ファーレーンの日記帳・完結編

コサトの月黒よっつの日
どうしましょう……自由研究を言い渡された時から書いていた日記を間違えて提出してしまいました。
「戦い以外のことに繋がるなら何でもいい」とユートさまが言うので、
気の向くままに書き連ねただけで、そんなつもりは無かったのに。
ああ、この二週間くらいの日記の内容を思い出すだけで顔から火が出そうです。

コサトの月黒いつつの日
ユートさまの様子が少し妙だと思ったら、「見なかった事にするから、その、ゴメン」と、
申し訳無さそうに日記帳を返してくださいました。間違えて渡してしまったのは私の責任ですから、
と言いましたがやはり顔が赤くなるのは覆面越しでも誤魔化せなかったようです。
でも、一冊目の日記の新しいページに、たどたどしい字で
『初めは別のもののことかと思った。びっくりした。思いだした。藍のがよかった』
と書かれていたのを見つけたときよりは、顔の火照りもましでしょう。
明日からは、新しいものがお気に入りになりそうです。
そして、提出する物も決まりました。
――――――
コサトの月黒いつつの日
今日はお気を使わせて済みませんでした。ですが……「別のもの」とは何でしょうか。
いえ、それは置いておいて、お返事を読ませていただきましたけれど、
ユートさま、どうやらまだ聖ヨト語の書き取りは苦手のご様子。
ですから、私の研究はユートさまの筆記術の上達をお手伝いすることにしようと思います。
このテーマが認めていただけるのなら、明日にもう一度このノートにお返事を下さい。
不思議です、面と向かっているときには出ない言葉がこの形なら書けますから。それでは。

ソネスの月青ひとつの日
「別のもの」は置いておいて欲しい。確かに書き取りは苦手だ。助かる。
そうだな、こうやって、手紙みたいに書くと、じっくりと考えることが出来そうだ。
……今書いているこれを添削されるのか?
きっと、真っ赤になって帰ってきそうだけれど、お手柔らかに頼む。

「はい、それではその日の出来事などを書き込んでください。
私のものをご覧になったのですから、少しの間くらいは構いませんでしょう?……と。ふふっ」