Something Four

「はぁ……はぁ…………」
弾む息を抑え、高台へと続く坂を駆け上る。
神剣の力を借りれば問題無いけど、今日だけは自力で。
ちょっと遅れるかも知れないけど、きっとあの人は待っていてくれるから。

「頑張ってねっ!」
もう、憶えてくれてはいないけど、背中を押してくれたわたしの姉。
勇気を貰おうと、一日だけ『静寂』を借りた。
代わりに自分の『孤独』と交換して。満面の笑顔で了解してくれた。

「きっと似合いますよ」
もう、憶えてくれてはいないけど、背中を押してくれたわたしのお姉さん。
思い切って打ち明けて、素敵なドレスを貰った。
すこし古い、きっと思い出の詰まったドレス。包み込む優しさは服越しにでも伝わってくる。

色々な人の、色々な想い。
自分にとって、とてもとても大事なもの。
今だってそれは、褪せることのない、大切なもの。
そんな何もかもを捨ててまで、欲しかった、たった一つ。

そんな「女の子」を見て欲しいから、今日だけは自力で走るんだ。あの人の所へ。

「ご、ごめんなさ~い……はぁはぁ…………待った、よね……」
やっと着いて、肩で息をしているわたし。そんなわたしに、ちょっと困った顔をしながら。
きっと、あの人はこう言うんだ。慌てなくてもいいよ、って。

  ――――――…………

緊張で震えながら、指に嵌められる、新しい、誓いを籠めた指輪を見つめる少女。
目尻に浮かぶ一粒の涙をそっと拭いながら、はにかむ彼女の、蒼い髪が、風に揺れる。
――幸せを約束された、“Something Four”を携えて。