……なんだろうこれ……
それが目の前の物質を見ての率直な感想だった。
少なくとも今までの人生でこんなものは一度も見たことが無かった。
見た目で言えば今にもンギュルンギュルいいだしそうな感じだ。
「…えーと、これは・・・?」
説明を求めるとウルカが遠慮がちに口を開く。
「はい、どうもユート殿が近頃お疲れ気味のようですので、
おいしいものでも食べて元気を出して頂ければ思いまして…」
ああ、これ料理だったのか。
そういえば皿の上に載ってるし、スプーンやらフォークやらが添えてあるな。
「ですが、手前はどうも料理というものが苦手でして。
それでアセリア殿に手伝っていただき二人で作ったのです。」
「ん。がんばった。」
「あ、ああ、ありがとう……」
二人の気持ちは本当にありがたい。
しかし…なぜそこでアセリアに手伝いを頼む!?
普通エスペリアあたりに頼むだろ!
そもそも二人ともいくら料理が苦手といってもここまで凄いものは作らなかったはずだ。
なぜ?二人で作ったからか?
「ユート殿?」
「どうした?ユート」
料理(とウルカが呼んでいたもの)を見つめたまま固まっていると二人が不安げに声をかけてくる。
「いや、なんでもない。ところでこれ、味見してみたか?」
「いえ、やはり一番初めはユート殿に食べていただこうと思いまして。」
「そうか……」
味の保証は皆無らしい。
…しょうがない、覚悟を決めよう。
「じゃあ、頂きます…」
とは言ったもののどう食べればいいかわからない。
何せ初めて見る…えーっと、料理?だ。
しばらく手を出せずにいるとウルカがフォークを手に取った。
「ユート殿、その…なんでしたら手前が食べさせて差し上げます。」
そう言って料理…だったっけこれ…の一部をフォークで刺し、そっと差し出した。
その頬は微かに赤く染まっている。
「…口を開けてください。」
「ウルカずるい。私も。」
そう言ってアセリアもスプーンを手に取り、料理…でいいんだよな…を掬って差し出す。
「さぁ、ユート殿。」
「ユート。」
「ちょっと待った、二人とも…」
落ち着いて…と言う暇も無く、その物質は半ば無理やり口の中に入れられた。
味が…風味が…匂いが…舌触り、歯触りが…というよりもう何も分からない。
なんか変なものが口の中でンギュルンギュルいってるだけだった。
頭がボーっとしてきて姿勢が保てなくなり、そのまま前のめりにテーブルに倒れる。
少しずつ、だが確実に、視界が闇色に染まっていくのを感じていた………
「ユート、食事中に寝るのはよくない。」
「よほどお疲れだったのでしょう。」
ちなみに悠人はテーブルに前のめりに倒れたため、悠人が白目を向き泡を吐いている様は
二人には確認ができなかった。
「では、これは詰め所の者達で片付けるとしましょう。」
「ん。わかった。」
あと被害が拡大しそうだった。
一方その頃…
「ぐふっ……」
「コ、コーイン様!しっかりしてください!」
光陰もまた似たようなものの前にダウンしていた。
「クォーリン、それ、やっぱり毒キノコだったみたいよ?」
「そ、そんな…キョウコ様が大丈夫だって言うから…」
「あぁ、大丈夫よ。死ぬような毒じゃないし。それにどうせ光陰だしね。」
「ですが…」
「原因はキノコだけじゃないと思うけど……
っていうか口に含んだ瞬間ぶっ倒れるキノコなんて無いと思うし。」
「…やはりもっと料理を練習しなければいけませんか……」
「まぁ、がんばりなさい。」
「はい!」
「せ、…せめて…アース、プライヤーを…か、かけ…」