「悠人さんたら結局私を選んではくれなかったんですね、うう…」
ここはソーンリーム地方、ラキオス軍は打倒ロウエターナルのため、
総力を挙げ、全員で雪原の真っ只中を突き進んでいた。
そんな皆を一人だけ少し遅れた場所で悲しそうに見ているのは
ご存知、元千年処女の失恋オールラウンダー巫女、時深である。
「ああ、アセリアったらあんなに悠人さんにくっついて!!」
何故かオールラウンダーにならずに新しきカオスエターナルである
聖剣者ユートと永遠のアセリアは第一部隊でいちゃついていた。
一緒にいる今日子が何故かものすごい眼で睨んでいる。
「大体エターナルで部隊を組むなら今日子さんじゃなくって
私を部隊に入れるべきなんです!!」
一人だけ仲間はずれなのが寂しいのか、愛しい悠人のらぶらぶな姿を見せられるのが
嫌なのか、多分両方だが少し憂鬱気味に愚痴や不満を述べている。
実は全員、どす黒いオーラを放つ時深に話しかけられず放置しておいたら
いつの間にか距離が開いていたのである。
「ああ。この戦いが終わってもこれからずっとあの二人の
愛し合う姿を見なければならないのですか?」
すっかりいじけている時深と部隊との距離はだいぶ離れている。
さすがに離れすぎだと思ったのか、
向こうではセリアが呼びに行ったほうがいいのでは無いかと提案したようだ。
「それに対して私は一人、千年間守った貞操を奉げたのに一人…」
皆、今の時深に近寄りたくないのか誰が呼びに行くのか押し付けあっている。
どうやら押しが弱かったのが原因か、ヘリオンがこっちにのろのろとやって来る。
…
「一人、ひとり、独り、ヒトリ…、一人…?」
どうやら時深は何かを思いついたようだ、
暗い眼をしながらこんなことをつぶやき始めた。
「そう、別に一人で悲しむ必要なんて無い、誰かと一緒にこの悲しみを
分かち合えばそんなに苦しくは無いはず…」
何か確信を持ったような目つきで顔を上げた、
その視線の先には顔が見えるぐらいまでに近づいて来たヘリオン。
今、時深の頭の中では主が不在の上位永劫神剣が思い浮かんでいた。
「確か今、失恋はフリーでしたよね…、そしてとても相性もいい」
そう呟きながらまたも顔を伏せ、今度は含み笑いを始めた。
その笑いにビビリ、光陰を触るような表情をしながらも
決意を決めたようにヘリオンが話しかけてきた。
「あ、あのっ、時深様っ」
「はい、なんでしょう?」
そう返事をしながら顔を上げたエターナルの顔には
と て も い い 笑顔が浮かんでいた