「なんで文化祭なんだ・・・」
ラキオスのエトランジェ、『求め』のユートは呟いた。
「これもあの馬鹿が・・・」
ことの発端は例によってあの男だった。
・・・・数日前
「なぁ悠人よ・・・文化祭やらないか?」
作戦会議中に突然光陰がそんなことを言い出した。
「はぁ?光陰・・・アンタ一体なに言ってんの?」
「雷のくらい過ぎで脳がイカれたか?」
今日子と悠人が呆れたように答える。
「ふっ・・・まぁ聞け、二人とも。
いいか・・・これは今後の帝国戦にも繋がる重要なことなんだ。」
光陰が語り始める。
「いまやラキオスのスピリット隊は稲妻部隊も交えた大所帯だ・・・
お互いロクに話したことのないやつもいるんじゃないか?
それでいいのか?否!それでは強大な帝国には対抗できないだろう・・・
俺たちは今こそ互いを知り、団結しなければならないのだ。
そのための文化祭なのだよ・・・」
長々ともっともらしいことを語る光陰。
「・・・まぁ、言いたいことは判った。でも文化祭じゃなくても・・・」
「甘い!ラキオス名物ヨフアルより甘い!
いいか?文化祭は皆が自分のやりたいことをしていい。
すなわち、そこに個性が出る。お互いを知る上で最適なイベントだと言えるだろう。
さらにだ!この戦いが終わればスピリット達も自らの道を歩まねばならない。
自分達のやりたい事が他人を満足させられるのかを試すいい機会になるはずだ!
どうだ?これでも文化祭は駄目だと言うのか?」
こぶしを握り締め熱く語る光陰。
「・・・で、その心は?」
「そりゃーもちろん、オルファちゃんやヘリオンちゃんと文化祭デートを・・・」
「結局それかーーーー!」
龍も屠らんとする勢いで振り下ろされたハリセン(雷付き)で黒焦げになる光陰。
と、いうようなことがあったのだが結局文化祭は実行となった。
悠人や今日子から話を聞き皆が興味を示したからである。
「・・・まぁ、光陰の言うことにも一理あるからな・・・」
そう言いながら俺はハリオンの喫茶店『ほのぼのエレメンタルブラスト』の暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませー、あらー、ユート様じゃないですかー。
お好きなーお席にー座ってくださいねー。今お冷をもっていきますー。」
とりあえず席に座った悠人は周りを見る。
レスティーナのおかげで以前に比べスピリットに対する偏見が薄まったのか
ちらちらと城の人間や町の人も見える。
「俺達しかいなかったらどうしようかと思ったけど・・・杞憂だったな。」
ガチャン!
突然の物音に悠人はびっくりする。
「・・・なんだ水が来たのか・・・って、ええ!?」
そこにいたのはハリオン・・・ではなくウエイトレスの格好をしたセリアだった。
「・・・メニューです。」
スマイルも浮かべずメニューを渡してくるセリア。
「あ、ああ・・・じゃあ、これとこれ。」
何だか威圧感を感じる悠人はろくに見ずに慌てて頼む。
「・・・畏まりました。ハリオン特製オリジナルブレンドティー『アポカリプスⅡ』と
自家製ヨフアルでよろしいですね・・・?」
「あ、ああ。」
何か物騒な単語が聞こえたが了解してしまう。
「少々お待ち下さい・・・」
掻っ攫うようにメニューを受け取るとセリアは凄い勢いで厨房に消えた。
「・・・俺ってやっぱり嫌われてるのかな・・・」
そんなこんなで食べ終わり悠人は会計を済まそうとする。
ちなみにお茶は普通だった。ハリオン曰く「名前はーなんとなくですー」
妙に形が崩れてるヨフアルも味はよかった。
結局セリアは最後までニコリともしなかった。
悠人が見る限り他の客には普通に接客していたのだが・・・
「・・・ありがとうございました。」
「あ、ああ。おいしかったよ。ヨフアルも丁度よい甘さで・・・」
「・・・そ、そうですか?」
「これなら喫茶店としてやっていけるんじゃないか?
セリアのウエイトレス姿も可愛いしさ。」
「そ、そんな目で私を見てたんですか?こ、これだから男は。」
褒めたつもりなのだが怒られる悠人。
「あらあらー駄目ですよーお客様にそんなこといっちゃー。
めっめっですよー。ヨフアルだってー褒めてくれたんですからー。
全くーしょうがないですねーセリアはー。
いつユート様が来てくれるかそわそわしてt・・・」
「ア、アイスバニッシャー!!!」
ハリオンが一瞬氷に閉じ込められセリフが中断される。
「はぁはぁ・・・」
「冷たいですー素直にーならないとーめっですよー。
ライバルはー多いんですからー。」
「ハリオン!もう一回くらいたいの!?」
「・・・何だかよく判らないけど程々にな・・・」
そんなこんなで今日もセリアは素直になれないのでした。