―――神木神社の、とある夏の日。
「二人でこうしてお祭りに来るなんて久しぶりだね、お兄ちゃん。」
「ああ、去年もその前の年もバイトが入ってて来れなかったもんな。」
どんっ。「おっと」
「うわわっ!ごっごめんなさいっ!!」
「あ、いや、こちらこそ...」
返事も聞かず、カラコロと軽快な音を立てて逃げるように走り去る人影。
その、たなびくツインテールをじっと見つめる悠人。
「――お兄ちゃん、知ってる人?」
「ん、あ、いや...何だかちょっと懐かしい気がして」
「ふ~ん...、あ、お兄ちゃん、見て見て!今年は女の人が太鼓叩いてるよ」
勇ましくやぐら太鼓を打ち鳴らしているのは、法被姿にきりりと鉢巻を巻いた少女であった。
短めの髪の毛を,燃えるように紅く染め上げている。
「うわあ~、かっこいい!私もあんな風になれたらなあ...あれ、どうしたのお兄ちゃん?」
うっとりとやぐらを見上げる佳織の傍らで、がっくりとくずおれる悠人。
「...い、いや、何だかちょっと脱力しちゃって」
「あの、大丈夫ですか?」
掛けられた優しい声の主を凝視する悠人。
声の美しさとは裏腹に、その少女はいかつい黒の覆面を被っていた―――。
「――ダースベイダーか。それはあんまり違和感ないって言うか...そのまんまじゃん」
謎の呟きとともに再び崩れ落ちる悠人であった。