あなたと別れて幾星霜……どれほどの時を歩み、いくつの世界を渡ったでしょうか。
暗い絶望はもう私の歩いた後にしかない。
灰色だった私の世界は、再び色を取り戻そうとしています。
ここはあなたが生まれた世界によく似ていますね。
まるで私達の再会の為だけに用意された世界のような錯覚を覚えます。
今、私は神社の境内で箒を持って掃除をしています。
初冬の風が私を冷たく撫でて行くけれど、そんな事は今の私には何でも無い事。
彼がこの世界に生まれて、十数年。
ずっと、見続けてきました…
どこまでも優しくて、素直なあなた。
影ながらでしたが、母の様に見つめ、姉の様に守り、妹の様に慕い。
ここまでは私だけの必然。
そしてもうすぐ二人は出会い、やがて恋人のように結ばれたい。
それが私の願い。
そこからの必然は、願わくば二人で紡げますよう…
タンタンタン……
遠くから石段を駆け上がって来る音が聞こえてきます。
少し怖くなってきました。
私があの人の前に現われるという事。
エターナルの因果に彼を捲き込んでいるのは私の想いなのかもしれません。
事実、彼は私に会うまでに何回も転生しています。
しかし、再び神剣を手に取る運命には出会う事はありませんでした。
今回がその時なのですから。
ああ、だとしたら私はあの人にとっての疫病神でしかないのでしょうか?
そう考えると、とても怖い。
拒絶されてしまうかもしれない、そんな不安もよぎります。
ですが、私には見えてしまうのです。
今はまだ、断片としてしか捉える事の出来ない未来の中で……
白く輝く剣を携えて、微笑む彼の姿が。
タンッ!
最後の一段を駆け上がって、彼は神社の境内に入ってきました。
背中を向けているので見えませんがわかります。
駆けよって抱きしめたい、そんな衝動が湧き上がりますがここは我慢。
ずっと、ずっと、ずっと待ち焦がれた瞬間を感情に任せて壊してしまったらもったいない。
この場面はどうすべきかしっかりと考えてあります。
優雅に振り返って、数歩近づいてにっこり笑って挨拶……完璧です。
くるりと優雅に振り返って…成功、彼の足が止まりました。
そして数歩近づいて…
「きゃっ!」
あ、足元に小石が…しっかり見ていれば躓かなかったのに……ああ失敗、もう台無し――
がばっ!
「だ、大丈夫か?」
気が付くと目の前には彼の顔。
「え、ええ、大丈夫です。ありがとうございます、悠人さん」
怪我の功名ですね、出会っていきなり抱きしめられちゃいました。
「…あれ?俺って君とどこかで会ったっけ?」
前もそんな事言っていましたね。
だから私も同じように…
「ふふ…私は悠人さんをずっと見ていましたよ。悠人さんは「覚えて」いないと思いますけど」
-fin-
Take1
「もうすぐ悠人さんに会えますねっ!私もう待ちきれません!!」
【どうするのです、時深。その時までまだ数十年はありますよ?】
「決まっています!未来に跳べばいいのです」
【ちょっと、お待ちなさい!時深!!】
「待ちません!行きますよ「時逆」!」
――時間跳躍――
「ああ、ついに悠人さんに会えます…」
【「時逆」の力を安易に使ってはいけませんよ、時深】
「ええい、「時詠」は黙ってて下さい。悠人さん!ゆ~う~と~さ~ん~!」
「んん~、うるさいのぅ。お嬢ちゃん、ワシに何か用かい?」
「え゛っ、そんな、なんでそんなおじいさんに…」
【どうやら、アバウトに時を跳び過ぎたみたいですね】
「いやっ、そんなーーっ!……「時逆」ぁっ!」
――時間跳躍――
Take2
「はぁはぁ、先ほどは失敗してしまいました。が、五十年くらい戻ってきましたし今度こそ!」
【ですからそんな安易に「時逆」は…】
「「時詠」は黙ってて下さい!悠人さんの事を安易だなんてそう何回も聞き流してはおけませんよ?」
「何してるの?一人で」
「あら?ボク、高嶺悠人って人知ってる?知ってたら教えて欲しいな」
「え、僕の事?」
「な゛っ……」
【今度は戻りすぎたみたいですね】
「いやいや、「時詠」これはこれでなかなか…あどけない子供の悠人さんも悪くないじゃないですか」
【…くれぐれもイケナイ趣味には目覚めないで下さいね、時深】
「ねえ…」
「何かな、悠人クン?」
「おばさん、誰?なんで僕の事知ってるの、一人で何か喋ってるし怖いよ…」
「~~~~っ!!な、な、なっ…」
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「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
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j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ