私は今手紙を書いています。 
 皆さんに向けて、皆さんと別れてからの日々のことを。 
 時がたつのは早いものでもうあれから何年もたっているんですね。皆さんは変わらずに元気にやっていますか? 
 私は今手紙を書いています。きっと、この手紙が届かないと知りながら。 
 夢を、見ていた気がする。 
 皆と別れたときの昔の夢。 
 違う、そうじゃない。 
 だっていないはずの彼に私は別れを告げたから。 
 だからアレは、 
「仕事のしすぎ、かな?」 
 ぼんやりとそんなことを呟く。 
 まだ寝ぼけたままの瞳に、見慣れない景色が次から次へと変っていく様が見える。 
 その様子を見て私はやっと自分が電車の中にいることを思い出した。 
 私はそのままぼんやりと窓の外を眺める。 
 こうやってゆっくりと景色を眺めるなんていつ以来だろう。 
 うん。やっぱり特急にしなくてよかった。いつも忙しいし本当に久しぶりの休みなのだからこういうゆったりとした時間を楽しむもいいな。 
 窓の外の景色には少しながら白が混じっている。 
 ああ、本当にもう冬なんだ。職業がら出歩かないから普段は季節感やらを感じることなんてないからなあ。 
 私、高嶺佳織は現在冬休み、というにはいささか短い休みを利用し懐かしい友人達に会いに行く途中である。 
 見た瞬間私は恐怖した。 
 見なければよかった、そう思った。 
 私こと、夏小鳥は今だただ恐怖に震えていた。 
 ていうかなんでこんなことになったんだろ? 
 目の前の光景は、そう!さながら悪魔を呼び出すために用意された贄っていうかむしろ悪魔達って気がしてきた。本当あの頭とかなんなんだろう。あんなもの用意した覚えなんてないのに。うわっ、目があったヤバ、 
「なにがやばいのかしら小鳥?」 
 ・・・目の前には久しぶりに来たる友人を歓迎するため用意されたそりゃもう豪華な料理達。うっわ~おいしそっ 
「わざとらしい!」 
 すぱーん、と綺麗な音がなる。 
 痛い。めちゃくちゃ痛い。ハリセンで叩かれただけなのになんでこんな 
に痛いんだろう。流石は今日子先輩。何年たってもその腕は落ちるどころかむしろレベルアップしているのは私の気のせいですか? 
「馬鹿なこといってないで早く並べなさい。」 
「はぁい、わかりました。でもこれ本当になんの頭ですか?ありましたっけこんなの。」 
 まあ、何の頭だろうと不気味には変わりないんだけど。 
「なにいってんの、ただの魚よ。ただの。」 
 ・・・だだの? 
 さて、なにゆえ私達が悪魔召喚の儀式の準備、もとい今日子先輩の気合いのはいった料理(実は味のほうは不思議とおいしい)をせっせと並べているかといいますとなんと、今日私の親友たるあの佳織が遊びにくるというのです。 
 で、まあそれで一人暮しをしてる私の所、まあ今日子先輩達の家はそういうのに向かないのでこっちで精一杯歓迎しよう、というからです。 
 テーブルをはみ出そう、というよりテーブルを逆に食いつかんとするかの料理が 
 スパー---ン!! 
 わ、私が生きてきた中で見たことがないようなそりゃもう豪華な料理の数々がテーブル一杯に溢れてます。 
 まあ、一人暮しのテーブルですしそんな大きくないですけどね。 
「今日子先輩~もうテーブルに料理乗りませんよ~。ていうか多過ぎません?私の料理もあるのに。」 
 あ、いっときますけど私の料理ちゃんとしてますからね。見た目も中身も。 
「大丈夫でしょ。悠も光陰も結構食べるし。」 
 いや、結構っていっても限度があるのでは? 
 しかし二人ともいつもこんなの食べてるのか。すごい。 
「・・・なに考えてるのかしら小鳥?」 
「いえ、なにも。」 
 だからそのハリセンは何処から出しているのですか? 
「お~い、飲み物はこれでって・・・酷いなこりゃ。」 
 そういって来たのは見た目お坊さんには見えないけど割と周りからの評判がいいらしい光陰先輩です。 
 笑顔でじりじりと迫ってくる今日子先輩にああ、ホラー映画のヒロインってこんな気分なんだろうなと思っていた私にとってまさに救いの神のとうじょ、 
「悪かったわね!見た目酷くて!!」 
 もとい救いのイケニエの登場。 
 スパーン!! 
 うわ~凄い叩いた後に音が響きましたよ。光陰先輩がぴくぴくいってるけどアレやばいんじゃないかな。私にやったのって一応手加減してたんだ。 
「たくっ。て、あれ?光陰、悠はどうしたのよ。」 
 そういえば光陰先輩と一緒に買い出しに行ってもらったのに姿が見えません。もしかしてはぐれて迷子とか。うわわっ、大変です一大事です! 
「ん?佳織ちゃんを迎えに行きたいって言ってな、もうそろそろ着く時間だろうから行かせた。」 
「一人で、ですか?大丈夫なんですかそれって。」 
 普通に話してますけどさっきのダメージはもういいんでしょうか。口から泡とか出てたのに。 
「まあ、大丈夫でしょ。悠もそこまで子供じゃないし。」 
 う~ん、保護者にそういわれたらこちらとしては何も言えないですけど。 
「それよりも佳織が来る前に終わらせないと。」 
 そうですね。せっかくびっくりさせようと内緒で頑張ってるんですから。 
 よし、最後の仕上げといきましょう。 
「しっかし今日子、こんだけの料理いったい誰が食べるんだ?」 
「ん~あんたと悠にかかれば楽勝でしょこのぐらい。」 
「いや、流石に多過ぎだろこれは。」 
 ああ、やっぱり多いんだ。 
 とある有名な人はいった。 
 何故登るのか、それは目の前に山があるからだ、と。 
 そうなのか?いや、そうなのかもしれない。 
 今私の目の前には白く雄大な山脈が広がっている。 
 山頂は見えない。 
 もしかしたら空を突き抜け遥か遠くのハイペリアまで続いているのかもしれない。 
 登って行けば辿り着けるのだろうか。 
 考えるまでもない。私はこの山を登らなければならないのだ。 
 かつて私は多くの私を慕うもの達の前で誓ったから。 
 生まれがどうとか運命などは関係ない。 
 私が私自身の意志で決めたことなのだ。 
 手を伸ばす。 
 この果てなき道を進むために。 
 手が山脈に触れる。 
 今私は小さいながらも大きな一歩を、 
 ドサ、ドサドサドサササ---------。 
「・・・・・・あぁ。」 
 目の前の紙の山が一気に崩れる。 
 一つの山は周りを巻き込みさながら雪崩のようにどんどんと崩れていく。 
 おかげで少しだけ仮眠をとるつもりだったのに本格的に寝ていた私の目は覚めてしまった。 
 まだ現実逃避していたかったのに。 
「ん、んん----。」 
 とりあえず背伸び。気分を切り替えなければならいし。 
「ふぅ。」 
 一息ついたところで現状把握。 
 とりあえずここはラキオス城、女王陛下の執務室。 
 つまり私はこのラキオスどころかガロ・リキュア全体を治めるレスティーナ女王陛下なのだ。 
 ・・・そんな当然のことを確認している私はまだ寝ぼけているのかも知れない。 
 そして目の前。 
 白、白白白白白・・・・・・・しろ、うんざりするほどのシロ。 
 まるで雪原のように(といっても本とかだけで実物は見たことないけど。)広がる紙の海。 
「はぁっ。」 
 何度目になるかわからないため息をつく。 
 私はその何枚あるか数えるだけで一日が終わりそうな紙を一枚一枚きちんと目を通してきちんと処理しなければいけない。 
 だってそれが私の仕事だから。 
 けどここのところ殆ど徹夜でやっているのに減るどころか増えているのは何故? 
 ガロリキュアの抱えている問題を解決するため龍の爪痕を越えた探検により発見された空に浮かぶ島々。 
 そして何故かそれらは細々と分かたれガロリキュアにへと落とされた。 
 いや、ね?それによって確かにガロリキュアが抱えてるいくつかの問題は解決されたけどさ、新たな問題も発生したんだよね。 
 主立ったものとしては元々島に住んでいた人達との人間関係での問題、かな。 
 その人達にとってはいきなり周囲の環境が変わってしまったわけだしこちら側としてもいきなりやってきたわでなんの準備も出来てなかったし。 
 で、まあ住む環境が違えば文化も変わるし人間十人十色、受け入れてくれる人もいれば反感を持つ人もいる。ガロ・リキュアだって全体を見れば完璧上手くいってるわけじゃないし。 
 そういう人間関係のトラブルというのは解決が難しく小さな問題なら現地の人達に任せればいいけどそうも言えない。 
 この国の指導者はこんな小娘なのか!そんな奴に従えると思うな!とあちら側でいう人達がいるから。 
 まあ、普通そうだよね。あちら側の指導者たる人物がいろいろ助けてくれるけど彼自身そこから手を引きこちらに全部委ねたいと思ってるみたいで。 
 まあ、とりあえずそういう人物を納得させるには実力を示すしかなく、その為にはできるだけ多くの問題を私がどうにか解決している、と思わせるのが好ましい。 
 まあ、具体的な解決案がなかった問題が解決されたのだからこれくらいわ、という気がしないでもないけど。 
 正直そう思わないとやってられない。 
 というわけであちら側からもたらされた問題とこちらの残った問題、それらにより私連日激務激務、となっている。 
 愚痴をいっても始まらない。 
 私は気分転換にと、未だ閉まったままだった窓を開けようと紙を掻き分け、そして、 
「寒っ・・・いってあれ?」 
 雪だ。 
 窓を開けた途端ラキオスでは見ることなど出来ないはずの雪が見える。 
 キラキラと光を受け輝きながら落ちるソレはまるで宝石のよう。 
 ああ、本物の雪ってこんなにも綺麗なんだ、って、アレ?おかしい。それとも雪ってこういうもの? 
 私の疑問にお構いなしに晴れ渡った空から雪は降り続ける。 
 手を伸ばし触れてみる。 
 一瞬にして溶けて消えたそれは確かに冷たいのにどこか温かい。 
 シャンシャンシャン 
「?鈴の音、何処から、きゃっ!・・・いたたっ。」 
 何処からともなく聞こえる鈴の音が何処から聞こえるのか探そうと窓から身を乗り出そうとした瞬間、いきなり強い風が吹き、それに驚いた私は恥ずかしながらも下に散らかった紙に足をとられ滑べって倒れてしまった。 
「もう・・・なんでいきなり、あれ、これは・・・。」 
 気付けば私の胸元には白い長方形の紙。 
 多分これは手紙だろうけど、さっきの風に運ばれて来たのだろうか? 
 なんとはなしにその手紙を手に取り調べてみると驚いたことにそれは私、正解には私達に向けられものだった。そして、 
「え?これは・・・。」 
 差し出し人の名前は酷く懐かしい友人の名前だった。 
「エスペリアお姉ちゃん、見てみて!雪だよ、雪!」 
「これは、一体・・・。あ、もう、オルファ!寒いのですからそんな恰好で外に出てはダメですよ。」 
「え~、大丈夫だよ、ってアレ?エスペリアお姉ちゃんこれって、」 
「鈴の音ですね。でも何処から・・・。」 
「ほらほらヒミカ~、見て下さい。雪ですよ~。」 
「もう、わかってるわよハリオン。どれどれ、うわっ、本当に降ってるわね。」 
「ええ、綺麗ですね~。」 
「そうね、あら?ちょっとハリオン。何か聞こえない?」 
「ゆっき--!」 
「ゆっき~♪」 
「ああ、もう二人とも今任務の最中だって忘れてますよね?遊ばないで下さいよ~~。」 
「シアー、いっくよ-。」 
「え?わっわわっ。」 
「はぷっ!」 
「あ。」 
「・・・ヘリオン大丈夫?」 
「ネ、ネリーのせいじゃないよ?シアーが避けるから。」 
「あ、ネリー!」 
「ふ、二人真面目に仕事して下さい!」 
「ヘリオン、任務のほうはこちらですませました。」 
「え?ナ、ナナルゥさんいつの間に!?」 
「ありがとうウルカ。わざわざ家の子に剣を教えに来てくれて。」 
「いえ、この程度のこと。それに皆なかなか筋がいい・・・ですがセリア殿はやはり彼等が剣を覚えるのは嫌なのですか?」 
「え、ええ、まあ。あの子達にはあまりそういうのでなくもっと別の道に進んで欲しいのだけど。」 
「そうですか。けど、大丈夫だと思います。お母さんみたいになりたい、お母さんみたいに皆を守れる人になりたいと、そういっておられましたから。」 
「・・・そう、まったくあの子達は。」 
「ふふ、それにしても先程からなにやら外のほうが騒がしいような。」 
「ほらほらニム、雪よ。」 
「さむい。」 
「もう、ニムったら。綺麗じゃない?」 
「・・・お姉ちゃんがそういうなら。」 
「くすっ。そんなこといって、さっきからずっと上を見上げてるけど。」 
「う、ううぅ・・・そ、そんなことよりさっきから何か音がするんだけど。」 
「そうね、これは鈴の音、かしら。」 
 スリハの月のある日。 
 その日ガロ・リキュア全域に白い雪と鈴の音が降り注いだ。 
 その光景は正直なんといったらいいのだろうか。 
 神社の石段に座った二人がお茶を飲んでいる。 
 いろいろと、冬のこの時期になんでそんなところで、とかツッコミ所はあるがそんなことはどうでもいい。 
 問題はその二人の恰好だ。 
 一人は神社でありふれた巫女装束の少女。 
 そしてもう一人。 
 毛皮の赤い服。袖など一部に白いモコモコしたものアリ。 
 頭の上には赤い三角帽子。 
 顔には立派な白いヒゲ。 
 どっからどう見ても見てもサンタさん。 
 この時期よく見かける姿ではあるがそれが神社の石段に座り巫女さんと一緒にお茶を飲んでいる姿は異質としかいいようがない。 
「ふぅ。たまにはこうやってゆっくりするのもいいものですね。」 
 熱いお茶を一口飲、まるで十年来の付き合いがある友人かのように隣のサンタをした人物に話しかけた。 
「ええ、まったく。」 
 そちらもまた同じようにその姿から想像されるような温かな声で答える。 
「貴方はまだいいのですか?」 
「はは、昼間はなにもすることはないですからね。」 
「そうですか。」 
 そのまま彼等は何も話さない。 
 かといって互いに気まずいとは思っていないようだ。 
 互いにゆったりとした何もしない、という時間を堪能していた。 
 まるでそれが彼等が普段そんなものとは無縁のごとく。 
 ただただその時間を堪能している。 
「おや?」 
 そんな彼等の、サンタの所にソレはやってきた。 
 ひらひらと風に流されながら真っすぐに自分の方へ飛んでくる。 
 手を伸ばすとそれは簡単に掴めた。 
「・・・ふむ。」 
 それは手紙だ。ただしこちらの世界のどこにも属さない文字で書かれた。 
「ああ、成る程。これは貴方の仕業ですか?」 
 サンタはにっこりと笑い隣の少女に尋ねる。 
「何のことでしょう。私にはよくわかりませんが、ただ、」 
 巫女姿の少女はそういって空を見上げた。 
 二人のやり取りは他の人にとって意味のわからないものだが、 
「今日ほど奇跡の似合う日はありませから。」 
 互いに長い時を過ごしてきた者同士、通じ合っているようだ。 
「やれやれ、せっかくの休暇だというのに。」 
 サンタの彼が石段から腰を上げた途端、何の前触れもなく当たり前のように雪が降り始める。 
「まあ、いいじゃないですか。貴方のこれは趣味なのでしょう?」 
 そう言って巫女の少女は微笑んだ。 
 それを見てサンタの彼もまた微笑む。 
 シャンッ。 
 鈴の音が辺りに響いた。 
 少女は一人少し冷めたお茶を啜った。 
「っとと。」 
 人の波にのまれながらもなんとか改札口を抜ける。 
 昔よりほんの少しだけど成長してるはずなのにまだまだ小柄な私にはなかなかにきつかったけど。 
 小鳥なんかはちゃんと背とか胸とか成長したのになんで私だけは小さなまま? 
「ふぅっ。」 
 とりあえず一息。それから辺りを見渡す。 
 変わった所もあるけどきちんと面影がある。 
 ああ、私は生まれ育ったこの街に帰って来たんだ。 
 少しの間だけど。 
「姉・・・ん、佳織姉ちゃん!」 
「アレ?」 
 何処からか私を呼ぶ声。 
 探して見れば、 
「佳織姉ちゃん!」 
 いた。けどあれって、 
「悠人くん?」 
「やっと見つけた。佳織姉ちゃんて小さいから見つけにくいよな。」 
「小さいって、悠人くんのほうが小さいよね?それよりお父さんかお母さんは?」 
「小鳥姉ちゃん家。いろいろ張り切って準備してた。」 
 てことは悠人くん一人?大丈夫、だったんだけどいいのかなあ。歳のわりにはしっかりしてるけど。 
「それより早く行こう。あ、そうだ。なあなあ、あれって続きどうなるの?」 
 あれというのは私が書いている物語。 
「教えてあげてもいいけど読む時の楽しみが減っちゃうよ?」 
 私がファンタズマゴリアで体験したものに手を加えた、 
「う、う~ん。」 
「ふふふ、悠人くんは本当に好きだね。」 
「だって俺と同じ名前のやつが主人公だし。すっごくおもしろいよ。」 
 異世界から来た少年と妖精達の物語。 
「うん。ありがとう悠人くん。と、早く行かないと皆待ってるんだよね?」 
「あ、そうだった。早く行こうぜ。」 
「や、ちょっと悠人くんそんな強く引っ張、きゃっ!」 
 強く手を引っ張られ私は情けくも転んでしまい、その拍子に持っていた鞄の口が開き中身が飛び出してしまった。 
「ごめん!佳織姉ちゃん俺拾う、」 
 伸ばされた手が届く前にソレはいきなり吹いた風に舞い上がる。 
「あ!」 
 そしてそれはあっという間に遠くの空に飛んでいってしまった。 
「俺取って来る!」 
「待って!」 
 追いかけようとした悠人くんを呼び止める。 
「え?けど・・・。」 
「いいの。」 
 だってあれは、あの手紙は、 
「・・・いいの。」 
 届くことはないのだから。 
 きっとこの手紙が届くことはないでしょう。 
 けど、もしも- 
「ん?ユート、どうした。」 
 少しぼんやりしていた俺を心配してかアセリアが話し掛けてきた。 
「ああ、いや今日ってさ、ハイペリアでは特別な日でさ。」 
 そう、特別な日。といってもこっちとあっちじゃ暦なんか別物だけどまあ、そんなずれてないだろ。 
「特別な、ハイペリアでか?」 
「そう、ほらアセリア見ろよ。雪だ。」 
 都合のいいことにいつの間にか降り始めた。 
 まるで俺が話に合わせるかのように。 
「ん、ユート嬉しそう。」 
「いや、こういう日に雪が降るってのはさらに特別な・・・なんだ、アレ。」 
 雪に混じって何かが降ってくる。 
「何か降ってきた。ユウトなんだソレは。」 
「これは手紙、と本だ。けど・・・コレなんで・・・。」 
「?ユウトどうした。」 
 降って来た本に書かれているのは誰も知らないはずの物語。 
 異世界の少年と妖精達の物語。 
 その物語を書いたのは、 
「ユート、どうした?何で泣いている。」 
 もしも貴方の手にこの手紙があるなら 
 きっと 
 いつの日にか 
 また 
 私達は 
 出会えるから