続・コタツリーグ開幕

「残念ですがエスペリア、来期の契約に関して、わたくしといえども交渉権は無いのです」

ばさばさ。
抱えた紙束を一斉に手落とす。あまりにあまりないきなりの結論に、エスペリアの口元はわなわなと震えた。
「な、ど、どうしてですか? それは確かに今期はちょっぴり燃え過ぎてしまったかも知れませんけど、そんないきなりっ!」
エプロンの端を握り締め、真っ白になってしまった手。揺れる白い髪飾り。ついでに漂白されていく思考。
対するレスティーナは一度気の毒そうにちらっとエスペリアの方を向いただけで、後は目線を合わせようともしない。
ぷいっ、とその端正な横顔に表情らしい表情も浮かべる事無くただ黙ってエスペリアの訴えを聞き続けている。
「……な、ならせめて第Ⅱ、いいえ、第Ⅲでも第Ⅳ部隊でもかまいません! 御願いします、編成に加えて下さいっ!」
二人を挟む机越しに届く、悲痛なまでの叫び。じっと窓の外を眺めていたレスティーナがふぅ、と溜息交じりに呟く。
「ユートく……ユート、ですか?」
「な、そ、そんなんじゃ……わたくしはただ、グリーンスピリットの代表としてディフェンスにおける有効性を」
「まぁ聞いてくださいエスペリア」
さっと右手を上げただけで熱弁を振るい始めたエスペリアを抑え、レスティーナは続けた。
「それなのですが……実はハリオンとニムントールには既にオファーが来ているのです」
「え……そ、それはまさか」
「ええ、貴女も聞いた事位はあるでしょう。来期設立される新チーム――――『スピたん』の噂を」
「あ…………あ…………」
「彼女達は既にその為の冬季キャンプに入りました。他にも多数の引き抜きがあったようです。残ってるのは……」
そこまで話した後、レスティーナは窓の側に立ち遠い目で外を眺めた。常春の筈のラキオスに北風ぴゅーぴゅー吹いていた。
「元主力のわたくし達だけ。……でも安心して下さい、エトランジェ(外人)・ユートはこちらのチームに残留します」
「え? ほ、本当ですか?!」
「ええ。ですからエスペリア、後は貴女の判断次第。新チームはミュラーが率いています。彼女にも相談してみては?」
「は、はい。わかりました!」
妙にうきうきと部屋を出て行くエスペリア。彼女は悠人を取るのか、それともレギュラーを望むのか。

唐突に続く。