借り物競争

最初にそのスピードを生かして殺到した青スピリット達が掴んだ紙はそれぞれ
アセリア『針金』セリア『嫌いなもの』ネリー『お兄ちゃん』シアー『お姉ちゃん』だった。
「……………………」
一瞬の間の後全く違うものが書かれていたにもかかわらず、
シアーを除く三人が一斉に悠人に向かって駆け出す。反応が遅れたシアーもネリーを追いかけていった。
逆走してくる四人に危険を感じた悠人は競争を放棄して逃げ出した。

次に到着したウルカ、ファーレーン、ヘリオン、それに黒スピリットに混じって健闘したヒミカが紙を掴む。
ウルカ『赤光』ファーレーン『冥加』ヘリオン『月光』ヒミカ『失望』。
「……………………」
お互いの顔を見合す。一瞬のイヤな空気の後、真っ先に諦めたヘリオンが何故か謝りながら逃げ出した。
四すくみの一角が崩れる。残りの三人も追撃せざるを得なかった。

遅れて到着した赤スピリットの二人は誰も居ない事に不審を感じながらも紙を取る。
ナナルゥ『マナ結晶』オルファリル『光陰』。
ばか正直に旅に出たナナルゥはリタイア。オルファリルは光陰を連れ出そうとするも、
引っ張っていく直前で誤解した今日子の雷撃を喰らい、巻き添えで気絶した。

さらに遅れて紙を掴んだ緑スピリット達はのんびり(一部除く)と紙を引いた。
エスペリア『はずれ』ニムントール『当たり』ハリオン『ファンタズマゴリア』。
「なんですか、これは!」「なによ、これ!」「これは~なんですか~?」
意味の判らない単語を目にして叫ぶ(一部除く)三人。

大会運営委員のイオが呟く。
「……ヨーティア様、ホンキで勝者が出ると思ってないでしょう?」
「当たり前だ、普通にやるだけじゃつまらんじゃないか。」

数日後。帰還したナナルゥはまだ片付けられていないゴール線の前に立っていた。
「…………ごーる。」
手にしたマナ結晶が空しかった。