「うあぁぁぁぁっっ!そんな、そんな馬鹿な……ッ!!僕が負けるなんて……あ、あぁぁぁぁっ!!」
金色の霧となって消滅するエターナル、「統べし聖剣シュン」。
その前に立つのは、人の身でエターナルを打ち破ったエトランジェ、「求め」のユート。
「…ぐっ!さすがに、きつかったなぁ……」
彼はばたりと仰向けに倒れた。
「っ、はぁ…はぁ…」
彼の体は満身創痍。オーラフォトンの爆炎に焼かれた全身。縦横に走る切り傷。
体を構成するマナが夥しく流出している。
「ふぅ…」
悠人はまるで他人事のように自己の現状を認識して、ため息を一つ。
(こりゃあ、もう助からないか…)
床を伝わる振動でみんなが駆け寄ってくるのがわかった。
「―――!!」
「――!」
何を言っているかよく聞こえない。
みんなは泣いている。
ああ、泣かないでくれ。
やっと戦いは終わったんだ。
「…泣くなよ、みんな」
声を振り絞る。俺に残った時間は少ない。
「俺は…みんなを、この世界を……守れた」
首だけを動かしてみんなを見る。
「それ…だけで、満足……だよ」
マナの輝きが俺を包む。いよいよもって最後の時が迫ってきたみたいだ。
「みん……な…は、……掴むん…だ。……み…ら…いを………」
視界は金色に染まり、そして俺の意識は暗転した。
ラキオス郊外の小高い丘に緋袴の少女が立っている。手には扇。
「…こうなって、しまいましたか」
彼女に瞳に映る何通りもの未来。
残酷な結末の一つとして瞳の中にのみあったものが、今こうして現実として顕われている。
苦悩の果てに友を殺し、悠人は瞬を倒した。
しかし、瞬は「誓い」と融合。「因果」と「空虚」を呑みこんでエターナルとなった。
悠人は自分の全てを賭してエターナル達と戦って、勝利し、そして死んだ。
残ったのは「求め」だけ。しかし、その「求め」もほとんど全ての力を出し切って眠りについている。
おそらく彼はこの世界の記憶に刻まれるだろう。
蓋が閉じ、世界があるべき姿に戻った後も。
救世の英雄として、神剣と共に。
一方の地球でも、悠人は行方不明扱いになっている。真実を知っているのは妹の佳織ちゃんだけだ。
でも彼女は一人じゃない。二人の先輩と一人の友達に支えられて強く生きるだろう。
「…悠人さん」
あなたはもう、どこにも居ないのですね。
貴方は酷い人です。
みんな貴方を好きだったのに。
どのような形でも生きていれば幸せを求める事もできたでしょうに…
…私は
貴方と出合う希望を見つけてから。
「千年です。私は千年待ちました」
貴方に合うまでの時間は私にとって灰色の時でした。
希望に向かう千年の時は私にとって絶望でした。
いつ、どこにいても「貴方と出合う」という希望があったからこそ私は未来に進めたのに…
「私の未来は…」
決まっている。永遠者としての戦いの日々。
そこには安らぎも希望もない。
私の「時を見る目」にも見果てる事のない、まさに永遠。
どこを切り取っても戦いに塗り潰されていた。
私は虚ろに時を見続ける。
―――そして
「!!」
遥か遠い未来に…
希望を見つける。
あの人の笑顔。
まだ、繋がっている。
それは千年よりさらに永い時かもしれない。
――それでも
「私なら辿り着ける」
私はまた深い絶望に身を沈めるのだろう。
――それでも
私は歩き続けるだろう。この永遠の道を。
私だけに見える希望に向かって。
-fin-