コタツリーグ開幕

レスティーナとの会談を終えた悠人は、ラキオス城内の入り口ホールでたくさんの紙束を抱えたエスペリアと行き会った。
「ど、どうしたんだエスペリア。この大荷物は?」
「あ、ユートさま。わたくしこれから更改交渉なんです。これはその為の物でして」
「あ、そうか、もう今日からなんだな」
悠人は思わず痛ましげにエスペリアを見やった。外国人(エトランジェ)であるユートは、既に長期の契約を結んでおり、今年は縁のないものなのだ。
『ラキオススピリッツ』のトップを切って緑組のレギュラーであるエスペリアが呼ばれたのは、今年の契約交渉に対する、
ある意味での試金石であり、他のチームメートにとっても大きな関心を寄せる物だった。
なんと言っても今年は、昨シーズンとはルールが大きく改正された為、エスペリア達緑スピにとってはとても辛い一年だったのだ。
そのため、どこの誰からも厳冬更改が予想されていた。

ユートは知っていた。可燃物だとか、マグネシウムリボンだとかの心ないヤジにも消える事の無かった微笑みを。
そして今も、絶える事なく自分に注がれている笑顔の裏の辛さを。

「大丈夫ですユートさま。わたくしは守って見せます。その為の昨年までの資料です。」
そして荷物を無理に片手に持ち替えると、力こぶを作る動作をした。それは蟷螂の斧のように儚さを感じさせるものに映ったのだが、悠人は何も言わなかった。
「……そっか。がんばれよ。ハリオン達のためにもさ」
「イス テスハーア。ウレーシェイスルス」
エスペリアは器用にお辞儀をすると、城の奥へと進んでいった。おそらくレスティーナ達経営陣との交渉会議室へと向かったのだろう。
悠人はその背中へ、そっと祈りを捧げた。おそらくエスペリアの意気込みは、ささやかな抵抗となって散ってしまうのだろう。
せめて、暖めてやんなくちゃな。そう思った悠人は、コタツってどこにしまったんだっけ、と呟きながら、冷え込んだ空気の中、家路を急ぐのだった。