俺は、廊下を往くセリアを呼び止めた。
「セリア、俺に、俺に付いてきて欲しい」
「は?」
小首をかしげるセリア。
「他の奴らじゃ……だめなんだ、俺にはセリアじゃないと。セリアとならきっとうまくいく。
そう、思えるんだ」
じっとセリアの目を見ながら言う。
「ユ、ユートさま、あ、あのいきなりまさか心の準備というものが……」
恥ずかしげに目を伏せ、長い睫毛が揺れる。
「セリア……俺はもう我慢できないんだっ!!」
セリアの手を掴み、俺は駆け出す。
「あっ ユ」
普段からは想像も付かないか細い抵抗と、吐息のような声をあげただけで、為す術無く
俺の手を握り、うつむきながらセリアは付いてくる。
「助かったよセリア。アセリアだと加減を知らないから全開しかできなくてさー。ネリーと
シアーも、コントロールが未熟でさ。やっと念願の物が味わえるよ」
俺は、ガラスボウルの中の乳白色の物体を優しくかき混ぜながら言った。セリアは期待通
りの働きを見せている。やはりこう言う時頼りになるのは「ラキオスの永久凍土」といわれ
るセリアだな。
「セリア、さっすがー」
「さすが~」
ネリーとシアーは、既にパブロフの犬の如き状態でスプーンを握りしめている。
「アイスバニッシャー アイスバニッシャー アイスバニッシャー アイスバニッシャー…………」
「そうそう、流石セリア。冷やしすぎるとがちがちになっちまうからさ。良い加減で。こう
してかき混ぜると空気を含んで舌触りが…………ん、どうした?」
「――――アイスバニッシャーXXッッ!!!」
ピキーン
「…………フューリーXIII……」
ドカッ ズバッ ビシュッ
ズガーンッ!!ガラガラ ゴロゴガンッ
――――シーン。