GIRL IN THE RED

―――振り下ろされる双剣。

「あはは、パパ、見て見てー!この敵さん、まだ動いてるよ~!
すご~い、オルファだったら、ここまでがんばれるかなあ?」

「オルファ...」
悠人にとって、それはまさに地獄絵図であった。最早戦意を喪失し、背中を向けていた敵のスピリット。
無慈悲にもなぶり殺しにしているのは、あどけない笑顔のままの幼い少女。
そして何よりも悠人の心を切り裂くのは、この、自分をパパと呼び、慕ってくれる少女に、
自分は何一つ届けるべき言葉を持っていない、その事実。

「パパー、これで倒した敵さんの数がストラロスになったよ~!」
褒めて貰えると思っているのだろう、撫でてくれと言わんばかりに差し出される、小さな赤い頭。
「―――そっか。えらかったな。」
まだ返り血が金色に輝きながら立ち昇る、その頭に、悠人はそっと手を置く。
「えへへー。」この幼い少女は、悠人のその口調に翳りがある事にも気付いていない。

「パパの敵...だよね。なら、オルファみーんなやっつけちゃうよ!」
今日も少女は双剣を振るう。

でも、と悠人は思う。いつか、知って欲しい、と。悠人の敵がオルファリルの敵ではない事を。
自分の敵か、それとも与する者か、オルファが己の目で見極められるその日まで、この少女を見守っていよう、と。