御挨拶

ま、前は勢いで話せてたけど、こんな改まってだなんてぇ……。
ユート様がいらっしゃる部屋の扉を前にして、固まる。顔が、というより全身が熱い。
腕を上げるが扉をたたく前に止まり、下ろしてしまう。さっきから同じ動作を繰り返しているけれど、まったく踏ん切りがつかない。お邪魔じゃないか、不快に思われないか、なんて考えてしまっているからだ。
やめちゃおうかな、とかも思う。思うけど、ご挨拶しにいくと決めたのは自分だから、とか二人でお話する機会はもうないのではと思い止まる。特に後者が切実だ。うん。
思考の結果、女は度胸だ!なんて自棄になった考え

勢いでノック。ユート様の声が返ってきて緊張も帰ってきた。もう後戻りはできないので、何を言うつもりだったのかを思い出しながら入室の挨拶をする。
少しぎこちなくなっちゃった…。
それによってさらに緊張。なんとか自己紹介をするも、頭がだんだんとはっきりしなくなってくる。
エスペリアさんからどんなふうに聞かされているのかは気になるけれど、白くなる思考では色々言うつもりだった言葉さえも言えなくて、一番言いたかったことを発するのが精一杯だった。
最終的に頭のなかには戻ろうということしか残らず、礼をして反転。何だか歩き方さえもギクシャクしているけどなおす余裕はない。扉まであと少しという所
足がもつれ、うきゃあ、と声をあげながら転ぶ。
いたたたたぁ~、と起き上がり、ここが何処なのかを認識する。

羞恥げーじが臨界を超えました。
私は全速力で逃げます

ユート様の部屋をでてすぐさま自分の部屋へ。全力で走ったから以上に顔、というより全身が熱い。
はぅ…ユート様に恥ずかしい所見られちゃったなぁ。私のドジぃ……
ユート様にどう思われたかはわからないけれど、いつかお役に立てたらなぁ。なんて思いながら暮れる一日