WHITE

……本当にこれでよかったのだろうか……
幾度と無く同じ問いを繰り返し、
……これでよかったのだ。これしかなかったのだ……
幾度と無く同じ解を繰り返す。
同じ問いに対しては同じ解しか出てこない。
それなのに、心のどこかでは違う解を求め、
幾度と無く同じ問いを繰り返す。
……本当にこれでよかったのだろうか……
イオは同じ問答を繰り返し続ける。
何度も。何度も。

「俺はイオを、みんなを護りたい。だからエターナルになる。」
「はい……」
聞かなくともなんとなくわかっていた。
聞くまでも無く感じていた。
「ユート様、私も……」
(私も一緒に連れて行ってください)
そう言いたかった。
「私も……私は、ヨーティア様のお傍に居なくてはなりません…ですから…」
しかし口から出た言葉は正反対のものだった。
「ああ、わかってる。だからお別れを言いに来たんだ。」
『お別れ』。その言葉が深々と胸に突き刺さる。
「俺がここまで来れたのもイオやみんなのおかげだ。本当にありがとう」
ユート様は私を抱きしめながらお礼を言う。
「イオ、愛してる。」
「ユート様…私は…私は…」
言いたいことがあるのに、伝えたい思いがあるのに、
言葉にならない。形にできない。
そして、結局私は何も言うことができないままユート様と分かれてしまった。

幾度と無く同じ問いを繰り返し、幾度と無く同じ解を繰り返す。
同じ解を繰り返すたびに胸が痛む。心が軋み、悲鳴をあげる。
それでも同じ問答を繰り返し続ける。
痛みも、苦しみも今だけなのだ。こんな思いも、もうすぐ消えてしまうだろう。
そう、ユート様がエターナルになれば消えてなくなる。
……消える?消えてなくなる?……
この胸に宿る思いも、痛みも、苦しみも?
ユート様の顔も、名前も、温もりも?
何もかも全て消えてなくなってしまう?
そう思うと、涙が溢れてきた。
「いや……そんなの、いや……ユート様…」
名前を口にしてユートを思う。
そしてユートを忘れ去ってしまった自分を思う。
胸が張り裂けそうなほどの痛みが広がる。
心が壊れてしまいそうなほどの苦しみが広がる。
「泣くほど辛いのなら今からでも後を追えばいいだろう。」
気がつくとイオの後ろにはいつのまにかヨーティアが立っていた。

「ヨーティア様…」
「あのボンクラのことが好きなんだろう?」
「はい、ですが…」
「私のことは気にするな。行けイオ。行ってユートを助けてやれ。」
ヨーティアは優しい笑みを浮かべながら続ける。
「そして、全部終わったらまた私の手伝いをしてくれ。」
「ヨーティア様…ですが…!」
エターナルとなったものはその存在を忘れられる。
それはヨーティアも聞いているはずだ。
「それがどうした。記憶があろうと無かろうと、私の助手はお前だけだ。」
「…ヨーティア様…」
「わかったらさっさと行け。追いつけなくなるぞ。」
「はい…ありがとうございます。行ってきますヨーティア様。」
「ああ、いってらっしゃいイオ。」
イオは駆け出した。ユートのもとへと。
大事なものを失わないために、護るために。
全てを終わらせて帰ってくるために。
「まったく。どいつもこいつも世話がやける。」
ヨーティアは駆け出したイオの背中をいつまでも温かく見守っていた。