br />
やば、見てるだけで、もう変なものに目覚めて　し　ま <br />
「…失礼します。」 <br />
「はわうあぁっ!!」 <br />
僕の方に手を置き、僕の胸板にナナルゥの胸が押し付けられる。 <br />
ナナルゥもこれは結構恥ずかしいらしく、珍しく頬を染め、若干固めの表情になっている。 <br />
「…行きます…。」 <br />
「ううぅ、うううううううう～～…。」 </p>

<p>まずいです大変です危険です非常事態ですエマージェンシーですっ!! <br />
ナナルゥの切なそうな顔が眼前にせまってるだけでもやばいのに <br />
大きくて柔らかい胸が僕の胸に押し付けられて自在に形を変えて <br />
しこった胸の先っぽがくすぐってきて <br />
ああもう僕はどうすればっ!? <br />
「んっ…はぁ…何故でしょう…?身体がどんどん熱くなって、切ないです…!」 <br />
ボンッ!! <br />
その言葉で僕の頭の回線が焼ききれました☆本当に意識して言ってないのか? <br />
「きゃっ…!ああ…!」 <br />
たまらずナナルゥを抱きしめてもうビンビンの愚息をナナルゥに押し付ける。 <br />
「あぁ…これは、あの、ロティ様?」 <br />
「…その、ナナルゥを見てたら、我慢できなくなって、今、したい、です…」 <br />
「…あ、ロティ様が、私、で…。…あぅ……。」 <br />
ナナルゥの顔が更に赤くなり、うつむいた。ああ、可愛いなぁ…。 <br />
「わ、わかり、ました…。…あの、最初は、その、これを、お願いします･･･。」 <br />
そう言ってナナルゥが目を閉じ、唇を突き出してきた。これで聞き返すのは野暮だろう。 </p>

<p></p>

<p>「わかった。んっ…。」 <br />
「んむ、ふぅ、ちゅ、んっん、れる…」 <br />
ナナルゥの唇を奪って、舌を絡め合い、互いの唾液を交換する。 <br />
「んっ、ちゅ、んむぅ!?ん、ううぅ～～～っ!!」 <br />
キスに夢中になっているナナルゥの胸を両手で揉みしだく。 <br />
石鹸で滑りがよくなっていて、さわり心地が更によくなっている。 <br />
手に収まりきらない柔肉が、僕が指に力を込める度に形を変え、胸の先端が僕の手の平を突く。 <br />
硬くしこった乳首を指で摘んだ瞬間、耐えられなくなったナナルゥの唇が離れた。 <br />
「ぷはっ、あ、やぁ!駄目です、それは、ひゃうん!」 <br />
唇が離れ、僕はナナルゥの乳首に吸い付く。 <br />
石鹸の苦さが少ししたが、気にせずに舌で転がし、甘噛みする。 <br />
「やっあ、ひゃんっ!ふぁぁああ、はあ、ロティ、さまぁ･･･!」 <br />
悶えるナナルゥの声を聞き、もっと感じて欲しくなって空いた手をナナルゥの秘所に這わせる。 <br />
うっすらと濡れている一本のすじをなぞり、その間も胸を弄るのはやめない。 <br />
「っ～～～～!!!んああ、あぁん!や、駄目、駄目です!それは嫌、嫌ぁん!!」 <br />
…その声を聞いて、少し危険な嗜虐心が芽生えた。 <br />
（もう少し、ナナルゥを困らせてみたいな…。） </p>

<p>「…そっか、ナナルゥは嫌なんだ。」 <br />
「えっ…」 <br />
「じゃあ、やめようか。嫌なら無理矢理したくないしね。」 <br />
「え?そ、そんな…!」 <br />
「嫌なんだよね?」 <br />
「あ、あぅ…いえ、あの、嫌では、ない、です、その、むしろ、いいです…。」 <br />
「ん?何がいいのかな?」 <br />
「え…、あの、それは、」 <br />
「はっきり言わないと判んないな。何がいいのか、言って?」 <br />
「そ、それは、あぅ、うううぅぅ～～～～～～……。」 <br />
ナナルゥの顔がこれまでにないくらい赤くなり、両手で顔を覆う。 <br />
そのしぐさにたまらないもの感じる自分は、もしかしなくてもやばい気がする。 </p>

<p></p>

<p>「そ、そのっ!ロティ様に、キスされるのが、胸とか、股間を、身体を触られるのが、 <br />
たまらなくて、きっ、気持ちよくてっ、嬉しい、ですっ…! <br />
だから、や、やめないで、ください･･･。」 <br />
「ん、わかった。」 <br />
その声を聞いて愛撫を再開する。すじをなぞり、秘所を割り開いて指を一本入れる <br />
「っ！…あ…」 <br />
しっとりと濡れているナナルゥの中の熱い媚肉を押しのけ、ゆっくり抜き差しする。 <br />
緩慢に指を上下左右に動かし、淫靡な水音を鳴らしながらきつく締め付けてくるナナルゥの中を味わう。 <br />
「うあ、あっ、あ、ああああ!やん、ひっ、ふああ…!」 <br />
次第に緩慢な指使いに焦れて来たのか、ナナルゥが自分から腰を動かし、秘所に僕の指を押し付ける。 <br />
「･･･ナナルゥ、自分から腰動いてるよ。」 <br />
「えっ?あ、やぁ、あの、これは…。」 <br />
「…もっと激しくして欲しい?」 <br />
「そ、そんなこと、いっ、いえな」 <br />
「じゃあこのままでいいかな?」 <br />
「そ、それは…あの、もっと激しく、弄って欲しいですっ…っ!」 <br />
どんどん自分の人格が崩壊していく気がするが、止まらない。 <br />
いつも冷静で無表情なナナルゥが困って、恥ずかしい表情を見せる。 <br />
それがたまらなくが可愛く見てしまう自分は、脳が湧いていると思う。 <br />
「じゃあ、激しくするね…。」 <br />
そういって秘所に入れる指をもう一本増やし、一気に一番奥に突き入れる。 <br />
「っああぁ!んああああ～～っ!!」 <br />
瞬間、ナナルゥが絶叫し、びくんと身体が跳ねる。 <br />
だけど手を休めず、更にもう片方の手で少し上にある突起を弄る。 <br />
「～～～!!駄目、駄目です!そこは、うぁ、駄目、ん～～～～～～～!!!!」 <br />
「…どうして駄目なのかな?ナナルゥは気持ちよさそうだけど。」 <br />
ナナルゥの抗議を聞かず、更に突起を摘み、乳首を弄ったときのように指で転がす。 </p>

<p></p>

<p>「駄目ぇ!だめらめらめらめらめぇっっっ!!!ひゃ、あ、あ、あああ、 <br />
ふああああ～～～～～～～～～～～～～～～～っ!!!!」 <br />
これ以上ないほどナナルゥの身体が弓なりに反り、ナナルゥが達する。 <br />
倒れないようにナナルゥの身体を支えると、脱力したナナルゥが倒れこんできた。 <br />
「んっ、は、あぁ…ろ、ロティ様、あの、もう、そろそろ、ロティ様のを…」 <br />
「うん、僕も、我慢できないや…。」 </p>

<p>「こ、この体位で、するの、ですか…?」 <br />
「うん。嫌、かな?」 <br />
「いえ…。その、恥ずかしいです…。」 <br />
ナナルゥには四つんばいになってもらい、こちらに向かってお尻を突き出してもらっている。 <br />
「…でも、恥ずかしがってるナナルゥは、可愛いよ?」 <br />
「…!　きょ、今日のロティ様は、なんだか意地悪ですっ…!」 <br />
「…う。ご、ごめん…。」反論できない。実際楽しんでいたし。 <br />
「えっと、でもその、ナナルゥは、大好きなんだけど、恥ずかしがるナナルゥが <br />
ほんとに可愛いというか、だからついそうしたくなるというか」 <br />
「～～～～～～～～～～～!!やっぱり意地悪ですっ!!」 <br />
「か、重ね重ねごめん…。」更に墓穴を掘ってしまった。いまさらながら自己嫌悪する。 <br />
「…いいです。…そういうロティ様も、私は嫌いじゃありませんから…。」 <br />
「…あ、ありがとう…。」 <br />
結局僕は、許してもらえると信じてナナルゥの愛情に甘えてるんだろうな。 <br />
「…お願いします。」 <br />
「うん。…できるだけ、ナナルゥも気持ちよくするから…。」 <br />
先刻の反省を兼ねて焦らさずにナナルゥの腰を掴み、隆起したものを秘所にあてがって <br />
「っ!!!!!う、あ……!!」 <br />
一気にナナルゥを貫いた。同時に膣内が強烈に僕のものを抱きしめる。 <br />
「っ!っは、きつい、すご…。」 <br />
思わず射精してしまいそうな締め付けに耐え、もう一度腰を打ち込む。 <br />
「っあ！あっ!うぁ、ん～～～っ!」 <br />
ナナルゥの尻肉が僕のお腹に当たる。燃えるような赤い長髪を振り乱してナナルゥが乱れる。 <br />
「っは、ああ、いい、ロティ様の、気持ちいいです、ふああぁ! <br />
ロティ様は、私の感じ、いい、ですかっ…?」 </p>

<p></p>

<p>「うん…いいよ、ナナルゥの、すごく熱くて、きつくて、たまらないっ…!」 <br />
両手をナナルゥの乳房に移し、胸を鷲掴みにしながら更に腰を打ち込む。 <br />
「っあ～～～っ!うあぁ、いい、ロティ様、素敵です…!」 <br />
「っは、はぁ…!気持ちいいよ、ナナルゥ…!」 <br />
ナナルゥが僕の動きに合わせて尻を突き出し、腰を振ってきてくれる。 <br />
「好きだよ…可愛い、ナナルゥ可愛いよ…!」 <br />
「や、そんな事、きゃうっ!うぁ、ん、あ～～･･･。」 <br />
ナナルゥの肉襞は僕のものをきつく締め上げ、貪欲に飲み込もうとして収縮していたが、 <br />
乳首を弄りだすとたちまち絶頂を迎えた。 <br />
上の口は意味のないうわ言のような喘ぎ声を上げ、下の口は激しく痙攣する。 <br />
お尻の肉がぶるぶると震え、僕の絶頂を促してくる。 <br />
「うううううううううううぅぅっ!!!!」 <br />
「ん～～～～～～～～～～～～～～～～!!!!」 <br />
たまらず、ナナルゥの膣内で精がはじけた。 <br />
「っん、あつい、ふ、んん…♪」 <br />
「うあ、まだ出る、ふぅ…」 <br />
焼け付くように熱い己の精液を残らずナナルゥの中に注ぎこみ、引き抜いた瞬間、 </p>

<p>「…あれ?」 </p>

<p>急にめまいがして僕は仰向けに倒れてしまっていた。 <br />
（やば…これは、のぼせ、た?） <br />
視界がぼやけ、頭がぼんやりしてのどはカラカラだ。 <br />
結構長い間浴室に入ってたし、サウナに入ってた様な状態になったという事か。 <br />
「あー、やばい、外、出ないと…。」 <br />
そう言ってなんとか上半身ををこした瞬間。 </p>

<p></p>

<p>「…ロティ様っ!!」 <br />
「わぁ!?」 <br />
ナナルゥが僕の上に馬乗りになった。 <br />
「…な、ナナルゥ?」 <br />
「…ハァハァ…なんなのでしょうか、身体が、疼いて、熱くて、まだ…足りません…!」 <br />
…やばい。ナナルゥの目が据わってるというか、尋常ではない輝きを放っている。 <br />
「わぁ、ちょっと待って!いや僕もしたいけどひとまず　うむぅ!?」 <br />
途中でナナルゥの唇が僕の言葉を封じ、僕のものを手でしごきだした。 <br />
不器用な手つきで、痛いくらいだったがナナルゥにされていると言うだけで十分興奮できる。 <br />
「ん～っ!むぅ～!」それに反応して簡単に萎えていたはずのものが復活する。 <br />
「んっ、ぷはぁ…ロティ様の言った事が、理解できた気がします。 <br />
…好きであるが故にもっと困らせたい、苛めたいという衝動を感じます…!!」 <br />
やばいやばいやばいやばいやばい!!!! <br />
そうこうしているうちにナナルゥが腰を浮かせて僕のものを自分の中に <br />
「っひゃうん!」 <br />
「うわぁ!?」 <br />
ああ重力と言うものはかくも偉大である。 <br />
騎乗位の体勢で一瞬で僕の剛直はナナルゥの中に埋まり、一番奥をついた。 <br />
「ああ、奥、当たって、いい、気持ち、いいです、ロティ様っ…!」 <br />
恍惚とした表情のまま、ナナルゥは激しく腰を上下に動かしだした。 <br />
動くたびにナナルゥの美巨乳がぷるんと揺れて膣壁がキュッキュッと締め付けてきて <br />
ああ気持ちいい胸もみたいってそんな場合じゃない! </p>

<p>「いや待って、タ、タイム!ごめんなさいごめんなさいほんと調子乗りすぎました <br />
水飲ませて、あ、それ気持ちい、じゃなくて!! <br />
お願いだから部屋でね、ほんとにここじゃやばいから!やめ、ほんと、ごめ、ちょ、 <br />
いやあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〆＄℃※〇!☆?」 </p>

<p>（あわわわわわわ･･･!） </p>

<p></p>

<p>………。 <br />
……。 <br />
…。 </p>

<p>「ハァ、ハァ…凄いです、まだ硬い、また、イキそうです…!ああ…素敵です、ロティ様…!」 </p>

<p>うふふえへへあははー。僕もいろんな意味で逝きそうです。 </p>

<p>あははははは　気持ちいい もう何回出したかわかんない </p>

<p>きれいな　お花畑が　見え　川の向こうに　父さんが　手を振って　ああ　そうか </p>

<p>「これが…理想郷…ハイ…ぺリア…!」 <br />
「わあーっ!ナナルゥさんストップですロープですブレイクですーっ!!」 </p>

<p>「……。」 <br />
「……♪」 <br />
「…で。いったい何があったのかな?」 <br />
「えっと、その、まぁ二人とも、いろいろあるんですよ、あは、あははははは…。」 </p>

<p>夜が明けて朝食の席にて。 <br />
ナナルゥは恐ろしく血色がよく、溌剌としている。 <br />
僕は頭が物凄くがんがんして気持ち悪い。 <br />
あの時脱水症状と熱中症で彼岸へと旅立ちかけていた時、ナナルゥを止めてくれたのは <br />
様子をこっそり（最初から）覗いていたヘリオンだった。 <br />
まぁ最初に暴走しだしたのは僕だし、気持ちよかったし文句なんて言えないけど。 <br />
腹上死は男の本懐らしいが、流石にこの年でまた死にたくない。 <br />
ナナルゥはレッドスピリットらしく熱に強いのか、けろりとしている。 <br />
「うふふ～二人とも程々にした方がいいですよ～?」 <br />
「ほどほどって･･･二人とも、その、あれ、なの?」 <br />
ヒミカさんが言わんとしてる事は分かったが、今答えたらボロが出てしまいそうだ。 </p>

<p></p>

<p>「…秘密です。ロティ様と私の、二人だけの秘密なのです。」 <br />
「「「「「……………。（大方理解）」」」」」 <br />
…ナナルゥ。確かにそういったけどそれじゃ丸解りだよ…。それにヘリオンはもう知ってるよ…。 <br />
「まあ…。その、ほどほどに…ね?」 <br />
「…おっしゃる意味が、よく理解できません。」 <br />
「あ、あはははは、はぁ…。」乾いた笑い声がでてしまった。 </p>

<p>まぁ、これはこれでもいいかな。ナナルゥは幸せそうだし。 <br />
まあ結局はそれが究極な訳で。 <br />
これからもいっしょに歩いていけるために、みんな無事にラキオスに帰ろう…。 <br />
気を取り直して、そう思った。 </p>]]>
      
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