「なぁ、セリア、ちょっと頼みがあるんだが」 
 俺は、廊下を往くセリアを呼び止めた。セリアは、俺を冷たく一瞥し、 
「なんですか。私はこれから訓練ですが」 
 くだらないことで呼び止めるなオーラを漂わせている。 
 だが計画のためには、やるしかないんだっ。 
「セリア、ツインテールにしてくれないか」 
「……ツインテール? なんですかそれは」 
 訝しげに、眉根を寄せるセリア。 
「オルファとか、ヘリオンみたいな髪型だよ。あんな感じにしてくれないか?」 
「理由はあるのですか」 
 目を細めて、アイスバニッシャーのごとき冷気を俺に突き刺す。いきなり否定しないのはセリア 
も自分を抑えてのことだろうか。 
「ネリーと間違えやすいんだ。ほら二人とも髪を一つに束ねてるし色も長さもそっくりだし」 
「なら、ネリーに言って下さい」 
 プイと身を翻し、遅れて長く青い髪が続く。そのままキビキビした歩調で去っていった。 
 こうして俺の「セリアツンデレツインテール化計画」は、一瞬で砂の器の如く崩れ去った。