ア&セリア子供劇場ⅩⅠ

アセリアさんとセリアさんは幼馴染ですぅ~。
二人は物心ついた頃~、一緒にエルスサーオに転送されてきましたぁ~。
以来ぃ、遊ぶのもぉ~ご飯を食べるのもぉ~訓練を受けるのもぉ~寝るのもぉ~いつもいつも一緒ですう~。
同じ青スピリットだったこともありぃ~二人は絵に描いたような仲良しさん~……とはいきませんでした~。
生まれた時から何を考えているかぁ、よく判らないアセリアさんはともかくぅ、
セリアさんは何をやっても敵わないアセリアさんを~、密かに敵対視していましたぁ。めっめっですぅ~。

ある日の事ぉ。エスペリアお姉ちゃんに頼まれた用事を済ませたセリアさんはぁ、その報告に行きましたぁ。
詰所の廊下を歩き~、お姉ちゃんの部屋にぃ~。
ノックをしようとした所でぇ、その手がぴく~と止まりますぅ。
「という訳だからアセリア、準備はしておいて」
「…………ん」
どうやらアセリアさんが居るようですぅ。
深刻そうな二人の声にぃ、セリアさんは思わず扉に耳を当てましたぁ。
「本当はもう少し分けたくは無いんだけど……最近帝国の動きも激しいことだし」
テイコクってなんだろう~?どうやら難しい話のようですぅ。
でも何でアセリアさんが~?セリアさんは不思議そうですぅ。
「エスペリア、相手は?」
「一応、セリアという事になってます。……アセリア、嫌なら…………」
わたしぃ~?とセリアさんはますます訳が判らなくなってきましたぁ。もうダンボさん状態ですぅ。
「ん、判った。もう行く」
「あ、ちょっと…………」
アセリアさんが部屋を出てくる気配がしますぅ~。
セリアさんは慌てて扉を離れましたぁ。小さな胸にぃ、何かひっかかるものを残してぇ~。

次の日~。エスペリアお姉ちゃんに呼ばれたセリアさんはぁ、そこで事の真相を知りましたぁ。
「セリア、今日の訓練なのですが……アセリアと、試合をしてもらいます」
「……アセリアと?」
「そう、この試合の結果次第なのですが、もし勝てばアセリアはラキオス首都に異動となります」
「…………え」
セリアさんはぁ、自分が軽く息を飲むのに気が付きませんでしたぁ~。ラキオス首都への配属です~。
それはアセリアさんがぁ、主力部隊の一員として選ばれたという事~。
スピリットである以上~、いつかは戦わなくてはなりません~。それはとても名誉なこと~。
そう教わってきました~。そしてぇ、目指してきました~。
いつもいつもぉ~、アセリアさんと競ってきましたぁ~。でもぉ…………
「……セリア、そんな顔しないで。もう会えないという訳ではないのですから」
エスペリアお姉ちゃんがぁ、優しい声でそっとセリアさんの髪に触れますぅ~。
あらあら撫ぜられたセリアさんはぁ、初めて自分が泣きそうになっている事に気が付きました~。
「…………アセリアなんかに、負けないもん」
「セリア…………」
「わたしの方が強いもん!絶対絶対、負けないから!」
「セリア!待ちなさい!」
双方幼いとはいえ~、神剣の位の差は明らかですぅ。もうアセリアさんには勝てないのですぅ。
それが判っていても~、それでもセリアさんは負けたくない~、そう思っているのですねぇ~。
でも、だってわたしの方が強いんだからぁ、そう自分に言い聞かせるセリアはどこまでも意地っ張りですぅ~。

あらあら~、神剣がぶつかり合う度に白いウイングハイロゥの羽根が舞い上がりますぅ。
高速ですれ違う二人のブルースピリットはその度激しい火花を散らせぇ、
その都度よろけたり体勢を立て直したりぃ、相手の動向を読み取ったりしましたぁ。…………ふぅ~。

アセリアさんはぁ、戸惑っていましたぁ~。先程からセリアさんの様子がおかしいのですぅ~。
いつもに増して鋭い動きなのにぃ、『熱病』さんの剣先が微妙に軌道をずらしますぅ~。
訓練中はいつも冷静な表情がぁ、今日はどこか苦しそうに見えますぅ~。
本当にぃ、僅かな変化ですぅ。でもぉ、アセリアさんには判るんですね~。
落ち着かない瞳孔はぁ、嘘をつく時の癖なのですぅ~。めっめっですぅ~。
「……セリア、どうした?」
「っ!……煩いわね!油断すると怪我するわよっ!」
そしてぇ、がぎぃぃ~ん、と再び鈍い音~。
ぎりぎりとぉ、剣を合わせたまま睨みあいますぅ~。
……正確にはぁ、セリアさんが一方的に睨んでいるだけなのですが~。

アセリアさんはぁ、困ってしまいました~。
セリアさんは一向に退いてくれる気配も無く~、がむしゃらに押してくるだけなのですぅ~。
剣技も何もありません~。隙だらけですぅ~。少し本気を出したら勝ってしまいそうですぅ~。
「アセリアなんか……」
「……セリア?」
「アセリアなんか、わたしが居なきゃダメなんだから!」
「!」
アセリアはぁ、気づきましたぁ~。セリアさんが全部知っているという事を~。
そしてぇ、その瞳に大粒の涙を湛えているという事を~。……自分と同じ気持ちだという事を~。
す~、と『存在』さんに籠めたマナが抜けていきますぅ。
目を瞑ったアセリアさんはぁ、そのまま自分を倒すセリアさんを待っていましたぁ~。

立会人のエスペリアお姉ちゃんはぁ、その様子を全て見ていましたぁ~。
セリアさんが泣いている所を~。アセリアさんがぁ、わざと負けようとしている所を~。
本当はぁ、めっめなことぉ。それでもエスペリアお姉ちゃんはぁ、試合を止める事など出来ませんでしたぁ。
幼い二人に芽生えた友情を~、どうして摘み取る事が出来ましょうか~。出来る訳がぁ、ありません~。
この後どんな百合的展開が待っているのかとぉ、恥じらいつつも指の隙間から覗くので精一杯でしたからぁ。
…………ところでぇ、百合的展開ってなんでしょう~。

急に抵抗が無くなったセリアさんがぁ、がく~とバランスを崩しながら『熱病』さんを払いますぅ~。
呼応するように待ち構えたアセリアさんはぁ、『存在』さんをだら~ん、と下ろしますぅ。
そして見守るお姉ちゃんの妄想はぁ、既にセリア攻×アセリア受まで発展してますぅ。めっめっですぅ~。
スローモーションでアセリアさんに吸い込まれていく『熱病』さん~。
刃が返っているとはいえ~、相当痛い痛いですぅ~。
しかしぃ、運命の神様は悪戯なのですぅ。体に叩き込まれた戦闘技術は伊達では無いのですぅ。
その瞬間~、迫り来る痛みへの恐怖心か~、軽く体を捻るつもりが大きく避けてしまったアセリアさん~。
つんのめったセリアさんは目標を失いそのまま転びそうになってぇ、必死にアセリアさんの戦闘服を掴みますぅ~。
更に引っ張られてバランスを崩したアセリアさんがぁ、『存在』さんごとセリアさんの上に覆いかぶさってぇ――

ぽかっ。
「あ」
「あ」
あらあら~。
「きゃっ♪」
……最後の黄色い声は置いといてぇ、面が見事セリアさんに決まってしまいましたぁ~。
「……………………」
「……………………」
二人とも倒れこんだまま~、暫くショックで起き上がってきませんねえ~。
ようやく我に返ったエスペリアお姉ちゃんの~、
「ええと…………そこまで。アセリアの勝ち、ですね…………ですよね?」
宣言が虚しく訓練場に響き渡りましたぁ~。夕日がやけに綺麗な日の事なのでしたぁ~。

こうしてアセリアさんは正式にラキオスに向かう事になりましたぁ。ずるはぁ、めっめっですよ~。

「はぁ~~、疲れましたぁ~~」
「『存在』さん…………」
「…………貴女に任せると無駄に改行が多くなる事が判ったわ」
「……わたしは“わたしぃ~”なんて間延びした言い方はしないんだけど」
「あれ~、おかしいですねぇ~。わたしはただヒミカさんの台本通りに話しただけなのですがぁ~」
「……それと、貴女は“小さな胸”とか言わないでくれる?」
「あらあらでもぅ、セリアさんの胸、今でも可愛いですぅ~♪」
「…………貴女に言われると異様にムカつくわね……」
「え~なんでですかぁ~?それにぃ、ヒミカさんの胸はもっとぉ~」
「ストップ。それ以上言ったら…………殺すよ」
「ヒミカさん~、なんだか怖いですぅ~」
「天然はこれだから……」
「……はぁ。せっかくシリアスな話だったのに、戦闘シーンの緊張感が……」
「わたしの心の機微とか、すっかり和やかになってるわね……」
「あらあらお二人とも~、どうしました~頭を抱えてぇ~。よしよし~」
なでなで。
「…………」
「…………」
「『存在』さん……可愛い」