聞きなれた言葉

「皆さん、ここまでよく頑張ってくれました。ついに私と同じカオスエターナルの仲間が、援
軍として駆けつけてくれました」
 トキミさまが、謁見の間によく通る声で言った。トキミさまの隣に立つのはトキミさまと同
じエターナル。背の高い男性のエターナル。
 仲間達は皆、満身創痍でこの場に立っている。今も、この大陸各地で敵エターナルの眷属達
との戦いは続いているのだ。日一日と戦力が削られていく。
 ……トキミさまには悪いけどたった一人増えたところでこの戦局を打開できるのだろうか。あ
まりの彼我の力差、物量差に、希望を失いかけそうになる。まさしく失望だ。ヘリオンには悪いけど。
 そう思いながら、目線を新しく加わった、無精髭の新戦力へと移す。
 …………なん、だろう。この感じ。


「こちらがクォーリン。グリーンスピリットの中でも屈指の実力者です」
 トキミさまの声に、ハッとした。いつの間にかトキミさまによる紹介は終わって、私達との引き
合わせになっていた。
「よろしくな、クォーリン」
 っ!!
 この人は、なぜ私の。
「お、どうしたクォーリン? もしかして俺に一目惚れでもしちまったのか? 俺も罪な男だぜ」
 そう言って、ニカっと笑う。
 どうしてだろう。この人は。
 私の名を、最初から正確に発音してくれた。ユートさまとキョウコさま、トキミさまもラ
キオスのスピリット達だって最初は、いやユートさまとキョウコさまは未だに正確に発音で
きていないのに。
 ただの偶然なのだろうか? きっとそうなのだろう。私は、そう結論づけた。
 なのに作戦室へ向かう途中、私はこの人の背中から目を外すことができなかった。