「ヘリオン殿ここで何を?」
「ふえ?あ、えっと、見てました。」
そう答えるとウルカさんは怪訝な顔をしました。
ここは訓練場で誰もいないのにただ見ているだけだというからそんな顔をされるのも当然かもしれません。
「ただ見ているだけですか?なら、もしよければ手前と手合わせしていただきたいのですが。」
「あ、え~と・・・。」
少し考えて、
「あの、見てていいですか?」
「は?手前を、ですか。」
ウルカさんはさっきよりも顔を変にさせつつも、
「はい。ウルカさんの訓練しているところを。あ、嫌ならいいんですけど。」
「いえ、わかりました。」
そういって訓練を始めました。
「・・・・・・。」
私はただその姿をじっとみつめています。あの時と同じように。
「・・・あ、あの。」
「?」
そこにいる人はあの時とは違うのだけど、
「やっぱり・・・お願いしてもいいですか?」
「はぁ、かまいませんが。」
もうあの人には追いつけない。だって今の私はあの人の声も姿もその存在すらも知らないから。
それでも私は失望を構え、
「それでは――」
あの時できなかったこと、それを今やったとして意味はあるのでしょうか?
きっと意味なんてないと思う。
だって「あの時」なんてありはしなかったのだから。今の私をつき動かしているのは自分自身にもわからないどうしようもない衝動だから。
だから、それは今の私にはなんの意味もなさないけど、それでも、それでも私は、
「いきます!」
強く強く大地を踏み締める。
意味なんてなくてもなんにもならないのだとしても私は
―走りだす。目の前に向かって―