クォーリンのあは~んなアレ

クォーリンは悩んでいた。
もとより砂漠地方の出身、暑さに耐性はある。
(でもなぁ…………)
目の前にはドアップで迫るエスペリアの寝顔。
これ以上近づかれたら女同士でディープなキスは免れない。
ちょっとでも首を動かすと背後に居るハリオンの吐息が首筋にかかって危険なので諦める。
足元でもぞもぞしているのはニムントールだろう。
頼むから涎だけは垂らさないでくれと強く願った。
(な、なんでこんなことになったんだろう…………)
声無き心の叫びが虚しく炬燵に響き渡った。

事の始まりは簡単だ。
第一詰め所の炬燵がグリーン・スピリットの憩いの場だと聞いて来てみた。
するとそれは何の変哲も無いただのテーブル。それに毛布が被さっていただけ。
クォーリンはそれが何をするものなのかまでは知らなかった。
しかし自分もグリーン・スピリットである以上、ここで憩わねば、と思ったのだ。
そこでとりあえず潜ってみたのだが…………その後の記憶は無い。
恐るべきことだが自分はそのまま寝入ってしまったらしいのだ。
そしてふと起きてみるとこのありさまという訳である。
ラキオス中のグリーン・スピリットがこの狭い空間に大集合してしまっていた。

(う、動けない…………)
クォーリンはそのままの体勢で固定されたまま、じっとしている他無かった。
それにしても暑い。気温が単純に上昇している砂漠と違い、人口密度の異常上昇は周囲の酸素も奪う。
そんなに苦しいなら飛び出すなり起こすなりすればいいと思うのだが、今はそうもいかなかった。
さきほどから周りで声がするのである。そう、光陰と悠人の話し声が。
「なぁ悠人、これは厳密には炬燵とはいわないぞ」
「そうか?突貫工事にしては良く出来てると思うけど」
「甘いな、炬燵はテーブルに蜜柑と煎餅が乗っていてこその炬燵!そうは思わんか?」
「いや……そう熱く語られても煎餅なんてないぞ。蜜柑っぽいのなら何とかなるかも知れんが」
知らない単語が飛び交っている。ハイペリアの何かについて語っているようだ。
内容もさることながら、クォーリンはその声がだんだん近づいてくるのに焦った。
(こんな状態をもしコーインさまに見られたら…………)
くんずほぐれつだらしなく寝転がっている女。
見つかってもしそんな風に思われたらマインドが限りなく0に近づいてしまうだろう。

「あん?なんだ、コレ」
光陰のすっとんきょうな声に思わずピクッと反応したのがまずかった。
ハリオンが身じろいだ拍子に背中にぷよぷよと柔らかい感覚が広まる。
(…………あんっ)
思わず出かけた吐息を必死で抑えた。そう、背中はクォーリンの弱点だった。
「なんだいきなり大声出して……うん?足?」
悠人の声が訝しげに変化する。どうやら位置的にニムントールが出していた足を発見されたらしい。
「はは~ん、誰かここで寝てやがる…………くすぐってみるか」
言うや否や光陰が何かしたとたん、寝ぼけたニムントールが頭をクォーリンの肢の間に潜り込ませた。
涎を垂らしたまま、つつーと太腿を撫ぜ上げてくる。
(ち、ちょっと、やだっ)
思わず上方に逃れようとするとエスペリアの顔が鎖骨の辺りにぶつかった。
半開きになった彼女の歯が強く当たり、クォーリンは軽く刺激を受ける。
(え…………痛……くない?)
自分に起こった反応が信じられなかった。

「おいやめろよ、せっかく気持ちよく寝てるんだろ?」
「何っ?俺様の起こし方がまずいっていうのか…………そうだな、ここはお約束を行くか」
「お約束っておいまさか…………」
なんだか知らないが取りあえずニムントールへのちょっかいを諦めてくれた様だ。
おかげでこちらも三方からの攻撃が収まった。
クォーリンはほっと溜息をついたが、それが先程とは違い艶っぽく変化していることに気付かなかった。
しかし安心もつかの間。
「う、う~ん…………」
(…………!!!)
鎖骨を甘噛みしながら吐息を吐くエスペリア。
(あっ!)
胸を押し付けながら背中をなぞるハリオン。
(あっ、ああっ!!)
そして太腿の付け根に頭を押し付けながら舌を這わせるニムントール。
(あっ、あっ、あっ、あっ…………)
三人の目覚めは別の意味でクォーリンにとっても「目覚め」だったのかもしれない。
「ひゃあああああ~~~~~ん!!!」
「俺のお茶が飲めないって………………いうのかぁーーーーーー!!!!!」
光陰が「ちゃぶ台返し」をした正にその時、クォーリンは汗をほとばらせつつ快楽の叫びを上げた。

……その後クォーリンは二度と炬燵に近寄らなかったといふ。