「すっかり散っちまったな」
と、桜っぽい木の下を歩きながら、光陰。
「そうだな。今年は忙しくて、花見も出来なかったし。仕方ないとはいえ、やっぱりちょっと残念だな」
横を歩くは悠人。
「今からでも花見するか?」
「もう花が無いだろ」
「花を見て、そこから何かを感じられるヤツは、花の散った後の木を見ても何かしら感じいるトコはあるさ。
逆にそうじゃ無いヤツは、たとえ花が咲いてたとしても花より団子だ。
特に問題は無いさ」
「変に哲学的だな」
「何を意外そうに言ってるんだ」
「いや、意外ってワケじゃ無いんだが、ギャップがあまりにも激しくて、たまについていけないだけだ」
「そんなもんか?」
「そんなもんだ」
二人、葉桜(っぽい木)の下を歩く。
「あーっ!! ユート様だ!!」
そこに駆け寄ってくるのは、ネリシア、ヘリオン。その後ろを少し遅れてニムファー。
いつも通りにスピ達は悠人の周りに集まり、ある者は並び、ある者はくっつく。
そして光陰からは一定の距離をとる。
「……いつも思うんだが、この構図は間違っているぞ」
「?」
光陰の僻み妬み丸出しの発言が、まるで通じないのもこれまたいつも通り。
「ユート様ー、何の話してたのー?」
「のー?」
「花見でもしようかって話さ」
「お花見、ですか? 花はもう散っちゃってますよ?」
「ですけど、ピクニックのような感じで、皆で休みを取るのも良いかと思います。
皆が集まれば、それだけでも楽しいですし。ね、ニム」
「ニムはお姉ちゃんが行くなら」
光陰、一人蚊帳の外。
そこで光陰は、興味を自分に向けようと話に割り込む。
「そういえば知ってるかい?
花が綺麗に咲くのは、根元に死体が埋まってるからだそうだぞ?」
「「「え!?」」」
それを聞いたスピ達、固まる。
「……ユ、ユート様ぁ、それ、本当なの?」
「こわいよー!!」
ひしっ、と悠人の両側からぴったりくっつくネリシア。
光陰は、まぁ、ただ悔しがるだけ。これもいつも通り。
この辺りに関しては、光陰の言動は果たして計算づくなのかどうか、非常に判断に迷う。
「木の根元に……死体が……。
じゃあ、ここら辺を掘ったら……白骨が出てきたりして。
う……うふふっ♪」
意外といえば意外にもホラー好きなヘリオンは、ダークな妄想に入っていた。
薄笑いを浮かべたそのヘリオンの表情は、それはそれで怖い。
「……な、何言ってんだか。ね、お姉ちゃん」
「……」
「……お姉ちゃん?」
「え!? な、何かしらニム!? 私、誰も埋めて無いわよ!?
ニムに手を出そうとした男の人をどうこうだなんて、そんな事してないからね!?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ところで花見はいつにする?」
「今日、今からやろー!!」「やろー」
「次のお休みの日でどうでしょうか?」
「よし、じゃあ、今からってのは急すぎるし、次の休みだな。
来たいヤツは来るように、そうみんなに連絡しといてくれ」
皆、ファーレーンの言葉は聞かなかった事にした。
ただそれだけの話。いつも通りの日常のひとコマ。