赤くて白い

”これは、『ご機嫌斜め45°』と『にむんにむん』を足して割ってナナを足した物ですので、そのへんをお含み置きの上でお読みください”

「ネリー、シアー、私のお古ですけど~良かったらどうですか~?」
 食後のお茶が終わったところで、ハリオンが出て行ったと思ったら、箱を抱えてすぐに
戻ってきた。ネリーとシアーの前に行ってテーブルに箱を置くと、それを開く。
 何事かと覗いた二人は歓声を上げる。
「うわ~かわいいっ!」
「ハリオン、ホントにこれ、着てもい~の~?」
 箱の中に入っていたのは、数着の衣装。やはり緑系の物が多いが、十分ふたりの少女
の心を満たす代物だ。
 さっそくその場で着てみる二人。悠人などそっちのけだ。
 丈はちょうど良い感じで二人のかわいらしさを存分に引き出していたのだが。
「あれーこれ胸の当たりが妙にゆるいよー」
「うん、シアーも~。だぶだぶだよ~」
 
「ニムも、こっちに来なさいな、ほら~」
 ファーレーンと一緒におしゃべり中のニムにも、ハリオンの声が掛かった。
 話の内容は筒抜けだし、なによりネリーとシアーの声はハッキリ耳に届いていた。当然そんな状況で、
ニムのプライドが許すはずもなく。悠人がいるし。
「ニム、いらないっ」
 ガタンと席を蹴立てて、走り去っていくニム。
「あ、待ちなさいニム。すみませんハリオン」
 小さく頭を下げて、追いかけるファーレーン。
「あらあら~」

「よっ、ニム、相変わらずカワイイな」
「…………バカ、ニムっていうな」
 次の日の朝なのだが、ニムの気分は相変わらずの急斜面。悠人の軽口も効き目薄。

「ほら、これ」
 そう言って、悠人はニムに紙袋を渡す。
「なによ、これ」
「昨日ハリオンの服いらないって言ってただろ。そしたらさ、ナナルゥが、自分の小さい頃の服を出して
きてさ。 ニムに渡してくれって」
「いらない」
 即答して紙袋を悠人に放り投げるニム。有る意味当然の話で、ハリオンがダメなのに、次点の人物
のお古をもって来ても「ツン」を解かすことなどできようもない。
「…………なぁ、ニム。そんなに気にすることは無いと思うんだけどな。まだこれから成長するんだからさ」
「ニムは、もう大人だもん。今じゃなきゃだめなんだもんっ!」
「そっか。でもさ、この服俺も見せてもらったけど。カワイイ服なんだよな~ニムに似合うと思うんだけどな~」
「ふん」
「ナナルゥもさ、ニムの年頃は、大して胸が大きくなかったって言ってたな~。ニムと同じくらいだったかもって」
「…………ふ、ふん」
「残念だな~、でも本人が嫌がってるんだもんな~、そうだよな~仕方ないからナナルゥに返すかな~
でも見たかったなぁ」
「……………………貸しなさいよ」
「え?」
「し、仕方ないから着てあげるわよ。ユートがそんなに言うからだからねっ。そ、それにナナルゥにも悪いし、さ」
「ほ、ほんとか?」
「そ、そんなに嬉しそうにしないでよ、ばか。着替えてくるから待ってなさいよ。いなかったら曙光で磔だからね」

「ふう、こんなもんかなナナルゥ?」
「はい。作戦は成功です」
 ニムの姿が消えてから、入れ替わるようにスっと姿を現すナナルゥ。
「サンキュな。いきなり頼んじゃってさ」
「いえ、少し胸の辺りを詰めただけですから。大したことではありません。ですが…………」
「ん、なにか問題でもあるか?」
「これは、結果的にニムントールを欺いたことになるのではないでしょうか。嘘はいけないことではないの
ですか?」
 疑問を呈するナナルゥに悠人は、言葉に迷ったけど口を開く
「…………ああ、そうだな。いけないことだ。だけどな、ナナルゥ。嘘にもさなんて言うのかな……優しい嘘
っていうのかな。そう言うのがあるんだよ」
「…………優しい嘘、ですか」
 ナナルゥは悠人の横から正面に廻って言う。
「ユートさまは、優しいんですね」
 少し上目使いで。風が吹いてナナルゥの髪を揺らす。悠人は一瞬、ナナルゥの顔に見とれて。
「あ、いやそそんなことはないぞ、お、俺は」
「嘘です」
 絶句した悠人は、ナナルゥの小さな微笑みを見る。