アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。
そんなある日の事。
二人は揃ってお出かけする事になりました。
仲の悪い二人を心配したエスペリアお姉ちゃんにお使いを頼まれたのです。
二人で何かを成し遂げれば少しは友情が芽生えるかと考えたのですが、いささか浅はかなのは否めません。
その後のエスペリアもさすがにまだ幼かったのです。
セリアは本当はアセリアとなんか一緒に行きたくなかったのですが、
微笑みながら『献身』をこねくり回すお姉ちゃんには逆らえません。
そんな訳で二人はリュケイレムの森をてくてくと歩いていきます。
「……………………」
「……………………」
ずるずるずる
元々無口なアセリアと機嫌の悪いセリアは無言で並んで歩いています。
ああ、神剣を引きずってますね。まだ小さいので仕方がありませんが武器は大事にして欲しいものです。
あ、アセリアがセリアのやや前に出ちゃいました。
考えがあってやった訳ではないでしょうが、セリアのプライドを大きく刺激したようです。
セリアはちょっと頬を膨らませて歩く速度を上げました。
アセリアを追い抜いていきます。
このままでは置いて行かれると思ったのでしょうか、アセリアも黙って早歩きを始めました。
「……………………」
「……………………」
激しく左右に動くつつましげなポニテと軽く風に流れるセミストレートヘアの小さな女の子。
ぷりぷり動く二つのかわいいお尻とかはそっちの趣味の方にはたまらない光景です。
そんなことはどうでもいいのですが、セリアはそろそろ疲れてきました。
ちょっと横をみるとアセリアは息一つ乱さずセリアについてきています。
むっとしたセリアはまだ小さいハイロゥをそっと展開しました。ずるです。いけませんね。
でもそんな倫理観が子供にあるはずも無く、勝ち誇ったセリアはふふんと自慢げに鼻をならしながら横を見ました。
するとどうでしょう。よく見るとアセリアもハイロゥを広げていたのです。
しかも結構前から出していたのでしょう。涼しい顔してずっとずるしていたのです。どうりで汗一つかいてないはずです。
セリアはすっかり自分の事を棚に上げながらカッとなってしまいました。
逆切れし易いのはこの頃から変わっていません。どうにかしてほしいものです。
あっ、セリアがいきなりアセリアの足を引っ掛けました。
ずべたっ
しかし転んだのはセリアの方でした。慌てて逆の足を出してしまったのです。まぬけというか、因果応報ですね。
でもセリアはまだ小さいのでそんな難しいことは知りません。顔から地面に転んでしまいました。
アセリア、助けてあげないと…………って、さっさと先に行ってしまいます。怒っているのでしょうか。
「………………」
………………まぁ予想通り、気付いていないだけでした。
森の出口でようやくアセリアは気付く訳ですが、それまで放置プレイだったセリアはというと。
「……………………ぐすっ」
どうやら足を挫いたようです。踝の辺りが赤く腫れてます。とても歩けそうにありません。
ざわざわざわざわ…………
急に風が吹いて森の木々がさざめきます。一人になったとたん、周りのものが急に大きく感じ始めました。
大したこと無かった足の痛みが気のせいか大きくなってきます。不安が広がってきました。
でもツンデレのセリアはそう簡単には泣きません。頑張っています。いけませんね。
ここはお約束の展開で止めを刺してあげましょう。
ごろごろごろごろ…………
遠くで雷鳴の音がしました。ふと見上げると雲がかなり厚く空を覆っています。
普段から苦手な雷が近づいてきたことがセリアの不安を更に煽ってそろそろ我慢も限界にきたのでしょう。
「………………ふぇっ…………」
セリアの顔がくしゃっとしました。あと一息です。
「………………ん」
あっ、何という事でしょう。アセリアがいつの間にか戻ってきています。
そっぽを向きながら、しゃがみこんでセリアに手を差し伸べています。
これからがいい所なのにもといなんという美しい光景なのでしょうか。
セリアはむ~と少し悩んだあとに気付きました。アセリアがあちこち擦り傷だらけだということを。
それでも素直になれないセリアは手を取る代わりに黙ってアセリアの頭についた葉っぱをとってあげました。
「………………えへっ」
「…………さんきゅ」
こうして二人は雨が振る前にと急いで帰りました。繋いだ手をしっかり握って。
ところでセリア、足はもう大丈夫なのかな?
セリア「ななななんでこんな話を知ってるのよっ!」
ヒミカ「なんでって……アセリアがみんなに話してたわよ?」
ヘリオン「へ~、セリアさんって昔から変わってないんですね~」
セリア「どういう意味よ!ヒミカもなんでこんなキャクホン書くのよっ!私まるっきり悪役じゃない!」
ヒミカ「失礼ね=3 わたしは聞いたことを忠実に再現しただけよ、なんか違うの?」
セリア「う…………こ、この通りよ…………だけど貴女が普段わたしをどういう目で見ているかがよく判ったわ……」
ファーレーン「ああ、これが次のコウエンのキャクホンなんですね……あら、三人しか出ないのですか?」
ニムントール「お姉ちゃん、突っ込みどころ違う」
ハリオン「感動的な~お話ですねぇ~」
ネリー「へへ~、セリア、かわいい~」
シアー「う、うん、アセリアも~」
セリア「そこうるさい黙れ!っていうか、読~む~な~っっ!!」
ナナルゥ「セリア…………」
セリア「う…………な、なによ…………」
ナナルゥ「……………………………………………………ふっ」
セリア「笑ったっ?あんた今笑ったわねっ?」
悠人「おお、あのナナルゥを笑わすとは」
セリア「きゃあ!ゆゆゆユート!いつの間に……ってダメ!読んじゃダメ~~☆#$!!」
悠人「うわ、痛てて。なんで?セリア可愛いじゃないか」
セリア「……………………」
アセリア「セリア、沈黙か?」
セリア「あ、貴女ねえ…………こんなの、恥ずかしくないの?」
アセリア「なんでだ?これ、わたしとセリアの大切な想い出。セリアは恥ずかしいのか?」
セリア「……………………」
ヒミカ「さ、話もまとまったことだし、ジカイコウエンはこれでいくわよ~!」
セリア「や、ま、ちょっと待って!やっぱりイヤ~~~~!!!!」