今にも落ちて来そうな空の下で

エスペリア、一人草原の倒木に腰掛けて休憩中。
ガサ! ガサリ!
「……?」
後ろの草むらから物音がする。
ガサガサ! ガサッ!!
「………………」
見ると、そこにはしゃがんて草むらを掻き分ける軍服の男性が。
「あの………そんなところで…………何をしているのですか? 兵士様」
「…………休憩中すまないね。今…調査中でね…。『痕跡』を探している。
 昨夜、近くの村で戦闘があってね、他国のスピリットが来たんだ。
 応戦はしたんだが逃げられてね…………。どこの国のスピリットかはわからなくてね……。
 この周辺に逃げ込んだっていうんで、何か手がかりがあると思ってね…。
 『痕跡』があるはずなんだよ。…それを探しているんだ」
「……………。そんなところから捜す気ですか?」
「仕事だからな…………」
ガサ ガサ
「あの……その……ええと…」
「何だい?」
「いえ…その、参考までにお聞きしたいのですが、ちょっとした個人的な好奇心なのですけれど、
 もし、見つからなかったらどうするのですか?『痕跡』なんてないかも……………。
 いえ…それよりも見つけたとして、上官の気まぐれで、見つけた『痕跡』が無駄になってしまったとしたら、
 あなたはどう思って…………そんな苦労をしょいこんでいらっしゃるのですか?」
「そうだな…俺は『結果』だけを求めてはいない。
 『結果』だけを求めると、人は近道をしたがるものだ……。
 近道をしたとき真実を見失うかもしれない。やる気も次第に失せていく。
 大切なのは『誰かの役に立とうとする意志』だと思っている。
 役に立とうとする意志さえあれば、たとえ今回は無駄だったとしても、いつかは誰かの役に立つだろう?
 役に立とうとしているのだからな……………………違うかい?」

「…………うらやましいです。
 以前私は…皆さんのお役に立ちたいと思っていました…子供のころから……ずっと。
 かつて、あなたのような『意志』をいだいていた事もありました……
 でもだめにしてしまいました…………私というスピリットは…………どうしようもないスピリットです。
 何だって途中で終わってしまいます。いつだって、途中でだめになってしまいます…………」
「そんなことはないよ…………エスペリア」
「え?……………………」
「おまえはりっぱにやってるじゃあないか…………。『意志』は同じだ………。
 お前が神剣を握ったばかりの時いだいていたその『意志』は…………。
 今…お前の心の中に再び戻っているのだよ………………エスペリア」
「! どうして私の名を…………知っているのですか?」
「……………………」
「…………? そういえあば…あなた……前にどこかでお会いした事が…………ある」
「どこに行くんだ、エスペリア?」
「向こうの馬車に乗るんです…………。
 思い出してきた……そう!!
 もう行かなくては………………。私は仲間のところに戻らなくては…!!!」
「忘れたのかエスペリア!?
 お前はあれに乗ってここに来たのだ。ここは終点なんだ…………もう…戻る事はできない」
「あ…………あなたは…………!!
 そう!! あなたはッ!!
 あなたは、私を守る為に、ソーマに殺された……………………!!」
「エスペリア…………おまえはりっぱにやったんだよ……。そう……
俺がが誇りに思うくらいりっぱにね………………」