ヒミカが自室で悩んでいる。
「なんで…」
凄く悩んでいた。というより落ち込んでいる、に近い。
「なんで私だけ…」
彼女をここまで落ち込ませる悩み。
「胸がないのよ…」
…乙女であれば至極普通の問題であった。
――再生の剣を破壊したことにより新しいスピリットが「生成」されることはなくなった。
その代わり、今までいたスピリットたちは「成長、および老化」するようになっていた。
(そのほかに生殖能力も付加されたのだが、彼女達がそれに気づくのはまた後の話である)
そのため、「生まれて」からまだ比較的時間のたっていないスピリットたちは目にも判るほど成長している。
無垢な子供のような顔立ちもやがて恥じらいを含むような少女のそれになり、身長なども伸びてきている。
だが、逆に比較的長い時間をすでに生きたスピリットたちはあまり成長することはなかった。
そんな彼女達でも人間に置き換えればまだ17,8の乙女くらいであるからまだ成長する余地はあるが、
どうしても年(?)少のスピリットよりその度合いは小さかった。――
「エスペリアも、ハリオンも、ファーレーンも、セリアも、ナナルゥもあんなにあるのに…」
ヒミカより先に生まれた、あるいは同時期に生まれたラキオスのほかのスピリットたちはサイズこそ差はあれ、
皆乳房とわかるほどの胸がある。自分だけ、という感覚が小ささを気にする理由でもあった。
「はぁ、いつまでもうじうじしてても仕方ないわね。汗流して寝ましょう。」
思考をさえぎり入浴の準備をして彼女は大浴場へ向かった。
「あら?」
大浴場にはネリーとシアーの二人がいた。
「あ、ヒミカさんだー、こんばんは!」
「こ、こんばんは」
「こんばんは、今日も一緒なのね」
昔ほどではないとはいえ、やはりこの二人は行動を共にすることが多かった。息もとても合っている
「ねえ、ヒミカさん、また体洗って!」
そういってネリーはヒミカに背を向けていすに座る。
前に洗ってやったのを思い出し、懐かしくなったのだろう。シアーもして欲しそうな表情をしている。
ヒミカも懐かしくなり洗ってやることにした。
「はいはい。じゃあ、タオル貸して。シアーも次に洗ってあげるから」
そういうとシアーは顔を綻ばせた。
ヒミカは手際よく背中を洗ってやり、ついでに前も洗ってやる。ネリーはくすぐったそうにしてたがそれでもどこか嬉しそうだった。
「はい、じゃあシアー、こっちに来て」
「はーい」
ヒミカの前に背を向けて座るシアーの身体を手際よく洗っていく。そうやって背のほうを洗い終わってシアーを自分の方へ向かせる。
だが、そこにはヒミカが予想していなかったものがあった。
そう、シアーの胸のところ(当たり前だが)にははっきりと目に判るほどの乳房があった。
軽く、いやかなりのショックを受けている様子ヒミカだったが、身体を洗ってやっている手前、シアーに訝られると困る。
心の中で(平常心、平常心)と唱えながらシアーの体の前面を洗っていく。しかし…
―ふに。
「あっ」
―ふにふに。
「やぁ…」
(…)
胸を通るたびに感じる柔らかな感触、そしてそのたびに声を上げるシアー。
そのためにどうしても意識してしまい、ずいぶんと時間がかかってしまった。
「はい。おしまい。」
「ヒミカさん、ありがとう」
そういってシアーは軽く湯船につかり、ネリーと一緒に浴場を出て行った。
「はぁ…」
ヒミカは大げさにため息をついていた。
(いつか私が一番小さくなるのかしたら)
気分転換を兼ねて入浴をするはずが来る前より落ち込んでしまった。
そうやって物思いにふけっていると浴場にハリオンが入ってきた。
「あらー?ヒミカさんもお風呂だったんですか~」
そういってハリオンはヒミカの隣に座った。
「え、ええ。(また、今度は規格外なのが…)」
ハリオンの「サイズ」は他のスピリットたちに比べても中に何か入れてるのでは、と思うほど大きかった。
(もうさっさと洗って上がろう)
そう頭を切り替えてヒミカは髪を洗い始めた。
そうして、髪を洗い終えてなんとなく隣を見たヒミカは驚くべき光景を目にした。ハリオンが胸を揉みしだいているのだ。
「な、なにしてるのっあなた!?」
「はい?なにがですか~?」
「何が、って何で胸揉んでるのよっ!」
「ああ~、これは揉んでるんじゃなくて~、洗っているんですよ~」
そういうハリオンの身体はところどころ泡に包まれている。
「タ、タオル使いなさいよ、持ってるんでしょ」
「え~、だめですよ~?ここは敏感なんですから手で優しく洗わないと~。それに…」
「それに?」
「こうやって洗うと大きくなるんですよ~?」
「なっ!?」
そういってハリオンはまた胸を「洗い」だす。
「へー、そ、そうなんだ」
ヒミカは平静を装って答えたが実際はかなり動揺していた。
(そんな方法があったなんてっ…!…い、今からやっても効果があるのかしら…)
そんなことを石鹸を持ちながら考えて固まっていると。
「ヒミカさーん?」
「な、なに?…って、ハリオン?」
ヒミカは隣を向いたがそこにハリオンの姿はなかった。
(どこに行ったのかしら、もしかしてもう上がった?)
そう思っているといきなり何かに胸を覆われた。
「ひゃぁっ!?な、なに?」
「ふふ、ヒ・ミ・カ・さん。体洗ってあげますねー。」
触れてきたのはハリオンだった。上がったのではなくヒミカの後ろに回りこんでいたのだ。
「な、ハリオンっ?こ、子どもじゃないんだから自分で出来、るっ…んんっ!」
「遠慮なさらないで下さいー。それにーヒミカさん私の洗い方に興味があるみたいでしたし、ね?」
そういいながら申し訳程度にしかない胸を石鹸の泡がついた手で「洗って」いく。
「そ、そんなっこと…っ」
ハリオンの手を振り解こうとするが、身体にうまく力が入らず、思うように抵抗できない。
「おねがっ、い…ハリオン、やめっ、、、だ、めぇっ!」
「いいえ~、やめません。まだ私の洗い方教えきってないですもの~」
そういうハリオンだが実際は胸しか「洗って」いない。
「本当にだめ、だかっ、らぁっ、…やあっ、乳首擦ら、ないでっ…!」
「ふふっ、ヒミカさんの胸、ちっちゃくて可愛いです…」
「~~~っっ!」
胸の大きさのことを言われてヒミカは身体を縮こまらせる。
「あ~、だめですよヒミカさん、それじゃ洗えないじゃないですか~」
「も、もういいからっ、後は自分で出来るか…」
ハリオンはそういうヒミカの言葉をさえぎるようにしてハリオンヒミカの乳首をつまんだ。
「ひっ!?あっ、あああああっっ!!」
今までの「洗い」でぎりぎりまで高まっていたヒミカは、その行為で達してしまった。
結果ヒミカはハリオンに身体を預けるようになってしまう。
「あらあら、気持ちよすぎちゃいました~?」
「ああ、はあぁ…」
上からヒミカを覗き込みながら話しかけるハリオンだがヒミカは答えるのもままならない様子だった。
「…それじゃあ、…」
体洗っちゃいますね、と続くと朦朧とした頭で思っていたヒミカは「この行為」がまだ続くとは露ほどにも思っていなかった。
「もっと、気持ちよくしてあげますね?」
「え、ちょ、ま、わた、し…もう…」
「まあまあ、遠慮なさらずに」
「遠慮な、んて、してな、いっ…んんっ…!」…………
………
……
…
しばらくして、二人ののぼせ上がって大浴場で倒れている姿がヘリオンによって発見された。
だが、ヘリオンは顔を真っ赤にしてただ「倒れていた」としか答えず、当事者である二人も
笑ってごまかしたり、はたまた逆切れして真相を知ることは出来なかった。
「私は知ってますけど」
そうつぶやいたのはナナルゥであった。
ナナルゥはペンを置き、ノートを閉じた。
ノートの表紙には…「ヒミカ観察日記」…
ナナルゥは統一後からずっと、何を思ったのかヒミカを観察し、それを記録していた。
朝起きてから寝るまで、気が向いたときには彼女が寝ているときも観察した。
ヒミカはそんな彼女を訝るどころか「雛鳥みたいで可愛い」などといい、抱きついてくることもあった。
そんな日々のおかげで彼女のことならほぼすべてのことを把握できるようになっていた。
そんなナナルゥも今回のことは衝撃的であり、また興奮する出来事であった。
風呂場でのヒミカを想像し、ハリオンを自分に置き換える…
「………………へっへっへ。」
ナナルゥはなんとも変態臭い笑いを浮かべながら枕元にノートを隠し、ベッドに入った。
「いつか、私も…」
そういうナナルゥの手は自分の手と秘部に伸びていた。
(尺が短いまま了)