「そ~れ、いっくよ~」
かこーん
「わ、わ、…………え~いっ」
かこーん
「やるな~しあー…………てりゃ~」
かこーん
「ま、まけないモン…………」
かこーん
聖ヨト歴333年ルカモの月青ひとつの日。
ラキオススピリット隊第二詰め所の庭でネリーとシアーが「ハネツキ」をしていた。
「悠人、眼福だと思わんか」
突貫で設置された「エンガワ」にどこから持ってきたのか座布団を敷いて光陰がお茶を飲んでいる。
なぜかつき合わされている悠人が渋い顔で答えた。
「お前だろ、あのやり方ネリーとシアーに教えたの」
「そうだが、それがどうかしたか?」
「あのな……前から一度はっきり言いたかったんだが」
「なんだ?礼ならいらんぞ、俺とお前の仲だ」
「どうしてお前はこう下らない事ばかり思いつくんだ」
「なにを言う悠人、日本の伝統文化の美しさを忘れてはいかん」
左右に飛び交う羽をネリーとシアーが自前の羽子板…………ウイングハイロゥで打ち合う。
いちいち腰を捻って打つ訳だから、その度二人の可愛いお尻がぷりぷりと揺れた。
「まったく…………おっ☆」
なんだかんだ言いながら半分上の空で右へ左へと忙しい悠人の視線。平和な正月だった
一方その頃。
「ファーレーンさん、いきますよ~」
かこーん
「…………えいっ」
すかっ
「あっあっ、また打ち返し辛かったですか?」
「いいんですよ。ヘリオン、上手ですね」
庭の別の一角ではファーレーンがヘリオンを相手にしていた。
とはいってもファーレーンはまだ一度も打ち返せていない。つまりラリーにもなっていなかった。
こちらも縁側に座って観戦している今日子と時深が不思議そうに首をかしげている。
「どうしたのかしらファーレーン、運動神経はいいはずなのに」
「スピリットなのですから運動神経とかそういった問題ではないはずですが…………ああ、なるほど」
「え?どうしたの、時深」
「子供に花を持たせてるんですよ、彼女らしい。あからさま過ぎて失敗してますけど、ね」
そう言ってくすくすと笑う時深。ああ、と合点がいった今日子は少しイジワルそうな顔で立ち上がった。
「それでも罰は罰だからね…………おーいファーレーン、ちょっと来て」
「あ、はいっ♪」
なぜか嬉しそうに駆け寄ってくるファーレーン。今日子は苦笑いしながら手元の筆を取った。
―――――――
「ね、ね、ニム、見て見てっ!」
「う~んニムまだ眠い…………わわっ!」
炬燵で惰眠を貪っていたニムントールは駆け込んできた姉の顔を見て一気に目が覚めた。
「ど、どうしたのお姉ちゃんその顔!真っ黒じゃないっ!」
「ええ、いいでしょ♪これでもうお姉ちゃん、“身体にどこにも黒の目印がない”なんて言われないよね♪♪」
「………………」
くるくると踊りながらはしゃぐ姉の姿をニムントールはもうとても正視出来なかった。余りにも不憫過ぎて。