――エレメンタルブラスト
それは、グリーンスピリットの力の証し。 
大陸の随所で護りの剣を振るう、緑の妖精達の目標にして、見果てぬ頂だった。 
辛く苦しい艱難の果てたどり着いた。 
一握りの天才達のみが達しうる最強のリミテッドスキル。 
悩んだ。 
それは、グリーンスピリット本来の力である守りの気とは正反対の破壊の力だった。 
それでも……自分のため、そして何より仲間のため、必死になって会得した者達が受け取ったのは、人々からの賞賛無き栄誉。 
だが、同時にその身に受けたのは、意外にも形有る褒賞。 
それは、不思議なことに、大陸各国共通のとある下賜品であった。 
この物語は、ラキオスのスピリット隊においてオルファリル・レッドスピリットと共に若くして頭角を現した、 
一人のグリーンスピリットの苦闘の日々の記録である。 
…………
……
…
「んっ、くっ」 
昼下がりの第二詰所の一室では、目に入れても痛くない、を当に体現するであろうだだ甘お姉ちゃんであるファーレーンが、痛々しい目で妹の一挙一動を眺めていた。 
二人きりだからとマスクを外し、くつろいだ口元が、やや引きつっているのが見て取れる。 
ファーレーンお姉ちゃんは、青緑の目を一度閉じたあと意を決して、一言。 
「ね、ねーニム? ……あのね、お姉ちゃんね、もう少し経てばニムにも絶対ピッタリだと思うの」 
「くぬっ、うにっ」 
せっせ、せっせとギュウギュウ寄せられ上げられる柔肌。瑞々しい背中に苦しげに回された両腕。 
「だから、ね?」 
ストン。 
「う~~っっ」 
如何に才能を謳われようとも、体付きの方まで促成されるわけでは無かった。 
「ニムがもらったんだからっ、ニムが付けるのっ」 
あまりの彼我のボリューム差に、戦場ですら終ぞ感じたことの無い絶望感を押し殺しながらファーレーンは、 
涙目のニムントールに優しく希望を示そうとする。 
「ハリオンさんは流石に無理かも知れないけど、エスペリアさん位ならいけると思うから、ね?」 
今まで戦場で切り結んできた、少なくない数の年端もいかないグリーン達を思い出しながら、 
我ながら希望になって無いと言うか、止めを刺してるんじゃ、と自分に突っ込みつつ、 
ついつい目にも鮮やかな緑色の立体縫製に、自分が付けたらぴったしかも、と思う気持ちを抑えられないファーレーンだった。 
「おっ、ニム。レスティーナからなんか良いものもらったって聞いたんだけど、どんなんだ?」
「エレブラ!」