彷徨う視線

―――ロウエターナル達との凄絶な戦いが終わってから数年の後。

ここラキオスの城下町で、音に聞こえた剣の達人・ウルカ・ラスフォルトの下へは、
今日も教えを求めて来訪する人々が引きも切らぬ。
「先生、一手、御伝授を!」
「―――では、参る。」

その居合いの早業は神の如し。
毎日の如く、そう、まさに人、スピリットの分け隔てなく、数え切れぬほどの
仕合いをこなしながらも、疲れた素振りさえ見せないウルカは、
実に師範かく有るべき、という姿を体現していると言って差し支えなかった。

「まっ、参りましたっ!!」
無様に転がされた新弟子に向かってウルカが静かな微笑を見せる。
「―――まだ、貴殿は剣に振り回されておられるようです。」
「ははーっ!仰る通りでございます!」
「刃に―――刃に、心を乗せるのです。」
「はーっ!先生の目はごまかせません!つい、その形の良い胸に見とれておりました!!」
ぴくり。ウルカの片頬が吊りあがる。
「―――誰が刃に下心を乗せろと言った。……貴殿も、ここで冥加の露と消える運命か。」

―――『冥加』が妖しい光を放ち始めた。


人格者だが、怒らせるととっても怖いウルカ師範なのでした……