戦争が終結してからもう3ヶ月。
まだ辺境(我がサーギオスも既にその範疇に入ろうとしている)では
紛争や内乱が絶えないけど、それでもガロ・リキュア(覚えにくいなぁ……)は
ゆっくりと統合に向けて、平和への道を着実に歩もうとしている。
戦いに明け暮れ、その事でしか生きる手段を持たなかった我々もまた、
各々が別の新たな「生きる道」を探らなければならない。
まだ平和、というものがしっくりこない所もあるけど、それでも時間は流れていく。
「ここね…………」
立ち止まった門の前。その名称を確認してくぐった先。
そこに、私の求める道はあるのだろうか。或いはまた戦いという名の同じ道を辿るだけなのかもしれない。
不安はまだあるけど。緊張と共に門をくぐる。やや荒れたままの石畳。柔らかい日差し。
「踏み込みが甘いっ!もう半完歩前にっ!」
活気があるなぁ、と思いながら、声の聞こえた教練場に足を向ける。
――――あの大規模な作戦の後、気づいた時(自分を取り戻した、という意味だ)には誰も居なかった。
草の匂いや鳥の囀りをやけに親しく感じたのを覚えている。不思議と剣の声はもう聞こえては来なかった。
帰るべき国は既に無くなっており、世界には新たな秩序が生まれようとしている。
ただ混乱するだけの私は、揉まれるようにただ日々を当ても無く過ごすしかなかった。
そんな時見つけた辺境警備の兵募集。何をする事も無く各国を彷徨っていた私には丁度良いものに思えた。
「遅いっ!軽い気持ちでは戦場で命を落としますぞっ!」
ぴた、と足が止まる。胸がどくん、と波打つ。そんな。まさか。でも、聞き間違える訳が無い。
もしかしたら、そんな想いがあったのも否定できない。それでも。足は、自然に早くなった。
少しずつ見えてくる後姿。見慣れた、力強い背中。褐色の肌、銀色の髪。
黒い戦闘服は相変わらずだけど、純白に生まれ変わったウイングハイロゥが眩しい。
噂には聞いていたけど半信半疑だった。でも確信に変わった今、私は少し迷い、そして駆け出していた。
「~~~っ隊長ぉ!」
叫び声に気づき、驚き振り向く赤色の瞳。大きく開かれたそれがだんだんと優しいものへと変わる。
ああ、変わってない。大好きなその表情。それに、それに……使ってくれていたんですね、私の髪留め……
「――――――?!」
名前を呼ばれる。信じられない、といった感じで。それでも、ちゃんと両手を広げてくれて。
私はまだ戸惑いを見せている大好きな隊長の胸に、今度こそ迷いも無く飛び込んで行った。
ここから始まる、私の生きる意味を。戦いと、そして温もりと共に探し出す為に。