Strange Lovers

バレンタイン……
それは女性が男性にチョコレートと共に想いを手渡すというハイペリアの文化。
他の異世界においては定かではないが、少なくともここ、ファンタズマゴリアにおいては
そのような文化は存在しない。
つまりはこの世界においてバレンタインとは異文化でしかない。
……とまぁ、こんな前置きはどうでもいいのだが。
ようするにまぁ、今日はハイペリアの暦に置き換えるとバレンタインデーなのである。
そして、それに便乗して大切な人に想いを伝えようという者がここにも一人・・・・・…

「なんです?ントゥシトラ。こんなところに呼び出して…」
男が尋ねる。
彼の名はメダリオ。
現在ファンタズマゴリア侵攻中のロウ・エターナル陣営において
最も下っ端に位置する男である。(オイ)
「ンギュゥ…ンギュルルシュ?…///」
女(?)が恥ずかしそうに答える。
彼女(?)の名はントゥシトラ。
彼女(?)もまた、彼と同じくロウ・エターナルである。
「バレンタイン……ですか?まぁ、聞いたことくらいありますが。
 それがどうかしたのですか?」
「ン、ンギュルゥ…///」
ントゥシトラは顔(というかむしろ全身)を真っ赤にしながら、
恥ずかしそうに触手をモジモジと蠢かせる。
もともと高い体温の更なる上昇に応じて、陽炎が発生し始める。

「ギュ…ンギュルルル!ギュル…!」
ントゥシトラは意を決したようにすっと触手の奥から綺麗に包装された箱を取り出すと、
それをメダリオへと差し出した。
「え…?これは……?」
メダリオは驚いた表情で箱を受け取ると、しばらく箱を観察し、
再びントゥシトラへと視線を向けた。
「ンギュゥ…ンギュンギュギュギュル……?」
「いえ、迷惑だなんてそんなことありません。
 僕も…僕もずっと君のことが……」
「ンギュルルル!?」
ントゥシトラがぱぁっと眼を見開きメダリオを見つめ返す。
「本当ですよ。」
二人はお互いに見つめあいながら、少しずつ近づいてゆく
その体が、頬が、唇が。
少しずつ少しずつ。
だが確実に近づいてゆく。
それは永遠のように永い時間。それでいて刹那のように儚い時間。
そしてついに………

「気色悪いことしてるんじゃないよ!!」
思いっ切りぶん殴られた。
ああ、ちなみに彼女の名はミトセマール。
ミト姐の愛称で親しまれる見た目どおりの真性Sである。(オイ)
「さっきから何を気色悪いことをしてるんだい!見苦しい!」
「ンギュルルルゥ!ギュルルゥ!」
「あぁ!?」
「ンギュルルル!シュルァ!」
「男が居ない憐れな女の僻みだぁ!?」
「ギュルギュル……シュルルゥ…」
「…いい度胸じゃないか…そこに直りな!」
「やめてください!ントゥシトラを殴るなら代わりに僕を!」
「両方シメるに決まってるだろ!?」
「「えぇぇーー(ギュルゥゥゥー)!!!?」
ビシ!バス!ゴシャァ!ドゴ!メゴス!
バタッ!!
ダブルノックアウト。
バタン!
何気にミト姐もカウンター炎帝喰らってトリプルノックアウト。
「……何をしているんですの?貴方達は……」

…ソーンリームは今日も平和だ……
Happy Valentin