「ふぅ……、これでもう大丈夫なはず……」
マロリガン城付近の森の中。
今日子に「大地の祈り」をかけ終わったクォーリンは軽く溜息をついていた。
既に「稲妻部隊」はなく、ウルカとの戦いで負傷した為後方に回されていたのだが、まだ自分にも役目があったようだ。
あれ以来剣を振るってはいない。神剣に振り回されることに疑問を感じたのもあるが、別の道を極めてみようとも思ったから。
それは…………
ゆっくりと振り返る。そこにはいつの間にかナナルゥが立っていた。
「……ナナルゥか、久しいな。」
「…………決着を、つけに来ました。」
「……そうか、そうだな……。」
沈黙があたりを包む。緊張が静かに膨れ上がる中、二人は対峙した。ゆっくりと構える。
恐らく瞬速の勝負になるだろう。今の自分がナナルゥに勝てるとは思えない……が、しかし。
しかし、かつて『稲妻』とまで言われた自分だ。そうやすやすと負かされるわけにもいかない。
集中力を高める。頬を伝う汗が落ちた瞬間、クォーリンは動いた。
待っていたかの様に、普段からは考えられないようなすばやさでナナルゥが仕掛ける。
ガキィィィィィィン………………
勝負は一瞬だった。二人の投げた「くない」は寸分違わずお互いのそれを打ち砕いていた。
「…………腕を上げましたね、クォーリン。」
「まだまだだ。貴女が手加減をしたという事くらいはわかる。どういうことだ?」
「忍びの道は長く、そして険しい。精進なさい、クォーリン。」
「ナナルゥ…………」
言いたいことはもう無いかのように振り向き、去っていくナナルゥ。クォーリンは立ちすくんでそれを見送るしかなかった。
しばらく俯いていたクォーリンだったが、やがて吹っ切れたような爽やかな笑顔で呟く。
「…………負けた…………」
悠人「なんなんだおまえら」