ア&セリア子供劇場Ⅶ

今日は育成中のスピリットたちの野営訓練です。
2・3人でペアを組み森の中での行動を学ぶ、と言うのはお題目でその実ちょっとした
ハイキングのようなイベントです。
普段はクールな振りをしているセリアも昨日はなかなか寝つけられないくらい楽しみに
していました。

リュケイレムの森、少し開けた場所に出るとエスペリアお姉ちゃんがみんなを集めました。
「はい、それじゃみんな組みを作ったら夕方まで自由行動です。
怪我をしたり天気が悪くなったりしたらここに帰ってくるんですよ?」
はーい、と元気よく返事をしながら、みんな思い思いにペアを組んでいきます。
さて、誰と行こうかな、などとセリアが考えているとアセリアが声をかけてきました。
「セリア、私と行こう」
「えっ…えーと…」
周りを見回すと最近仲良しのヒミカはハリオンとペアを組んだようです。
他のみんなも大体決まっているようでした。このままだとエスペリアお姉ちゃんに
アセリアと組むよう言われるでしょう。
それがセリアは面白くありません。

「…このままだとあんたがひとりぼっちになっちゃうし、仕方ないから私が組んであげるわ」
つん、とそっぽをむきながら言いますがアセリアは気にした様子もなく、ん、と笑みを浮かべられます。
セリアにはやっぱりそれが面白くありません。
難しいお年頃ですね。
まだそっぽをむいているその頬は少し赤らんでいたりしますが。


初めは不承不承なフリをしていたセリアも、ずっと楽しみにしていたイベントだったからでしょうか。
次第にはしゃぎ始めます。どんどん森の奥に進んでいった先で見つけた小川で水遊びを始めました。
履いていたニーソックスを脱ぎ捨て、裾が濡れないように捲り上げたスカートから覗く白く細長い足が
水に濡れる様は妙にエロティッkもとい健康的です。
あっ、アセリアに水を掛けられました。お約束ですね。
負けじとセリアも水を掛け返します。
二人の可憐な少女が楽しげにはしゃぎながら水遊びをする光景と言うのはとても良いものです。
どこぞの破戒エトランジェなどが見たら妙に息を荒げる事でしょう。
躍動的に動く濡れた太腿や水を吸って僅かに肌を透かす服などが良いと言うのでは
ありませんええそんなことは決して言いませんとも。

そうこうしているうちにあっという間に二人ともずぶ濡れになってしまいました。
二人とも青のスピリットですから火をおこしたりは出来ませんが、
幸い今は暖かい時期ですしまだ日も高かったので、日向ぼっこがてら服を乾かす事にしたようです。
二人して日向に座り込んでいるうちに、良く遊んだからかセリアのお腹がくぅ、と
可愛らしい音をたてました。
顔を真っ赤にしながら横目でアセリアを窺いますが、気にした様子もなくアセリアも
エスペリアお姉ちゃん特製のお弁当を取り出しています。
内心ほっとしながらセリアもお弁当を取り出し仲良く食べ始めました。
お腹がいっぱいになると今度は眠気が襲ってきます。
昨日は楽しみであまり寝られなかったのですから無理もありませんね。
服も乾いた事ですし、二人は木洩れ日の差す木の根元でお昼寝をすることにしました。


「……リア、セリア、起きろ…セリア…」
「…ん~…なによぅ…今日は訓練お休みの日じゃない…」
「…起きろ、セリア」
ゆさゆさと揺すられてようやくセリアは目を覚ましました。空はもう夕暮れです。
ずいぶんと長いお昼寝だったようですね。このままでは集合時間に遅れてしまいます
。そして遅れたら待っているのがエスペリアお姉ちゃんのお仕置きです。
数々の恐怖が蘇ってきますがそれを振り払ってとにかく急いで戻る事にしました。

「ねぇアセリア…ホントにこっちで合ってるの?」
「…大丈夫だセリア、まかせろ」
さっきから4度も同じやりとりを繰り返しています。
妙に自信満々に進むアセリアの後にセリアはぴったりくっついてびくびくしながら
着いて行きます。もう辺りは薄暗くなり、鳥の鳴き声や羽音が響いています。
セリアでなくとも不安になるのも致し方ありません。

半刻も歩いた頃でしょうか、森はもう闇に覆われ、口を聞く気力もなくなったセリアは
ハイロゥの僅かな光を頼りにずっと足元を見ていたため、突然立ち止まったアセリアの
背中にぶつかってしまいました。
「…たっ、痛いじゃない!」
「……かこまれてる…」
「…えっ!?」
アセリアに言われ辺りを見渡すと、闇の中にいくつも光るものが浮かんでいます。
それが何なのか理解出来ると同時にアセリアは『存在』を構えて飛び出していきました。
「ちょ、ちょっとアセリアぁ!」
静止の声も聞かず森の中に飛び込んでいったアセリアが見えなくなると、
セリアは急に心細くなり何とか取り出した『熱病』を構えることも出来ず、
震える足を支えることしか出来ません。辺りからは何かが動いて葉を揺らす音と、
時折聞こえる動物の悲鳴だけです。

突然、近くの草むらがガサッと音を立てました。
「ひっ…」
小さな悲鳴を上げながら振り向くと、唸り声を上げながらこちらを睨んでいる大きな獣が
今にも飛び掛らんと牙を剥いています。
セリアは何とか『熱病』を構えましたが頭は恐怖で真っ白です。
血に飢える獣と目に涙をためて怯える少女。
唸り声を一つ上げると獣は飛び掛ってきました。
「っ! 助けて、アセリアぁ~!」
恐怖の余り目を瞑ってしまったセリアでしたが、いつまで経っても痛みはありません。
恐る恐る目を開けると、そこには白い背中が見えます。
間一髪、アセリアが追い払ってくれたようです。
ふわりと振り向き、アセリアはにっこりと笑います。
「…ん、助けたぞ、セリア」
「……ふぇええぇん…」
助かって気が抜けたのでしょう。セリアはアセリアの胸に飛び込んで泣き始めました。
余程怖かったのでしょう。アセリアはそんなセリアの背中をぽんぽんと叩きます。
「ん、もう大丈夫」
「うぇぇぇん…」

ようやく泣き止んだセリアはアセリアが傷だらけなことに気がつきました。
「…あ、あんた…ケガ、してるじゃない…」
「大丈夫、舐めておけば、治る」
頬にも腕にも脚にも血が滲んでいます。
セリアは何故かアセリアの脚から目が離せません。
破れたニーソックスから覗く白い素肌、そこから流れる赤い、赤い血…。
「…そう、よね…。舐めておけば……」
あれ、セリアさんの妙に顔が上気してますね?
それに眼もどことなく潤んでますし、声もかすれ気味ですよ。
あ、セリアがアセリアを押し倒しました。今度は傷口に舌を這わせ始めました。
次は脚に…あ、あ、そんな所まで…。
これはいけません、いけませんね。
これ以上は年齢制限に引っかかるため割愛させて頂きます!

…その帰り道、どことなく上気した顔のセリアが、仲良く手を繋いだアセリアに言いました。
「…ねぇアセリア、もうニーソックスは履かないで」
「……? なぜだ?」
「どうしても!」
私の理性が持たないから、などとは口が裂けても言えないニーソックスの魔力を痛感した
セリアであった。

ヒミカ「…だからアセリアはニーソックスを履かないらしいわ」
セリア「………ちょっとヒミカ、妙な脚色入れすぎ…ってなんで皆私から距離をとろうとするのよ…」
ナナルゥ「容疑が限りなく黒に近づいたからです」
セリア「容疑って何のよ!?」
ニム「…マニアック」
セリア「そこ! こっそり呟かない!」
ヘリオン「…そんなに魅力があるんだったら…私も今度ユート様に…」
一同  ギロッ
ヘリオン「…な、なんでもありません~…」
ファー「スピリット隊の制服からニーソックスを外すよう上申するべきかもしれませんね…」
セリア「何故!?」
ハリオン「私達の~貞操を守るためです~」
ネリー「てーそー、ってなにー?」
シアー「…わ、私も分からない…」
セリア「だからそれはヒミカの作り話で誤解だって……私の話を聞きなさーい!!」