最近ナナルゥが料理を作ってくれる。
それも頻繁に。ハリオン曰く、どうやら料理に凝っているらしい。
・・・それはいい。俺だって男だ。女性が手料理を作ってくれれば嬉しい。
それがナナルゥのような美人ならなおさらだ。
だが、一つだけ困った事がある。それは・・・
「なんでいつもラナハナとリクェムが入ってるんだろう?」
俺はこの二つがどーにもこーにも駄目なのだ。
佳織やエスペリアに無理矢理食べさせられたりもするが未だに克服できない。
この前はレジストで抵抗力を上げてみたが駄目だった。
しかもエスペリアに食事中にスキルを使うのはマナー違反です、と注意された。
そんなマナーあるのか?まだまだファンタズマゴリアには不思議がいっぱいだ。
おっと、話がそれたな・・・今はナナルゥの料理のことだけを考えよう。
ちなみに今日のメニューはリクェムの肉詰めとラナハナのサラダだ。
何度見ても変わらない、リクェムとラナハナに間違いは無い。
「どうかしましたか、ユート様?」
料理を食べはじめない俺にナナルゥが問いかけてくる。
「もしご気分が優れないのでしたら無理をなさらなくても・・・」
魅惑的な提案。正直同意しそうになる。
だが残念そうなナナルゥを見てそんな言葉を吐けるほどマインドは低くない。
「いや、元気だし腹も減ってるぞ。ちょっと考え事をしていただけさ。」
そうだ、せっかく感情を取り戻しつつある彼女にそんな酷いことは出来ない。
ええい、南無三!覚悟を決めて食べ始める。
くっ・・・口の中にピーマン、いやリクェムの味が広がる。うえー。
「どうですか?今日のは自信作なんですが。」
うん、たしかによくできてる。エスペリアやハリオンにだって負けてはいない。
そう、ナナルゥの腕は良いのだ。アセリアやウルカとは違い(失礼)
これでリクェムとラナハナさえなければなー。
「うん、うまいよ。ナナルゥ、また腕を上げたみたいだな。」
「ありがとうございます。次もがんばりますね。」
次っすか・・・なまじ上手なんで褒めざるをえない。
そして困ったことにナナルゥは褒められるとやる気を出すタイプらしい。
こういうのも悪循環と言うのだろうか?いや、嬉しいことは嬉しいのですよ?
それに嬉しそうに微笑むナナルゥは・・・その、可愛いと思うしな。
(・・・誰に説明してるのだ?契約者よ・・・)
後日、悠人とヒミカ―
「・・・ということが最近あるんだけど。あれは悪気はない・・・んだよな?」
ナナルゥと仲の良いヒミカに聞いてみた。
「・・・多分。」
ヒミカから返ってきたのは何とも曖昧なご返答だった。
「そっか・・・どうせなら俺の好きなもんでも作ってくれればもっと嬉しいんだが・・・
いや、作ってもらってる側だから文句なんか言える立場じゃないことは
わかってるんだぞ?いい年してリクェムやラナハナ食えない俺も悪いんだし・・・
それにナナルゥが手料理を作ってくれるのは本当に嬉しいんだぞ?
リクェムとラナハナ料理以外は文句無く旨いしな・・・あれなら毎日食っても・・・
はっ!!!何言ってんだ俺は・・・」
「はいはい・・・言い訳するんだか、のろけるんだかハッキリしてください。」
また後日、ヒミカとナナルゥ―
「・・・ってユート様言ってたんだけど。なんでいつもリクェムとラナハナ使うの?」
ユート様には口止めされてたけど気になったので聞いてみた。
「ナナルゥだってユート様がリクェムとラナハナ嫌いなの知ってるんでしょ?
エスペリアみたいにユート様の苦手克服の為?」
「違いますよ。」
「えーと、まさか嫌がらせとか?」
それはないわよねぇ・・・この娘、ユート様好きみたいだし。
「当たらずとも遠からずというか・・・私好きなんです。
ユート様が変な顔して一生懸命リクェムとか食べてるの見るのが。」
・・・それはなんとも・・・マニアックな・・・
「変ですか?」
「すっごく変。」
料理は愛情!ラブイズオーケー?
よくわからないまま終わる。