「ミュラー様、失礼いたします。ご在室でしょうか?」
ミュラー・セフィスと書かれたプレートの部屋の扉を、エスペリアは静かに2回ノックした。
目はギンギンに輝いているものの普段の優雅さは忘れない。それがエスペリアクオリティー。
「鍵は開いているよ。入っておくれ」
部屋の中から落ち着いた声が返ってくる。新チーム監督ミュラー・セフィス本人の声だ。
エスペリアは深呼吸をして落ち着いた後、再び失礼しますと言って扉を開けた。
「・・・・・これは」
部屋の中には溢れんばかりに敷き詰められている色とりどりの祝儀用の花束と、『新監督おめでとう』などの垂れ幕があちこちにあった。
このエスペリア、ちょっと嫉妬しましてよ。
「で、何か用があってきたんじゃないかい?」
「はい。実は来期新チームの『スピたん』について情報をお聞きしたく」
「あー、残留するか移籍するかの相談だね」
ミュラーは鋭い。エスペリアがここに来た意図をすぐに読み取った。
新チームの拠点、スケジュール、メンバー構成などをミュラーは簡単に説明し、それをエスペリアは愛用のメモ帳に一言一句書き漏らさずに記入していく。
メンバー構成を再び確認するとエスペリアは内心ほくそ笑んだ。
髪を切ったサブスピリットや仮面をはずしたサブスピリットなど、所詮サブでしかない。
(これならいけますわ!ここでなら私はトップに咲けます!)
「最後にこいつがチーム『スピたん』のキャプテンだ」
(これは!!)
最後に紹介されたキャプテンのエーテル写真を見たエスペリアに衝撃が走った。流転100%を喰らった様な感覚である。
そこに写っているエーテル写真には、いかにも気弱そうな弟資質満点の少年が写っていた。
じゅるり
「じゅるり!?」
「いえ、何でもございません。おほほほほ。急用を思い出しましたので失礼いたしますわミュラー様」
謎の擬音を聞いて驚いたミュラーを会心の笑みでかわしつつエスペリアは部屋を出た。
エスペリアどこへ逝く。
続きまくります。