女王陛下の憂鬱

「しかし、これは余りに露骨な人選...。」

ナナルゥが持参したリストを見て、若き女王、レスティーナ・ダイ・ラキオスは絶句した。
「3名のエターナルだけを伴って行動出来るという事はトキミ殿から聞いてはいましたが...
まさかユートがこんな選び方をするとは...。ありがとう、ナナルゥ。もう下がっても構いません。」
レスティーナはかろうじて女王としての品格を取り戻し、エターナルとなった今でもなお忠誠の厚い
レッドスピリットに向かって、優雅に一揖した。
「はっ。それでは失礼致します。」
ウィングも付いて夜も安心なナナルゥが、城のバルコニーから飛び立って行く。
その後姿を見送りながら、レスティーナはある事を計画し始めた。

――その頃。
風呂上りの悠人は、エターナルとなった今でもなおパシリなヘリオンに買ってこさせた牛乳を、
自室でゴクゴクと飲み干していた、全裸で。
「まあ、選ぶのは俺なんだし、多少の小細工は許されるだろう。」
そう言った悠人はニヤリと笑った、全裸で。
彼の片手には過日行われた身体測定の結果表が握られている。
そして、表に書いてある数字の三ヶ所に赤丸が付けられていた。
「あとは明日のクジ引き大会を待つばかり、か。」
悠人は机上のアミダくじを見やって、満足気に頷いた、全裸で。完全に油断し、熟睡していた悠人が、
深夜に天井から降り立った人影によって、そのクジをすり替えられた事に気付く筈もなかった。

「おかしい...。」

悠人の額に脂汗が浮かぶ。
先刻から始まった抽選会にキャーキャー言いながら参加するエターナルとなったスピリット達。
そこまでは計算通りだったのだが、第一目標のハリオン姉さんがハズレを引き、
いつもマジックの犠牲になっているヘリオンが当たりを引いたのだ。
「わわ、私、牛乳飲んで頑張りますからっっ!」...残念ながらエターナルとなった者は、その姿も永遠に移ろうことはない。
「やったー、ユートさま!大当たりだよ~、これでずーっと一緒だね!!」
「あ~っ、いいなぁ、ネリー、時々オルファと代わって~!!」
「あ~ん、シアーもぉ~!!」
(そ、そんなバカな!?)驚いた悠人は同時にハズレくじを引いたナナルゥに振り返った。
赤い妖精が申し訳なさそうにうつむく。
「あら、残念、私も外れてしまいました...。」ナナルゥの横でエスペリアが肩を落とした。
「エスペリアも?変だな、だってエスペリアは最後に引いたんじゃ...ハッ!?もう一本残っている!?」
事ここに至ってようやく事態の異常さに気付いた悠人の背中に、追打ちの如き声が投げ掛けられた。

「あ、ユートくん!ここで抽選会やってるって聞いたんだけど、私の分、ある?」

―――エターナル化したのはスピリットだけではなかった。