「判ってるの?!今度こんな勝手な事したら、許さないからねっ!」
「……………………」
判ってる。自分でも何故あんな事をしたのか、解らないという事が。
「まったく反撃してくる敵からわざわざ火球を逸らすなんて、一体…………」
怒っている。当然だろう。部隊行動に支障をきたす行為だったのだから。
だけど、嫌だったのだ。なんとなく。だから、“曲げてみた”。なんとなく。
「…………ごめんなさい」
「……そう。もういいわ、帰りましょう」
「…………?」
何故急に微笑むのだろう。判らない。何かを見つけていたようだけれど。
短く切りそろえた赤い髪を揺らす、目の前の彼女の思考が理解できない。
理解出来ないけど、どうやら許されたようだ。
「……なに首傾げてるの?置いてくわよ?」
「……はい」
でもその後姿が楽しそうなのは、何故か私も嬉しい。
それはきっと、なんとなく、ではなくて。
もっと何か、確かなものがあるはずだった。
――――――
地面に刻まれた放物線を描くような焦土の跡。
その脇に、一本の小さな紅い花。蕾が僅かに綻んでいた。