《手前はまた同じ過ちを繰り返すのか。エスペリア殿、オルファ殿、手前、この面恥……慚愧に耐えませぬ。
いつか、何時かこの雪辱を果たさんがため、生き恥をさらし、肝を嘗め薪に臥しましょう。
悠人殿、手前勝手は重々承知でありますが後のことはお願い申します。
追伸 探さないでくだされ。≫
「オルファ……この凄惨な現場はなんなんだ?」
「あ、はははは……な、なんなんだろうねぇ……」
大胆な10センチ大の野菜の乱切りがごろりと散らばるまな板。焦げ付いた鍋の底にわずかに残るどろり
とした物体X。ビクビクッっと未だに生きている切り口だけは見事な魚だけが、その魚眼で惨劇の一部始終
を見ていたのだろうか。
柱には短刀で突き刺された置き手紙。珍しくウルカだけが詰め所に残っていた隙の惨劇だった。
「ウルカ腕あげた……」
「…………ま、まあいい。オルファ片づけるぞ。その鍋はうるかしておけ」
「パパ、ウルカお姉ちゃんでお鍋ってなに?」
「ん? ああ、うるかってのは、ハイペリアの言葉でな、水に浸しておくことを言うんだ」
「へーおもしろーい。ウルカお姉ちゃんでお水にひたすことなんだー。ね、パパ他にも面白いのないの?」
「そりゃ後でな。ほらエスペリア固まってないで。エスペリアの城だろ」
「…………はい」
ふらりとよろけそうな足取りで、流しへ向かうエスペリア。だいじょうぶだろうか。
「ウルカ……ん、水も滴る女。うん、負けない」
勝ちも負けもしないで欲しい。
その後、二詰も含めて焦げた鍋のことを「うるか」と呼ぶようになった。俺の説明とは食い違うのだが……?。