日々精進です。

「ネリー、アイスバニッシャー頼むっ!」
「おっけ~♪すべてを凍らせ、動きを止める…… ネリーみたいにくーるな女にぴったりよね♪」
「うわぁぁぁっ! 駄目だ、このままじゃ…」

「シアー、アイスバニッシャーお願いっ!」
「う、うん……マナよ、我に従え 氷となりて、力を無にせしめよ アイスバニッシャー!!」
「アイタッ! まだ終わらない…… 終われないんだからっ!」

 ………………

「いたたたた…………」
「すみませんキョーコさま、ちょっと辛抱してくださいませ」
向こうでエスペリアが今日子の手当てをしている。悠人はウルカに包帯を巻かれていた。
「しかし悠人よ、こりゃちょっとヒドイな」
惨況を見渡してさすがの光陰も溜息をつく。今日ネリーとシアーに付いて行った今日子と悠人が火傷だらけでだった。
「ああ、薄々気付いてはいたけどこれほどとは……」
「大体悠がちゃんと二人を訓練していないからこんな事になるんじゃないのさっ!……あたた……」
「いてっ!」
「ほらキョーコさま、もう少しですから動かないで下さい」
今日子が投げつけた包帯が悠人の頭に直撃した。

マロリガン共和国を制し、サーギオスとの戦いに突入したラキオスは別の意味で危機に直面していた。
戦局の細分化に伴い部隊数を増やしたのはいいが、これまで全く使っていなかったネリーとシアーのスキルがまるで増えていないのである。
特にサポート系が酷かった。二人とも覚えているアイスバニッシャーは「Ⅰ」のみ。
これではいくらノーマルモードとはいえ敵のインフェルノさえ防げない。
ついいつもの癖で二人にバニッシャーを要求してしまった悠人と今日子は当然というかこの有様である。
「しかしユート殿、もう訓練をしている暇などありませぬぞ。法皇の壁は目前です」
手当てを終えたウルカが呟く。そう。今から拠点に戻っていてはSSランクは覚束無い。
しかしリレルラエルでの連続戦闘が控えている以上消耗は出来るだけ避けたかった。
かといって部隊数を削る訳にもいかない。法皇の壁に控えている敵には波状攻撃が必須なのだ。
「………………」
一同に重苦しい空気がのしかかる。
「そうだ、光陰なら…………」
悠人がふと漏らした一言に皆の視線が光陰に集まる。困った時の壁役光陰。そうだ、その防御力の高さがあったではないか。
「ちょ、ちょっと待て……いくら俺でも使用回数制限に限界が……」
「大丈夫だ光陰、ちゃんと二人ともつけてやるから」
うろたえる光陰に悠人が追い討ちをかける。肩に手なんか置いたりして。
「良かったじゃない光陰、ネリーたんハァハァ、シアーたんハァハァなんでしょ?両手に花よ~」
今日子がにやにやしながら止めを刺す。
「おいおい……そりゃないぜ…………」
親友達の見事な追い込みに光陰はふと諸行無常という言葉を思い出していた。

 ………………

その頃。
ネリーとシアーは悩んでいた。
「なんでネリーたちの魔法、効かないのかな~?」
「敵さんたち、凄く強かったね~」
「う~ん……そうだっ、きっとⅠだからいけないんだよ!」
「でももうシアーたち訓練してる暇なんてないよ~?」
「いいからいいから……ネリーにお任せ♪」

次の日。
「ネリーちゃん、アイスバニッシャー……うぉっ、やっぱいい!」
「大丈夫大丈夫!いっくよ~シアーちゃん!マナよ、我に……」
「う、うん……怖い……けど シアーだって~~!!」
「お、おいシアーちゃんはアタック……」
「氷となりて、力を無にせしめよ……」
「おいおいおいおい」
「「アイスバニッシャー(×2)~~!!」」
「す、すいま……ゴメッ……! ほんと、勘弁……しッ…………ぐああああ…………」
動揺した光陰が加護の力を発動する暇も無く敵の攻撃を全て受け、黒コゲになる。
見事に「壁役」を果たして燻ぶっている光陰の前でネリーは首を傾げていた。
「あれ~おっかしいな~。Ⅰ+ⅠはⅡのはずなのに~」
「ネリーちゃん、やっぱりなんか間違ってたんじゃ……」
「ふ、二人とも……Ⅰ×ⅠはⅠのままだ…………がくり」


ラキオス布告令第2148
スピリット達は宜しく算術をよく学び、戦いに備える事を怠るべからざること。
またエトランジェはスピリットに平等に訓練を施し、常に非常の際に備える事。
上書き失敗などは持っての他である。わかった?ユートくん(怒
byレスティーナ・ダィ・ラキオス