テムオリンの憂鬱

 どこかの世界、今とは違う時。
「さて、今日集まって頂いたのは他でもありませんわ」
 会話の口火を切ったのは白い法衣を纏った少女。
 言わずもがな、ロウエターナルの中核の一翼、コアラ様こと「法皇」テムオリン。
 対するは彼女の配下のエターナル。
 「黒き刃」のタキオス、「水月の双剣」メダリオ、「業火」のントゥシトラ、「不浄の森」のミトセマールの四名(三人と一匹?)。
 部下を呼びつけて今日はどんな計略陰謀を披露するのかと思いきや
「今回、新たな世界を崩壊に導くにあたって皆の意見も参考にしたいと思いますの。
まず戦力の向上を目指すに、ミニオンの数を増やして対応するかそれともエターナル各々の力を強化するか……皆どう考えまして?」
 暫しの沈黙。そして進み出たのは黒衣の大男、タキオス。
「はい、私はテムオリン様のお好きなようになさるのが一番かと思います……」
「やれやれ、そんな抽象的に言われても全然ピンときませんね…そうですよね、テムオリン様」
 すかさず割って入ったのは青髪の優男、メダリオ。過去タキオスにコテンパンにやられており、以来彼に対して何かと突っかかってくる。
「ンギュル、ギュギュ、ギュルルン、ギュギュン、ギュルギュ――」
 次に発言したのは巨大な目玉オバケ。ントゥシトラは真剣に意見を述べている。がしかし、彼の言語を解する事は誰にもできない。
 高い知性もこれでは宝の持ち腐れである。
「…話はそれだけかい?戦いが無いなら、私は帰って光合成でもしていたいんだけど」
 そして、目隠しをした扇情的な格好の女性――ミトセマールがしめくくる。
「……」
 テムオリンは黙したまま。
「…ああ、まただんまりですかタキオス。話になりませんね…ねぇ、テムオリン様」
 同じく黙りこくったタキオスをメダリオが挑発している。
「で、帰っていいのかい?」
 あくまで自己中一直線なミトセマール。
「ギュグ、ギュルルルン、ギュッギュ、ギュグ、フシャァァッ!――」
 一人議論を展開し勝手にヒートアップしていくントゥシトラ。だからわかんないって、言葉が。

 ………

 ……

 …

 で、 意 見 は ?

 当然か、意外か。
 とにかく、苦悩の多いロウエターナルの首魁の一人、テムオリン様だった。