「ただいま~」
「おかえりなさいニム……あら?」
普段からあまり感情の表現が豊かではないニム。
そのせいか、周囲はニムがいつも不機嫌そうな印象を持っているようだ。
でも。
「……なに?お姉ちゃん……」
気まずそうに視線を逸らす。
そんな表情を見ていると、何故皆がその変化に気付かないのかをむしろ不思議に思う。
「ううん。そうだニム、久し振りに髪を梳くってあげる。」
「え……いいよ、そんなの、めんどくさい。」
「いいからいいから……ほら、座って。」
「あ……もう、しょうがないなぁ。」
ぶつぶつ言いつつも素直に座ってくれる。隠しているけど嬉しそうな目元。
仕草一つ一つにちゃんと自己主張があるニム……でも『めんどくさい』は直させなきゃね。
そりゃ少しきつい言い方で話す事もあるけれど。
それだってちゃんと相手を立てた上でのニムなりの配慮なのだ。
…………ちょっと素直じゃないかな、とは思うけど。
そんな伝わり難い不器用さがニムの美点とか思うのは身内贔屓なのだろうか?
綺麗に刈り揃えられたさらさらの髪をゆっくり梳かす。
しばらく続けているうちに気持ちが落ち着いたのだろう、ぼそぼそとニムが話し始めた。
「ねぇお姉ちゃん……実はね……今日ね……」
「……うん。どーしたの?ニム……。」
……………………
夜。すっかり安らいだニムの寝息を聞きながら、頭を撫ぜてあげる。
すうすうと気持ちよさそうに寝入っているニムを見つめているだけで安心する。
大切な、たった一人の妹。
かけがいの無い存在を自分が与えられている事に感謝しながら、私も目を閉じた。
「ただいま~」
「おかえり~……あれ?」
いつも隠してるつもりでバレバレのお姉ちゃん。
判りすぎる表情に、周囲はそれがお姉ちゃんの無意識の計算だと考えているようだ。
でも。
「……ふええ~……ニムぅ……」
泣きながら抱きついてくる。
そんな仕草を見ていると、何故皆がそんな疑いを持つのかをむしろ不思議に思う。
「わわ、どうしたの、お姉ちゃん……ほらほらよしよし……」
「ううっ…………ぐすっ…………」
「もう、ほら面当て外して、鼻かんで……しょうがないなぁ……」
「ちーん……うう、ごめんねぇ……」
まだぐつつきながらも素直に従ってくれる。隠そうともしない赤く腫れた目。
仕草一つ一つに素直な可愛さがある……妹が言うのもなんだけど。
そりゃ多少美味しいトコ取りみたいな時もあるけれど。
それだって『お姉ちゃん』である為に一歩控えた自己主張のただの結果なんだ。
…………覆面みたいな面当てはやり過ぎだ、とは思うけど。
そんなちょっと無理してる優しさがお姉ちゃんの美点だとか思うのは妹の贔屓目だろうか?
綺麗なさらさらの長い髪をゆっくり撫ぜる。
しばらく続けているうちに気持ちが落ち着いたのだろう、くすんくすんとお姉ちゃんが話し始めた。
「あのね……ニム、あのね……今日ね……」
「うんうん、どうしたの、お姉ちゃん。」
……………………
夜。すっかり泣き疲れて眠ってしまったお姉ちゃんに抱き枕にされている。
すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てているお姉ちゃんを見ていると安心する。
大切な、たった一人のお姉ちゃん。
かけがえの無い存在を自分が与えられている事に感謝しながら、私も目を閉じた。