ついに、ついにやりましたっ! 上位永遠神剣が今目の前にあるんですっ!
待っていてくださいユートさま。後は契約を交わすだけですっ。ずっとずっとユートさまと一緒です。
ユートさま褒めてくれますよねっ。
【………き………て ますか】
光よりも速くユートさまの元へ駆けつけますっ!
【…………聞いていますかっ!!!】
ピィィィィィーーーーーーンンンンン
ひゃうっ!!?
【私を目の前にして上の空とはいい度胸です】
あわわ!? あう、ま、またやってしまいました。そ、そうでした。ちょーしに乗ってる場合じゃあ
りません。
ご、ごめんなさい。つい、あの。
【まあいいでしょう。次はありませんよ】
あ、ありがとうございます。そ、それであのわたしと契約を結んでください。お願いします!!
腰を90度以上に折り曲げてお辞儀をします。礼を失してはいけないんです。
【いきなりですね………黒き妖精よ…私と契約すると言うことがどのようなことかわかっているので
すか?】
は、はい。もちろんです!
【…………ふむ。確かにあなたの奥底まで見透かしても何ら躊躇いはないようですね】
【いいでしょう。少々拙速ではありますが。今見たところ、あなたはどうやら私との相性も抜群と言
えるようです】
ほ、本当ですかっ!? ありがとうございますっ! あのあのそ、それじゃ。
【私を握りなさい。ただそれだけです】
はいっ! ギュッと黒い柄を握ります。その瞬間わたしの中をどこか儚さと痛みを感じる風が過ぎ去っ
ていったように感じられました。
信じられないような力が、奥底からどんどん、どんどんあふれ出すようです。
【では、いきますよ。『破れし翼ヘリオン』】
え、あの今のは?
【私は、永遠神剣第三位『失恋』。恋に破れし痛手を力へと転化し、怒りを刃とする永遠神剣。痛み
が深ければ深いほど、回数が多ければ多いほど力をいや増す。あなたにはぴったりの神剣です。あな
たは『破れし翼』。いえ正確には『恋に破れし翼』を名乗ることになるのです】
…………ど、どういうことですか? 『失恋』? あの……え? なにが?…………失恋?
【さぁぐずぐずしてはいられません。聖賢者のところへ行き、永い眠りで衰えた我が力を回復させな
ければ。聖賢者の隣に立つ者をまざまざとその目に焼き付け私に力を注ぎ込むのです!】
…………やっちょっと待ってください。いやですっ。やだやだユートさまたすけてっ!
【そのユートのところへ行くのですよ。これから何度でも恋して、何度でも敗れるのです。それが私
の主たる者の宿命です】
そんな、いやっこ……んなの 無効 ですっ!!説…め……責 に クーリ…………グ オ フ
がばっ!!
跳ね起きたわたしは、いつもの部屋。いつものベッド。変わり有りません。
怖い夢を見ていたようです。でも、全然内容を覚えていませんでした。
酷い寝汗です。…………お風呂にいった方が良さそうです。
あれ? 立てかけておいた『失望』が倒れています。拾い上げて……? なんだか……気のせいでしょ
うか。首をかしげながら、刀受けへと『失望』を安置しました。
ユートさま、明日は褒めてくれるかなあ。