――――力を失い、落下していく瞬。間を置かず、『再生』が崩壊を始めた。
「これで当面の危機は無くなる……レスティーナの統一国家は、どうなるんだろうな」
「……厳しいでしょうね」
隣に並んだ時深が、やや翳のある表情で答える。その様子に、俺は神妙に頷いていた。
確かに文明の後退をも含むレスティーナの覚悟が人々全ての望みとは限らない。ふと気になって聞いてみた。
「それは、そう見えたっていうことか?」
「いえ……ですが、見る必要もないんですよ。一時の熱狂が冷めれば、すぐにでも不満は出てきます」
「……かもな」
呟きに寂しそうな声色を感じ取ったのだろうか、時深がそっと寄り添うように手を握ってくる。
「……仕方ないのかもしれないけどさ、時深には、もうちょっと楽観的になって欲しい」
俺はそこにある温もりを確かめながら、強く手を握り返した。
「ほら、そのせいで……俺と、こ、恋人になるの、諦めてたんだろ?」
「ぷっ、あはは……そこで詰まっちゃダメですよ」
どもった事が可笑しいのかころころと笑い、やがて思いなおしたように真面目な顔で何度も頷く。
「でも、そうですね……。勝負を自分から降りたら、チャンスまで無くなってしまうんですから」
俺の相槌に微笑み返した紅い瞳は、再生の間全体を照らす炎に混じって尚強い意思を俺に向けていた。
そうして静かに頭を肩に預けてくる。そんな時深に腕を回そうとして…………俺の動きは、はたと止まった。
何故ならいつの間にかじっとこっちを見ているスピリット達に周りを固められていたから。
「そそそそうですよねっ!自分から降りたらダメなんですよねっ!」
「ヘリオン?!お前確かブレイクの初撃で人身御供に……げはっ!」
「ネリーも~、あっきらめないからね~」
「いい突進だ……じゃなくてネリーは成長不足でアポⅡすら防げないから置き去りにした筈……ぐぁっ!」
『ユートさまー!!』
「ぎゃあぁぁぁぁ………………」
女体盛りならぬスピ盛りに、俺の意識は一瞬色々と遠ざかった。
「さてと、そろそろ行くか。このまま(スピリット達に)埋もれて死ぬのはしゃれにならないし」
「そうですね……では戻りましょう。みんなで守り抜いた、愛すべき場所に」
『は~~い!』
「…………で、あの、そろそろ開放してくれないか?簀巻きで寝っ転ばされるととっても苦しいんだけど」
「あらダメですよユートさん。あなたが塵となった姿が見えるんです。その先には、明るい未来だけしか見えません」
「嫌すぎっ!!」
とってもニコニコと微笑む時深に、俺は何故このルートを選んだのだろうかとただひたすら後悔するしか無かった。