ア&セリア子供劇場Ⅲ

アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。

そんなある日のこと。セリアはエスペリアお姉ちゃんのお部屋に連れて来られました。
なんの用事かさっぱりわかりません。初めてお部屋に呼ばれたセリアは驚きながら一生懸命考えました。
布団の地図はコッソリ陰干ししたしラナハナは隠しておいて後でエヒグゥにあげたし……………………
……………………(滝汗
どうやら心当たりが多すぎる事にやっと気付いた様です。悪い事は出来ないものですね。
おしおきが怖くてドアの前で立ちすくんでしまいました。顔に縦線が何本も並んでいきます。
そんなセリアに気付いてか知らずか、振り向いたエスペリアが優しく声をかけました。

「あらセリア、いつまでそんな所で立っているのですか?早く入りなさい。」

びくっ!…………フルフルフルフル

「?なにをイヤがってるの?おかしな娘ですね……。今日来てもらったのは…………」

数時間後。セリアは街を歩いていました。
トレードマークのポニテと髪を纏めている大きめの黄色いフリルリボン。
肩口が軽く膨らんだ柔らかそうな素材の服からすらりと伸びる白い腕には『熱病』を…………持ってませんね。
いかにも戦闘に向いてなさそうな大きく広がったスカートにはささやかな胸元とおそろいのフリルがひらひらしてます。
スカートの裾から慎まし気に見え隠れする肢にはいかにも清楚な白のストッキング。
全体に薄っすらと緑がかった黒が基調のワンピースが髪のリボンと良くあって…………
……をや?なんだか色々危険ものを見てしまった気がしますね。もう一度よく見てみましょう。
……………………ゴスロリ?
これはこれで……じゃなくて気でも違ったのでしょうか。普段からは考えもつきません。
一体なにがあったのでしょう。いずれにしてもかなり目の毒なのは間違いありませんが……ごほん。

「~~~~~~~~~」

顔を真っ赤にして俯いたままセリアは歩いていきます。
道行く人がすれ違いざま皆振り向いていくのですが恥ずかしくてそれどころじゃありません。
先ほどのエスペリアの満面の笑みと言葉が思い出されます。

「やっぱりぴったりですね。わたくしはもう着れませんからセリアに、と思って♪」

あんな顔をされてはただでさえ後ろ暗いセリアはいやとは言えませんでした。
本当はすぐにでも脱ぎたかったのですがそのまま用事を命じられてしまったのです。
足元がすーすーして落ち着かないことこの上ないですが仕方がありません。泣く泣くそのまま出てきました。
これでは新手の罰ゲームかなにかなのだろうかと疑いたくもなります。
セリアはもう二度とラナハナを残さないと心に決めました。あっ、セリアのLvが上がりました。

下を向いて歩いていたセリアは人とぶつかってしまいました。よくあるアクシデントですね。
慌てて顔を上げるといかにもな大人の人達が怖い顔で睨んでいます。
「おう嬢ちゃん、どこみて歩いとるんじゃ!」
「あ、あの…………ご、ごめんなさ」
「あ~ん、よく聞こえんな~…………なんだ、スピリットかよ」
「スピリット~?…………へへ、よく見りゃ上玉じゃねぇか」
「あん?お前、そっちの趣味があるのか?」
なんだか時代錯誤なことを口走りながらセリアを囲んでしまいます。弱いものイジメの典型です。
とゆうかこの人達、神剣ももってないのに一発でスピリットと見破る辺り、妖精趣味全開です。いけませんね。
もっともスピリットが本気になれば一般人など相手にもならないのですがそこはまだ幼いセリアです。
しかも今は神剣を持っていません。すっかり怯えてしまったセリアは黙って俯くしかありませんでした。

 ―――――― 一方その頃。

「じゃあアセリア、セリアにちゃんと『熱病』を届けてね」
「……わかった、ちゃんと届ける」
「それにしてもぴったりですね。わたくしはもう着れないから」(ry

セリアはふるふると震えています。少女の本能が警鐘をならしているのですが足が竦んで動けません。
そうこうしている内にスカートの裾を掴まれてしまいました。このままでは捲られそうです。
慌てて必死にスカートを抑えようとした隙に後ろに回ったもう一人がポニテを引っ張ります。

「!……ヤッ!!」
「へっへっへっ。騒いでも無駄だぜ」
「ここいら辺にゃお前を助けようなんて奇特な奴は誰一人居やしねーんだからな」
「まったくこんな格好しやがって…………いっちょ前に男を誘ってんのか?」
お約束のセリフを連発する恥ずかしい大人達に小さいセリアはろくに抵抗が出来ません。
目からじわっと涙が出ましたがその手の趣味の人には全く逆効果だったようです。いけませんね。
これでは誘っていると言われても反論できないもとい絵に描いたようなセリアのピンチです。
っていうか、この世界ロリ多すぎです。

ガスッ!

「な、なんだテメェは!」
「俺達を誰だと……ぐえっ!」
「こ、この……がはっ!」

セリアの貞操が風前の灯かと思われた正にその時です。
颯爽と現れた王子……もといアセリアがあっという間に悪漢を倒していました。ちょっと早過ぎ……ごほんごほん。
いつもの白い戦闘服は心なしか少しふわっとしています。ああ、ところどころ咲いている白い花模様のせいですね。
スカートのレース模様が黒ストッキングと相まって絶妙な背徳感を醸し出しています。
ワンポイントで胸元に黒いクロスのネックレス。いつもの紫リボンもいいですがこれもなかなか。
細めの白いリボンが髪になびいてるのもポイント高いですね。
……………………白ロリ?

「「おぼえてやがれ!」」
……どこの世界でも悪役の捨て台詞は同じなのでしょうか。
それはともかくそれを見届けたアセリアは振り返ってセリアの様子を窺いました。
ぺたりと座り込んで上目遣いのセリアの目にはうっすらと涙が浮かんでいます。そして地面には。

「……ごめんね」
「……うん」
夕焼けに包まれた街。アセリアは腰が抜けてしまったセリアをおぶって詰め所に帰っています。
背中に心地よい重さと、小さなお尻の生暖かい湿った感触を感じながら。
ところでセリア、用事はどうしたのかな?

セリア「……で、この劇で貴女は一体 な に を 伝えたいの?」
ヒミカ「う~ん……最初はこんなはずじゃなかったんだけど……どうなんだろ?」
セリア「 わ た し に 聞 か な い で く れ る か な 」
アセリア「セリア、なぜ怒る?これ、セリアと私の大切な」
セリア「……………………お願いアセリア、少し黙ってて」