うなされるニム

なんだか、ううん、凄く、イヤな夢を見た。
わたしは何処か暗いところに一人ぼっちで、とぼとぼと歩いていた。
音も光も見えないまま、ただずっと、下を見たまま歩き続けた。
どれ位、歩いたのだろう。前の方に唐突に、灯りが見えた。
心細かったわたしは、だっと駆け出した。
きっとそこに、不安を拭ってくれる何かを探して。
灯りはやがて大きくなり、段々と人の形を取り始めた。
すらりと高い上背、鋼色の髪と瞳。そして、優しい笑顔。
「お姉ちゃんっ!!!」
思わず叫んだその声は、闇に吸い込まれて音にならない。
届かない呼び声に、気付かないのか、お姉ちゃんはこちらを向かない。
そう、隣に立っている、もう一人に微笑みかけた、そのままで。

「お姉ちゃんっ!!!」
「お、起きたかニム」
「どうしたの、急に叫んだりして……」
がばっと起きた、わたしの前に、驚きの顔が二つ。
わたしは迷わず、一人を選んで飛び込んだ。
「きゃっ…………ニム……怖い夢でも、見た?」
頬擦りして、温もりを確かめる。間違いない、お姉ちゃんだ。
よかった……夢、だったんだ。わたしはそっと、鼻を啜った。
「なんだ、甘えん坊だなぁ、ニムは」
声に、ぎくっと肩が震える。いつもは、嫌いじゃない、声。でも今は。
きっ、と顔を上げ、睨みつける。元はと言えば、ユートが悪いのだ。
お姉ちゃんを、取ったりするから。
「うっ…………な、なんだ?」
なんだかうろたえている、ユートにわたしはきっぱりと宣言する。
ニムだって、お姉ちゃんは応援したいけど。
「ユートなんかに、お姉ちゃんはぜっっったいに、渡さないんだからっ!」