だだっ広い平原に独り佇み、その場に居ない者を想う。
暖気の大平原と呼ばれる場所なのに夜風が肌寒く感じられる。
隊長であったウルカが放逐されたことを知らされたばかりだ。
「隊長…」
届かないことを承知で呼びかけ、閉じていた目を開く。星がひとつ流れた。
「どうかご無事でいて下さい」
隊長ならば大丈夫だと思いつつも、何か良くないことが起こりそうな予感が拭えない。
あるいは、禍が降りかかるのは自分や仲間の身にであろうか。
「仲間はわたしが守る」
知らずのうちに口に出していた自らの言葉にはっとさせられる。
それは緑スピリットの自負だけではなかった。
「あぁ、隊長、あなたは…あなたのあたたかさは…」
己が身を抱きしめる。庇護者が居ない不安と自らの決意とを。
そして、この星空の下のどこかに居るであろう元隊長に、否、今なお心の隊長に、告げる。
「わたしも行きます、あなたの道を。わたしの心の命ずるままに。
わたしは行きます、あなたの不在という不安を抱えながらも。
わたしが倒れても、やはり、誰かがこの道を行くでしょう。
いつの日か、あなたと再び見(まみ)えるその時まで。
わたしは、わたしたちは、行きます。
ですから、その時まで。
さらば、隊長。
さらば、隊長に守られていた、わたし」