アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。
そんなある日のこと。
二人はエスペリアお姉ちゃんに人間の暮らしについて教えてもらいました。
人は好き合う男女一組で家族を作り、生活しているというお話です。
セリアが何故『男女一組』なのかと質問したところでお昼の時間になってしまい、続きはまた明日ということになってしまいました。
年端もいかないいたいけな少女達に一体何を教えているのかは別として、セリアは非常にこの中途半端さが気に入りません。
なので食堂でご飯を食べながら向かいに座ったアセリアに聞いてみました。聞く相手を5次元くらい間違えている気もしますが。
「アセリア、なんで男女一組なのかなぁ?」
丁度スープをこくこくと飲んでいたアセリアは黙ってセリアの方を向きました。
そして最後までこくん、と飲み干した後、いつも付けている紫のリボンで口をもきゅもきゅ拭います。いけませんね。
テーブルマナーくらいはわきまえてもらいたいものです。
お行儀の悪いアセリアの仕草を注意したかったセリアは、それでも我慢強く黙って見つめていました。
今では考えられない忍耐力です。それだけどんな答えでもいいから聞きたかったのでしょう。
納得のいかないことを放ったらかしに出来ない性格は間違いなくA型だ、とユートさまが仰ってました…………こほん。
「よく、わからない」
「…………それだけ?」
「ん」
「じゃあさじゃあさ、『好き合う』ってなんだろう?」
「よく、わからない」
「…………それだけ?」
「ん」
「………………」
こめかみに指を当てながらセリアは考えます。このままではどこまでもループしていく会話を経験則で悟ったのでしょう。
なんとか打開策がないかと幼い知恵を振り絞ってうんうん唸っています。やれやれ、無駄なことを。
もともと無口なアセリアとの会話が弾んだためしがないことは判っているはずなのに、何とかしようと頑張っているのです。
直情的なのは全然変わっていません。あ、あと両手ともこめかみに当てると○休さんみたいなので止めた方がいいと思います。
「でも」
ボクボク音を立て始めたセリアの前で、下を向きながらアセリアがぼそっと呟きました。
その囁きはとても小さいものでしたが窮地に追い込まれていたセリアには正に渡りに船。やはりというかもの凄い勢いで食いつきました。
「え!え!なに、なに?」
好奇心キラキラの瞳に星が宿るセリア。期待を一身に受けてしまったアセリアは珍しく恥ずかしそうにぽっと頬を染めてしまいます。
「……なんでもない」
「え~!気になるよ~教えて教えて~!」
とうとう机の上に乗り上げてしまったセリアのスカートがすっかりずり上がってるのですがどうやらそれどころではないようです。
真っ白なパンツ全開の上はしゃいでポニーテールがぴょこぴょこ跳ね、かわいいお尻がぷるぷる揺れています。
すっきりと細く伸びた健康的な肢をぷらぷら投げ出している無防備なその後姿などはその手の趣味の人にはたまらないものです。
それはどうでもいいのですが間近で見つめられたアセリアは益々赤くなってしまいました。
両手の指先をもじもじ絡めながら小動物の様に上目遣いでセリアの様子をじっと見ています。誘拐されそうな少女ランクイン間違い無しですね。
セリアはそれを見てじれったくなったのでしょう。或いは妙な嗜虐心が働いたのかもしれません。片鱗が窺えます。
「も~っ、いっていっていっていっていってよ~~!!」
聞く人が聞けば鼻血を出して卒倒しそうなセリフを連呼しました。自分が何を言ったのかまるで自覚が無いようです。いけませんね。
アセリアがこれ以上フォロー出来ないと思ったのかは定かではないのですが、観念はしたようです。耳まで真っ赤なまま囁きました。
「わたしは、セリアが好きだ」
「………………」
二人の間に妙な沈黙が流れました。背中に薔薇の背景が見え隠れするような。見えてどうする。
真摯な瞳でじっと見つめてくるアセリア。どう答えたらいいか、セリアは一生懸命考えました。
「…………うん」
でも素直じゃないセリアはそれだけしか答えられませんでした。答えた後ちょっぴり後悔しながら、それでもそっぽを向いたまま。
その夜二人はずっと手を握ったまま眠りました。
アセリアは何も考えず、セリアはずっと何で『男女』一組じゃないといけないのかを考えながら。
ところでセリア、なんで肢をアセリアに絡めているのかな?
ヒミカ「………………」
セリア「……なんで自分で書いておいてわたしから離れていくのよ」
一同「………………」
一同「………………」
セリア「ちょ、ちょっとみんな、まさか本気にしてるんじゃないわよね、ねえ?」
ファーレーン「薄々はそうじゃないかって思ってましたけど……」
ニムントール「そういえば最近やけに触ってきて……」
ヒミカ「いきなり胸に飛び込んできて泣かれたり……」
ヘリオン「わたしの下着の色にもチェック入ってました……」
セリア「ちがうっ!ちがうのっ!なんで無言のまま下がっていくのよっ!っていうかヒミカ、あれは二人の秘密にしてって!」
ナナルゥ「二人の秘密……」
ニムントール「秘密……二人の……」
ヘリオン「でもユートさまに黙って付いていったことも……」
ナナルゥ「バイ……」
ヒミカ「バイね……」
ファーレーン「バイですね……」
セリア「だからちがうって!そこ、こそこそ話を膨らませない!大体あれは子供の頃の話だよ!アセリアも黙ってないでなんとかいってよ!」
アセリア「なんでだ?これ、セリアとわたしの大事な」
セリア「ごめん、やっぱり黙ってて」