とある、晴れた休日。
第一詰所と第二詰所のそれぞれの庭先。
二人のグリーンスピリットが、いつものように洗濯物を干していた。
「あ、これ……ユートさまの」 ∥「あれ? これ……コウインさまの?」
ふと、目に止まる白いアンダーシャツ。 .∥ふと、目に止まる白い靴下。
それは忘れようとしても忘れられない、異世界のもの。∥それは忘れるなどという事は絶対に有り得ない、異世界のもの。
エスペリアは、いとおしそうに優しく手に取り、 .∥クォーリンはふらふらと誘われるように手を伸ばし、
暖かい微笑と共に昨晩の熱い夜を思い出し、 ∥周囲に気を配りながら戸惑いと羞恥との葛藤の末、
すりすりすりすりすりすりすり
「ああ……ユートさま、一生お仕えいたしますぅ」 ∥「ごめんなさいコウインさま……今だけ許して下さいね……」
などと、残ってもいない残り香を楽しむように .∥などと、伝わらない想いを自ら慰めるかのように
くんくんと小さな鼻を鳴らしながら妄想に浸っていた。 .∥切なげに頬擦りつつ荒くなっていく吐息にじっと耐えていた。
そこへふらっと現れる二人のエトランジェ
「ん? エスペリア、なにしてるんだ?」 ∥「ん? クォーリン、なにしてるんだ?」
「え? コ、コウインさま! どうしてこちらに!?」 .∥「え? ユユユ、ユートさま! どうしてこちらに!?」
「いやなに。俺のシャツがこっちに紛れたらしくてな」 ∥「あ、ああ。俺の靴下がこっちに紛れたって聞いたもんだから」
「え、あ、きゃあっ! ももも申し訳ありません!」 .∥「え、あ、きゃあっ! ももも申し訳ありません!」
「ああ、それはいいんだが……何顔隠してるんだ?」 ∥「いや、謝られてもクォーリンのせいじゃないし。? 顔赤いぞ?」
「な、なんでもありません……あの、これ」 .∥「い、いいえ……あの、これ……」
エスペリアは、狼狽していた。 .∥クォーリンは、動揺していた。
上半身裸の光陰から、指の隙間で目を離せずに。 .∥裸足のまま無頓着に顔を覗き込んでくる悠人から、目を逸らして。
『一体自分は何に悶えていたのだろう……』
しかしその、本人達にとっては世界の根幹を揺るがすような問いに答えるものは誰もいない
「ん? なんか皺よってるな……まあいいか。さんきゅ」 .∥「ん? なんかまだ湿ってるけど……まあいいか。さんきゅな」
「…………(真っ赤)」 .∥「…………(真っ赤)」
そして何事もなかったかのように立ち去る二人
手を振りつつ去っていく光陰の背中を見送りつつ、 ∥手を振りつつ去っていく悠人の背中を見送りつつ、
エスペリアは敗戦投手のようにがっくりと膝をついた。 .∥クォーリンは躾の悪い犬のようにぺたりと尻餅をついた。
そして
辺りに誰も居ない事を確認すると、洗濯物に齧りつく。 ∥辺りに誰も居ない事を確認すると、洗濯籠に齧りつく。
「ユートさま……ユートさまのものは無いのですか!?」.∥「ごめんなさい浮気じゃないんですコウインさまごめんなさい!」
とある、晴れた休日。
第一詰所と第二詰所のそれぞれの庭先。
二人のグリーンスピリットの雄叫びが、いつものように響き渡っていた。