稲妻が神剣と同化したその醜悪な躯体に風穴を空ける。
「そんな...僕が...この僕が負ける、なんてッ...!」
未だ自分の敗北が受け入れられない「統べし聖剣・シュン」の体が、
空間に溶け込むように消滅して行った。
―――聖ヨト暦332年、コサトの月、黒ひとつの日。
若きエターナルを擁したラキオス軍勢は、雪原ソーン・リーム台地において、
法皇テムオリン率いるロウエターナル陣を見事に打ち破った。
...そう、ファンタズマゴリアは間一髪、消滅の危機を脱したのである。
「――これで、この世界での私の役目も、終わったようですね。」
カオスエターナル・『時詠』のトキミが静かな微笑みを浮かべて、言った。
「本当に有難うございます、トキミ様。貴女の力がなければどうなっていた事か...。」
涙すら浮かべながら、エスペリアが深く頭を下げた。時深が慌てたように手を振る。
「そ、そんなに大げさに礼を言われると困ります。今回の勝利は何と言っても
新たなエターナルの力に拠る所が大きいのですから。」
そう言いながら巫女姿の永遠者が満足気に、自らも属するカオス陣営に
加わったばかりの若きエターナルを見やった。
「ほーんと、すごかったよねー!くーるなネリーもびっくりだよ!」
ネリーが天使のような笑顔でそのエターナルの周りを駆け回る。
「まるでロウエターナルたちがゴミのようでしたね。」
セリアも尊敬の眼差しを投げかけた。
「まあ、敵のカウンター攻撃にはちょっと参っちゃったんだけどね。」
照れながらハリガネ頭を掻く少女―――今の彼女に与えられた名は、「紫電のキョウコ」。
「でっでもすごいです!ライフ残1の状態になってもがんがん突っ込んでいくなんて!」
両手を胸の前で組みながらキョウコを見つめるヘリオンの瞳も、心なしか潤みがちである。
「全く、あの状態でスターダストを食らっても平気で立っていられるのは、
貴女を置いて他におりませぬ。」ウルカがしたり顔で頷いた。
「あはは…あんまりおだてないでよ、みんな。」
そう言いながらも、今日子の表情は緩みっぱなしであった。
「まあ、なんて言うか、追いこまれると強いタイプ?あたしって昔からそうだったのよねー。」
「さあ、そろそろ帰ろうか、俺達の家に。」苦笑いしながら悠人が言った。
「――あ、悠。……いたの?」
今日子の言葉は、その場に居た全員を何よりもサイレントフィールドだった。(意味不明)